太陽のような姉 月のような妹—— 姉は知っていた 妹の中の魔性を…… だから白い肌を傷つけたかった けれど刺青は目覚めさせた 妹の中の「女」を

2008年/日本/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/89分 配給:アートポート

2009年09月18日よりDVDリリース 2009年6月27日よりユーロスペースにてレイトショー

© 2009アートポート/ハピネット

公開初日 2009/06/27

配給会社名 0014

解説


1910年に戯曲「誕生」で文壇デビューを果たしてから来年で100年目を迎える文豪・谷崎潤一郎の名作『刺青』を現代アレンジで甦らせた文芸官能ロマン“刺青シリーズ”の第4弾。
 舞台となるのは、古風な洋館にあるソシアルダンスのスタジオ。父母亡き後、このスタジオを引き継いだ姉妹の妹・葉月は、姉・陽花(ようこ)のダンスパートナーと惹かれ合ってしまう。男を奪った妹に激しく嫉妬し落胆した陽花の前に現れる謎の彫師。葉月は陽花によって彫師のもとに送り込まれ、刺青の世界に引きずり込まれていく。
 主人公・葉月を演じるのは、『ヤンキー母校に帰る』でデビューし、映画『東京フレンズ THE MOVIE』(2006年)、ドラマ『きらきら研修医』(2007年)、舞台『CALL』(2009年)など女優として幅広く活躍している井村空美。少女性の強い葉月が刺青によって妖艶に変貌していく様を、大胆に演じきっている。
陽花役には、さとう珠緒。バラエティとは全く違う官能的な表情を見せ、本作では激しい濡れ場とともに、パートナー亮介役の勝野洋輔とともに華麗なダンスシーンも披露する。
そして謎の彫師・桐悟役には鈴木一真が扮し、刺青の世界への案内役として、不敵な存在感を醸し出している。
  『殯の森』の河瀬直美、『ゆれる』の西川美和、『人のセックスを笑うな』の井口奈己など、女流監督が注目される中、NHK出身でサンダンスでも高い評価を受けた三島有紀子が劇場用長編映画の監督に初挑戦し、女性の視点から「情念」と「愛憎」の世界を丹念に描いている。なお、過去50本近く谷崎潤一郎の原作が映画されてきたが、本作は日本映画で女性が監督する初の映画である。(85年の伊=西独合作『卍/ベルリン・アフェア』はリリアーナ・カヴァーニ、87年の「瘋癲老人日記」を原作にしたイスラエル映画『吐息』のリリ・ラデメーカーズと各々の監督は女性である)
脚本は『夕凪の街桜の国』の国井桂。『刺青』の新たなモチーフとしてダンスを取り入れ、躍動感溢れる「情念」を吹き込んだ。更にNHK「レッツ・ダンス」の講師も務める社交ダンスの第一人者、大竹辰郎がダンス指導にあたっている。
本作には、多くの“謎”ががちりばめられている。姉妹の子ども時代、貼り合わせるとクリムトの絵になるポストカードとつるし人形、どこからともなく現れる彫師・桐悟と谷崎の『春琴抄』を連想させる彼の使用人などなど……。物語は幻惑的でミステリアスな要素に包まれながら、主人公・葉月が刺青をまとい、変容を遂げるクライマックスへと向かっていく。
ミステリアスな展開と官能の融合は、まさに谷崎文学に通じるもの。谷崎エッセンスも増した本作で、より濃厚なエロティシズムを堪能できるハズだ。

ストーリー


藤堂ダンススタジオでは、藤堂葉月(井村空美)が、姉の藤堂陽花(さとう珠緒)とパートナーの月岡亮介(勝野洋輔)の練習風景を見つめていた。陽花はソシアルダンスの名手だった亡き父母の後を継いでスタジオを経営しており、彼女自身も競技会で優勝するほどの腕前。一方の葉月はまだ大学生で、古参の生徒・内海和音(今拓哉)に競技ダンスを勧められても、姉の才能に引け目を感じて愛想ない返事をする。華やかで外向的な陽花に対して、葉月はおとなしく内向的な性格。葉月は自分が絶対に姉のようにはなれないと強いコンプレックスを感じていたが、実は姉の陽子だけは妹の中に眠っている才能に気付き、そしてそれを認めたくないと考えていた。葉月は、銀座画廊倶楽部という見知らぬ場所から送られてくるクリムトの絵のポストカードとつるし人形を部屋じゅうに飾る事が楽しみになっていた。
 ある日、陽花は葉月に競技ダンスを始めさせるため、パートナーとして滝田恵司(古河耕史)を紹介する。陽花に促され試しに踊ってみる二人だが、乗り気な滝田に対して、葉月はやはり断ってしまう。
 しかし、諦めきれない滝田は、葉月が神社の境内を一人で歩いているところに近づき、パートナーを組むことを迫って襲いかかる。そこにたまたま通りかかった亮介が葉月を救い、二人は互いを意識し急接近する。
 すぐにそれに勘づいた陽花は葉月に嫉妬し、「もう亮介と踊らないで」と頼んだ。だが、亮介は陽花にペア解消を申し出、絶望した陽花は夜、雨の中をさまよい出る。そこに刺青の彫師・桐悟が現れ、陽花を海辺の自宅に連れて行く。「最高に美しい肌……そこに魂を彫りつける。それができたら、死んでもいい」と言う桐悟。「抱いてもいいのよ」と陽花は桐悟を誘うが、彼の家には葉月宛てに送られてくる、つるし人形があった。葉月に人形とクリムトの絵を送っていたのは、桐悟だったのだ。陽花は桐悟が求めているのも葉月だと悟った。
 後日、陽花は葉月に届け物を頼む。用意されたクルマで葉月が向かったのは、桐悟の家。真っ赤に染まった匂い月の夜、桐悟は葉月の背に“鳳凰”の刺青を彫り始める……。

スタッフ

原作:谷崎潤一郎(中央公論新社刊)
エグゼクティブプロデューサー:藤岡 修
企画:北川光秀
監督:三島有紀子
脚本:国井桂
劇用刺青:田中光司
ダンス振り付け:大竹辰郎制作協力:円谷エンターテインメント
制作:本田エンターテインメント
製作・配給:アートポート

キャスト

井村空美
さとう珠緒
有薗芳記
鈴木一真

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