<ラブシネマ第4弾>

2000年/デジタル・ビデオ/カラー/82分 製作:シネロケット+日本トラステック 制作プロダクション:ビターズ・エンド 協力プロダクション:映画美学校

2002年05月15日よりDVD発売開始 2002年5月10日ビデオレンタル開始 2001年2月17日より、シネマ・下北沢にてロードショー

公開初日 2001/02/17

配給会社名 0036

公開日メモ わたしがギプスをはめると、何か面白いことが起こる…」。しかし環が招き寄せたある事件を切っ掛けに、2人は「ギプス」というフィルターを介した、暗黙のゲームにのめりこんでいく。駆け引きなのかもしれない。結びついているのかもしれない。それを確認する術は何もない2人…。揺れ動く2人の行き着く先にあるものは、何なのか———。

解説


ギプスをつけた女、環の不思議な魅力にとり憑かれ、何かに突き動かされているかのように、環を追い求める。翻弄される和子と、それを眺めて愉しむ環。「わたしがギプスをはめると、何か面白いことが起こる…」。しかし環が招き寄せたある事件を切っ掛けに、2人は「ギプス」というフィルターを介した、暗黙のゲームにのめりこんでいく。駆け引きなのかもしれない。結びついているのかもしれない。それを確認する術は何もない2人…。揺れ動く2人の行き着く先にあるものは、何なのか———。
憧れ・献身・嫉妬・挑発・そして孤独感…恋する女性の揺れ動く感情の機微を、美しい光と影とともに描き出したのは『月光の囁き』『どこまでもいこう』の塩田明彦監督。2人の女性の、言葉では言い尽くせない繊細な駆け引きを見事に魅せている。
ギプスをはめた美しい確信犯、環に佐伯日菜子。その神秘的な眼差しと透明な存在感で、誰も心に立ち入ることの出来ない「魔性の女」を快演。彼女の新しい魅力と色香を堪能したい。また、そんな環に翻弄され、説明のつかない感情をリアルに演じたのは、『萌の朱雀』『ユリイカ』と話題作に相次いで出演する注目の女優、尾野真千子。
脇を固めるのは人気急上昇中の若手舞台俳優、流山児★事務所の山中聡、映画、CMで幅広い人気を獲得した津田寛治といった個性溢れる実力派。
フェティシズム、同性愛、SM…?様々な愛の断片が見え隠れする。秘めやかで熱い、愛のかたちがここにある。

ストーリー



ある夕刻のこと。大下和子(尾野真千子)は、松葉杖にギプスをはめた女と出くわす。
よろめいた女に手を差し伸べたとき、思わず吸い込まれるような印象的な目に釘付けになった。しなやかな足と白いギプスがアンバランスな魅力の女。
「歩き辛い」という彼女の靴を脱がせ、和子はそれをどうしていいのかわからぬまま家までついて行く。女のペースに逆らえない。そして、女は和子の足元に鍵を放り投げて言い放つ。「あげる」それが長谷川覆(佐伯白菜子)との出会いだった。

翌日、和子は他の誘いを尻目に、約束している訳でもないのに環の家に向かった。そこで和子はある引き出しに、まるで衣装の様にしまってあるギプスを発見してしまう。
帰宅した環は和子の存在に驚きもせず、和子の持ってきたビールを美味そうに飲みながら、ギプスの秘密を語り出した。——高校時代。交通事故に遭った環は、初めてギプスというものを身につけた。制服姿に松葉杖で合唱部の練習に行くと、明らかに皆、環の放つ異様なムードに気を奪われている。
顧問の教師もまた動揺していた。教師の車で送られて環はその理由を知る。必死で逃げる環。それでも教師は衝動を押さえきれずに…。しかし、事件はそれだけでは済まなかった。翌日、その教師は音楽教室で首を吊って自殺してしまったのだ。

「私がギプスを填めて歩けば、必ず何かおもしろいこと起こる…」和子は思う。自分もまた、環にとってはおもしろいことの1つなのだろうか。気がつけば、環は意味もなく和子を呼び出し相手をさせた。そしていつでも驚かせた。散歩途中、男の子の頭をひっぱたいて万札をくれてやる。あるときは二胡を奏でる美しい音色で現実を忘れさせる。突然家を空けて金魚の世話をさせる…。環は、掴めない女だった。でも強烈に惹かれた。環を理解したくて、近付きたくて、和子は環を追い求めた。
右腕に包帯。左足にギプス。脇の下に松葉杖を抱え歩いてみる。鏡に映った自分の姿を見ながら、和子は少しだけ環を理解したような気がした。「あれだけいろんな男といたって、環は男を愛していない。でも私は次元が違う」。そう自らに言い聞かせながら、環に従う見知らぬ男に対してさえ、激しい嫉妬がこみ上げてくるのを押さえられない。そんな和子の表情を察知して、環は愉しんでいるようだった。和子がむきになればなるほど、ますます環は面白がった。

そんなある日、事件は起こった。
和子は男と歩く環の姿を見かけ、思わずつけていた。環が1人出て行った赤いドア。室内で、携帯電話がけたたましく鳴っている。しかし誰も出る気配はない。和子は思い切ってドアを開けると、思わず息を呑んだ。部屋の中央に、環と一緒にいた男が不自然に身体をひねって倒れている。心臓の音はなかった。
部屋に残された事件の物的証拠を持って、和子はその場を立ち去った。

電話でのいつもと変わらぬ環の声からは状況が読めない。翌日のニュースでも事件は報道されなかった。会ってみても何ら不安げな様子もない環。あの事件は一体…?証拠は和子が握っている。男の家から取ってきたナイフやカメラ、財布を入れたビニール袋を自宅の掃除機の中にしまい、和子は脅迫状を送る決意をする。「人殺し。淫乱女。雌豚。証拠は俺が握っている。死刑が嫌だというなら。1週間以内に500万」この挑発に、環は反応するのだろうか。

環の手元に届いた脅迫状を見て、和子は自然を装い、それが何なのか質問する。すると環はその内容を大きな声に出して読ませるのだ。
「10月4日、午後4時。おまえは、沖島を殺した」
脅迫状に書かれてあることを平然と肯定する環。「どうするの?」驚いた芝居を見せる和子に、「500万の手配を手伝え」と囁く環。
和子は自分の仕掛けた挑発を断る術もなく、再び環の誘惑に落ちていった。

ぎくしゃくとギプスをはめ、松葉杖をつく和子。男の横でよろめけば、必ず男は抱き止める。和子に触れれば、環がスタンガンを突きつける。倒れた男の財布を抜き取り、逃走する———。
くる日もくる日も2人はゲームを続けた。1週間は瞬く間に過ぎ行き、最後のゲームを、環は放棄した。

共謀を絆と勘違いしていたのかもしれない。裏切った環を乗せ、どこともわからない方向に車を走らせる。このゲームは終わり、自分は許され、証拠もすべて処分されることになると環は言う。和子には理解できなかった。だって証拠は自宅の掃除機の中に残っている…。「そんなこともわからない頭、そこらの壁にでもぶつけたらどう!」環の一言で、和子は究極の賭けに出た———ギプスはもう、衣装ではなくなった。
退院した2人。和子は両足と右腕にギプス。左の手には包帯。顔の半分を包帯で巻かれている。環も同様にギプスと包帯で身を包んでいる。環の首は、完全に横を向いてしまったまま、動かせない。
事の後、2人の新しい関係が築かれたように思えた。和子は環に行きたい方向を告げ、車椅子を押してもらっている。しかし、2人が初めて出会った陸橋を感慨深く見つめるのは、和子だけだった。

振り返らずに、歩き去る環。
ひとり取り残されて、和子は暮れ行く街の中にいる。だが…。

スタッフ

監督:塩田明彦
製作:斎藤晃・遠藤久典
プロデューサー:中島進・荒川礼子
協力プロデューサー:定井勇二・松田広子
脚本:堀内玲奈・塩田明彦
撮影照明:鈴木一博
録音仕上:臼井勝
美術:松本知恵
音楽:ゲイリー芦屋
二胡指導:程農化
ヘアメイク:細川昌子(ベレッツアスタジオ)
スタイリスト:小倉久乃
助監督:西村和明
制作担当:安田憲邦
撮影照明助手:石谷岳寛
録音助手:島田宜之
仕上助手:高野美和子
美術助手:山本直輝・山本真裕
演出助手:北村卓嗣・安里麻里
制作助手:水戸ひねき・岡明子
車輛応援:浦井崇
編集:石谷岳寛・塩田明彦
スチール:平野晋子

劇中曲
「キリエ」作曲:ガブリエル・フォーレ
「ボーリュシュカ・ポーレ」ロシア民謡
「草原情歌」中国民謡 演奏:程農化

キャスト

環:佐伯日菜子
和子:尾野真千子

山中聡
津田寛治
黒沼弘己
手塚とおる
神林理央子
竹本直美
居原田眞美
藤森朋果
篠原悦子
安里麻里
岡明子
原口周平
相馬大
南川要一
佐竹康成
伊藤晋

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