いのちの地球ダイオキシンの夏
わたし達の未来は、わたし達の手で守るのよ!
2001年/日本/カラー/スタンダード/83分/ 配給:全国映画センター
2001年8月18日から31日までシネ・リーブル池袋にてモーニングショー公開ほか全国上映予定
公開初日 2001/08/18
公開終了日 2001/08/31
配給会社名 0209
公開日メモ 長編アニメ映画『いのちの地球ダイオキシンの夏』は、1976年に北イタリアの街セベソの化学工場の爆発事故によって引き起こされた大規模なダイオキシン災害をもとに、児童文学者の蓮見けいさんが書いた「ダイオキシンの降った街」(岩崎書店・刊)を原作として製作された。
解説
長編アニメ映画『いのちの地球ダイオキシンの夏』は、1976年に北イタリアの街セベソの化学工場の爆発事故によって引き起こされた大規模なダイオキシン災害をもとに、児童文学者の蓮見けいさんが書いた「ダイオキシンの降った街」(岩崎書店・刊)を原作として製作された。
ダイオキシンは、ポリ塩化ジベンゾーパラージオキシンという塩素化合物の総称で、生物や人間にとってさまざまな病気をひきおこし、はては死に至らしめる猛毒であり、その持続性の強さ、解毒の方法がまだ見つかっていない点で、放射能汚染に匹敵する人間の科学がつくりだした災悪である。近年、日本でもようやく焼却炉から排出されるダイオキシンの有害性が社会問題になってきたが、このセベソ事件の当時は、住民のほとんどはその恐ろしさ、その正体を知らなかった。
爆発によって白い灰が降った直後から、鳥や犬・猫が死んでゆく異変を見た11歳の少年・少女たちは、工場の親会社の幹部たちがひた隠そうとする爆発の原因、飛散した灰に含まれる毒物の正体を突き止めようと立ち上がる。彼らは、「セベソ少年探偵団」を結成し、日本人のジャーナリスト安藤とカを合わせて真相を追求してゆく。その正義感あふれる活躍と友情の物語を通じて、原爆を投下されたヒロシマの悲劇にも匹敵するダイオキシンの恐怖を描き、地球汚染への警鐘を鳴らす意欲作である。
プロデューサーは、阪神・淡路大震災をテーマにした長編アニメ「地球が動いた日」や、心に傷を負った少女の再生を描いた「ハッピーバースデー・命かがやく瞬間」を企画・製作をした桂壮三郎、監督に『蒼い記憶・満蒙開拓と少年たち』の出崎哲、絵コンテ、キャラクターデザインに四分一節子、音楽は、映画・テレビで活躍している長谷川智樹が担当している。
尚、この映画をダイオキシン・環境ホルモン国民会議(代表/立川涼)が監修の立場で参加している。
ストーリー
北イタリアの街セベソに住む少女ジュリアは、その日11歳の誕生日を迎えた。1976年7月10日。誕生日のささやかなパーティーには、陸上クラブの仲間ルチアとエンリコ、同級生のアンジェロ、美少女のマリアなど仲良しが集まった。ジュリアの姉のアンナが病院での検査で、妊娠していることが判ったという知らせが届き、父のシーノも母のミレーナも喜び、全員で乾杯した。
そのとき、いきなり地を揺るがす轟音か響き、北方の空に巨大な煙が吹きあがった。その煙は、風に乗ってセベソの街を覆い、霧雨のような白い微粒子を降らせた。微粒子は強い刺激臭があり、頭痛と眼の痛みを多くの人々にもたらした。
煙はセベソ北2キロにあるイクメナ化学工場の爆発事故によるものとニュースは伝えた。工場では、化粧品や外科手術用の石鹸の原料になるTCPという化学物質を造っていて、それが爆発事故によって流出したのだという。TCPは、有害ではあるが、眼や頭痛は一時的なものに終わると工場の重役達は、市長のカーロを安心させた。市長の息子エンリコは、それに疑問を持ち、ジュリアたちと一緒に工場に忍び込んで調べてみることにした。工員の口から、事故当日の幹部たちのただならぬ狼狽ぶりを聞き凝念は深まるはかりだ。
次の日、ジュリアは空を飛んでいる烏が落下して死ぬ光景を見た。母のミレーナが飼っている鶏が全部死んでいた。マリアの愛犬が急に苦しみだした。動物病院はペットの原因不明の病気を訴える人々でごったがえした。「黙って見ているだけじゃなく、わたし達で調べてみましょう」というジュリアの提案で、セベソ少年探偵団が生まれた。
そんなとき、日本の新聞社の特派員安藤が爆発事故の取材にやってきた。流失したのかベトナム戦争で米軍が使った枯葉剤の原料でもあったという恐ろしい事実をジュリア達に説明した。枯葉剤に含まれていた猛毒ダイオキシンは、ジャングルを枯らしただけでなく、土地や水を汚染して人間に深刻な病災をもたらし、夥しい数の胎児の死亡や奇形児を生み出していた。
セベソの街が大量のダイオキシンに汚染されていることを隠し続けていた工場の親会社を糾弾するために、安藤とエンリコはスイスに向かった。二人に問いつめられた親会社の会長は、流失したダイオキシンは2キロから3キロだと答えた。ダイオキシンは、1グラムで83万匹のモルモットを殺す毒性を持っているのだ。
そして、セベソの街は汚染度によって区分され、最も汚染が強いA地区は、立入禁止になった。ジュリアの家はA地区にあり、一家あけてミラノへ避難させられた。姉のアンナは、赤ちゃんを産むべきかどうか、夫とともに悩み、マリアは顔にできた発疹を恥じて誰にも会おうとしなくなった。
親会社が事故について記者会見するという日、会場は「俺たちの命を保障しろ!」と叫ぶ住民に取り巻かれた。その後に及んでも、真実を隠そうとする会社に対して、ジュリアたちは怒りを込めて立ち上がった——。自分達の美しい地球の未来の為に……。
スタッフ
企画・プロデューサー:桂壮三郎
脚本:小出一巳、末永光代
監督:出崎哲
絵コンテ・キャラクターデザイン:四分一節子
アニメーション演出:熨斗谷充孝
作画監督:清水恵蔵
監修:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
クリエイティブプロデューサー:小出一巳
音楽:長谷川智樹
音響監督:清水勝則
アニメーション制作:マジックバス
キャスト
(声の出演)
ジュリア:佐久間信子
マリア:白鳥由里
エンリコ:折笠愛
アンジェロ:佐々木静香
リチオ:本田貴子
安藤史郎:井上和彦
マルコ:小林沙苗
アントニオ:室園丈裕
アンナ:水谷優子
市長:玄田哲章
ソニア:倍賞千恵子(特別出演)
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