原題:Sweet and Lowdown

『音楽にしか痛みを感じない』天才ギタリストの音色は、 月までとどくのか・・・。

2000年アカデミー賞 主演男優賞/助演女優賞ノミネート ゴールデン・グローブ賞 主演男優賞/助演女優賞ノミネート シカゴ映画批評家協会賞 助演女優賞ノミネート ゴールデン・サテライト賞 主演男優賞/助演女優賞ノミネート トロント国際映画祭 特別招待作品

1999年12月3日全米公開

1999年/アメリカ/95分/Dolby Digital / 配給:ギャガコミュニケーションズ

2004年11月05日よりDVDレンタル開始 2001年10月26日DVD発売/2001年10月26日ビデオ発売&レンタル開始 2001年3月17日より恵比寿ガーデンシネマ他全国ロードショー

公開初日 2001/03/17

公開終了日 2001/06/29

配給会社名 0025

公開日メモ 『音楽にしか痛みを感じない』天才ギタリストの音色は、月までとどくのか・・・。

解説


●個性的な演技陣とのコラボレーション
 いつも俳優から最高の演技を引き出すことで知られるアレンであるが、今回はショーン・ペンやユマ・サーマンといった人気スター、それに英国の新鋭女優サマンサ・モートンをそろえ、新鮮な演技陣による映画が完成した。なんといっても、中心になるのは、主役のエメット・レイを演じるショーン・ペンだが、彼に関してアレンは「素晴らしい俳優、ショーン・ペンと仕事ができたことを誇りに思う」と賛辞の言葉を惜しまない。一方、サーマンやモートンに関しては「サーマンの見事な演技、モートンと仕事をする楽しみ。セットでは全員と楽しく仕事をすることができた」。モートンは口がきけないという設定なので、目だけで演技をしなければいけないが、アレンは彼女にコメディアン、ハーポ・マルクス的な資質を見たという。
●アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた、ペンの天才的な役作り
 今回、天才ギタリスト、エメット役としてアレンが選んだのはショーン・ペンだった。演技の幅が広いところが気にいっていたのだ。それまでペンにはギターを弾いた経験がなかったが、この映画では彼の指をとらえる映像を写すことになっていたので、ジャズの名曲30.曲を選んで特訓、実際に録音した音はペン自身のものではないが、彼も曲を演奏できるまでにギターが上達したという。「私がこの役にもっとも望んでいたことをショーンは見せてくれた。彼を選んで本当に大正解だった」とアレン。
 一方、自身で監督経験もあるペンも巨匠アレンへの賛辞を惜しまない。「彼は頭が切れ、才能に恵まれている。自分のやっていることに自信があるし、いろいろな知識がある。自分の視点をしっかり持っている。それに脚本家であり、監督でもあるところがいいね。脚本を手がけてきたから、キャラクターやディテールをきちんと把握している。すごく仕事がしやすかった。」
●1930年代の街を再現したロケーション
 90年代の風景でロケーションしながらも、舞台となる30年代の街並みを再現したのは、長年、アレンの右腕として組んできたサント・ロカスト。今回の撮影は主にニューヨークの中心地、ニュージャージー、コネチカット州など、全米各地で行われた。
 ニューヨーク西44番街にある有名なレストランがシカゴのジャズクラブとして撮影された。また、マンハッタンを横切ったところにあるジャズ・クラブがエメットが演奏する場所に、エメットも参加するアマチュア・コンテストはニューヨークのオッシニングのイーグルス・クラブで行われた。エメットが行くゴミ集積所や鉄道施設は主にクイーンズのサニーサイド・レイルヤード、シカゴの家畜所はニュージャージーのパターソンに再現された。エメットとハッティがハリウッドのスタジオに行く場面があるが、これはニュージャージー・アルモリーのティーネックに作られ、映画の中では当時の雰囲気をしのばせる華やかな見せ場となっている。エメットがギャングの腕さばきを目撃するシーンは、ニューヨーク郊外のハイウェイ9Wのガソリン・スタンドで撮影された。
●新しい撮影監督、チャオ・フェイとのチームワーク
 これまでゴードン・ウィリス、スヴェン・ニクヴィスト、カルロ・ディ・パルマなど、第一級の撮影監督たちを視覚面のパートナーに選んできたアレンだが、今回は中国人のカメラマン、チャオ・フェイが参加することになった。彼は『始皇帝暗殺』(98)や『紅夢』(91)で知られる中国出身の実力派撮影監督。彼には通訳がつき、アレンやスタッフとの共同作業が行われていった。直接言葉の通じない相手ではあったが、映像や色彩に対する感覚は万国共通で、アレンはフェイとの仕事ぶりがひどく気にいった。「彼にはすごい才能がある」とアレン。2000年夏に全米で封切られたアレンの新作『Small Time Crooks』でも、彼とのコラボレーションを見せている。

ストーリー



 1930年代、シカゴ。派手で目立ちたがり屋のエメット・レイ(ショーン・ペン)は、才能に恵まれたジプシージャズのギタリスト。ジャンゴ・ラインハルトこそが世界で一番才能があり、自分は2番目に上手い天才ギタリストと思っている彼は、シカゴのジャズクラブの人気者。演奏が始まると誰もがうっとりとその美しい音色に聞きほれる程の腕前で、自分のすべてを音楽で表現しているかのようだった。

 しかし、その演奏の素晴らしさとは裏腹に、エメットは破滅的な人生を送っていた。ミュージシャンの他にも娼婦の元締めという顔をもち、裏社会にも通じた男だった。 女遊びにも目がなく、「女とは遊ぶが、女は必要じゃない」と豪語し、決して女に縛られない人生、それが本物のアーティストだと信じていた。また、親しくなった女とは、汽車を眺めることと、街はずれでネズミを撃って遊ぶという変わった趣味の持主でもあった。

 こんな不埒なエメットと洗濯屋につとめる口のきけない娘ハッティ(サマンサ・モートン)との出会いも、ナンパで始まった。ニュージャージーの海辺に、友人ビルと女たちを探しにきたエメットは、ビルとコインの賭けで負け、渋々、自分の意思に添わない小柄な娘ハッティとデートをすることに。いつもの遊びのつもりだった彼は、ギターを弾いて聴かせるが、そのギターの音色に心を動かされたハッティはエメットに夢中となり、行動を共にするようになる。そしてエメットもアメリカ中を一緒に旅しながらハッティの純粋な心に触れ、二人は徐々にお互いを理解していく。

 旅から戻っても、エメットの派手で自堕落な生活は直らず、やがて、破産宣告を受けることになるが、そんな彼をハッティは暖かく、献身的な愛で包み込む。ギター以外はからっきし不器用な生き方の破天荒なエメットを唯一理解するのは、言葉ではなく心の表情ですべてを受けとめるハッティだった。

 そしてふたりが同居生活を始めてから1年が過ぎようとしていた。大恐慌時代を迎え、多くのジャズメンと同様に失業していた彼は、ある日、上流階級出身の美しい女、ブランチ(ユマ・サーマン)と知り合う。作家志望の彼女は野性的な男性が好きで、その手帳にエメットのことを「音楽にしか痛みを感じない天才」と書く。エメットはハッティと別れ、ブランチと衝動的に結婚し、上流階級出の妻を自慢して歩くようになった。しかし、派手好きなふたりの夫婦関係はいつもギクシャクして、破局は目に見えていた。案の定、ブランチはジャズ・クラブの用心棒アル(アンソニー・ラパグリア)との不倫に溺れ、友人に浮気のことを知らされたエメットは、ふたりを尾行して真実を知ることになる。

 裏切りと失意の中で空虚な毎日をおくるエメットは、この時やっと本心に目覚め、自分に本当に必要だったハッティを求めて、再びニュージャージーを訪ねるが…。

スタッフ

監督・脚本:ウディ・アレン
製作:ジーン・ドゥーマニアン
製作総指揮:J・E・ボーケア
共同製作総指揮:リチャード・ブリック、レッティ・アロンソン
撮影監督:チャオ・フェイ
音楽監督:ディック・ハイマン
プロダクション・デザイン:サント・ロカスト
衣装デザイン:ローラ・カニンガム・バウアー
キャスティング・ディレクター:ジュリエット・テイラー、ローラ・ローゼンタール

キャスト

エメット・レイ:ショーン・ペン
ハッティ:サマンサ・モートン
ブランチ:ユマ・サーマン
エリー:グレッチェン・モル
アル:アンソニー・ラパグリア
ビル:ブライアン・マーキンソン
Mr.ハイネス:ジョン・ウォーターズ
ウディ・アレン:本人
ベン・ダンカン:本人
ナット・ヘントフ:本人
ダグラス・マクグラス:本人

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