原題:Nostalghia/NOSTALGHIA

1983年カンヌ国際映画祭創造大賞受賞・国際映画批評家賞受賞作品

1983年/イタリア・旧ソビエト/126分/カラー/1:66/日本語字幕:橋本克己/ 配給・宣伝:ザジフィルムズ

2003年1月25日よりシアターイメージフォーラムにてロードショー

公開初日 2003/01/25

配給会社名 0089

解説


緑豊かなイタリア・トスカーナの大地に、ロシアの家が出現する。霧、靄、風に溢れた自然の中で、水が滴り、炎が詩集を静かに焼いてゆく。詩人の望みと、疲れた心を灰と化するかのように……

『ノスタルジア』は、『アンドレイ・ルブリョフ』『惑星ソラリス』で「ソ連映画界の異端の巨匠」の価値を確立したアンドレイ・タルコフスキーが、初めて国外で監督した映画である。美しすぎるほどの映像世界は、全世界から絶賛を受け、1983年カンヌ国際映画祭では、特設された創造大賞に輝いた。
その『ノスタルジア』が、製作20周年を記念して、ニュー・プリントでリバイバルされる。陰影に富んだ映像と、デジタル前夜の技術を駆使した繊細な音響が、映画館の空間に甦る。
主人公の学者、ゴルチャコフは、ロシアにあっては祖国と同化できず、憧れの南国イタリアへ旅行しても、心の安息を得られない。そして「第三の祖国」−すなわち、魂のふるさとを追い求め、自分の分身のような「聖なる狂人」、ドメニコに出会い、世界を救うために、蝋燭の儀式へと導かれてゆく。

中世からルネッサンス期のフレスコ絵画と、モダン・アートが一体化したような美術。詩の一節や過去の芸術作品を、「記憶」のように呼び起こしてゆくセリフ。その合間に、息継ぎのように表れる故郷ロシアの白黒映像。これらの要素がひとつの有機体となり、見るものの心を「魂のふるさと」へと誘ってゆく。
天才監督タルコフスキーの才能と、イタリアの陽光との一期一会が実現した、映画の奇跡。20年の歳月を経て再臨する、この奇跡を体感できる歓びが待っている。

ストーリー


イタリア中部トスカーナ地方の田園。朝霧の風景のなかに組の男女が到着する。男はモスクワから来た詩人アンドレイ・ゴルチャコフ。女は長い髪をうねらせた通訳エウジェニア。
ふたりは、18世紀にイタリアを放浪し、帰れば奴隷になると知りながら帰国して自らの命を絶った、ロシアの音楽家パヴェル・サスノフスキーの足跡を追って旅を続けてきた。が、この旅も終わりに近づいている。アンドレイは病に冒されていた。

エウジェニアはひとり、古都シエナ南東の村の教会を訪れる。アンドレイが見たがっていたためにここまでやってきたのだが「自分ひとりのための美しさなどもうたくさんだ」と彼は車を出ようとしない。供えられたろうそくの炎がまばゆい光を放つ出産の聖母像「マドンナ・デル・バルト」に敬虔に祈りを捧げる女たちと、どうしても跪けないエウジェニア。

村の広場の温泉で知られる、バーニョ・ヴィニョーニのホテル。アルセニイ・タルコフスキーの詩集をイタリア語訳で読んでいるエウジェニアに、アンドレイは「詩の翻訳など不可能だ、芸術は何でもそうだ」と言う。「私達はわかりあえるにはどうすればいいの」と問う彼女に、アンドレイは「国境を壊せばいい」と答える。

アンドレイの夢にはロシアにある故郷が現れる。なだらかな丘の小さな別荘。妻とふたりの子供。シェパード犬、そして夕陽。

村の広場の温泉に、数人の湯治客が朝から浸かっている。彼らの世間話の落ち着く先は、ドメニコという男のこと。世界の終末が訪れたと信じ、家族ぐるみで7年間もあばら家に閉じこもった彼は人々に狂人と呼ばれている。その朝、シェパード犬を連れて広場へ散歩にきたドメニコにアンドレイは何故か心を強く打たれ、エウジェニアの通訳を通して、ドメニコと話そうとする。が、エウジェニアは間に挟まることにいらだちを感じ、アンドレイを置いて立ち去る。

朽ち果てているドメニコのあばら家に入るアンドレイの目に、滝のように水が落下する光景が広がる。たどたどしいイタリア語で話しかけるアンドレイに、ドメニコは、自分が果たせなかった願いを託す。それは“ロウソクの火を消さずに広場を渡る”というもの。それが“世界の救済”に結びつく、と言うのだ。

アンドレイが宿に帰ると、エウジェニアは激昂し、恋人のいるローマに行くと旅立つ。アンドレイの脳裏を故郷のイメージがよぎる。ローマに戻ったアンドレイは、エウジェニアからの電話で、ドメニコが命がけのデモンストレーションをしにローマに来ていることを知る。

ドメニコはローマのカンピドリオ広場のマルクス・アウレリウス皇帝の騎馬像の上で、世界平和を訴える演説をぶち、ベートーヴェンの「第九交響曲・歓喜の歌」をかげながらわが身に火を放つ。一方、アンドレイはドメニコとの約束を果たしにバーニョ・ヴィニョーニに引き返す。アンドレイはロウソクの炎を、吹きすさぶ風から必死に守りながら幾度となく、ぬかるむ広場の横断を試みる。そして、ついに渡り切ろうという時、崩れ落ちた彼に降りかかる、凍てつく雨は雪に変わり…。

スタッフ

監督:アンドレイ・タルコフスキー
脚本:アンドレイ・タルコフスキー、トニーノ・グエッラ
撮影:ジュゼッペ・ランチ
美術:アンドレア・クリザンティ
衣装:リーナ・ネルリ・タヴィアーニ
編集:エルミニア・マラーニ、アメデオ・サルファ
製作:フランチェスコ・カザーティ
製作:ロレンツォ・オストゥーニ(RAI)
助監督:ノルマン・モタッツオ、ラリッサ・タルコフスカヤ
カメラ:ジュゼッペ・デ・ピアージ
スチール:ブルーノ・ブルーニ
録音:レモ・ウゴリネッリ
装置:マウロ・パッシ
製作担当:フィリッポ・カンプス、ヴァレンティーノ・シニョレッティ
ヘアー:ジューリオ・マストラントニオ
メイク:イオレ・ケッキーニ
犬の調教:マッシモ・ペルラ

キャスト

アンドレイ・ゴルチャコフ:オレグ・ヤンコフスキー
ドメニコ、詩人:エルランド・ヨセフソン
エウジェニア、通訳:ドミツィアーナ・ジョルダーノ

ゴルチヤコフの妻:パトリツィア・テッレーノ
女中:ラウラ・デ・マルキ
ドメニコの妻:デリア・ボカルド
清掃婦:ミレーナ・ヴコツティチ

ラッファェーレ・デイ・マリオ
ラーテ・フルランリヴィオ・グラッシ
エレナ・モアゴイア 
ピエロ・ヴィーダ

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