原題:Fragment

9.11以後の世界。 若き僧侶がめぐる冒険ドキュメンタリー。

2006年/日本/カラー/DV/スタンダード/ステレオ/92分/ 配給:ビーグル・インク

2006年9月23日よりUPLINK Xにてロードショー公開

公開初日 2006/09/23

配給会社名 0758

解説


タレント活動を一時休止した井上実直(いのうえじっちょく)は、実家の六本木長耀寺に僧侶として入るその前に一人9.11後のニューヨークを訪れる。

帰国後「修法師」になる決心をした井上実直は、死者も出るほど過酷な「日蓮宗100日大荒行」に入行する準備を始める。友人である実直からその話を聞いた佐々木誠は、荒行に入る前から彼にカメラを向け始めた。

はじめは単純に井上実直の「修法師」になるまでのドキュメントを撮っているつもりだった。しかし井上実直を撮っている期間、彼の変化と共に世界も静かに大きく変化していった。
「修法師」となった実直がグラウンドゼロに赴く頃から、佐々木誠は自分が撮っているドキュメンタリーが「9.11」後の歴史の「断片」であることに気付く。

ブッシュもフセインもビン・ラディンも出てこない、アメリカ同時多発テロからはじまるイラク戦争の記録。

これは歴史の側面をひとりの若い僧侶の冒険と成長という視点から描いた映画です。

ストーリー

サリン事件、アフガン戦争、9.11、イラク戦争…
僕たちは戦争を知らない。
それらはブラウン管の中で起こった戦争。
阪神大震災、新潟地震、アチェの震災、それらもブラウン管の中から知らされた。
世界は危機的状況であると言う。
誰かが戦争について考えて、誰かが戦争に行き、誰かが戦争の犠牲になったとしても、夜は自動的に朝へと続くと疑わない。『Fragment』はそんな僕たちに突きつけられた映画だ。

ドキュメンタリーはフィクションである。でも劇映画と決定的に違うのは意図していない何かが起こり、何も起こらない事だ。
それでも演出家はカメラをまわし続ける。
ジャーナリストたちは事実を追求し僕たちの知らない世界の事象を克明に伝えようとする。極私的なドキュメンタリーでは対象の強烈さや、日常を抉る描写を執拗に追求する。そして事実の輪郭を浮かび上がらせるために演出し加工し、結局事実からほど遠くなる。なのにそれらを目撃した僕たちはドキュメンタリー映画に釘付けになる。

しかし『Fragment』で描かれている対象は酷く脆弱だ。
もしドキュメンタリーのオーディションがあったとしたら予選通過すらしないだろう。
作品としてなぜこの対象を選んだのか?なぜこの対象で映画を撮ろうとしたのか?対象に向かう度、嫌悪に似た感情は憤懣を超え煮沸する。

では即刻見る事をやめればよい。映画は見る事も放棄する事も平等に与えられているのだから。しかし放棄できない何かがそこで生まれている。いつの間にか僕たちはその対象から目がはなせなくなる。佐々木誠がカメラを離さなかったように。
まぎれもなくそこに何かが起こっている。僕たちはそれを見て何かを感じ始めている。

誰もが考え、考えて終わる事。いや考える事もしないこと。誰もが撮ろうともしなかった事。そして目撃したものだけが変われる何か。

明確な何かを追うのではなく不明瞭な何かを追う事で僕たちが抱えている“今”を切り取った日常の断片=映画。
そこにドキュメンタリー『Fragment』の強さがある。
その不明瞭さは明確に意思を持って僕たちに迫ってくる。

この記録はとてつもなく小さな記録だ。
とてつもなく小さな、そして大きな一歩。それは作品に映る対象が主役ではなくて僕たちすべての記録であり僕たち自身が主役だからだ。

スタッフ

監督・撮影・編集:佐々木誠
編集 : 宮崎幸司(WATERMETHODMAN)
宣伝制作 : 宮下昇(WATERMETHODMAN)
本編ロゴ制作 : 石渡琢磨(WATERMETHODMAN)
制作協力 : 与那覇政之、加藤学、大島実織、石田康太郎
Art direction : 尾藤博史
Photographer : 吉田真
Design : 加藤史子
Web direction : 市川博規
Flash authoring : 合田哲也
英語翻訳 : 森本規子、伊藤正樹、ヘンリー・ベル
宣伝 : ビーグル・インク株式会社

キャスト

井上実直
井田宝俊
江川秀麗
清水宏泰
進藤義遠
田村行完
田村行淳
長田孜

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