イディオッツ
原題:the idiots
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でカンヌを制したラース・フォン・トリアー監督が描き出す、 優しくて残酷なある女性の物語。
カンヌ国際映画祭コンペティション正式出品作品
カンヌ国際映画祭コンペティション正式出品作品 1998年/デンマーク映画/35mm/カラー/ヨーロピアンビスタ/117分 配給:スローラーナー
2011年09月07日よりDVDリリース 2001年8月6日(月)〜8月11日(土)アテネ・フランセ文化センターにて限定公開 2001年7月6日DVD発売/2001年7月19日ビデオ発売&レンタル開始 2001年3月23日より恵比寿ガーデンシネマにてレイトショー
公開初日 2001/03/23
公開終了日 2001/04/14
配給会社名 0048
公開日メモ 「あなたの心の中にも小さな白痴(イディオット)が棲んでいる…」幼い子供を失ったカレンは、"イディオッツ"に出会った。
解説
「あなたの心の中にも小さな白痴(イディオット)が棲んでいる…」幼い子供を失ったカレンは、”イディオッツ”に出会った。
“可哀そう”という言葉は、危険かもしれない。いっけん優しそうに聞こえるこの言葉で、すべてを片づけてしまうこと。何かを見ないようにすること。そんな人々の反応を挑発的なやり方で暴こうとするストファーを中心とするグループ”イディオッツ”。
幼い子供を失ったばかりのカレンは、その葬式の日、立ち寄ったレストランで彼らに偶然出会う。カレンは、なぜか彼らに惹かれ、そこに安住の場所を見いだした。彼女の胸の中にもまた小さな”白痴(イディオット)”が棲んでいたのだ…。
ビョーク主演『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でカンヌを制したラース・フォン・トリアー監督の幻の傑作が、今、封印を解かれる。
“役立たず”への親愛に満ちた傑作がいよいよ公開される。『セレブレーション』『MIFUNE—ミフネ—』そしてハーモニー・コリン監督の『ジュリアン』を生み出したドグマ95の2番目の作品として製作されながらく日本での公開が封印されていた『イディオッツ』。監督は、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』がカンヌ映画祭でグランプリを獲得したラース・フォン・トリアー。シナリオは4日で書き上げられ、この作品は手持ちのデジタルカメラで撮影された。即興を重視した演出と、俳優たちだけでなく優しく勇気ある本物の”白痴”たちも参加した現場は、”現実とフィクションで出会い”であったとトリアー監査は回想している。製作現場は何度も中断し、現実とフィクションの垣根を失った俳優たちはお互いの役名さえ思い出せず、本名を呼び合い始めたほどだった。
トリアーは、ちょっとエキセントリックな口調で言う。「(『イディオッツ』は)確かに表面的には知的障害者とどのように接するべきか、私たちがいかに彼らに感謝しているかについての映画だけど、もうすこし深いところでは、異常さを擁護する作品でもある」「石器時代は”白痴”は死ぬしがなかった。だから”白痴”になるっていうのは養沢なんだよ。進歩の証でもある。”白痴”っていうのは未来の人間なんだ!」
エキセントリックな挑発の底からあらわれるピュアな魂トリアー監督の最も優しくて残酷なファンタジー
この作品は、見るものを困らせるかもしれない。しちゃいけないことと、しなくちゃいけないこと。守ることと守られること。優しさとは何か?当たり前だと思っていた考え方はいつしか覆され、観客は、深くえぐられた現実と直面することになるだろう。しかし、この作品は、決してスキャンダラスな作品ではない。トリアー監督は、ある意味残酷で悪意に満ちた挑発、エキセントリックな行動、グループの挑発に触れた人々の混乱の底から、ありったけの力を込めて”白痴”たちを抱きしめるのだ。これは、ファンタジーなのだ。もっともピュアなトリアー監督の感情を描いた、そして最も優しくて残酷なファンタジー。ジェッペとジョセフィーンのあまりに不器用なラブシーン。スザンヌの目からいつしかあふれ出す涙。そんな、トリアー監督の”役立たずたち”にたいする愛おしさが、ピアニカで演奏されたサン・サーンスの『動物の謝肉祭』”白鳥”の切なくどこか幸福なメロディーに結晶している。
ストーリー
社会に利益を生まない人たちを”可哀そう”と言いながら排除しようとする人々の反応を挑発的なやり方で暴こうとするストファーを中心とするグループ”イディオッツ”。カレンは、立ち寄ったレストランで彼らに偶然出会う。ストッファーたちは、口から涎を流し、突然泣き叫び、レストランは、彼らを追い出そうとしていたのだ。カレンは、彼らを庇い、タクシーに乗せるのだった。それが演技だと分かり、最初は怒りをあらわにしただったカレンだったが、次第に彼らに惹かれ、何も分からないまま引き寄せられるようにグループと行動を共にするようになっていった。彼らは、ストファーの叔父の持ち物である一軒家で共同生活をおくりながら、ある時は、工場で、ある時は、プールで、ある時は、この家を買いにきたお高く止まった夫婦に、ある時は、近隣の家々に、やはり”白痴”のふりをすることで闘いを挑み、また、それを楽しんでさえいた。
カレンは、何度も自分の家に電話をかけようとした。しかし、電話口で喋ることさえ出来なかった。カレンは自分が、どうしてここに居続けるのか、その理由が知りたかった。ここにいる人々は、誰も”普通”の”社会”ではなく、ここに安住の地を求めているのだ。そして、カレンもまた、ここに安住の場所を見いだそうとしていた。ストファーはカレンに言う。「あなたの胸の中にも、小さな”白痴(イディオット)”が棲んでいるのだ…」そして、ある日、カレンもまた、”白痴”の演技をし始めるのだった。
メンバーのひとりであるアクセルは、家族と仕事を持っていた。最初のうちは楽しんでいたアクセルだったが、自分たちの”挑戦”がエスカレートしていき、グループのメンバーが、彼の”社会”での”信頼”をぶち壊すために、仕事場にクライアントのフリをして現れたりすることで、次第にこのグループに加わっていることが重荷だと感じていた。特に恋愛関係にもあったカトリーンの存在は…。彼は離脱していった。楽しむものであったのに、もはや楽しむものではなくなってしまった、という言葉を残して。そんな時、福祉事務所の対応に腹を立て、エキセントリックになったストファーが錯乱する。メンバーは、必死に彼をなだめ、次の日、ストファーの誕生日を祝うためにパーティーを開いた。羽目を外すメンバーたち。素っ裸で騒ぐうち、好きな相手とセックスを始める仲間たち。その中で一番若いジェッペとジョセフィーンは、不器用なキスをかわす。二人は、お互いがお互いを好きだということを確かめ合った。次の朝、ジョセフィーンの父親が彼女を迎えにきた。彼は、彼女がここにいることを認めてはいなかったのだ。父親に抵抗できず、素直に従うジョセフィーン。ジェッペは、彼女を必死に止めようとする。連れ去ろうとする車を叩き、よくまわらない口でうなり声をあげるジェッペ。それが、彼に出来る精一杯の抵抗なのだ。しかし、彼女を乗せた車は、彼の悲痛な叫び声をあとにして走り去っていった。
ストファーは、グループの結束を形にして示そうと仲間たちに提案した。自分たちは、どこまでたどり着けたのか確かめたほうが良いというのだ。だれもが究極のテストを受けなければならない。それは、自分が最も愛する人の前で”白痴”になることだった。誰が、そのテストをうけるのか?それは、みなが車座になって座り、瓶をその真ん中で回し、口が指した先に座るメンバーから、そのテストを受けていく…。カレンが立ち会わなければならなかったヘンリックは学校で美術を教えていた。彼は、生徒の前で”白痴”にならなければならなかった。しかし、彼は、それが出来なかったのだ。脱落者が消え、最後にカレンがテストを受ける番になった。彼女は、今やここにいる仲間たちひとりひとりを愛していた。彼女は、立会人のスザンヌとともに彼女の豪族が住む家に戻った。その朝、失踪したと思っていたカレンの帰還を、家族は驚きと戸惑いで迎えた。そして、スザンヌは、カレンが小さな子供を失い、その葬式に向かう途中に自分たちと出会い、そのまま家には戻らなかったことを知る。カレンの夫があらわれ、重苦しい沈黙の中で朝食が始まった。やがて、カレンは、自分の家族の前で”白痴”となった。そのカレンを殴る夫。スザンヌの目から涙があふれ出していた。スザンヌは、「行きましょう。もう充分だから…」と言って、カレンの腕を取ってその家を出た。誰も彼女たちを追いかけては来なかった。
スタッフ
監督+脚本:ラース・フォン・トリアー
撮影:ラース・フォン・トリアー+クリストファー・ニュホルム+イェスパー・ヤーギル+カスパー・ホルム
録音:ペア・ストライト
編集:モリー・ステーンスゴー
音楽:キム・クリステンセン
プロデューサー:ヴィーベケ・ヴィネレウ
エグゼクティブ・プロデューサー:ぺーター・オールベック・イェンセン
キャスト
カレン(カーン):ボディル・ヨアンセン
ストファー(ストファー):イェンス・アルビヌス
スザンヌ(スサンネ):アンヌ・ルイーセ・ハシング
ヘンリク(ヘンリク):トレルス・リュビュー
ジェッペ(イェッペ):ニコライ・リー・コース
ペド(ペズ):ヘンリク・プリップ
ミゲル(ミグエル):ルイス・メソネオ
ジョセフィーン(ヨセフィネ):ルイーズ・ミエリッツ
アクセル(アクセル):クヌズ・ロマー・ヨアンセン
ナナ(ナナ):トリーネ・ミケルセン
カトリーン(カトリーネ):アンネ=グレーテ・ビアルプ・リース
()内はデンマーク語読み
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