チェコ・アニメの創始者のひとり カレル・ゼマン! 玉手箱のような映像錬金術を味わいつくす 13作品一挙公開!

配給:日本スカイウェイ/ケイブルホーグ

2003年8月16日よりシアター イメージフォーラム にてロードショー

公開初日 2003/08/16

配給会社名 0107/0029

解説


ガラスの人形を軽やかに踊らせたアニメーション作家を知っていますか?短パン少年たちの恐竜時代へのタイムトラベルを描いた特撮監督を知っていますか?ジュール・ヴェルヌのSF世界を大胆でユーモラスな映画にした魔術師、CGが開発されるはるか以前に独特のデザインと遊び心で、かつての空想科学小説が夢見た飛行船を、潜水艦を、特撮とアニメで大画面に活躍させた、いまだ追随者のない映像錬金術師カレル・ゼマンを知っていますか?

カレル・ゼマンはチェコの生んだアニメーションの巨人のひとり。そして特撮の巨人。その映画活動は第2次大戦直後から、ズリーンという地方都市で始まる。日本に最初に紹介されたのはガラスの踊子とピエロの悲しい恋を描いた詩的短編『水玉の幻想』と、ヴェルヌが予見した最終破壊兵器の秘密基地での特撮アドベンチャー『悪魔の発明』だった。アニメーションは本来動いていない絵や人形が命を得たように動いて見える一種のトリック映画だから、アニメから特撮へはほんの一歩。ゼマンはアニメの方法と体験を特撮に生かし、応用し、ハリウッドのSFXとはひと味もふた味も違う、独特の味わいの映像を作り上げた。極めて繊細な美意識と、観客がズッこける悠々たるおとぼけ精神。せっかちな人には向いていないかも。席についたらまず肩の力を抜いて、のーんびりと、そう!スローライフでいきましょう。

『ジュラシック・パーク』の平和な恐竜公園より37年早い『前世紀探検』で、恐竜と戦わない共存世界を描いた人。『天空の城ラピュタ』に20年先行する『盗まれた飛行船』で空想飛行メカの群れを大空に飛ばせた人。古い人形のいじらしい努力を描いた処女作『クリスマスの夢』、カラい諷刺が隠し味の『王様の耳はロバの耳』、チェコのアニメのチャップリンが活躍する『プロコクウ氏』、そして晩年の愛の賛歌の長編アニメ『クラバート』に『ホンジュークとマジェンカ』と、アニメ史に残した足跡もまた非凡な人。こんな人、ほこにはいなかった!まだゼマンに出会っていなかったあなた、昔っからファンだったよというあなた、テレビの時代よりはるかに早く、大画面のために作られたゼマンの驚きの世界を、大画面で楽しみに来ませんか!

ストーリー




『クリスマスの夢』
少女は古い人形が大好きだったが、クリスマスの朝、真新しいオモチャのプレゼントに夢中になる。夜、投げ出された古い人形は命を吹き込まれ、部屋の中をダンスしたりおどけたりと女の子の心を取り戻そうとする。

『プロコクウ氏 映画製作の巻』
ちょっとおっちょこちょいだけど、憎めないプロコクウ氏が映画製作に猪突猛進!自分を助けない人々を巧みに批判するプロコクウ氏は、<広告掲示板><迷信><官僚制><役に立たない発明>などを笑いものにしていく。痛烈な皮肉で社会を諷刺するサイレント喜劇ふうスラップスティック短編人形映画シリーズの初期の1本。

『水玉の幻想』
1滴の水玉の幻想世界にガラスの少女が華麗に舞い、たんぽぽの綿毛のピエロが彼女に恋をする。水玉に始まり、水玉に終わる小さな恋のものがたり。透明感とみずみずしさに溢れる映像叙事詩。

『王様の耳はロバの耳』
王様がロバの耳を持っていることは、誰も知ってはならない秘密。ある日、王様は散髪のために、町の散髪師が選ばれて・・・。しかし、ロバの耳を持っているからといって王様の権威は損なわれない、と一件落着。有名な童話をベースに、散髪屋の娘をはじめ、ゼマンがとぼけたキャラクターを駆使してユーモラスかる諷刺たっぷりに描いた作品。社会主義の国にも処世術はある、という隠し味がおもしろい。

『カレル・ゼマンと子供たち』
ゼマンの70才の誕生日を記念するドキュメンタリー短編映画。彼は30年以上にわたって、子供たちを魅了するファンタジー映画を製作し続けた。偉大なるフィルムメイカーの創造性に溢れた夢の世界をのぞけるこの作品は、ゼマン作品を愛するすべてのファンにも興味深い。彼の発言、トリック・フィルムの製作秘話、仕掛け、特種効果技法などが説明され、主要作品のさわり部分も見られる。ゼマンとその作品の制作の場を見学できる貴重な作品。

<長編>
『鳥の島の財宝』
美しい小さな島では、みんなが平和に暮らしていた。ある日、島に突然黄金がもたらされ、島民は争ったり憎みあったりするようになる。誰もが黄金を少しでも多く手に入れて、働かずに楽な生活をしたいと考えたのだ。心配した鳥好きの若者の知恵で、静かな生活が戻り、島民たちは再び働きはじめた。古いペルシアのおとぎ話を元にして作られた牧歌的人形アニメ。ゼマンは伝統的なペルシア細密画のスタイルで描こうとした”大人の絵本”ともいうべき長編アニメーション。

『前世紀探検』
ボートに乗った4人の少年が、時間の川を下りながら古代を冒険。プロントザウルス、ティラノザウルス、そして恐竜バトル、空には、翼竜や始祖鳥が飛び回る中、少年達はサバイバル術を駆使して「生きた」三葉虫を発見。コマ撮り、切り絵アニメや模型、ぬいぐるみに実在の動物をうまく組み合わせて効果的に映像化。『ジュラシック・パーク』のはるか先駆ともいうべき恐竜映画史に残るSFトリック・フィルムの傑作。

『狂気のクロニクル』
30年戦争(1618〜48、ドイツを舞台にヨーロッパ諸国を巻き込んだ宗教戦争)を描いた作品。恋人とともに囚われの身となった農夫ピーターの運命を追いながら、戦争の愚かさを皮肉るアニメと実写の合成作品。風刺家でもあるゼマンは、当時のチェコスロバキアでの抑圧体制の中で、常に批判精神を忘れなかった。劇中のキュートな天使をはじめ、シュールなアニメ・シーン、重いテーマをユーモラスなまなざしで。騒乱の時代を描くゼマンの遊び心あふれる長編。

『盗まれた飛行船』
19世紀末、飛行機が発明され人々は大騒ぎ!遂に人間が空を飛べる時代になったとたんに、少年たちが飛行船を乗っ取り冒険旅行!ジュール・ヴェルヌの代表作「神秘島」の特撮映画化。気球に飛行船、潜水艦ノーチラス&謎のアニメーションが合わさる。モノクロ映像を時にセピア調、時に赤みがからせグラデーションにし、感情の変化で色を変化させたり、ノスタルジックな雰囲気を演出。「石器時代から、子供は大人に叱られてきた」紙芝居のような童心あふれる作品として人気のある中期傑作。

『彗星に乗って』
1888年、アフリカのフランス領アルジェリア。フランス軍の若き中尉は、町でみかけた絵葉書の黒髪の美女にひと目惚れ。誤って海に落ちた彼を助けてくれたのは、なんと絵葉書の美女だった。その時、謎の彗星が地球に急接近、大地震とともに、町がまるごと彗星に吸い上げられてしまう。遠ざかっていく地球の影。そこは、前世紀の恐竜や翼手竜が住む世界だった・・・。『盗まれた飛行船』に続くヴェルヌ原作SFの映画化。アラビアンナイトと宇宙SFが組み合わさったかのような視覚効果、ゼマンの色彩方術が冴えるファンタスティック・アドヴェンチャ−。

『シンドバッドの冒険』
船乗りシンドバッドは、大海原を旅し、異国を訪ねる途中で数々の驚きに出会う。ある時は巨大な魚、またある時はグリュプス(ワシの頭と翼、ライオンの胴体というギリシャ神話の怪獣)、何百年の生きている老カメ、勇気あるオウム、そして空飛ぶじゅうたん。シンドバッドは、一風変わった味方や協力者に助けられ勇敢に旅をする。「アラビアンナイト」の主人公のひとりシンドバッドの冒険旅行を切り絵アニメで描く、ゼマンのユーモアと奇想が楽しい7つの短編からなる作品。極彩色豊かな映像は、なかなかエキゾチック。

『クラバート』
少年クラバートは、夢に誘われれるまま荒れ地の水車場の見習いになり、親方から魔法を習う。苛酷な労働、週に一度カラスに変身し親方に魔法のレッスンを受ける日々。ところが3年後、自由と、ひとりの少女の愛のため、生死をかけて親方と対決する日がくる。ドイツ地方の伝説をもとに、魔法使いの親方に戦いを挑む少年の物語。チェコ生まれのドイツ人作家プロイスラーがクラバート伝説を下書きにした児童文学の傑作を、抑えた色彩とダークなキャラクターで映像化。ゼマンの代表作のひとつであるばかりでなく、世界のアニメーション映画に残る作品として『ホンジークとマジェンカ』と並ぶ晩年の傑作。

『ホンジークとマジェンカ』
世界を旅するホンジークを導くのは、3人の妖精。たちはだかる障害を魔法で切り抜けたり、助言を与えたりする。ある日、ホンジークは妖精マジェンカに出会い恋に落ちる。しかし、2人の愛を試す苦難が次々と襲いかかる・・・。多くの年代記は伝説や戦争の話ばかりで、<愛>や<幸せ>についてはかかれていないと語る本作は、<真実の愛>と<戦争のない世界>を望む祈りにも似た作品。口ずさみたくなる牧歌的音楽とロマンス。切り絵アニメで描く、ゼマン最後の長編。

スタッフ

監督:カレル・ゼマン

キャスト

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