2001年・第30回ロッテルダム国際映画祭コンペティション部門正式招待作品 タイガーアワード(グランプリ)国際批評家連盟賞W受賞

2000年/35mm/カラー/ヨーロピアンビスタ/99分 配給:サンセントシネマワークス

2001年11月17日よりシネ・アミューズにて公開

(C)2000 WOWOW・バンダイビジュアル

公開初日 2001/11/17

公開終了日 2001/12/21

配給会社名 0095

公開日メモ 誰サダトモ、テツヤ、周二はごく普通の中学生。厳格なスパルタ担任教師小林からは「人間にも満たないクズ」と言われている。しかし、夏のある日に起きた事件を機に彼等は変わり始める‥‥‥  

解説


「クズでいいです」
誰サダトモ、テツヤ、周二はごく普通の中学生。厳格なスパルタ担任教師小林からは「人間にも満たないクズ」と言われている。しかし、夏のある日に起きた事件を機に彼等は変わり始める‥‥‥
 
本作『まぶだち』は製作WOWOW・バンダイビジュアル、制作協力・配給サンセントシネマワークスによる「J・MOVIE・WARS 5」の第5弾である。本作は2001年、新世紀最初の年に30回の記念大会を迎えたロッテルダム国際映画祭においてグランプリにあたる「タイガーアワード」と「国際批評家連盟賞」を受賞した。日本人としては風間志織監督『冬の河童』(94)橋口亮輔監督『渚のシンドバット』(96)に続く3人目の受賞。本作が、世界的に若手監督の登竜門として評価の高い「タイガーアワード」を受賞したことは、第2期以降フレッシュな新人監督を発掘してきた同シリーズにとって、カンヌ映画祭連続受賞(97年『萌の朱雀』 (河瀬直美監督)=カメラ・ドール受賞、99年『M/OTHER』(諏訪敦彦監督)=国際批評家連盟賞) 、00年『独立少年合唱団』(緒方明監督)のベルリン映画祭日本人初のアルフレート・バウアー賞(新人監督賞)受賞に続く成果で、その姿勢が世界的に認められた証左と言える。

監督・脚本は古厩智之。本作が長編第2作目となる古厩は、デビュー作『この窓は君のもの』(94)で思春期の少年少女の恋を描き、その瑞々しい映像と卓越した人物表現で、一躍脚光を浴びた新鋭である。その後、5年間を映画の探求に費やし、『まぶだち』脚本完成までにさらに2年を要し、衝撃のデビューから実に7年の歳月を経て本作を完成させた。
「この映画にノスタルジーはない」
と、その古厩は語る。実体験をもとに描いた本作では、郷里長野県を舞台に据え「そこであったこと⇔そこにあったらよかったこと」にこだわった。その「こだわり」を具現化すべく、撮影は、2000年・真夏の長野県飯山市及び木島平村にてキャスト・スタッフ共に合宿生活をしながらまる1ヶ月かけて行われた。
久々の劇映画となる古厩の片腕として現場を支えたのは撮影監督の猪本雅三だ。『M/OTHER』(99)『独立少年合唱団』(00)、『人間の屑』(01)と、J・MOVIE・WARS5作品で毎回違ったアプローチを見せる猪本だが、本作では大きな魅力となった「映画全体を包むノスタルジックな雰囲気」を、見事に映像化している。その他にも、音楽に『萌の朱雀』(97)の茂野雅道、編集に『M/OTHER』、『独立少年合唱団』の掛須秀一と仙頭武則プロデュース作品には欠かせない実力派が結集し、本作を完成させた。そして、プロデューサーの仙頭武則。今年のカンヌ国際映画祭へはコンペティション部門に『月の砂漠』(青山真治監督)、ある視点部門に『Hstory』(諏訪敦彦監督)、批評家週間に『UNLOVED』(万田邦敏監督)の3本を同時に出品。世界的にも例をみないという快挙を達成し、国際派プロデューサーとしての手腕を証明してみせた。

キャストの子役は全てオーディションで選出した。主人公の「サダトモ」には、東京で数度にわたったオーディションを勝ち残った沖津和(おきつ やまと)を抜擢。そして、彼を囲むクラスメイトたちは、実際に舞台となった木島平中学校でオーデションのビラを貼るなどして、実在の生徒たちから応募を募った。彼らの朴訥な演技は、作品をより身近に感じさせる存在として本作にとって大きな魅力の1つなった。そんな素人同然の中学生たちを導くプロの俳優陣は実の子供を教え諭すように演技にあたった。特に、「スパルタ教師」小林を演じた文学座のベテラン俳優清水幹生は、芝居がかった小林の性格を舞台そのままの熱演で魅せた。その「未熟⇔完熟」のコントラストと長野の風光明媚な風景が茂野雅道の音楽とともに「どうしていいかわからなかった年頃」の気分を絶妙に演出する。

ストーリー


長野県の小さな町に住む中学生のサダトモ(沖津和)、テツヤ(高橋涼輔)、周二(中島裕太)たちは、通学している中学校の厳格な担任教師小林(清水幹生)から人間にも満たないクズだと言われ続ける毎日を過ごしていた。
 
いつものように、サダトモたちは遊び半分で近所の駄菓子屋で万引きをした。その翌日、駄菓子屋から学校へ万引きがあったことが通報され、小林もホームルームの時間にサダトモたちに問うが誰も名乗り出なかった。「ばれたらやばい‥‥‥」不安がるテツヤや周二たち。そんな中、サダトモは一人飄々と行動し彼らの不安を巧みにとり除いていく。テツヤたちは頼りになるサダトモに憧れを抱く反面疎ましくも思いはじめていた。
 
翌日、気の弱い周二から万引きをしたことを聞き出した小林は、サダトモはじめ「万引きグループ」の父親たちを学校へ呼び出した。小林は、罰として、各自原稿用紙30枚の反省文を書くように命じる。その晩、サダトモの父(光石研)は初めてサダトモを殴った。サダトモはあまりのショックに、これまでの素行を反省し、自らの行動を心から嫌悪しているという涌き出る正直な気持ちを、「僕は玉ネギ」というタイトルで書き上げる。
 
サダトモの反省文にはじめて彼の正直な告白を見た小林は、サダトモが人間への一歩を踏み出したと感じ、文化祭の「意見文発表会」でその反省文を読む栄誉を与えると伝えた。サダトモとテツヤの反省文は小林から「評価」を受け、「人間グラフ」と名づけられた白板の名札は「クズ」から「優等生」へと移動した。しかし、大人からの「評価」に嫌悪感を抱くサダトモは、「クズでいいです」と小林に言い放ち、通学路の橋の上から川へ反省文を投げ捨てる。
 
サダトモとテツヤの優等生への移動に刺激を受けた周二たちは、各々の方法で小林の「評価」を得ようと精一杯努力するが、周二のみ挫折する。それ以降、サダトモをリーダーとしたグループはそれぞれサダトモから離れていった。それでも周二だけはサダトモへの傾倒を改めようとはしなかった。変わらない周二にサダトモは、理由もなくイラダチを覚えはじめる。
 
そんなある日、大事件が発生した。どうしても小林からのノルマを達成できない周二は技術の授業中にノミで左手を刺し救急車で病院に運ばれた。追い詰められた周二の気持ちを察したサダトモとテツヤは以前のように、放課後の橋へ周二を誘い欄干を渡り始めた。今の気持ちそのままの不安定な3人の行進。2番目を歩いていたサダトモがふと振り返った刹那、えにも言われぬ笑顔を残し周二が川へ飛び降りたのだ!

スタッフ

監督・脚本:古厩智之
プロデュース:仙頭武則
撮影:猪本雅三(J.S.C)
照明:松隈信一
録音:畑孝太郎
美術:須坂文昭
編集:掛須秀一(J.S.E)
音楽:茂野雅道
製作:WOWOW+バンダイビジュアル
制作協力+配給:サンセントシネマワークス

キャスト

沖津和
高橋涼輔
中島裕太
清水幹生
光石研
矢代朝子

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