原題:Spirited Away

生きている不思議、死んでいく不思議、花も嵐も街もみんなおなじ。 トンネルのむこうは、不思議の町でした。 宮崎駿監督待望の最新作!

第52回ベルリン国際映画祭金熊賞作品賞(グランプリ)受賞 毎日映画コンクール日本映画大賞、監督賞、音楽賞、映画ファン賞、アニメーション映画賞受賞 文化庁メディア芸術祭大賞受賞

2001年/日本映画/カラー/ビスタサイズ/DLPシネマ対応/ ドルビーデジタルサラウンドEX・DTS−ES(6.1ch) 製作:スタジオジブリ・日本テレビ・電通・徳間書店・ブエナビスタジャパン・東北新社・三菱商事 配給:東宝

2002年07月19日よりDVD発売&レンタル開始 2002年3月9日より4月5日まで日比谷映画他、全国東宝洋画系にて公開 2001年7月20日より全国東宝洋画系にて公開

(c)2001二馬力・TGNDDTM

公開初日 2002/03/09

公開終了日 2002/04/05

配給会社名 0001

公開日メモ 大ヒット御礼!宮崎駿監督待望の最新作!

解説


両親を救うために、
霊々(かみがみ)の世界へ迷い込む
10歳の少女「千尋」。
現代日本を舞台に、
その修行と成長と友愛の物語を描く冒険ファンタジー!!

《「生きるカ」を取り戻すこと》
この宮崎版「不思議の国のアリス」ともいうべき舞台で千尋が出遭うキャラクターたちは、今の日本を象徴する寓意にみちています。
湯屋の支配者・湯婆婆は、金がすべての冷徹な経営者でありながら自分の子供・坊に対しては、甘やかし放題で母親失格の女性です。湯屋の客・カオナシは金をばら撒くことでしか他人と関わることが出来ず、性格はキレる子供同様、幼児性のかたまり。湯屋で働くナメクジ女もカエル男も金の亡者。千尋を助ける少年・ハクにしても優しいと思えば冷酷でもある二面性をもっています。
千尋が名前を奪われるのは、自己喪失の恐怖、今を生きる大人たちに通じる不安。これら登場人物をめぐる千尋の冒険を、千尋の目線を通して映画を観ている私たちも体験していきます。そして、次第に、眠っていた千尋の「生きる力」が呼び覚まされてゆきます。自分の中に潜んでいる「生きる力」が蘇り始めたのです。千尋が「生きる力」を取り戻し、「自分が自分になる」というアイデンティティを確立していく。
しかし、この物語で千尋は、「自分探し」をした訳でも、「成長」した訳でもありません。ただ、自らに湧き上がった自分自身の力に気付くのです。千尋同様、自信をなくした私たち日本人がもう一度自らの「生きる力」を取り戻すこと。これが複雑な様相を呈する未来に立ち向かうひとつのきっかけなのだ、という宮崎監督のメッセージです。

《『もののけ姫』は到達点ではない。新たな出発点だ。》
毎年多くのハリウッド映画が公開され大ヒットしています。ハラハラドキドキ、巧みな伏線と多彩な登場人物、そして手に汗にぎるクライマックス……しかしあえて批判的に捉えると、いつも同じパターンで、面白いが通り一遍のメッセージしかないのでは、と観客も気付いています。

興行収入193億円、観客動員1420万人。『もののけ姫』は何故あれだけの大ヒットを、そして社会的大ブームを巻き起こし得たのか。「最後」「超大作」「凶暴性」「哲学性」といった要素が浮かんできます。そしてもうひとつ加えてみれば、「非ハリウッドのエンターテインメント」とも呼ぶべき、宮崎監督独特の娯楽性があります。スタジオジブリの諸作品が評価され、圧倒的多数の観客の支持を集めてきたのは、もちろん圧倒的なエンターテインメントとしての面白さにあることは間違いありませんが、それだけではありません。それぞれの作品の持つ時代性、宮崎監督の思想性、メッセージ性がそこに加味されて、他の追随を許さない作品群が出来あがってきたのです。
『もののけ姫』は到達点ではない。新たな出発点だ。こう分析したのは、長年の盟友・高畑勲監督でした。『もののけ姫』は宮崎監督のそれまでの得意技をあえて使わずに、自らのテーマに真っ向から挑んだ作品、つまりは新たな出発点だった、というのです。

『もののけ』から4年。宮崎監督のテーマはさらに深化し、映像世界は新たな進化をとげ、その無限の想像力が『千と千尋の神隠し』という比類なきエンターテインメント大作を生み出しつつあります。

ストーリー




生きている不思議
死んでいく不思議
花も風も街もみんなおなじ。
トンネルのむこうは
不思議の町だった。
ありえない場所があった。
ありえないことが起こった。

人間の世界のすぐ脇にありながら、
人間の目には決して見えない世界。

土地神や様々な下級神、
半妖怪やお化けたち。
そこは、古くからこの国に棲む霊々が
病気と傷を癒しに通う温泉町だった。

10歳の少女千尋の迷い込んだのは、
そんな人間が入ってはいけない世界。
この町で千尋が生き延びる条件はただふたつ。
町の中心を占める巨大な湯屋を支配する
湯婆婆という強欲な魔女のもとで働くことと
名前を奪われて、人間世界の者で無くなることだった。

千尋は名前を奪われ、「千」という名で働くことになる。

人生経験豊かなボイラー焚きの釜爺、
先輩のリン、謎の美少年ハクに励まされて、
千尋は懸命に、そして生き生きと働く。

眠っていた千尋の「生きる力」が
しだいに呼び醒まされてゆく。
生きている実感とはこういうものか。
それは千尋にとってはじめての感覚だった。

湯屋に現れた仮面の男カオナシ。
「さみしい、さみしい」
カオナシは他人と交流できない男。
「欲しい、欲しい、千、欲しい」
金をばら撒き、思い通りにする男。
「食べたい、食べたい、千、食べたい」
上手くいかないと暴れる乱暴な男。

ひたむきで一所懸命な千尋の存在がカオナシを変える。
健気で一途な千尋がカオナシの魂を解放に導く。

一方、湯婆婆の双子の姉・銭婆の為に傷ついたハク。
己の危険を顧みず、
千尋は敢然とハクを救う唯一の方法に挑む。
それは「他人のために何かをすること」。
与えられるのではなく、与えることを
千尋は生まれて初めて知る。

はじまりの朝、静かな窓。
ゼロになるからだ、充たされていけ。

《「不思議の町」の千尋》
宮崎駿監督の新作『千と千尋の神隠し』は、現代日本を生きる10才の少女・千尋が主人公です。ごく普通の家庭で生まれ、大切に育てられたひとりっ子。千尋は浮かない顔をしています。物語は、父親の運転する車で引越し先の新しい家へ向かう場面で始まりますが、千尋にとっては、新しい学校も新しい友達も新しい環境もすべてが煩わしく、撫然とした表情をしています。宮崎監督が’88年に製作した『となりのトトロ』の、12才と4才の姉妹サツキと
メイが、大喜びで引越しを迎えていたのと比較すると興味深いです。
千尋の乗る車がいつの間にか迷い込んでいたのは「不思議の町」。もの珍しさにつられてずんずん足を踏み入れていくのは両親の方。なにしろ、高度成長期に育ったお父さんとお母さんは、何事に対しても食欲なのです。千尋は両親を制止します。彼女は両親とは正反対に、好奇心が旺盛ではなく、自分の世界から一歩足を踏み出せないタイプです。「不思議の町」の掟を破った両親は、豚にされてしまいます。たったひとり残された千尋は茫然。ひとりで生きていかなくてはなりません。
おまけにその町を支配する強欲な魔女・湯婆婆に「名前」を奪われてしまいます。自分が自分でなくなる不安に、千尋は恐怖感を覚えます。そして「千」という名に変えられて、働くことになります。働かない者は豚にされてしまう、それがこの世界のルールなのです。湯屋と呼ばれる、この日本に棲むいろんな神様やお化けが疲れと傷を癒しに通うお風呂屋さんで、千尋は懸命に働きます。こんなことは生まれてから10年間で、もちろん初めてのこと。
これまでの宮崎作品の主人公は、天真爛漫、明るく前向き、そして優れた能力を持ってもいました。千尋は正反対です。何の能力も無いのです。
何重にも守られて育つ現代の子どもたちが、突然ひとりぼっちになったら?
はたして千尋は元の世界に帰れるのでしょうか。

《「与えること」が「生きる実感」となる》
「生きる力」を取り戻した千尋はどうなるのか。この映画が後半に差し掛かった頃、彼女は突然ヒロインと化します。それはまるで、「ナウシカ」のように。お風呂屋にやってきたヘドロにまみれた河の神様を救い、カオナシには、唯一心を開き優しく接します。その結果カオナシの魂を、解放させるために導いていくのです。また千尋をただひとり助けてくれた少年ハクが瀕死の状態に陥ると、己の危険も顧みず、敢然とハクを救う唯一の方法に挑みます。それは千尋にとって、生まれて初めて「他人のために何かをすること」でした。これまでlO年の人生で、親や周囲から「与えられること」だけで育ってきた千尋が、はじめて他の人に「与えること」をしたのです。
こうした「無償の行為」に懸命に励む千尋は、「生きること」を知らず知らずに実感していきます。現代の典型的な少女である彼女は、衣・食・住すべてが完全に満たされた、恵まれすぎる日常の中にいました。そうした生活の中で映画の冒頭のように表情を失い、早くも10才で自己を見失いかけていたのです。「不思議の町」での冒険は、人間としてまだ知らなかった「与えること」を知り、「生きる実感」を得ることでした。これは現代社会を生きる私たちが忘れがちな感覚ではないでしょうか。
そして映画のクライマックス。千尋は「生きている不思議」を感じることになります。これが彼女の冒険の終点でもありました。

スタッフ

監督:宮崎駿
製作総指揮:徳間康快
原作・脚本:宮崎駿
音楽:久石譲
プロデューサー:鈴木敏夫
制作:スタジオジブリ
作画監督:安藤雅司、高坂希太郎、賀川愛
美術監督:武重洋二
色彩設計:保田道世
映像演出:奥井敦
デジタル作画:片塰満則
音響:林和弘
整音:井上秀司
製作担当:奥田誠治
特別協賛:ネスレジャパングループ
特別協力:読売新聞社

キャスト

(声の出演)
千尋:柊 瑠美
ハク:入野自由
湯婆婆:夏木マリ
お父さん:内藤剛志
お母さん:沢口靖子
父役、兄役:小野武彦
青蛙:我修院達也
河の神:はやしこば
坊:神木隆之介
釜爺:菅原文太
リン:玉井夕海

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