原題:swing

小さな恋の夏休み

2002年ベルリン国際映画祭 パノラマ部門出品

2002年3月20日フランス初公開

2002年/フランス/シネマスコープ/DOLBY DIGITAL/カラー/90分/ 日本語版字幕:石田泰子/編集協力:松山晋也 配給:日活

2003年09月26日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年09月26日よりDVDリリース 2003年1月18日よりシネマライズにてロードショー

©PRINCES FILMS-2002

公開初日 2003/01/18

配給会社名 0006

解説


<「ガッジョ・ディーロ」「ベンゴ」のトニー・ガトリフが描く、ひと夏の小さな恋の物語>
10歳のそばかす顔の白人の少年マックスと黒い大きな瞳のロマの娘スウィングのひと夏の小さな恋の物語『僕のスウィング』は、『ガッジョ・ディーロ』『ベンゴ』と失われつつあるロマ文化に関わる作品を撮り続けてきたトニー・ガトリフ監督の最新作である。

夏休みにストラスブ−ルの裕福な地区に住む祖母の家に預けられたマックスがマヌーシュ・スウィングに心を奪われたのは、ジプシー・ギターの名手ミラルドの演奏をはじめて耳にして以来のこと。ある日、古いギターを買いにミラルドや仲間のマヌーシュ※が暮す地区に出かけたマックスに、彼のウォークマンと引き替えに粗悪な中古ギターをおしつけたのは黒い大きな瞳を持つ少年のような娘スウィングだった。 

ギターを習いに毎日のようにミラルドのトレーラーに通うマックスはたちまち、音楽に囲まれた陽気で自由なマヌ−シュの世界に魅了されていく。そしておてんばのスウィングは、マックスを、胸がドキドキ、ワクワクするようないたずらや冒険の世界に誘いこむ。誰も入れない秘密の川、ハリネズミの住む森、夏の匂いにむせ返るような緑の草原、ギターを抱えて走った抜け道、蓄音機をのせて力いっぱい漕いだ小さな舟、好きな人の夢を見るという黄色い花のおまじない、そして2人だけの秘密の合図。夏の終りとともに、小さな恋には、小さなさよならが訪れる…。
子供から少女へと成長する直前のほんの一時に放たれる両性具有のような不思議な魅力を持つスウィングと、ギターによって音楽への好奇心の扉を開き、と同時に新しい世界を全身で受け止め、たくましく成長していくマックス。トニー・ガトリフ監督は、シネマスコ−プの画面いっぱいに輝く2人のキラキラした小さな恋のときめきを、ジャンゴ・ラインハルトが生んだ陽気な音楽”マヌーシュ・スウィング”に乗せて瑞々しく描きだした。本作は2002年ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品された。

※マヌーシュ…フランス中部以北からベルギー、オランダなどに暮すジプシーの通称。

<ジプシー音楽とスウィング・ジャズの融合  ジャンゴ・ラインハルトが生んだ 自由で気ままな音楽 "マヌーシュ・スウィング">
トニー・ガトリフの作品には、いつも同じ音楽が流れている。それは何千年もの歴史の中から生み出された、ロマ民族と他民族の音楽が融合してできた魂を揺さぶるジプシーの音楽である。『ガッジョ・ディーロ』ではルーマ二ア・バルカン音楽を、『ベンゴ』ではアンダルシア・フラメンコを、そして新作『僕のスウィング』ではジプシー音楽とスウィング・ジャズが融合されたマヌーシュ・スウィングを思いっきり陽気に響かせる。”マヌーシュ・スウィング”は、あの世界的に有名なジャズ・ギタリストのジャンゴ・ラインハルトが生んだ音楽である。01年に公開されたウディ・アレン監督の『ギター弾きの恋』でショーン・ペンが演じた不器用な天才ジプシー・ギタリスト役は、ジャンゴ・ラインハルトがモデルとなっていたのが記憶に新しい。音符から音符へと自由に刻む独特のリズム、伸びやかでどこかノスタルジーを感じさせるやさしいメロディ。マヌ−シュ・スウィングが2人の子供たちと共に、ストラスブール郊外の森を軽やかに駆け抜ける。

<ジャンゴ・ラインハルトの後継者 チャボロ・シュミットが"心と耳"で奏でるギターの音色>
ミラルド役のチャボロ・シュミットの神業的なギターさばきを目にした瞬間、誰もがマヌ−シュ・スウィングの虜になるだろう。当初、ガトリフ監督は、ジャンゴの息子、バビック・ラインハルトと一緒に企画をすすめていたが、バビックの死去により企画は中止された。しかし、「マヌーシュ・ジャズを広めたい」という熱い想いは高まり、ガトリフ監督はジャンゴの第一後継者であるチャボロ・シュミットに映画の出演を頼む。世界的に有名なギタリストでありながら、チャボロの生活は映画の中のミラルドと変わらない。チャボロは「私たちが演奏しているのは楽譜の音楽でなく、心と耳の音楽なのだ」と語る。彼の住むストラスブールにカメラをおいたガトリフ監督は、生活すべての中から紡ぎだされるチャボロの音楽を忠実にスクリーンに反映し、マヌーシュ・スウィングの息吹を伝える。『僕のスウィング』が公開されたヨーロッパ各地では、チャボロ・シュミットのコンサートが行われ、マヌーシュ・スウィングが脚光を浴びている。日本での初来日公演も期待される。

ストーリー


夏休みの間、フランスの北部ストラスブ−ルの裕福な地区に住む祖母の家に預けられた10歳のそばかす顔の少年マックスは、街の酒場で、いつも演奏しているマヌ−シュ・ギターの名手ミラルドの軽やかなギターの音色に心を奪われる。どうしてもギターを手に入れたいマックスは、彼らの居留するストラスブールの郊外を訪れ、ギターを売っている黒い大きな瞳を持つ少年のようなロマの娘スウィングから、自分のウォークマンと引き換えに粗悪な中古のギターを押しつけられた。それでもマックスはミラルドに直接ギターを教えてもらえるよう交渉し、読み書きのできない彼のかわりに手紙を代筆する条件でギターを教わることになった。

初めてのギター・レッスンの後、ミラルドにマックスを送るように頼まれたスウィングはマックスを秘密の抜け道に案内する。そこは、材木置き場でスプリンクラーがまわりっぱなしのどろんこ道。そんな道で手に入れたばかりのギターが濡れないかと心配するマックスだが、思いがけない冒険にドキドキしながら、ギターを抱え、ずぶ濡れになって必死に走り抜ける。さらに、スウィングに連れられて入った森の中で、マックスは、足元をふらつかせた拍子にギターを川の中に落としてしまう。「買ったばかりのギターが!!」と叫び、川の中に飛び込むマックスを見て笑い転げるスウィング。マックスは濡れたスウィングの小さな胸のふくらみに、初めて女の子を意識する。

マックスは毎日、ミラルドの住むトレーラーにギターを抱えて走っていく。ミラルドから教わる陽気で楽しいギターの音色、自由奔放で野性的なスウィングが誘いこむ刺激的な遊びやいたずら。見るもの、聞くもの、全てが驚きと感動に満ちた初めての世界だった。楽しい夏の思い出を一つもこぼさないように、日記に記していくマックス。

ある日、ずぶ濡れになって帰ってくるマックスを見て心配した祖母は、外出禁止例をマックスに告げる。しかし、スウィングが「ミラルドの家で演奏パーティがある」といって迎えに来ると、マックスは閉ざされた門をよじ登り、外に飛び出していく。ミラルドのトレ−ラ−には仲間のミュージシャンが集まり、そこは、ギター、バイオリン、クラリネット、モロッコのウード、様々な音楽と陽気な歌声、踊りで溢れていた。 

ミラルドのトレーラーには、ジプシー・ギターの王様、ジャンゴ・ラインハルトの写真と彼が愛用していたのと同じ型のセルマーギターが飾られていた。ジャンゴに見守られながらミラルドは、マックスにギターを丁寧に教えていく。一緒に弾きながら弦のさばきやコードの押さえ方を示し、そして食事時にはお皿から溢れでそうな山盛りのチキンをマックスに食べさせる。時には「頭が痛い」とさぼり気味のマックスを、ミラルドはスウィングと共に森の中に連れだし、ジャムにすると力がでるという木の実や、頭痛が治る薬草などロマの知恵を教える。ミラルドは言う。「音楽を身につけるのは譜面からではない。心と耳からだ」

マヌーシュ・スウィングの奏でる軽やかなギターの音色のように、ハリネズミが住む森、夏の匂いでむせ返るような緑の草原を笑いながら駆け抜けるマックスとスウィング。誰も入れない秘密の川に浮かべた小さな舟で、スウィングは突然マックスにキスをする。

ミラルドから教わった、好きな人の夢を見るという黄色い花のおまじない—真ん中に花、米、塩をいれ、周りに石を積み上げ、石のふたをして帰る2人。その夜、マックスは草原の中を楽しそうに走るスウィングの夢をみた…。

スウィングが祖母の家に来た時に、もうすぐ母親が迎えに来ることを告げるマックス。いつまでも一緒にいられるようにとスウィングは、毎日首にかけていたお守りをマックスに渡す。「一緒にいられなくても、これに触れば、いつでも私のことを思い出すはず」

夏の終りとともに、別れの時がやってきた。ある日、マックスがミラルドと一緒にトレーラーでギターの練習をしていると、コーヒーをいれに台所に立ったミラルドが倒れてしまう。誰にも受け取められないミラルドの突然の死。”死んだ人間は2度と戻らない”というジプシーの伝承により彼が住んでいたトレーラーや全ての持ち物は燃やされてしまう。焼けたトレーラーの中から見つけたギターのネックを2人は思い出の川に流しにいく。そしてついに、マックスとスウィングにもさよならの時がやってきた。マックスは、スウィングが字を読めないことを知らずに、思い出の詰まった日記を彼女に渡し、迎えに来た母親の車に乗る。黒い大きな瞳を潤ませマックスをじっと見つめるスウィング。

燃やされたはずのミラルドの靴をはいたスウィングが去った後には、マックスが渡した日記が残されていた。

スタッフ

監督・脚本:トニー・ガトリフ
撮影:クロード・ガルニエ
編集:モニック・ダルトンヌ
音楽:マンディーノ・ラインハルト、チャボロ・シュミット、
アブデラティフ・チャラーニ、トニー・ガトリフ

キャスト

マックス:オスカー・コップ
スウィング:ルー・レッシュ
ミラルド:チャボロ・シュミット
マンディーノ:マンディーノ・ラインハルト
リベルマン医師:ベン・ズィメット
マックスの祖母:ファヴィエーヌ・マイ

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