原題:HOTARU

J WORKS第2回作品 ほたる・・・闇に浮かぶ炎のように、美しく儚いいの

2000年・第53回ロカルノ国際映画祭W受賞 国際批評家連盟賞&ヨーロッパ国際芸術映画連盟賞 2001年ブエノスアイレス国際映画祭W受賞 優秀主演女優賞 最優秀撮影監督賞

000年/35mm/カラー/ヨーロピアンビスタ/上映時間:2時間44分 電通+IMAJICA+サンセントシネマワークス+東京テアトル

2002年4月26日よりビデオ発売 2001年3月24日よりテアトル新宿ほかにて全国ロードショー

公開初日 2001/03/24

公開終了日 2001/04/20

配給会社名 0095

公開日メモ この『火垂(ほたる)』は、河瀬監督が郷里・奈良の雄大な自然と歴史情緒溢れる風物をコンチェルト背景に描くストリッパーと陶芸家の激しくも悲しい純愛の協奏曲です。

解説


人は真に「大切」と思える人を失った時、一人で生きていけるのだろか……この『火垂(ほたる)』は、監督直美が郷里・奈良の雄大な自然と歴史情緒あふれる風物を背景に描くストリッパーと陶芸家の激しくも悲しい喪失と再生の純愛協奏曲(ラブ・コンチェルト)だ。

本作は、電通、IMAGICA、サンセントシネマワークス、東京テアトルによる「J-WORKS」の第2回作品である。「J-WORKS」は、日本から世界市場に発信するブランドで、新世紀へむけて「新しい映画」を担う作品をプロデュースしていくプロジェクト。本作は、2000年第53回ロカルノ映画祭コンペティション部門に正式招待され「国際批評家連盟賞」と「ヨーロッパ国際芸術映画連盟賞」の2冠に輝いた。「国際批評家連盟賞」は出品全作品の中から斬新で若い感性を持った1作品に対して贈られる賞であり、ヨーロッパ国際芸術映画連盟賞は国際的に文化の均一化が危惧される昨今、作品の舞台となった国・地域の文化を独創的かつ大胆に描いた作品に贈られる賞である。
今回の『火垂(ほたる)』受賞は、「J-WORKS」にとって、第1回作品『EUREKA(ユリイカ)』(青山真治監督)の2000年カンヌ映画祭W受賞(国際批評家連盟賞&エキュメニック賞)に続く成果であり、同プロジェクトの姿勢が世界的に評価されていることの証左といえるだろう。

監督は、劇場映画デビュー作『萌の朱雀』で97年第50回カンヌ国際映画祭にてカメラ・ドール賞(新人監督賞)を当時、史上最年少で受賞し世界へ鮮烈なデビューを飾った直美。本作では、監督・脚本の他、自らキャメラも手にした。古都奈良を中心に1年を通じて行われた撮影では、日本ならではの四季の変化と伝統美を鮮やかに切り撮り、より成熟した映像美を魅せる。

主演のストリッパー「あやこ」には本作が映画初主演となる期待の新人・中村優子。大胆と繊細が共有するその演技は観る者に「あやこ」の痛々しさを伝染させずにはおかない。彼女との激しい愛に翻弄される陶芸家「大司」に『Helpless』『梟の城』の永澤俊矢、主人公二人にとってかけがえのない存在となるストリッパー「恭子」にブルーリボン賞受賞のベテラン・山口美也子を配し、光石研、北見敏之といった実力派が円熟した演技で脇を固めている。

衝撃のデビューから3年。照明の鈴木敦子ら『萌の朱雀』のスタッフに加え、撮影監督に『M/OTHER』『独立少年合唱団』の猪本雅三、美術に『Shall we ダンス?』の部谷京子といった現在の日本映画を支えるスタッフが結集。そして、プロデューサーは仙頭武則。本作とともに、『五条霊戦記//GOJOE』『EUREKA(ユリイカ)』『独立少年合唱団』などの作品によって、その手腕はますます世界で高い評価を受けている。さらに劇中で重要な役割を担う独創的な「窯」は、現在の陶芸界で最も注目を集めるかとうつぶさ加藤委渾身の作。完成まで3ヶ月を要したその存在感は圧倒的ですらある。

ストーリー

“東大寺二月堂の修二会(お水取り)の業が終わると、春が来る。” 厳しい冬に耐えながら、やがて来る春を待ちわびて、この地に暮らす人々はそう言い伝えてきた。

梅雨の奈良町
雨にぬれた若葉が吸い込まれるように美しい、古きたたずまいを今に残す、古都奈良の長家の一角。
しんとした静けさの中、小さな魂たちは自分達にとって大切な「いのち」に別れを告げていた。
ストリッパーのあやこ(中村優子)は、拭い様のない過去に翻弄されながら、生きる意欲を失い、ある日ふらふらと家の外に出たところを吸い込まれるように車にはねられた。その場に居合わせた大司(永澤俊矢)もまた、たった一人の家族である祖父を亡くし、天涯孤独になった自分のやり場をなくしていた。そんな大司は、倒れたあやこの虚ろな表情を見て、彼女が自殺しようとしていたことを感じ取る。やがて2人は、互いに欠けているものを補うように、強く惹かれ合い求めあった。

奈良の夏を彩る元興寺の万燈会
今年は、亡き祖父のかわりに何千枚とある灯明皿を、大司が焼くことになった。祖父から受け継いだ伝統をやり遂げる覚悟を決めた大司は、一番大切な人に伝えたくて「必ず見にきてくれ」とあやこに告げる。あやこもまた、大司の切実な思いを大切に受け止めたのだが。万燈会の日、ストリップ劇場に警察の手入れが入り、あやこたちは拘置所で2日間を過ごすはめになる。事情を知った大司は、釈放の日、裁判所へ迎えに行くが、自分の仕事のせいで大司の大切な日に立ち会えなかったことを気に病むあやこ。大司の顔を見つけても素直に喜べない。大司もあやこの気持ちを思い、無言のまま歩き始めた。気まずい二人。そんな空気を察してか、幼い頃母に捨てられて以来、姉代わりとして一緒に暮らしている踊り子の・恭子(山口美也子)は、通りかかった駅前広場で演奏していたストリートミュージシャンのギターに合わせ突然ストリップダンスをはじめた。恭子の逞しい生き様に勇気づけられる二人。いつのまにか、恭子は大司にとってもかけがえのない存在となっていた。

「みかんの花が、咲いている 思い出の道 丘の道・・・」

夏の終わり
家のしがらみから逃れるようにして、出てきた故郷・香川を、自分を取り戻すために10年ぶりに訪れるあやこ。ところが、唯一の身内である祖母は一日前に他界していた。「あの時捕まらなければ」とまたもや自分の存在を否定し、殻に閉じこもるあやこ。いたたまれない思いで見守る大司。あやこの「孤独」は自分の「孤独」でもあると理解した大司は、なにがあっても側にいようと決意をあらたにする。やがて夏が終わる頃には、窯作業に打ち込む大司の側で、あやこの心は、少しずつ回復していった。

師走
暮れの買い出しににぎわう町で、大司はあやこに問いかける。「大晦日。一緒に火入れてくれへん」大切な窯の火入れを、大司と一緒に行うことのできる喜びであやこの顔は輝いた。しかし、そんな二人に凶報が訪れる。お互いに実の姉以上に慕っていた恭子が突然倒れたのだ・・・・。

スタッフ

製作:塩原徹(電通)、長瀬文男(IMAGICA)、仙頭武則(サンセントシネマワークス)、滝島優行(東京テアトル)
プロデューサー:仙頭武則
脚本・監督:河瀬直美
協力プロデューサー:八木廣、高野力、有吉司(宣伝統括)
Co-Producer:Philippe Avrilラインプロデュ一サー:石田基紀撮影監督:猪本雅三(J.S.C)
照明:鈴木敦子
録音:木村瑛二
美術:部谷京子
装飾:福澤裕二
音楽:河瀬直美、松岡奈緒美
助監督:近藤亮一

キャスト

中村優子
永澤俊矢
光石研
小野陽太郎
杉山延治
柳東史
武村瑞穂
福井美香
山本善之
宮崎快尭

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