原題:The Man Who Cried

お父さん あなたは どこにいるのですか

2000年ベニス国際映画祭出品 2000年ロンドン国際映画祭出品

2000年9月22日イタリア公開

2000年/イギリス・フランス/97分/Dolby Digital/ 配給:アスミック・エースエンタテインメント

2012年07月13日よりDVDリリース 2002年08月23日よりDVD発売&レンタル開始 2001年12月15日よりBunkamuraル・シネマ、シャンテ シネにて公開

公開初日 2001/12/15

配給会社名 0007

公開日メモ この物話は、あらゆる“声”が奪われた時代が舞台である。すべてを失った少女は、“歌”を自分の“声”とし、その歌を力に旅を続け、人々と心をかよわせていく…愛する人と肌の温もりを交わすことの喜びを教えてくれた白馬のジプシー。女であることのすべてを武器に、欲しいものを夢中で手に入れていく魅惑のダンサー。

解説


泣きたい思いを歌声にかえて、私は前へ歩き続ける その歌声は霧と炎の中で生まれた

わが家を、自分の言葉を、愛する人すべてを奪われた少女.その哀しみが歌声となって発せられた時、海が、大地が、そしてすべての人々が涙した。
この物話は、あらゆる“声”が奪われた時代が舞台である。すべてを失った少女は、“歌”を自分の“声”とし、その歌を力に旅を続け、人々と心をかよわせていく…愛する人と肌の温もりを交わすことの喜びを教えてくれた白馬のジプシー。女であることのすべてを武器に、欲しいものを夢中で手に入れていく魅惑のダンサー。地位と名声をひけらかし、如何なる時も頂点であり続けようとする情熱のオペラ歌手…それぞれの欲望が一同に会する侍、その出逢いはどんな歌声を響き渡らせるのか。
そして、はるか遠く生きき別れた父親を巡る少女の旅はどんな終幕を迎えるのか。
オールスターの競演と絢爛豪華な音楽により、愛と哀しみのドラマかここに誕生した。
満を持して監督に当たるのは、「オルランド」「タンゴ・レッスン」で世界的に脚光を浴びた女性監督サリー・ポッター。彼女は映画監督だけでなく、詩人であり、作詞作曲を手掛ける音楽家、歌手、さらにはバレエダンサー、振付師と、これまでマルチ`アーティストとしての才能を開花させてきた。そして待望の新作ではそれらの蓄積を思う存分発揮し、完全燃焼させる。今回、音楽との出会いによって生まれた彼女の衝動は、原作の書き下ろしにはじまり、脚本執筆と同時に数々の選曲と作詞を手がける。
そして撮影開始と平行し、音楽プロデューサーとして多くの参加ミュージシャンたちとのコラボレーションを実現させていった。音楽からはじまり、音楽を通して語られるこの物語は、登場人物たちの“歌う叫び”によって喜びと悲しみを露わにする。旅を続ける者たちの歌声、移民や少数民族たちの叫びが、戦乱の世に響き渡る。サリー・ポッターは彼らの「声」になりたいと祈りにも似た思いで撮り続けた。その願いを込め完成した本作は、20世紀の中でもきわめて暗黒な時代に泣いた君たちの涙を映し出した。

豪華オールスターキャストが実現
明日をも知れぬ運命に燃え上がる4人の愛
祖国を離れ、やがて自分の歌声を見つける少女役にクリスティーナ・リッチ。監督自身がヨーロッパからアメリカまで多くの女優をオーディションし選んだだけに、ここにリッチの代表作が生まれた。すべてを見
つめる眼、震える瞳が強烈な印象を残す。
そして、彼女の眼差しは、人種の違いでせめぎ合う人々の、愛憎渦巻く世界を見つめる。民族の違いを越え、愛し合う白馬のジプシー役にジョニー・デップ。少女と心の傷を共有し、二人の愛は互いの違命を嘆き
燃え上がる。エンディングで見せる彼の涙は、どうにもならない無力の哀しみを表す。近年で最も美しく切ないジョニーの姿を胸に刻みたい。さらにロシア人ダンサーに扮するケイト・ブランシェットはその美貌
でスクリーン狭しと華々しい色気を撒き散らす。美しいアリアを響かせるオペラ歌手役のジョン・タトゥーロは、差別・密告と醜い行動をとるファシストでありながら、「神よ、この声を守りたまえ」と祈り、弱さも垣間見せる。
その他、少女の幼年期を演じるクローディア・ランダー=デュークも、映画初出演ながら奇跡的な演技を見せ、愛らしくも悲しい本作のオープニングを飾る。そして山っ気たっぷりのオペラ典行主に「バリ、テキサス」のハリー・ディーン・スタントン、「ノスタルジア」「鐵」など巨匠タルコフスキー作品を支えた名優オレグ・ヤンコフスキーも、父親役で久々にスクリーンに登場する。また「タンゴ・レッスン」のダンサー、パブロ・ペロンもゲスト出演し、情熱的なステップを披露する。

歌の中に込めた心の叫び、共通言語は音楽だ。
サリー・ポッターがテーマ曲に選んだのは「カルメン」で御馴染みのビゼーの代表オペラ「真珠採り」の中からメイン楽曲「耳に残るは君の歌声」。本作のテーマを見事に歌いあげたアリアだ。また、ヴェルデ
ィの「トロヴァトーレ」からは「見よ、恐ろしい炎を」、プッチーニの「トスカ」からは「星は光りぬ」、パーセルの「ディドとエネアス」からは「ディドの悲しみ」といった、何とも贅沢な選曲がなされた。その全てを新星テノール、若手実力派のトップであるサルヴァトーレ・リチートラが歌い上げる。また、現在世界的に注目を集めているルーマニアン・ジプシーバンド、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスが、監督のたっての願いによりジプシーの家族役として出演し、演奏を披露。熱く躍動するリズムは、オペラのヨーロピアンな絢爛さとは対照的で、生への生々しい欲望と歓喜をダイ
レクトに伝える。さらに、もう…つのテーマ曲、耳に残る父の子守歌として「クローズ・ユア・アイズ」が登場。このオリジナル曲は日本でも人気急上昇中のクロノス・クァルテットによるものだ。今最も先鋭的なこの弦楽四重奏団に加え、チェコのパフォーマーであるイヴァ・ピトヴァや、姉妹のピアニスト、カティア&マリエル・ラベック、前衛的ギターリストフレッド・フリスらの参加は、この音楽世界に現代的な彩りを添えた。音楽プロデューサーはサリー自身が担当。彼女の要望をすべて満たしたのは、アルゼンチンの現代音楽家オスヴァルト・ゴリジョフ。「タンゴ・レッスン」に続き、良きパートナーとして音楽監督を務める。

登坊人物の感情の揺れに伴い、時に激しく、時に優しい流麗な映像を生み出したのはサッシャ・ヴィエルニー。撮影監督の重鎮である彼は、残念ながらO1年5月に他界、本作が遺作となった。「去年マリエンバー
トで」や「昼顔」等の映画史に残る名作から、最近では「コックと泥棒、その妻と愛人」等の一連のグリーナウェイ作品を振り上げるなど、意欲的な活躍を見せた。木作では、当時のパリでレジスタンス活動をしていたという実体験を基に、長年培った実力を、見事に出し切った。その他、美術を「ベティ・ブルー」のカルロス・コンティ、編集を「ロスト・チルドレン」「ブレイブ」のエルヴェ・シュネイというポッター
組の常連で固め、衣装に「リトル・ヴォイス」や「ライフ・イズ・スウィート」でアカデミー賞を受賞したリンディ・ヘミングを迎えた。プロデューサーは、ボッター作品を全作担当するクリストファー・シェパード。また、製作総指揮に「エリザベス」「リトル・ダンサー」「ブリジット・ジョーンズの日記」「コレリ大尉のマンドリン」等、つねに話題作を提供し続けるティム・ビーヴァン&エリック・フェルナー。

ストーリー

1920年代初頭、母を亡くしたユダヤの少女フィゲルは父と祖母とロシアの貧しい村で暮らしている。ユダヤ人迫害の危機が迫り、父は渡米を決意、ゆくゆく娘を呼び寄せようと考える。しかし、戦火の中でフィゲルはイギリスへ辿り着き、スージーと名づけられてキリスト教徒の家庭で育てられる。10年後、成長したスージーはようやく父を探す旅に出る。旅費のため、コーラス・ガールとしてパリで働くことになり、野心家でブロンドのローラと友達になる。二人はイタリア人のオペラ歌手ダンテと知り合う。彼はムッソリーニを崇拝し、アーリア人の優越を盲信する男だった。ローラは彼を誘惑することに成功、オペラの仕事を二人にもたらす。この経過を見ていたジプシーの馬係セザールはスージーに惹かれ、彼女も彼に魅力を感じる。第二次大戦が近づき、ダンテはファシストと化し、ジプシーを根無し草の泥棒民族と責め、反ユダヤ主義も露わにする。スージーとセザールは同類としてお互いを認め、愛し合う。しかし、戦乱は悪化、セザールは家族の元へ、スージーは再び父を探す旅に出る。別れの夜を迎え、二人は最後の愛を交わす。ローラもダンテと別れ、スージーとニューヨーク行きの船に乗る。ところが、船はドイツの潜水艦に襲われてしまうのだった…。クリスティーナ・リッチ、ケイト・ブランシェット、ジョニー・デップら輝くような旬のキャストの熱演。貧しい生まれのユダヤの少女フィゲルの波乱に富んだ半生を、「オルランド」のサリー・ポッター監督が渾身の映画化、新世紀にふさわしい感動のエピック・ロマン。

スタッフ

監督・脚本・音楽プロデューサー:サリー・ポッター
製作:クリストファー・シェパード
撮影監督:サッシャ・ヴィエルニー
美術:カルロス・コンティ
衣装:リンディ・ヘミング
編集:エルヴェ・シュネイ

キャスト

スージー:クリスティーナ・リッチ
チェーザー:ジョニー・デップ
ローラ:ケイト・ブランシェット
ダンテ:ジョン・タトゥーロ

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