原題:The boy from TIBET

2012年/108分/日本/チベット語・日本語/HD/カラー・ステレオ/日本語字幕付き 配給:スコブル工房

2012年6月30日〜渋谷・ユーロスペースにてロードショー、以下全国順次公開

©OLO Production Committee

公開初日 2012/06/30

配給会社名 0367

解説


6歳のときにヒマラヤを越えて、チベットから亡命した少年の物語。
おちゃめな少年と
アバンギャルドな老監督が紡ぎ出す、
チベット望郷の詩。

どんな時代、どんな民族も、おとなはこどもに未来を託してきました。受難がつづくチベット(注1)も例外ではありません。「しっかり勉強するんだよ」と母親に背中を押され、この映画の主人公オロがチベットから亡命したのは6歳のとき。いまはインド北部の町ダラムサラで、チベット亡命政府が運営するチベット子ども村(注2)に寄宿し、学んでいます。「なぜ母はぼくを異国へ旅立たせたのだろうか」。自力でその答えを探し求めるオロの姿を一台のキャメラが撮影しつづけました。
監督は岩波映画出身の岩佐寿弥。土本典昭、羽仁進、黒木和雄の演出助手を経て、1960年代後半から70年代にかけて、映画の常識を覆すアバンギャルドな作品を連発したことで知られます。本作でも主人公の少年と監督自身をまるで“孫とおじいちゃん”のように画面に登場させるなど、その自由な精神は77歳になったいまもまったく変わりません。

「映画の着手から完成までの3年間に、ぼくのなかでオロは〈チベットの少年〉という枠をこえて、地球上のすべての少年を象徴するまでに変容していった」
—— 岩佐寿弥

映画の最後でオロは「それでも、ぼくは歩いていく」と決意します。現在のチベットをめぐる状況は、どんな時代、どんな社会と比較しても格別に悲しい。しかし、悲しみを乗りこえてオロがたどりつく決意は、21世紀という多難な時代を生きる「地球上のすべての少年」に共通するものです。チベットの少年と日本の老監督が紡ぎ出すこの物語は、暗闇に立つ一本のろうそくのように、私たちのこころに“生きる希望”を灯してくれます。

注1 受難がつづくチベット
ヒマラヤ山脈の北側に広がる「世界の屋根」に存在したチベットは、いまは中国の一部になっている。1959年に指導者ダライ・ラマ14世が亡命、インド北部のダラムサラにチベット亡命政府を樹立した。現在のチベット難民数はインド・ネパールを中心に全世界で約15万人と言われている。

注2 チベット子ども村
Tibetan Children’s Villages(略称TCV)。中国で危機に瀕するチベット語、チベット文化の教育機会をこどもたちに与えたいというダライ・ラマ法王の意向で1960年に設立された。現在はインド各地で7校が運営され、約15,000人が学んでいる。

ストーリー



映画の主人公になったオロ。
はじめてのことだらけの映画撮影に戸惑いながら、監督の「ヨーイ、スタート!」のかけ声を受けて、ダラムサラの町の狭い路地を駈け抜けたり、坂道を登ったり……。

夏休みのはじまり。おじさんが迎えに来た。
長い休みはおじさんの家で過ごす。中国と闘ったことのある怖いおじさんだ。家に帰り着くと、さっそくおじさんの説教をくらう。「お前は何のためにインドへ来たのか……」。

ダドゥン姉妹とお母さんラモ・ツォ。
ダドゥンの誕生日。ダドゥン姉妹とオロの歌合戦を見守る姉妹のお母さん、ラモ・ツォおばさんも楽しそうだ。でも、彼女たちの家にはお父さんの姿がない。なぜだろう……。

難民センターの青年とホームの友だち。
難民センターで亡命してきたばかりの青年に会う。彼は「苦労しなかった」らしい。亡命の途中で中国警察に捕まり、ひどい仕打ちを受けたホームの友だちは運が悪かったのだろうか……。

ダドゥン姉妹のお父さんワンチェンの映画。
映画の上映会。姉妹のお父さんドンドゥプ・ワンチェンがチベット本土でこの映画をつくったという理由で中国警察に逮捕され、いま刑務所にいることを知る。観客にきびしい表情で夫の無実を訴えるラモ・ツォおばさん。こんなに悲しそうなおばさんはみたことがない……。

夏休みの終わり。山で瞑想するオロ。
楽しかったけれど、難しいことも知った夏休み。山の上の小さなお堂で五体投地した後、ヒマラヤが眺望できる丘で瞑想するオロ。天空ではオロの心を励ますように二羽の鷲が舞っている。オロが祈ったお堂にはかわいい花束が供えてった……。

冬休み。オロは監督と旅に出た。
ダラムサラの町に五年ぶりの大雪が降った。監督に誘われて旅に出るオロ。監督の友だちのチベット人ツエワンも一緒だ。インド・ネパール国境を越えた三人はおんぼろバスに乗る。目的地はネパール・ポカラ。

モゥモ・チェンガと親戚の三姉妹。
ポカラのタシ・パルケル難民キャンプに到着。監督はオロと10年前につくった映画の主人公モゥモ・チェンガを会わせたかったのだ。この難民キャンプで育ったモゥモの親戚の三姉妹とすぐに親しくなる。

焚火を囲む夜の宴で歌うオロ。
三姉妹の家。長女のドルマ、二女のデチェン、三女のツェリン・ラモと一緒にアクセサリーづくりや料理の手伝いをするオロ。家族が開いてくれた夜の宴でオロは歌う。「知らない国にきて、ぼくは七しいみなし子だけど……」

心の奥に閉まっていたトラウマ。
ほんとうの家族といるようなやさしさに包まれ、次第にオロの心の扉が開いていく。三姉妹の前で亡命のときに体験した過酷な記憶に向き合い、トラウマとなったシガツェという町での出来事を語りはじめる。

モゥモ・チェンガの望郷の思い。
なつかしい「雪の国」のことを語り合うモゥモ・チェンガとオロ。おばあちゃんと孫のような二人なのに、故郷の思い出話を共有できるから不思議だ。足の悪いモゥモは二度とヒマラヤを越えられないかもしれない。望郷の思いが募る。

故郷チベットの母へ。
6歳のときに「しっかり勉強するんだよ」と送り出されてから一度も会っていないチベットの母を想い、オロは自分の言葉で祈る。「早く大好きなお母さんと会えますように。みんなが故郷に帰れますように。昔のように幸せになれますように」。

スタッフ

監督:岩佐寿弥
プロデューサー:代島治彦
音楽:大友良英
絵・題字:下田昌克
撮影:津村和比古
編集:代島治彦
整音:滝澤 修
通訳・コーディネーター:ツェワン・ギャルツェン
ボランチ:南 椌椌
制作・配給:スコブル工房
企画・製作:オロ製作委員会

現地コーディネーター:中原一博
チベット語監修:貞兼綾子
翻訳:クンチョック・シタル、ロディ・ギャツオ、ソナム・ツェリン、ドルマ・セーリング
日本語字幕:赤松立太
英語字幕:アーリーワイン直美
字幕制作:パッソパッソ
特殊動画制作:竹内洋祐
音楽制作:佐々木次彦
音楽録音:葛西敏彦
演奏:江藤直子、佐藤芳明、大友良英
宣伝美術:長友啓典
特別協力:ダライ・ラマ法王日本代表部事務所、チベット子ども村(Tibetan Children Villages) 

キャスト

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