原題:Tillsammans/Together

みんなといるから、しあわせがある

ヴェネチア国際映画祭正式出品作品 フランダース国際映画祭準グランプリ

2000年/スウェーデン、デンマーク、イタリア/カラー/106分/DTS/Dolby SR 提供:ビターズ・エンド、バップ 配給:ビターズ・エンド

2003年11月29日より銀座テアトルシネマにてロードショー公開

公開初日 2003/11/29

配給会社名 0071

解説


ある日、パパとけんかしたママが、エヴァとステファンを連れて向かったヨーラン叔父さんの家。そこは、ヘンテコな人たちが一緒に暮らす“コミューン:Together”だった…。家族4人のアパート暮らしから一転、見知らぬ大勢の大人たちとの共同生活。しかもテレビはない、お肉も食べられない、クリスマス・プレゼントだってない!!エヴァとステファンにとって、コミューンでの生活は不満と驚きの連続。初めは馴染めず、殻に閉じこもってばかりだったけど、とびきり魅力的な住人たちとの生活の中で、ふたりの頑なな心は次第に溶けてゆく。そしてある冬の夜、ひとりぼっちになったパパがママを迎えにやって来て…。ひとつ屋根の下、一緒に暮らせば、けんかしたり、悩んだり、いろいろ問題もあるけれど、ひとりぼっちの毎日じゃ、やっぱりつまらない!一度は壊れかけた夫婦の関係、家族の絆。血のつながりのない、他人同士の共同生活の中で見えてくる“一緒に生きていくことの素晴らしさ”。人と人とのつながりが希薄になった今だからこそ感じて欲しい心温まる名作が誕生しました。
女だけど女も男も好きなアンナ、政治の集まりに行こう!と誘うエリック、フリーラブをモットーとするレナ。愛について、性について、政治について、声高に意見をぶつけ合い、ときに衝突しながらも、お互いの個性を認め合う住人たち。そんなエキセントリックな住人たちの自由な生き方に触発され、次第に“自分らしさ”に自信を取り戻していくエヴァとステファン。ひとくせも、ふたくせもある愛すべき登場人物たちの一喜一憂に、時に笑い、時にはらはらさせられながら、最後にはじんわりと幸せな気持ちにさせてくれる至福のラストが待っている。世代を越え、国境を越え、観た人すべてをハッピーにしてしまう魅惑の〈ホーム〉ムービー、それが『エヴァとステファンと素敵な家族』です。
70年代、全世界に広がったフラワームーブメント全盛期。チェ・ゲバラ、ピノチェト、毛沢東。男女平等、フリーラブ、同性愛…。既存の制度や価値観に異を唱えた若者たちが自由を求め、自分たちの手で理想郷を作ろうと共同生活を送った場所、それがコミューン。話し声の絶えないにぎやかな食卓、音楽とダンスで更けてゆく夜の時間。『エヴァとステファンとすてきな家族』は、そんなコミューンが舞台となっています。スウェーデンの誇る世界的アーティスト・アバの名曲「S.O.S.」を主題歌に、70年代ポップスが満載。またエヴァとステファンが両親と住むアパートは、当時の赴きを残した近代的な集合住宅。そしてコミューンは、郊外の自然に囲まれた一軒家。内装は、70年代ならではのポップな色彩に溢れ、壁紙やリネンにはヴィヴィッドな花柄のテキスタイルを使用、インテリアにも北欧ならではの温かみのある木素材のテーブルや椅子が登場。キッチンやダイニングに溢れる可愛らしい雑貨から、住人たちが身に着けているどこか懐かしい洋服や小物まで、見所満載です。
監督は、デビュー作『ショー・ミー・ラヴ』で、スウェーデンの田舎町に住む女の子のほろ苦い青春を描き、ベルリン映画祭をはじめ世界中で絶賛されたルーカス・ムーディソン。撮影当時32歳、待望の第2作となる『エヴァとステファンとすてきな家族』は、70年代のコミューンを舞台に繰り広げられる人間模様。18人にもおよぶ登場人物たち一人一人の個性を見事に際立たせながら、綿密に構成された脚本、ユーモア満載の粋なせりふ回し、練りに練られた絶品のストーリーで“人と人が共に支えあって生きることの大切さ”を描き上げました。また人物の内面に迫る特徴的なカメラワークは、前作同様、ウルフ・ブラントオースとの共同作業。そして個性溢れる登場人物たちはほとんどがTVや舞台で活躍する本国スウェーデンの、味のある俳優たち。皆で一軒家に泊まり込み、共同生活を送りながら、映画同様に家族のような関係性を築き上げ、見事なアンサンブルをみせています。

ストーリー


1975年、ストックホルム。エヴァとステファンは、夫婦喧嘩をした母エリザベートに連れられて、叔父ヨーランが住むコミューン“Together”へやってきた。そこには共同生活をする人たち——男権主義に反抗してレズビアンになったアンナ、アンナの元夫のラッセ、彼らの息子テト、ラッセを密かに想う同性愛者のクラス、ヨーランの恋人レナ、共産主義者のエリック、シンネとシグヴァルド、その息子のムーンがいた。エヴァとステファンは突如、大勢の大人たちに囲まれて生活することになった。
その夜、アンナはしきりにエリザベートを誘い、ワインを飲んだり、音楽を聴いて踊ったりしてふたりで夜更けまで楽しんでいた。翌日、皆で食事中に革命の話をして、ラッセに笑われたエリックを慰めるために、レナは恋人ヨーランの許しを無理に得て、セックスをする。ヨーランは複雑な表情を浮かべながらも何も言い出せずにいる。
いつものように、皆で食事をしながら、好きなことをおしゃべりしている大人たちを横目に、ステファンはそっと家を出た。父ラルフに会うために、ひとりでバスに乗ってアパートを訪れたのだ。ステファンは呼び鈴をならすが、ラルフはドアの外にいるステファンを見つけるや否や、慌てて部屋の掃除を始める。部屋に入れようとドアを開けるとすでにそこにはステファンの姿はなかった。ステファンは父に会えず、がっかりしたままバスに乗って帰った。
家に居場所のないエヴァはひとり、オンボロ車の中に佇んでいた。そんなエヴァを見つけ、話し掛けてきたのが隣の家に住むフリドリックだった。メガネの度数が同じという共通点を見つけて打ち解けるふたり。メガネを取り替えっこして話をしていると、フリドリックの母マルギットがやって来て、ふたりを無理矢理引き離してしまう。マルギットは、“Together”の人々を快く思っていなかった。
フリドリックを意識するようになったエヴァは念入りにお化粧をして、フリドリックを迎える。車の中で会うと、母親がうるさいので、ふたりは“Together”でおしゃべりをすることにした。エヴァはフリドリックに、ここの住人たちは、何事も逆さに考える「やかまし村の子供たち」の登場人物たちにそっくりだと話す。一方、父親に会いたい一心のステファンは、大人たちの目を盗んで父親に電話を掛ける。電話には出たが、酔っぱらったラルフは、ステファンに気づかない。
ラルフは水漏れ工事のため、ひとり暮らしの老人ビリガーの家を訪れる。ビリガーは人生がうまくいかないことを嘆いていた。子供がいるなら、会わなければいけないとビリガーに忠告をされ、ラルフはエヴァとステファンをレストランへ呼び出す。子供たちは、“Together”の住人たちのことを「バカ」だと言い、その変わりぶりや、テレビのない生活、クリスマスを祝えない常識はずれなきまりごとがあることを父親に話す。するとラルフは、声を荒げ、立ち上がり叫んだ。「そんなバカなことを誰が決めたんだ!」。子供たちになだめられ落ち着くラルフ。その帰り道、財布がないことに気づいたラルフは、エヴァとステファンを置いたままレストランに戻った。しかし財布は見つからず、店員に言い掛かりを付け暴れ始めたラルフは駆けつけた警察に勾留されてしまう。一方、何も知らない子供たちは、夜道で父親の帰りを待っていたが、待ちくたびれたエヴァはステファンを残したまま、ひとりで家に帰ってしまう。それを知ったエリザベートはエヴァを激しく叱り、ステファンを探しに向かう。そしてステファンを無事見つけ、家族3人は“Together”に帰るのだった。次の日、エリザベートはラルフに電話をかけ、子供たちを置き去りにしたことを非難した。
ある日、ヨーランとラッセは子供たちが欲しがっていたテレビが安値で売りに出ていることを知り、他の仲間に相談もせず勝手に購入する。それを知ったシンネとシグヴァルドは、“Together”を出る決意をする。一方、仲間たちの目を政治に向かせようとするがうまくいかないエリックも、コミューンを出て行くことを決意する。それを聞いて初めて、エリックを愛していることに気づいたレナ。そんな彼女をはじめは、慰めていたヨーランだったが、やはり気持ちが釈然としない。そしてショックのあまり寝込んでしまったレナの顔に、思わず食べ物を皿ごとひっくり返してしまう。レナは叫び声を上げて、怒り出した。エリックが去って傷心のレナは、エヴァと仲良くしているフリドリックにさえもちょっかいを出す。それを間に受けた純情なフリドリックは、エヴァに自分が好きな相手はレナだと告白する。フリドリックに恋をしているエヴァは激しくショックを受ける。しかし、レナが淫乱な女であることを知り失望したフリドリックは、初めて自分がエヴァを意識し始めていることに気づくのだった。自分のせいで両親が喧嘩をしてしまい、行き場を失ったフリドリックは、その夜エヴァの部屋に泊まる。同じところが壊れたメガネを掛け、ふたりは初めて本音でしゃべり出した。
ビリガーは寂しさのあまり、水道が壊れたと嘘をつき、ラルフを呼び出した。自分の生い立ちや境遇、そしてこの世で孤独ほど怖いものはないと語り出すビリガー。家族に会いたいが、どうずればいいのか分からないというラルフに、ビリガーは、花を買ってエリザベートに会いに行くことを薦める。ビリガーの付き添いで“Together”へ向かい、エリザベートに一目会おうとドアの前で必死に今までの事を謝るラルフ。しかし、エリザベートはもう自分たちは終わりだと言い放つ。そしてその時!ラルフとエリザベートのやりとりを見ていたヨーランは、突如2階に駆け上がり、今まで自分の心を踏みにじってきたレナを、突発的に家の外に追い出すのだった。
エリザベートに会えず“Together”の横に車を停めて落ち込むラルフの様子を見に来たステファン。「ママの気持ちが変わるまでここを動かない」とラルフはステファンに告げる。そして、クリスマスプレゼントのミニカーとエヴァヘのプレゼントにテッドのレコード、ママヘのプレゼントには花を渡すようにとステファンへ託す。ラルフはステファンを抱きしめ、今までの行動を悔い、みんなを愛していると語る。エリザベートは、眠るステファンを挟んで、ラルフと車の中で話し合う。それを見つめるアンナは寂しい気持ちになり、元夫ラッセの部屋を訪ねる。そこには、ラッセの布団に潜り込んでいたクラスがいた。悲鳴を上げ、逃げるように部屋を出て行くアンナを見て、ラッセとクラスはお互いに顔を見合わせるのだった。
その晩、エリザベートは“Together”の中で、ラルフと話し合う。「家を出て自分は変わった」言うエリザベートにラルフは「もう一度やり直したい」と語る。あくる日の朝、ラルフは誰よりも早起きをして台所に立ち、率先して皿洗いをしていた。その様子をみてエリザベートは微笑む。そして庭は一面の雪景色。“Together”の住人たちは冬空の中、一斉に外に出てサッカーを始める。滑ったり、転んだり、ぶつかったりしてサッカーを楽しむ住人たち。皆が抱き合う中、やがてラルフとエリザベートは見つめ合い、キスをする。

スタッフ

監督・脚本:ルーカス・ムーディソン
プロデューサー:ラーシュ・ヨンソン
撮影:ウルフ・ブラントース
美術監督:カール・ヨーハン・ドゥ・イェール
衣装:メッテ・メッレル
メイク:リンダ・ボイエ・アフ・イェンネース、イェシカ・セーデルホルム
編集:ミカエル・レズチロフスキ、フレードリック・アブラハムセン
録音:ニクラス・メリッツ、アンデシュ・ビッリング、“ユードリーガン”
音響:モーテン・ホルム

キャスト

エヴァ:エンマ・サミュエルソン
ステファン:サム・ケッセル
エリザベート:リーサ・リンドグレン
ラルフ:ミカエル・ニュークヴィスト
ヨーラン:グスタフ・ハンマシュテーン
レナ:アニア・ルンドクヴィスト
アンナ:イェシカ・リードベリィ
ラッセ:ウーラ・ノレル
クラス:シャンティ・ルネイ
エリック:ウッレ・サッリ
シグヴァルド:ラーシュ・フローデ
シンネ:セシリア・フローデ
テト:アクセル・スーベル
ムーン:エミール・ムーディソン
フリドリック:ヘンリック・ルンドスロム
マルギット:テレース・ブルンナンデル
ラグナル:クラース・ハッテリウス
ビリガー:ステーン・ユングレン

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