原題:A LA PLACE DU COEURE

今日も、明日も、あさっても、ずっとあなたに会いに行く

1998年サン・セバスチャン国際映画祭・審査員特別賞、最優秀脚本賞、OCIC賞 3部門受賞

1998年12月9日フランス公開

1998年フランス/カラー/ヨーロピアン・ヴィスタサイズ/ドルビーSR/1時間53分/日本語版字幕:松浦美奈 提供:アスミック・エースエンタテインメント/角川書店 配給:アスミツク・エース

2002年07月26日よりビデオ発売&レンタル開始 2001年5月19日よりシネスイッチ銀座にて公開

公開初日 2001/05/19

配給会社名 0007

公開日メモ マルセイユの町で育った幼なじみのふたり。過酷な運命に生きる恋人たちを描く感動作。

解説


はじめてで、永遠につづく、小さな恋のメロディ
「待ってるだけじゃ、幸せはつかめない」そう、母は教えてくれた

私たちは一生のうちに、いったいいくつの恋をするのだろう。さまざまな形の恋が、毎日私たちの周りで生まれている。出会った瞬間に始まる一目惚れ。思い通りに行かない片想い。時と場合を選ばない突然の恋……。
しかし、『幼なじみ』のクリムとベベの恋は、他のどの恋とも違う。同じ町に生まれ、気がつけば幼い頃からずっと一緒の二人は、同じ通りを走り、同じ香りの空気を吸い、同じ空を見上げてきた。小さな切り傷のできたその理由まで、二人はお互いのことを何でも知っている。そう、まるで家族のように・・・・・・。
バースディ・ケーキのろうそくが毎年1本ずつ増えていくように、年月と共に互いへの想いを少しずつ少しずつ積み重ねていったクリムとベベ。やがて思春期を迎えた二人は、とても静かに、とても自然にはじめての恋に落ちる。その恋は、いつしか愛に変わり、まっさらの二人の心に永遠につづく”幸福のあしあと”をつけ始めたのだった。
しかし、そんな二人がある事件のせいで、生まれてはじめて引き離されるところから物語は
始まる・・・・・・

家族とは、同じ思い出に抱きしめられた人たちの集まりだ。クリムの妊娠を家族みんなで祝った1本のシャンペン。この先、同じ銘柄を見るたびに同じ喜びを思い出すことができる。
ベベの父が黙々と作る杏のタルト、クリムの父が妊娠した娘を気づかっていれるショコラ、ベベが刑務所で石鹸に彫った彫刻……。そんな何気ない毎日の思い出が家族を結びつけるのだ。
『幼なじみ』の二つの家族が精いっぱい守ろうとしたもの、それはクリムとベベの”大好きな家族がいるこの町で、赤ちゃんを産みたい。生まれてくる赤ちゃんにたくさんの愛を注いであげたい”という、たった一つの小さな望みだった。
そして、私たちは気づく。新しい家族は、この二人のように、愛に満ちた他人同士から始まると

苦い二人のまっすぐな恋心と、それを見守る家族の愛情を、慈しむように丹念に描いたのはロべール・ゲディギアン監督。マルセイユ生まれの彼は、小さな路地まで知り尽くしたこの街で映画を撮り続けている。
前作『マルセイユの恋』は、フランスで半年間以上のロングラン上映を続け、300万人を超える動員記録を作った大ヒット作で、セザール賞7部門にノミネート、アリアンヌ・アスカリッドは主演女優賞を見事受賞した。
そのアリアンヌ・アスカリッドを始め、『マルセイユの恋』のスタッフとキャストが再び結集、ゲディキアン監督の世界を支えている。さらに今回、主役の二人を演じるのは、共にこれが映画初出演のロール・ラウストとアレクサンドル・オグー。彼らの一点の濁りもない澄んだ眼差しが胸を打ち、次々と起こる逆境を乗り越えていく姿を応援せずにはいられない。特にクリム役のロールウウストの、愛らしさの中に秘められた凛とした強さには、磨かれる前の原石のような美しさがある。
原作は、現代アメリカを代表する黒人作家ジェームズ・ボールドウィン。黒人差別の問題を描きながらも、愛の尊さを高らかに謳い上げた作品を発表。特に原作『ビール・ストリートに口あらば』は、どんな苦境も差別も愛の前には無力ということを証明した代表作の一つ。本作では舞台を、ニューヨークのハーレムからマルセイユに移し、大胆に脚色した。
また、忘れてはならないのは、二人の恋を見守るような優しい旋律の音楽。リストによる「愛の夢〜3つの夜想曲」から第3番”恋人よ、愛しうる限り愛せ”が、ロマン派の代表的ピアニスト、ホルヘ・ボレットの名演奏で使われ、ラスト・シーンと共にいつまでも心に感動の余韻を残す。

ストーリー


「私、妊娠したの」。刑務所の面会室で恋人に告白するクレモンティーヌ。彼女はクリムと呼ばれる16歳の少女。フランソワはべべと呼ばれ、彫刻家を夢見る18歳の黒い肌の青年。海からの風と教会の鐘が、心地よく織り成す港町マルセイユ。様々な人種や文化が交錯し、日々労働者が行き交うこの町で、幼なじみのふたりはずっと恋をしてきた。ある日、この幼い恋人たちを引き裂く事件が起きる。べべが人種差別主義者の警官によって、無実の罪でレイプ犯として刑務所に投獄されてしまう。そんな中、クリムは自分の妊娠を知ったのだった。

◎初めてのセックスはまるでトラックにはねられたみたに不思議な感じだった。
のんびりトランプをしたり、宇宙にすい星を飛ばしたり、人に夢を見させたり、いろんなことをしながら”その瞬間”は私たちを待っていた。

パリ祭の日、べべのアトリエで二人は初めて結ばれた。その朝、クリムの家族に結婚の許しをもらいに行く。父ジョエルは昔気質の建築作業員で、母マリアンヌは陽気なマルセイユっ子、姉は美人でしっかり者のソフィ、クリムはそんな暖かい家族の中で育った。突然の結婚の報告に戸惑う家族だったが、二人の強い愛と意思を尊重し、優しく応援してくれる。

◎物体にも人の心にも粉雪のようにチリがつもる。でも人の心につもるチリは執拗で、まとわりついて離れない。

べべの父フランクは家族思いの湾岸労働者で、母と姉のブロンディーヌは宗教に取りつかれている。この母親は子供が生めず、べべたち姉弟を養子にしたのだった。フランクは、自分の息子を刑務所から救い出したい思いでいっぱいだ。クリムが妊娠の報告をすると、フランクは家族の中で一番喜んでくれた。
ある日、レイプ事件の被害者ラディク夫人が失綜した。弁護士は、彼女が故郷のサラエボに帰ったのではないかと推測する。べべを陥れ、ラディク夫人に嘘の証言をさせたのは、やはりあの人種差別主義者の警官だったのだ。マリアンヌは愛する娘のためにラディク夫人を遥々サラエボまで探しに行く。ようやく居場所を探し当て、ベベの無実を晴らそうと説得するマリアンヌだったが・・・。

◎他人の心はわからない、自分の心だってわからない、心とは宇宙のように神秘的なものなのだ。

そしてそれぞれの歯車が回り始める。ついに、ラディク夫人が「犯人の顔は見なかった」と証言し、べべの無実が晴れた。ようやく平和が戻ってきたかと思っていたのも束の間、その知らせを知らないフランクが今度は行方不明になる。彼は息子を助けるために盗みを働いて会社をクビになっていたのだ。心配になったジョエルはフランクを探しに行くが、彼は仕事場近くの道路わきでひとり静かに住んでいた。
いっぽう、クリムとべべには、幼ない頃からの夢が叶う日がすぐそこまできていた。
ついにかけがえのない存在が誕生しようとしていたのだった。

スタッフ

監督:ロべール・ゲディギアン
脚本:ジャン=ルイ・ミレジ/ロべール・ゲディギアン
原作:ジェームズ・ボールドウィン「ビール・ストリートに口あらば」
製作:ジル・サンドズ/ミシェル・サン=ジャン/ロべール・ゲディギアン
撮影:ベルナール・カヴァリエ
録音:ロラン・ラファン
編集:ベルナール・サシア
美術:ミシェル・ヴァンデシュタイン
彫刻造形:ンダガニ・マヴァンブ/パコ・ゴメス
テーマ曲:リスト<愛の夢ー3つの夜想曲>第3楽章「恋人よ、愛しうる限り愛せ」

キャスト

クリム:ロール・ラウスト
べべ:アレクサンドル・オグー
マリアンヌ(クリムの母):アリアンヌ・アスカリッド
ジョエル(クリムの父):ジャン=ピエール・ダルッサン
フランク(べべの父):ジェラール・メイラン
フランシーヌ(べべの母):クリスティーヌ・ブリュシェール
ソフィ(クリムの姉):ヴェロニク・パルム
ブロンディーヌ(べべの姉):オロール・マンガー
レヴィ氏(家主):ジャック・ブデ
アサス氏(弁護士):ピエール・バンドレ
警官:ジャック・ピエレ
ラディク夫人(訴えた女):ベアタ・ニルスカ
ピエト・ラディク(訴えた女の弟):マリウス・グリギェレヴィチ
クリム(子供):フィオナ・ケンディリアン
べべ(子供):アブドラマーヌ・ディアキテ

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