演劇1
観察映画第3弾
2012年/日本/172分 配給:東風
2012年10月20日、シアター・イメージフォーラムにてロードショー、他全国順次公開
©2012 Laboratory X, Inc.
公開初日 2012/10/20
配給会社名 1094
解説
日本を代表する劇作家で演出家の平田オリザと、彼が主宰する劇団・青年団。長編ドキュメンタリー映画『演劇1』(観察映画第3弾)は、青年団の創作現場にカメラを向け「平田オリザの世界」を徹底解剖すると同時に、「演劇とは何か」「演じることとは何か」を本質的に問い直す。
「“本当の自分”などない。人間とは“演じる生き物”であり、あるのはペルソナだけだ」と平田は言う。そして、彼はその演劇作品で、作り手の主義主張を込めることなく、大抵は日常の中に潜む「事件」に焦点を当て、精密に描写することに徹する。それは平田が、「人間が存在することは、本来が驚きに満ちたことであり、その存在自体が劇的」であると考えるからだ。
平田演劇には、いわゆる芝居じみた台詞や発話、身振りなどがない。俳優達の声の音量や抑揚は現実のそれを正確に模写している。普段われわれがそうであるように、俳優たちは時に客に背を向けて話すし、同時に複数の会話が進行したりもする。作品はいわば、現実世界を原寸大で再現した、リアルな精密モデルのようだ。
台詞や動きがあまりに複雑かつ自然なので、平田作品が即興の産物であると勘違いする観客もいる。しかし、舞台上で発せられる台詞はすべて平田によって戯曲に書かれたものだし、俳優によるデリケートな動きや仕草も、稽古場で細心の注意を払って練り上げられたものである。基本的に即興的な要素はない。
平田は、「俳優はまず内面を作ってそれを表現すべし」としたスタニスラフスキー理論を真っ向から否定し、俳優の表面に現れる発話や動きしか問題にしない。その代わり彼は、台詞の速度や間を秒単位で厳密に調整する完璧主義者である。したがって、稽古場は同じシーンを気の遠くなるほど繰り返し練習する修羅場と化す。「ハイパーリアル」とも呼ぶべき超リアルな演技の舞台裏では、極めて不自然で徹底的な操作が行われているのである。それは舞台照明や舞台美術についても同様で、照明家や舞台美術家による詳細な設計と指揮のもと、職人に“変身”した俳優達が綿密に作り上げる。
青年団は約60名の俳優と約20名のスタッフを抱え、平田を頂点に中間管理職を排した独特の組織構造で効率的な劇団運営を行い、国内外で年に約15作品もの公演活動を行っている。東京・駒場のアゴラ劇場を拠点に、平田の演劇理論と実践は90年代以降の日本現代演劇界に静かな革命を起こすと同時に、海外公演等を通じて世界の演劇界にも着実に浸透しつつある。また、前田司郎(五反田団)や柴幸男(ままごと)、松井周(サンプル)、多田淳之介(東京デスロック)、吉田小夏(青☆組)、深田晃司(映画『歓待』監督)など、多彩な才能を輩出している。
『演劇1』は、戯曲の執筆、稽古、照明、舞台美術、ワークショップ、劇団運営の実際など、青年団のあらゆる活動にカメラを向け、平田演劇の哲学や方法論、組織論を描き出す。同時に、人類誕生以来、太古の昔から続いてきた「演劇」という営みについて、改めて問い直す。演劇とは何か?虚構とは何か?演じることとは?
ストーリー
スタッフ
監督・製作・撮影・編集:想田和弘
製作補佐:柏木規与子
助手:荒木貴生
製作:ラボラトリーX
助成:独立行政法人国際交流基金
ドキュメンタリー助成プログラム
キャスト
平田オリザ
青年団・こまばアゴラ劇場の皆さん
LINK
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