イン・ザ・カット

●3つの才能が、あなたを裸にする。
2004年、NYを舞台に暴かれる「深くて、深い女の『性（さが）』」。
メグ・ライアン主演、ニコール・キッドマン製作、そして監督・脚本に『ピアノ・レッスン』でアカデミー賞に輝いた女流監督ジェーン・カンピオン。単なる映画人の枠を超え、世界中の女性から支持される3人が奇跡のコラボレーションをなし、「女性の性（さが）」に深く切り込む真の問題作を誕生させた。
本作『イン・ザ・カット』は、世界に衝撃を与えたスザンナ・ムーアのベストセラー小説をジェーン・カンピオンが映画化したもの。ニューヨークの大学で文学を教える知的で冷静なヒロインが、殺人事件をきっかけに、心の殻に封じ込めてきた激しさを露にしていくまでを描く。
「この作品は、私の女優人生を吹き飛ばす爆弾のような存在だった」—その言葉どおり、メグ・ライアンは、これまでのイメージを脱ぎ捨てリアルで生身な女を演じ、新境地を開いた。当初、ジェーン・カンピオンは自作『ある貴婦人の肖像』で主演をつとめたニコール・キッドマンを念頭に脚本を進めていた。しかし、脚本に魅せられたメグが、この役を手に入れるため監督のもとを訪ね、その場で演技テストを申し入たことから主演を彼女に決定。一方、二コールは本人の強い希望により、製作として名を連ねることとなり、ここに3つの女性才能による奇跡のトライアングルが完成したのだ。

メグ・ライアン演じる大学講師フラニーが唯一情熱を傾けるのが”言葉集め”。自分と世界が言葉で繋がっていると考えるフラニーだが、詩に導かれるように事件の核心へ近づくうちに、言葉では処理できない世界へと入り込んでいく・・・。身体を通じてお互いの心の襞を探りあう男女。背後でうごめく連続殺人の謎。絡み合うふたつの物語を盛り上げるのは、メグ同様、ジェーンとの仕事を自分への挑戦として受け止め集まった個性派の俳優たちだ。フラニーの欲望を刺激する刑事マロイには、『ウインドトーカーズ』などで活躍するマーク・ラファロ。フラニーの腹違いの妹で、報われない愛に身を焦がすポーリーンには、『ロード・トゥ・パーディション』などに出演するジェニファー・ジェイソン・リー。また、フラニーにつきまとう神経症のニューヨーカー、ジョンには『インビジブル』のケヴィン・ベーコンが扮し、強烈な存在感をアピールする。さらに、スタッフ陣にもニコール・キッドマンを筆頭に豪華な顔ぶれが揃った。脚本は、カンピオンと原作者のスザンナ・ムーアが共同で執筆。撮影監督には、アカデミー賞受賞作『シカゴ』を手がけたディオン・ビーブがあたり、鋭利で美しい映像を生み出した。また衣装デザインは、二コール主演の『誘う女』で脚光を浴びたベアトリックス・アルーナ・パストールが手がけている。

魅惑のスタッフが作り出す匂うほどに親密な空気感のなか、現代のお伽噺とでもいうべき普遍性をはらむ本作は、圧倒的な芸術性に彩られるなか、愛の本質、そして信頼と欲望の限界を問いかける。