原題:Songs From Second Floor

ジャック・タチ meets キューブリック in ストックホルム!

2000年カンヌ国際映画祭審査員特別賞

2000年10月6日スウェーデン公開

2000年/デンマーク・ノルウェイ・スウェーデン合作/98分/カラー/1:1.66/ドルビーサラウンド/ 提供:アーティストフィルム 配給:ビターズ・エンド

2003年11月28日よりDVD発売開始 2003年11月28日よりビデオレンタル開始 2003年5月3日よりシネセゾン渋谷にてレイトショー公開

公開初日 2003/05/03

配給会社名 0071

解説



構想20年、撮影4年。莫大な時間と製作費、そして気の遠くなるような労力を掛けて、壮大なるローテク巨編を創り上げたのは、カンヌ国際広告祭で8度のグランプリに輝くCF界の巨匠、ロイ・アンダーソン。デジタルが当たり前のこの時代に、アナログ感あふれる不思議で独特な世界を創り上げています。車が凄まじく大渋滞するシーンはミニチュアを使って、空港のロビーから人々が大脱出するシーンはだまし絵を使って、セットの中で撮影しています。挑戦的なまでに迫力のある映像と得体の知れない不穏な空気が生み出す、奇妙なドキドキ感は、観る者の心をここちよくかき乱してくれます。ワンシーンワンカットで切り取られる人間世界は、狂気すら感じる完壁さの中に、驚きとバカバカしさに満ち満ちています。独自の世界観と唯一無二のスタイルを貫き通すアーティスト、ロイ・アンダーソンの作品が今回、初めて日本で劇場公開されます。

<底なしのブラックユーモアとゆる〜いおかしみ>

とある惑星の、とある場所で次々と起こる不条理な出来事。突然サラリーマンはリストラされるし、道に迷った男は訳もなく殴られるし、太っちょマジシャンはマジックに失敗して観客に笑われちゃう。な一んかうまくいかない人たちが、先を競うようにして現実から逃げようとしている。優しい人々、正直な人々、毎日を懸命に生きる人々の時代がもうすぐそこまで近づいているように見えるんだけど…。

この不思議な世界で起こる出来事が、いつ、どこで起きていることなのかは誰にも分かりません。『散歩する惑星』の住人たちは、毎日を穏やかに過ごしたい、といった誰もが願う理想を果てしなく追い求めています。これまで懸命に生きてきた人々は、ここではないどこかを求めて、空港へ殺到し、道路は大渋滞を起こします。神をも笑い飛ばすほどの底なしのブラックユーモアと、シュールで滑稽なおかしみをゆる〜く漂わせながら、人間らしく生きることの難しさを寓話的に描いています。

<いかんともしがたい男たち>

『散歩する惑星』に出演している白塗りの男たち。ロイ・アンダーソンは、「時代や場所を特定しない、普遍的なキャラクターを表現して欲しかった」と登場人物を白塗りにした理由を語っています。彼らは街中でスカウトされた普通のおじさんたち。主役のラース・ノルドは現役の印刷工で、奥さんとホームセンターでテーブルクロスを選んでいたときにスカウトされました。以来、彼はアンダーソン製作による乳製品のCFに登場する意地悪な農場夫として有名になりました。その他の出演者たちも、運転手やセールスマン、エンジニアや弁護士など一般の人々で、ぎごちない振る舞いが、人間クサさを醸し出ていて、笑いを誘います。今回の出演者はアンダーソン製作のCFの常連さんとして、スウェーデンのお茶の間では、おなじみのメンツなんです。

音楽は、世界的ポップスグループABBAのキーボードを担当している、ペニー・アンダーソン。荒廃した世界にクラシックなメロディがメランコリックに響き渡ります。また、ペルーの詩人セサル・バジェホの「ふたつの星の間でつまずいて」の中の一編の詩が登場人物をつないでいます。ロイ・アンダーソンは20年以上前にこの詩に出会い、人間のあり方を見つめるこの詩に特別なものを感じて、本作を創ることを決意しました。

ストーリー


とある惑星の、とある場所一サラリーマンは突然リストラされるわ、道に迷った男は訳もなく殴られるわ、太っちょマジシャンはマジックに失敗して観客に笑われちゃう。そんなある日、電車の中にぽつねんとたたずむひとりの男がいました。乗客の高らかな歌声とともにやってきた男の名はカール。保険金が欲しくて、自分の家具屋さんに火を付けたら、すべてが灰になってしまいました。これですべてが終わるはずだったのに…。

カールには、ふたりの息子がいます。長男のトーマスはタクシーの運転手をしていたけれど、人々の悩みを聞くうちに心を病んでしまいました。むかし、彼は美しい詩を書いていたのに、今は誰とも話せなくなってしまいました。次男のシュテファンは、そんな優しすぎる兄を想って、義姉と子供たちの面倒を見ながら、跡を継いでタクシ−の運転手をしています。彼はかつてスサンヌという女の人と一緒に暮らしていましたが、ポイされた今はひとり身です。カールはトーマスを見ると、どなってしまったりして、なんだか落ち着きません。そんな中、カールは救いを求めて教会を訪ねました。神父も家は売れないし、旅行代金を払ったけど旅行代理店は潰れてしまったりして、うまくいかない様子。街中は株価のせいで、デモをする人々で埋め尽くされています。カールは、保険金も手に入らず、人々の大聖年に対する不安な気持ちにつけ込んで、十字架を安値で仕入れて高く売りつけようとします。自分の人生もうまく立て直せず、落ちぶれるカール。

街中は、ただならぬ空気に包まれていきます。カールは昔、スヴェンという男に借金をしていましたが、お金を返す前に彼は自殺してしまいました。カールは正直ホッとしていましたが、霊となったスヴェンに出会ってしまいます。また、姉さんに謝れなかったことを悔いている少年の霊も現れます。彼らは民族問題でドイツ軍に処刑された兄弟です。この世に思いを残した行き場のない霊たちはさまよい出します。年老いた人々は、純真な子供をいけにえにして、この世界を救おうとします。マジックに失敗したマジシャンや不倫をしているカップルもどこかへ旅立とうとしています。混乱の中、経済を立て直そうと会議が行われますが、ビルが崩れ始め、皆、自分の命を守るのに必死です。道路や空港は、現
実から逃げ出そうとする人々や車であふれかえっています。新しい世界が、もうすぐそこまで近づいているように見えるんだけど…。「もう、そこまで兄さんの時代がやってくるんだ…」

スタッフ

監督・脚本:ロイ・アンダーソン
エグゼクティブプロデューサー:フィリップ・ボベール
プロデューサー:リーサ・アルヴァート
撮影:イストヴァン・ボルバス、イェスバー・クレーヴェンオース
音楽:ベニ−・アンダーソン
録音:ヤン・アルヴェマルク
ミキシング:オーヴェ・スヴァンソン
小道具:ヨハンナ・バーンハッドソン
衣装:レオンティン・アルヴィットソン
特殊効果:ロバート・コマレク

キャスト

カール:ラース・ノード
シュテファン:シュテファン・ラーソン
マジシャン:ルチオ・ヴチーナ
最高指揮官:ハッセ・ソーデルホルム
会社員:トルビョーン・ファルトロム

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