エイゼンシュテイン
原題:EISENSTEIN
誠実であるために、時に、敢えて真実から目をそらすことがある。 (ゲーテ) 進め!世界がでんぐりがえるまで!!
2002年8月22日ドイツ初公開
2000年/ドイツ、カナダ/35mm/カラー/1:1.85/100分/ 配給:ツイン、スローラーナー
2002年8月3日よりイメージフォーラムにてモーニング&レイトショー
公開初日 2002/08/03
配給会社名 0251/0048
公開日メモ 『戦艦ポチョムキン』『メキシコ万歳!』『イワン雷帝』と,湧き上がる黒雲の中をカメラを片手に駆け抜ける,異端の天才映画監督セルゲイ・エイゼンシュテイン。 進め!世界がでんぐりがえるまで!!
解説
『戦艦ポチョムキン』『イワン雷帝』『メキシコ万歳!』
いかなる暴君—スターリンでさえも支配できなかった
異端の天才映画監沓工イゼンシュテイン!
その亡霊は、いまなおロシアの撮影所を俳御しているのだ!!
『エイゼンシュテイン』は、1889年に生まれ、いかなる暴言—スターリンも支配できなかった、あるひとりの天才についての物語である。ロシア革命に参加し、“煽動列車”に乗ったエイゼンシュテイン。舞台の演出家として出発し、『ストライキ』で長編映画の監督としてデビューしたエイゼンシュテイン。『戦艦ポチョムキン』『十月』『アレクサンドル・ネフスキー』と、髪を逆立て、新しくて、グロテスクで、エキセントリックで、大胆不敵で、ふざけながらも真摯で、綿密に計算された映画を撮りつづけたエイゼンシュテイン。同性愛者ではないかと噂され、師や仲間を粛正の嵐の中で殺され、世界中を飛び回り、アメリカやメキシコで映画を撮ろうとしたエイゼンシュテイン。スターリンが『イワン雷帝』第II部を観ながら激怒している時、後に彼の死の原因となる心臓発作を起こすまで踊り続けていたエイゼンシュテイン。こうして、彼は激動の時代を駆け抜けハリウッドの占い師が予言した通り、ちょうど50歳の時に独りで死んだのだった。そして、ロシアの撮影スタジオにはエイゼンシュテインの亡霊が出没すると噂されているのだ。
『エイゼンシュテイン』は、こんな天才の人生の中で最も激しく揺れ動く26年間を描いた物語なのである。
革命した、恋した、疾走した、絶望した!
1920年代ロシア。
湧き上がる黒雲の中をカメラを片手に駆け抜けるエイゼンシュテイン。
進め!世界がでんぐり返るまで!!
監督は、この映画が長編映画デビューとなるレニー・バートレット。彼は、8年もの間、エイゼンシュテインの亡霊と格闘したのだ。撮影は、サリー・ポツター監督『オルランド』のアレクセイ・ロディオノフ。音楽は、マイケル・ナイマンやギャビン・ブライヤーズとのコラボレーションでも知られているバラネク・クァルテットのアレクサンダー・バラネスク。自らが演劇の演出家でもあるエイゼンシュテイン役のサイモン・マクバーニーは、まるで催眠術にでもかかったように、この役を演じきった。彼らは、全編にわたってロシア、ウクライナ、メキシコという実際にエイゼンシュテインが撮影した場所でロケし、真実と虚構をまぜこぜにしながら、真実よりもはるかに純粋な何かを見ているかのような気持ちにさせられる、大胆でユーモラスで、美しい作品を誕生させた。
『エイゼンシュテイン』は、いかなる暴君——スターリンでさえも支配できないほど偉大な、あるひとりの天才についての不遜な物語である。
そして、ロシアの革命的な映画作家であるセルゲイ・エイゼンシュテインのその栄枯盛衰と贖いは、皮肉なユーモアと幻想における史詩であり、感動的な物語である。
『エイゼンシュテイン』は、芸術と権力のはざまにおける現代寓話となるべく、伝記というものを超越する。
巨匠アレクセイ・ロディオノフ(『オルランド』)による撮影は、全編に渡ってロシア、ウクライナ、メキシコという実際の地で行われた。『エイゼンシュテイン』は視覚的享楽である。
ストーリー
(ACT 1)
モスクワ1921年——国内線の終焉でモスクワが混乱と飢饉に陥っていた頃、若いセルゲイは演劇界の革命的巨匠メイエルホリドの炎のような情熱に魅惑されていた。
セルゲイの才能はその師の革命的な試練の場で鍛えられ、惨めさと理想主義の真っ最中で、魅力的でハンサムなグレゴリーと親しくなっていった。
(ACT 2)
セルゲイのエゴと辛辣なウィットとその才能は、目のくらむような高さまで昇りつめる。
27歳のとき、『戦艦ポチョムキン』によって世界で最も偉大な映画作家として賞賛され、一夜にして英雄となったのだ。
しかし、彼の皮肉な言動と知性と名声は、成功という名に群がる敵を増殖させることとなった。
スターリンの権力が広がりはじめると、彼はその権力を利用してセルゲイの作品に口を出しはじめ、台詞を変えさせ、歴史を塗り替えるためにセルゲイの才能を支配しようとした。
(ACT 3)
スターリンはセルゲイをハリウッドに赴かせるが、彼らもまたセルゲイの才能と破壊的機知が支配し難いものであることを知る。
セルゲイはメキシコこそが自由を味わえる唯一の場所だと思うようになる。
イデオロギーからの自由、検閲からの自由、生と死の終わりのない輪廻における映画を作る自由、そしてグレゴリーを愛することへの自由。
しかしグレゴリーは自由ではなかった。
彼はセルゲイに、それらの自由が権力の前でいかに虚しいものかを警告するが、時はすでに遅かった。
スターリンからの一通の電報が、セルゲイの楽園での生活を終わらせたのだ。
(ACT 4)
モスクワに戻ると、若かりし頃の理想主義と変革時代はすでに過ぎ去っていた。
グレゴリーがスターリンお抱えの映画監督になり、セルゲイは世間からの嘲笑を浴び彼の作品は上映禁止となった。
セルゲイは生き延びるために黙従した。
そしてスターリンの望むことをし、強力な指導者を賛える『アレクサンドル・ネフスキー』を作り、再び一夜にして英雄となったのだ。
しかし、その時すでに彼の友人たちは皆この世を去ってしまっていた。
このスターリンとのファウスト的な取引の代償は、セルゲイが心から愛した人物、師であり創造の源であったメイエルホリドの銃殺と時を同じくするという、彼にとって致命的な傷となって返ってきたのだった。
(ACT 5)
絶豊の淵から見いだすことができた唯一のものは、師によってセルゲイの内に芽生えた、変革に対して忠実であることの強さだった。
それは作品のクライマックスでスターリンの構カに対抗することである。
セルゲイは『イワン普帝』第I部を世に送り出した。その結集、作品はもう一人の偉大なる指導者への賞賛として受け止められた。
しかし、スターリンが『イワン雷帝』第II部を観て、劇場公開される頃には、極悪非道な人物を描いた作品になってしまっていた。
セルゲイはもはや結果を怖れてはいなかった。
彼は真実を語るべく歴史を塗り替えたのだ。
遂に彼は自由を手にした。
遂に偽りと恐怖の囚われの身から完全に解放されたのだった。
スターリンが怒りに打ち震える中、セルゲイは恍惚となり、心臓が文字通り爆発するまで踊り続けていた。
セルゲイは彼の人生と魂に潜む悪魔に背を向けたのだ。
スタッフ
脚本・監督:レニー・バートレット
製作:マーチィン・ポール=ハス、レジーヌ・シュニット
エグゼクティブ・プロデューサー:ウォルフラム・テイッチー
製作協力:トム・ラジーカ
撮影:アレクセイ・ロディオノフ
編集:ヴィーク・フォン・カロルスフェルト
音楽:アレクサンダー・バラネスク
プロダクション・デザイナー:スザンヌ・ディーリンゲル
美術:バーバラ・ケスラー、スフェタ・フィラトワ
衣装:タチアナ・ボドゥナーヤ
スタイリスト:バーバラ・オーレン
キャスティング:サラ・バード
録音:クロード・ラ・アヤ
音響編集:レイモンド・フェルメッテ
ミキサー:ハンズ・ピーター・ストロブ
ヘア:マリー=フランス・カーディナル
メイク:クリスチャン・ファツトーリ
史学顧問:ナウム・クライマン、ミューツァイ・キーノ(モスクワ)
製作:VifフィルムプロダクションGmBH+エイゼンシュテイン・プロダクション
キャスト
セルゲイ・エイゼンシュテイン:サイモン・マクバーニー
グレゴリー:レイモンド・カウルサード
ペラ:ジャクリーン・マッケンジー
メイエルホリド:ジョナサン・ハイド
アンドレ:バーナビー・ケイ
アーニャ:レニ・パーカー
ジーナ:ソーニャ・ヴァルゲル
イリーナ:アンドレア・メイソン
ラク:ティム・マクマラン
ピンコフ:イアン・バーソロミュー
スタルケル:ダニエル・マクアイヴ7一
アメリカのプロデューサー:ロルフ・サクソン
反プロレリタリアートの俳優:ルイス・ハモンド
スターリンの声:バーナード・ヒル
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