刺青 背負う女
私とあなたが、生きた証・・・・
2009年/日本/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/76分 配給:アートポート
2009年09月18日よりDVDリリース 2009年6月6日よりユーロスペースにてレイトショー
(C)2009アートポート/ハピネット
公開初日 2009/06/06
配給会社名 0014
解説
文豪・谷崎潤一郎は、とりわけ官能文学に優れ、そのデカダンで耽美的な文体、フェチシズム・同性愛などの衝撃的な題材と驚くべきストーリーは、普遍的な魅力を放ちつづけている。日本映画に与えた影響も計り知れず、『痴人の愛』、『卍』、『鍵』、『白日夢』など、何度も映画された作品も少なくなくない。
なかでも『刺青』は、谷崎が明治43年(1910年)に発表した処女作であり、刺青師が“光輝ある美女の肌”に“己の魂を刺り込む”までを描いた傑作短編だ。過去には1966年の増村保造監督×若尾文子版などが有名だが、21世紀に現代の物語として甦ったのが佐藤寿保監督×吉井怜版の『刺青』(2005年)、瀬々敬久監督×川島令美版の『刺青 堕ちた女郎蜘蛛』(2006年)だった。
そして2009年、再び現代の“文芸官能ロマン”として甦ったのが、この“刺青シリーズ”の第3弾。 『刺青 背負う女』だ。
主人公は出版社勤務の佐倉真由美。家族や不倫相手との関係に悩む彼女が、日本画展の取材をきっかけに女性彫師や本当に愛せる男と出会い、刺青を通じて生命を燃焼させ、大胆に生まれ変わっていく姿を描いている。
ヒロイン・真由美を演じるのは、ユニチカマスコットガール出身で、映画『ビートキッズ』などに出演経験のある井上美琴。168cmの長身スレンダーボディで、惜しげもなく披露される透き通るような白い肌は、谷崎の“光輝”という表現にふさわしい。 女性彫師・矢野純子役には伊藤裕子、真由美の恋人・タケシ役に若手個性派俳優で『ドロップ』に出演の波岡一喜。ほかにミュージカル「テニスの王子様」で人気の兼崎健太郎、ベテラン並木史朗、が脇を固める。
そして監督は、『ベロニカは死ぬことにした』(2006年)などで官能表現にも定評のある堀江慶。本作でも原作を大胆にアレンジしたストーリーを丹念に描き出している。
設定は現代でも、墨を刺すシーンでは変わらぬ“谷崎エロティシズム”をあふれさせる本作。クライマックスでは、誰もが官能の坩堝にいるにちがいない。
ストーリー
雑誌編集部員の佐倉真由美(井上美琴)はある日、劇団員・立花康平(兼崎健太郎)の公演を観に劇場を訪れる。康平は真由美の母の再婚相手の息子で、2人は義理の姉弟関係だった。康平と話しても気まずい雰囲気。真由美は母から「今度4人で食事でも」と誘われていたが、まったく興味がなかった。“家族”というものにどう接してよいのか判らなかった。それでも人の温かみというものを知りたくて、不倫をしていたのかもしれない。
そんな折り、真由美は日本画展の取材を頼まれ、会場で一人の女性が見入っていた絵に引きつけられる。学術員に訊くと、その絵は『魚濫観巫音(ぎょらんかんぜのん)』といい、見ていた女性は矢野純子(伊藤裕子)という刺青の彫師だった。純子を取材すると、鯉に騎(の)る観音を描いたその絵に魅せられた彼女は、「いま一番彫りたい絵」と真由美に告げた。
その夜、真由美は不倫相手に暴力を振るわれたところを、平田タケシ(波岡一喜)というチンピラに助けられる。真由美は「借りをつくりたくないだけ」と言って、タケシを半ば強引にベッドに誘うが、彼の背中には純子の彫った伐折羅(ばさら)の刺青があった。
後日、真由美とタケシは純子の計らいで再会。刺青を通じた不思議な縁に運命を感じた2人は激しく愛し合う。翌朝、タケシは自分が育った教会の養護施設へ真由美を案内し、神の無力と世の中の不公平を嘆くのだった。
しかし、そうして二人が愛を育んでいる最中、タケシが「命の恩人」と慕う組幹部の冨田(並木史朗)が対立する組に刺される事件が起きる。タケシは復讐に向かうが、相手幹部にとどめを刺そうとしたところを撃たれ、十字架のペンダントを握りしめながら果てた。
愛する人を失い、“家族”の康平も結婚・就職することを知らされた真由美は、純子に「あの人の魂を刻みつけたい」と頼む。純子は真由美の肌に『魚濫観巫音』を彫り始める。苦悶と愉悦の狭間で、純子の声が響く。「鯉に騎(の)る観音は、慈悲心を司る仏、愛に生きる女」。真由美はタケシの名を呼びながら、身悶えるのだった……。
スタッフ
原作:谷崎潤一郎(中央公論新社刊)
エグゼクティブプロデューサー:藤岡 修
企画:北川光秀
監督:堀江慶
脚本:山村一間
劇用刺青:田中光司
主題歌「シンカイノハモン」
製作・配給:アートポート
制作:本田エンターテインメント
制作協力:円谷エンターテインメント
キャスト
井上美琴
波岡一喜
並樹史朗
兼崎健太郎
伊藤裕子
LINK
□公式サイト□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す