ほたるが舞いよる時 一番あいたい人に あえるんよ。

2003年/日本/カラー/101分 配給:角川大映映画/シネボイス

2004年12月22日よりビデオ発売開始 2004年12月22日よりDVD発売開始 2004年6月5日より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

(c)「ほたるの星」製作委員会

公開初日 2004/06/05

配給会社名 0058

解説


「ぼくらの七日間戦争」(88)で、多くの若者の共感を呼んだ菅原浩志監督が、『心が豊かになる映画』をテーマに、「ほたるの星」を完成させた。「ほたるの星」は、実話を元に新米教師と子供たち心を一つにしてほたるを飛ばすまでを描いた感動作だ。
ほたるは、人里を遠く離れたところには生息せず、また、人が密集するところにも生息しない、不思議な昆虫だ。ほたるがたくさん飛ぶ地域は人と自然が最もよいバランスで共存している場所で、ほたるは理想的な環境をはかるバロメーターともいえるのだ。以前は初夏の風物詩であったほたるも、今は水質汚染や川の護岸工事等の環境変化で、その数は激減している。大人にとっては懐かしく、子供にとっては新鮮なほたるの灯りを復活させるため、実際にほたる飼育に取り組んでいる小学校も年々増えてきているという。
「ほたるの星」は、山口県防府市立華浦(かほ)小学校の教諭・瀧口稔さんが子供たちと一緒にほたるを甦らせた実話を元にしている。この話を聞いた菅原浩志監督は、すぐに“ほたるが一番会いたい人を連れて来てくれる”という美しい物語を着想したという。ロケは山口県の全面的な協力のもと、柳井の白壁の街、秋芳洞、油谷町の棚田等、山口を代表する景勝美の中で行われた。舞台となる小学校は、萩市に現存し、文化財にも指定されている貴重な木造校舎明倫小学校だ。登場する子供たちは、地元の子供たちを中心にオーディションで選ばれた。子供たち全員が映画初出演、又、ほとんどの子供たちにとって演技自体が初めての経験だったが、監督の丁寧な指導のもと生き生きとした自然な表情を見せている。
ふと口にした独り言をきっかけに、“ほたる先生”として子供たちと一緒に成長してゆく三輪元役には、NHK連続テレビ小説「さくら」で人気を博した小澤征悦。「子供たちにとって、僕は本当に先生でした。出番で出ていっても、『先生、遊ぼう』と、撮影にはお構いなしにまとわりついてきたり。まるでキャンプのような現場でした。」と、楽しげに撮影当時をふり返る。誠実で行動力のある先生像を、さわやかに演じている。母を癌で亡くし、父親の虐待で心を閉ざした少女・比加里役を演じるのは、ハロー!プロジェクト・キッズの新グループ『Berryz工房』の菅谷梨沙子。ほたるが飛ぶと亡き母親に会えると信じ懸命にほたるを育てる少女役を、健気に演じている。三輪先生の良き理解者である保健医・七海先生に山本未來。学校全体を温かく見守っている校長先生に、樹木希林。比加里の母に、余貴美子。元と子供たちを応援する水道業者に、八名信夫。そして、三輪元を教師の道へ導くことになる、恩師・瀧口先生に役所広司と、日本映画界を代表する実力派が脇を固める。
主題歌「初恋」を歌うのは、人気絶頂の松浦亜弥。原作は「ぼくらの七日間戦争」以来、再び菅原監督とコンビを組む宗田理。(角川文庫刊〉ほたるを育てることを通し、子供たちは自然の大切さに気づき、ばらばらだった心も一つになってゆく。ほたるが暗闇を照らす希望の灯りとなり、比加里はその中に亡き母の面影を、そして三輪元も恩師の面影を見出す。「ほたるの星」は、ほたるを媒介にして、人々が失いかけている大切なものを取り戻す、癒しの物語でもあるのだ。

ストーリー



働きながら何度も教員試験に挑戦し、やっと合格した三輪元(小澤征悦)は、大きな希望を胸に山口県の小学校に赴任する。しかし現実は想像以上に厳しかった。子供たちはいうことを聞かないし、新任の元は親たちの要求にも学校の方針にも戸惑うばかりだった。

元のクラスに、誰とも口をきこうとしない少女がいた。少女の名は比加里(菅谷梨沙子)。比加里は東京から引っ越してきた子だが、いつもクラスのすみにぽつんと一人きりで、体育の授業にも参加しようとしない。元は比加里をなんとか皆の輪に引き込もうとするが、逆に比加里を泣かせてしまう。そんな元に保険医の七海(山本未來)はあせらないようにと忠告した。
「家庭が複雑な子じゃからね。心の病が、一番面倒なんよ。」
比加里を家まで送っていった元は、親戚から比加里の母が癌で亡くなったことを聞かされた。母の死後、酒に酔った父はたびたび比加里に手を上げ、見かねた親戚が比加里を山口に引き取ったのだ。その話を聞きながら、元は自分の子供時代を思い出していた。子供のころ、元の父は事業に失敗し、借金取りが家まで押しかけて来た。元の母はそんな暮らしに耐えきれず、元を捨てて家を出てしまった。誰にも顧みられず、捨て鉢になった元は、学校に行くのもやめた。だが、担任の瀧口先生(役所広司)だけは、元を見捨てなかった。瀧口先生は毎日元の家にやってきて、食事を作り勉強をみてくれた。瀧口先生の温かな思いやりのおかげで、元は自分を見失わずにすんだ。そしてこの時から元は、将来自分も小学校の教師になることを心に決めたのだ。
ある日、元は子供たちをつれて、課外授業を行った。豊かな自然があるように見えるこの場所でも、川の水はにごっていた。その川を見ながら、ふと元はつぶやいた。
「こんなところにほたるが飛んだら、きれいだろうな…」
その言葉に子供たちの瞳が輝いた。
「ほたるってお尻が光る虫じゃろう?」「見たことない」「みんなでほたるを飛ばそうや!」
子供たちの勢いに元のほうが驚いたが、子供たちは本気だった。その日から、元と子供たちのほたる飼育の奮闘が始まった。
ほたるは水のきれいなところにしか生息しない。子供たちはほたる飼育を通して環境の大切さを学びはじめていた。比加里は「ほたるが舞うとき、一番会いたい人を連れてきてくれる」という伝説を聞き、ほたる飼育の仲間に加わるようになる。比加里は、ほたるが亡き母親をつれてきてくれると信じていた。
ばらばらだった子供たちの心が、一つになろうとしていた。
一方、学校の中には、元たちのほたる飼育を快く思わない教師もいた。学校の規律を重んじる学年主任は、ほたるが飛ばなかったときの責任をどう取るのか、元に詰め寄った。
「ほたるが飛ばなかったら傷つくのは子供たちなんですよ。そのときの責任をどう取るつもりですか?」
教頭からも「ほたるを生徒とのコミュニケーションの道具にしているのではないか」と批判される。だが元には子供たちの希望を断ち切ることはできなかった。元は、ほたるが飛ばなかったときには引責辞職することも覚悟して、ほたるの飼育を続行する。
だがほたる飼育には、多くの困難が待ち受けていた。元たちは、学校の側の川を清掃し、そこにほたるの幼虫を放流することに決めた。自分たちのほたるを、学校の側で飛ばしたかったのだ。しかし、その川には護岸工事が迫っていた。川底がコンクリートになってしまえば、ほたるの幼虫は生きてゆけない。
子供たちは「工事反対」の署名運動を始め、元もその川に洪水の危険がないことを訴えた。役所は「県の決定」を理由に元たちの訴えを退けようとするが、その時、ずっと元たちの活動を静観していた校長(樹木希林)が動いた。校長の熱意は役所を動かし、護岸工事は延期されることが決まった。
6月。元たちは川辺で、ほたるが飛ぶのを待っていた。辺りはすっかり暗くなったが、ほたるは一向に現れない。一人、又一人と子供たちは立ち去り、最後は元と比加里の二人だけが残った。二人も半ばあきらめかけた時、しかし、草むらに微かな光が灯った。ほたるだ!ほたるが静かに、次々と瞬き始めた。やがてたくさんのほたるが舞い、立ち去った子供たちのもとへも飛んでいった。
みなが興奮し喜びあっている時、元と比加里は二人だけで川面に乱舞するほたるを静かに見つめていた。やがてほたるの光の中に、比加里は母親の姿を見た。
ほたるの光の中の母親に優しく抱きしめられながら、比加里は「もう寂しくない」と告げる。その時、元の肩をたたく人がいた。振り返ると、ほたるの光の中、あの瀧口先生の笑顔があった。瀧口先生は微笑みながら元に語りかけた。
「これで、本当の先生になったね…」

スタッフ

エグゼクティブプロデューサー:角川歴彦、山崎直樹
プロデューサー:作間清子
監督・脚本:菅原浩志
撮影:上野彰吾
照明:鳥越正夫
録音:瀬川徹夫
美術:小沢秀高
衣裳デザイン:小川久美子
音楽:中西長谷雄
編集:板垣恵一
スクリプター:松橋章子
助監督:桑原昌英
ラインプロデューサー:松田康史
主題歌「初恋」作詞作曲:つんく 唄:松浦亜弥
挿入歌「ほたる列車」作詞作曲:つんく 唄:相田翔子 PRODUCED BYつんく♂
製作:シネボイス
製作賛助:角川出版事業振興基金信託/「ほたるの星」柳井協力会
支援:文化庁
配給:角川大映映画/シネボイス
後援:山口県 山口県教育委員会
柳井市 柳井市教育委員会
萩市 萩市教育委員会
山口市 山口市教育委員会
周南市 周南市教育委員会
下松市 下松市教育委員会
防府市 防府市教育委員会
下関市 下関市教育委員会
岩国市 岩国市教育委員会
宇部市 宇部市教育委員会
光市 光市教育委員会
由宇町 由宇町教育委員会
油谷町 油谷町教育委員会
推薦:JA全中(全国農業協同組合中央会)
協力:山口県フィルム・コミッション
萩市フィルム・コミッション
柳井クルーズホテル
ANA山口宇部支店
NTTMEDIALAB
パイデルベルグ・ジャパン株式会社

キャスト

小澤正悦
山本未來
菅谷梨沙子(Berryz工房)
浅田拓哉
熊井友理奈(Berryz工房)
岡井千聖(ハロー!プロジェクト・キッズ)
中原ひとみ
余貴美子
森公美子
北見敏之
笹野高史
小柳友貴美
下元史朗
杉田功
田京恵
佐藤允
絵沢萌子
八名信夫
樹木希林
役所広司

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