原題:Turn

わたしだけが、時間のくるりとした尻尾に入ってしまった。 その時、ひとりぼっちの世界に電話がかかってきた・・・。

2000年第13回東京国際映画祭正式招待 第12回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001正式招待 2001年第22回ヨコハマ映画祭正式招待 2001年第25回香港国際映画祭正式招待 2001年第5回プチョン国際ファンタスティック映画祭正式出品:最優秀監督賞受賞

2000年/日本/カラー/ヴィスタ・サイズ/111分/ドルビ一SR 配給:アスミック・エース

2002年4月12日DVD発売/2002年4月12日ビデオ発売&レンタル開始 2001年10月13日よりワーナーマイカル系にて公開

公開初日 2001/10/13

公開終了日 2001/11/09

配給会社名 0007

公開日メモ 銅版画家の真希は、交通事故をきっかけに、毎日同じ時間に前日に戻ってしまう生活を始める。真希一人しかいない孤独な世界。そんなある日、一本の電話がつながり真希の生活を変えていく。心と心のつながり、思いやりの大切さを、ひたむきな真希の姿と美しい映像で伝える。

解説



前作『愛を乞うひと』でモントリオール世界映画祭国際批評家連盟賞、日本アカデミー賞最優秀作品賞など各賞を総なめにした平山秀幸監督。平山監督が『愛を乞うひと』に続く最新作に選んだのが、小説「ターン」の映画化である。『ターン』は北村薫原作による〈時と人三部作〉の2作目で、最近3作目「リセット」が出版されたばかりの話題作である。そして、日常と非日常との間で揺れ動く27歳の女性、主役の真希には『東京上空いらっしゃいませ』『つぐみ』の牧瀬里穂が挑戦している。

小学校教師の母と暮らす27歳の銅版画家、真希。銅版画”メゾチント”に打ち込み、子供たちに版画を教える日常。
ある日、版画教室に車で急いでいる時、センターラインを超えてきたトラックとの交通事故に遭ってしまう。ところが、次の瞬間に気づいてみると、自宅の居間で眠りから覚めたところだった。胸には昨日図書館に返したはずの植物図鑑がある。不思議に思いながら、図書館に向かう真希。外には誰一人いない、物音もまったくしない、大通りには車一台走っていなかった。その日から、ひとりぼっちの日々がはじまった。しかも、事故に遭った午後2時15分を過ぎると、前日同時刻にターンしてしまう。そんな時、ひとりぼっちの真希に電話がかかってきた…。

平穏な生活から、一人ぼっちで暮らす繰り返しの日々に嵌められてしまう27歳の女性。ロビンソン・クルーソーのように無人島に流されたような孤独な世界。しかも、真希の場合は一日が終わっても一定の時間が来ると前日にターンしてしまう。救助船が来てくれる可能性も皆無。普通の人間ならおかしくなってしまうような状況の中、それでも真希は一日一日を必死に生きようとする。喜びと、明日がわからない不安に揺れ動く日々。人間にとって、生きることとは今日を暮らし、明日を迎えることなのだろうか?

『ターン』は一見、突飛な非日常の世界を描いているが、そのモティーフは”繰り返しのような日常生活”をどう暮らすか?原作者の北村薫自身が映画化が難しいと認めているように、原作の持つファンタジックな持ち味を残しながらこのモティーフを描き出すのは難易度が高い。平山秀幸は原作の不思議なトーンをうまく活かしながら、見事なストーリーテリングを展開していく。一台しか走っていない高速道路、誰も居ない新宿や渋谷でのショッピングなど映画のマジックを使いながら、牧瀬里穂が好演する真希のひたむきな生き方を映像を積み上げて見せていく。シチュエーションが次々と変化していき、真希の心情が揺れ動く。その流れに乗せられて、ラスト・シーンまで観客は一心に見守る。そして、爽やかであたたかい勇気が湧いていくる観賞後感。ハートウォーミグな一級のエンタテインメントが誕生した。

主人公の真希には『東京上空いらっしゃいませ』『つぐみ』の牧瀬里穂が、懸命に生きる凛とした風情を見事に演じ切り、映画の真撃な印象を具現している。真希に電話をかけるデザイナーのヒヨッコ、洋平には映画初出演の中村勘太郎。電話で信じられない状況を説明され、困惑、不信から、信頼に変わり、次第に好意を寄せるという電話だけの難しい演技をピュアに表現し好感が持てる。真希の母には『うなぎ』『東京夜曲』の倍賞美津子。意識不明の娘が違う世界にいて電話が繋がっている状況を提示されるアンビバレンツな感情を説得力ある演技で表現している。ほかに、怪しい柿崎に『皆月』『フリーズ・ミー』の北村一輝、洋平のデザイン会社社長に『Shall we ダンス?』『カンゾー先生』の柄本明、近所の主婦に『学校Ⅱ』『パーティー7』の松金よね子、メゾチントを購入するギャラリーのオーナーに『リング2』『非・バランス』の小日向文世、そして版画教室の真希の同僚に友情出演の川原亜矢子など、ヴァラエティ溢れる演技陣が平山監督のワンダーワールドを支えている。
また、スタッフも熟練のヴェテランがファンタジックでありながらリアルな世界を見事に作り上げている。脚本に『ウェルダー』『真夏の地球』の村上修、撮影に『夢二』『はつ恋』の藤澤順一、美術に『学校の怪談』『愛を乞うひと』で平山監督を支える中澤克巳、音楽はゴダイゴ再結成で話題を呼んだミッキー吉野が耳に残る美しいメロディを配して映画を盛り上げた。製作はバンブー・ピクチャーズ製作第一回作品となり、牧山真智子がプロデュースを担当した。

ストーリー


27歳の銅版画家、真希。小学校教師の母親と二人暮し、近所の版画教室で教えており、完成したばかりの銅版画”時”をギャラリーに買ってもらったばかり。
ある日、版画教室に車で急いでいる際、センターラインを超えてきたトラックとの交通事故に遭ってしまう。しかし次の瞬間、真希は自宅の居間にいた。胸には昨日図書館に返したはずの植物図鑑、冷蔵庫には昨日出したはずの葉書が貼ってあった。不思議に思いながらも、自転車に乗って図書館に向かう真希。しかし、外に出ると、工事現場にも、公園のフリーマーケットにも、学校の校庭にも、図書館にも誰もいない。
大通りにも車一台走っていない。誰もいない世界で、真希の一日が終わる。
朝が来て、ひとりぼっちの世界の二日目が始まった。しかし、事故に遭った午後2時15分が過ぎると、真希は自宅の居間にいた。胸には図書館に返したはずの植物図鑑、冷蔵庫には投函したはずの葉書が貼ってある。同じ日の繰り返し。同じ時間が来るとターンして、また同じ日が始まる。
真希はそれでもターンする日々を一生懸命に生きようとする。母が教えている学校の教室に行ってみる。誰もいない新宿を歩き、渋谷でショッピング、記憶だけはなくならない。手の甲に今日が何日目かを、過ぎ去らない今日を刻んでいく。
雨は降らない。事故に遭った日も、前の日も降っていなかったから。庭の木にホースを伸ばし、水を撒いてみる。雨が降ってきた。何故か、泣けてきてしまう。音がする。電話のコール音が真希の耳に確かに届いてくる。慌てて、電話に向かって走る真希。
泉洋平はデザイナーのヒヨッコでデザイン会社に勤めている。今は本の装丁をデザインしており、自分では完成したと思うが、社長はまったく認めてくれない。アイディアを探しに町に出て、ギャラリーで目を惹く銅版画に出会う。それは真希が創った”時”だった。これこそ自分のデザインにぴったりだと考え、制作した人間に電話をかけた。
ふたつの世界を1本の電話がつなげた。洋平がかけた電話は真希のひとりぼっちの世界に繋がった。信じられなくて、慌てて話す真希、変人にかけてしまったと訝る洋平。しかし、お互いに異常な状態を了解し始める。真希のいるのは事故があった6月、洋平は現実の12月に暮らしている。現実の真希は事故に遭った時から目を覚まさず、12月に病院のベッドで眠っていた。洋平は電話まで真希の母を連れてきて、母娘に話させようとするが、何故か二人は話せない。
真希の声は洋平しか聞こえないようだ。真希と洋平は、それぞれの世界で時間を合わせて架空のデートをする。
ある日、真希はターンする世界で初めて自分以外の人間、柿崎清隆と出会う。洋平はその話を聞いて心配になり、彼の身元を調べる。柿崎は少女を礫き逃げして警察から逃げる際に事故にあっていた。一方、病院で真希に付き添っている母は真希が反応したことを喜んでいた。そんな時、洋平を訪ねてきた社長によって、二つの世界をつないでいた電話が切られてしまった。
はたして、真希は現実の12月に帰ってこられるのだろうか?

スタッフ

監督:平山秀幸

製作:近藤有希、石川冨康、宮川鑛一、椎名保
プロデューサー:牧山真智子、岡田裕
ライン・プロデューサー:吉原勲
原作:北村薫(新潮文庫)
脚本:村上修
撮影:藤澤順一(J.S.C)
照明:上田なりゆき
録音:宮本久幸
整音:橋本文雄
美術:中澤克巳
編集:奥原茂
視覚効果:橋本満明
音楽:ミッキー吉野

助監督:蝶野博
スクリプター:小泉篤美
制作担当:亀田裕子
制作主任:小林茂弘
スタイリスト:宮本茉莉
ヘア&メイク:中村洋子
スチール:西本敦夫
装飾:大坂和美
特機:奥田悟
カー・スタント:池本良宜
銅版画制作/技術指導:戸嶋由香
銅版画作品提供:謡口早苗
ピアノ指導:門光子
蓼科コーディネーター:橋本省ニ
グラフィック資料協力:荒井富美子
進行主任:竹山真樹
制作助手:金澤美佐子

制作進行:大沢啓
ネガ編集:藤山伊勢子
音響効果:伊藤進一
スタジオ・エンジニア:杉山篤、大野誠、下野留之

キャスト

森真希:牧瀬里穂
泉洋平:中村勘太郎
松原:柄本明
ゆかり:川原亜矢子(友情出演)
柿崎清隆:北村一輝

森里子:倍賞美津子

松金よね子
小日向文世
小林麻子
桜井勝
川倉正一
三島裕
大場一郎
齊藤剛
森田純平
梶浦昭生

LINK

□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す