原題:GOSFORD PARK

お茶は4時、ディナーは8時 真夜中には殺人を・・・

アカデミー賞受賞脚本賞、ゴールデングローブ最優秀監督賞、英国アカデミー賞最優秀衣裳デザイン賞、ゴールデン・サテライト賞最優秀助演女優賞(マギー・スミス)、ロンドン映画批評家協会賞助演女優賞(ヘレン・ミレン)、カンザス・シティ映画批評家協会賞最優秀助演女優賞(マギー・スミス)、フロリダ映画批評家協会賞最優秀アンサンブル賞

2002年1月4日全米初公開

2001年/イタリア・イギリス・アメリカ・ドイツ/カラー/137分/ DTS / Dolby Digital / SDDS 配給:UIP映画

2003年03月21日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年03月21日よりDVD発売&レンタル開始 2002年10月26日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー公開

公開初日 2002/10/26

配給会社名 0081

公開日メモ ゴスフォード・パークと呼ばれるカントリー・ハウスでパーティーが催され、様々な人々が集まってくる。彼らの共通点はイギリス貴族であるということ。いや正確には自らを「貴人」であると思い込み、例外なく他人を見下すこと。そしてキジ撃ちと豪華な食事と、他愛のないおしゃべりや他人のゴシップを楽しみにしていること。ところがそれはあくまでも表向きであって、それぞれが自らの描いた「絵」のために玄関の扉を開けた瞬間から自分だけの「ストーリー」を演じ始める…。

解説



●23の映画賞の受賞が物語る名作の誉れと重厚な輝き
1932年11月、イギリスー一第一次世界大戦は昔話となりつつあったが、世界恐慌の影響が色濃く残りナチス・ドイツの台頭によって、新たな戦火の予感が忍び寄る季節。伝統と格式という過去の遺産に寄りかかったゴスフォード・パークという名の老木には多くの欄熟した果実がなっていた。その実は木の下の者たちにとって決して手の届かないもの。ところがその老木が下から揺さぶられた時、熟しきったひとつの実が地面に落ち、静かなざわめきが起こる…。ロバート・アルトマン監督の集大成ともいえる最新作『ゴスフォード・パーク』。どんな言葉ですらこの作品を称賛するに足ることはないが数々の映画賞受賞歴はこの作品が「本物」であることを物語っている。アカデミー賞脚本賞、ゴールデン・グローブ賞監督賞、全米映画批評家協会賞監督賞・脚本賞一助演女優賞、英アカデミー賞作品賞・衣装賞、ロンドン映画批評家協会賞作品賞・助演女優賞一一その他、合計16の賞で23個の栄冠に輝いている。
●あらゆるコントラストが複雑に絡み合うアンサンブル劇
 ゴスフォード・パークと呼ばれるカントリー・ハウスでパーティーが催され、様々な人々が集まってくる。彼らの共通点はイギリス貴族であるということ。いや正確には自らを「貴人」であると思い込み、例外なく他人を見下すこと。そしてキジ撃ちと豪華な食事と、他愛のないおしゃべりや他人のゴシップを楽しみにしていること。ところがそれはあくまでも表向きであって、それぞれが自らの描いた「絵」のために玄関の扉を開けた瞬間から自分だけの「ストーリー」を演じ始める…。すべてがひとつの屋根の下で起こり人々はひとまとめにされてはいるが決して同じ方向を向いてはいない。これはまさに『ウエディング』、『ザ・プレイヤー』を思わせるアルトマン監督が最も得意なアンサンブル劇。ホストはゴスフォード・パーグに住むマッコードル卿夫妻。猟と金にしか興味のない夫と、退屈を弄び優雅さとは裏腹に刺激を求めている妻。そして適齢期を迎え精神的に不安定な娘。ゲストはマッコードル夫人
の伯母にあたる伯爵夫人と妹夫婦が2組。マッコードル卿の関係では従弟の映画俳優とその友人であるハリウッドの映画プロデューサー。さらに、彼らより身分が低い夫婦1組と娘婿候補の青年も招待されていた。
ところが、ゴスフォード・パーグに集まった人間はこれだけではない。一部の例外を除いてゲストにはメイドや従者が付き添っている。勿論マッコードル家にも執事を始め料理人、ハウスメイド等、数
え切れないほどの使用人が「階下」で働いている。彼らは決して優雅な「階上」の世界には縁がなく見下されていることも当然だと考えている。しかし彼らがいなければ、御主人様は水筒の蓋を開ける
ことすらできないことも知っている。そして何より彼らにも彼らなりの「絵」と「ストーリー」がある。ここでも数々の人間がすれ違い、交錯しているのだ。カメラが部屋の中を縦横無尽に動き回り、登場人物すべての言葉の断片をとらえ、それぞれの人生をつむぎ出していく。それは時として、あくまでも別世界として描かれている「上」と「下」をも往復しやがて二つの世界が巧妙に交わり、さらに複雑なアンサンブルが生まれてくる。

●何気ない会話と行動に真実が隠されている
互いを探り合うように交わる会話と視線、彼らにとっては退屈極まりない音楽。晩餐の席には倦怠と煙草の煙が満ちていた。そして、ただ従順に黙々と仕えているかに見え実は耳をそばだて「階上」のゴシップを集めている使用人たち。パーティー1日目の夜は、何事もなく更けていった。少なくともそれぞれのベッドルームの扉が閉じられるまでは…。しかし、多くの「思惑」が静かに動き始めていたのも事実だった。キジ猟が行われた2日目の晩、事件が起こった。アルトマン監督はここで狂言回し的な存在として、ハリウッドの映画プロデューサー、ワイズマンを登場させる。彼はゴスフォード・パーグ内唯一のアメリカ人客で他のゲストから見下されているのと同様、彼もまわりを「鼻持ちならない連中だ」と考えている。最新作で貴族の暮らしのリサーチが必要となり、友人を通して招待されていた。タイトルは『チャーリー・チャンのロンドンの冒険』。内容は?と聞かれ「このようなカントリー・ハウスが舞台でキジ猟が物語の背景。夜中に殺人事件が起こり、全員が容疑者」と答える。そして事実その通りのことが起こり、’ゴスフオード・パークの主、マッコードル卿が殺されてしまう。アルトマン監督は登場人物をバラバラな枝のように配しながら、後から殺人事件という大きな幹を立てることによってそれぞれの「向き」に大きな意味を持たせ始める。勿論「階上」だけでなく「階下」にもーー融資を断られた義弟、不可解な行動をとるゲストの従者、「驚くほど嫌っている」と言った者、密かに通じていたメイド、結婚を反対されていた若者・・・様々なエピソードや何気ない会話が突然深みを帯び、
すべてがキーワードとなってくる。「誰が?」ではなく「なぜ?」…。複雑に絡み合っていた糸が徐々に解かれていく時、物語は意外な方向に進み始める。

●「アルトマン・ワールド」に住む、『ゴスフォード・パーク』の人々
本作品を含めアカデミー賞に5度ノミネートされているロバートーアルトマン監督はまさに彼ならではともいえる舞台設定を手際よく描き、あらゆる登場人物に「人生」と「背景」を与えている。これは
勿論、オスカーを受賞したジュリアン・フェローズの脚本の功績でもあり、そこにはアルトマン作品独特の話術が最大限に生かされている。元々のアイディアは劇中でもハリウッドの映画プロデューサー役を演じているボブ・バラバンがアルトマンに持ちかけた企画だった。そして長年に渡って監督を支えてきたプロデューサーのデヴィッド・レヴィによってそのほとんどがイギリス人という、魅力的なアンサンブル・キャストが出来上がった時、本作品は成功したのも同然だった。優雅さと倦怠感をあわせ持つ「階上」の人々を演じるのはゴスフォード・パークの主夫妻に『スリーピー・ホロウ』のマイケル・ガンボンと『イングリッシュ・ペイシェント』のクリステイン・スコット=トーマス。伯母役には2度のアカデミー賞に輝き『ハリーポッターと賢者の石』も記憶に新しい名優マギー・スミス。実在の俳優であり、作曲家でもあったアイボア・ノヴェロには『アミスタッド』のジェレミー・ノーザムが扮し、その他、『マイケル・コリンズ』のチャールズ・ダンス、『月下の恋』のジェラルディン・ソマーヴィル、『ハワーズ・エンド』のジェームズ・ウィルビー等が出演している。また、プロデューサーでもあるボブ・バラバンは劇中の設定と同じく数少ないアメリカ人キャストである。一方「階下」の人々には個性的なキャラクターが集められた。執事役に『トータル・フィアーズ』のアラン・ベイツ。裏方のすべてを仕切るミセス・ウィルソンにカンヌ映画祭で2度の主演女優賞を受賞
したヘレン・ミレンが扮し、料理人長をベテラン女優のアイリーン・アトキンスが演じている。その他、曲者ぞろいの使用人たちを『グラディエーター』のデレク・ジャコビ、『ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ』のエミリー・ワトソン、『プレタポルテ』等でアルトマン作品の常連、リチャード・E・グラントが演じている。また、ゲストの付き人役には比較的若い俳優たちが集められ、『トレイン`スポッティング』のケリー・マクドナルド、『グリーンフィンガーズ』のクライヴ・オーウェン、『誘拐犯』のライアン・フィリップ等が顔を揃えている。
以下は余談となるが、本作品のように様々な登場人物がひとつの場所に集い、それぞれの人生が交錯していくストーリーはその原点である名作の名を借りて「グランド`ホテル方式」と呼ばれている。そして本作品の舞台となっている1932年、アカデミー賞最優秀作品賞を受賞したのがその『グランドホテル』だった。

ストーリー




イギリス郊外に建つカントリー・ハウス、ゴスフォード・パークに次々と人々が集まって来る。ここの主であるウィリアム・マッコードル卿(マイケル・ガンボン)と、シルヴィア夫人(クリステイン・スコット=トーマス)の招待によるパーティーが催されるのだ。ハウス・パーティとはいっても食事とおしゃべり、殿方はキジ撃ちを楽しみにしているだけのものだが、彼らの空虚な自尊心はそれで十分に満たされるのだった。1932年11月、数百年にも渡って続いてきた厳格なイギリスの貴族社会は時代とともに変わり始めていた。
まず到着したのはマッコードル卿の従弟にあたる作曲家・人気俳優のアイボア・ノヴェロ(ジェレミー・ノーザム)とその友人のアメリカ人映画プロデューサー、モリス・ワイズマン。そしてシルヴィアの伯母、コンスタンス・トレンサム伯爵夫人(マギー・スミス)。さらにシルヴィアにとっては妹夫婦になる2組、レイモンド・ストックブリッジ卿(チャールズ・ダンス)とルイーザ夫人(ジェラルディン・ソマーヴィル)、そして、アンソニー・メレディス中佐(トム・ホランダー)と、ラヴィニア夫人(ナターシャ・ワイトマン)の車も到着した。彼ら「主人」は車から降りて玄関をくぐるだけだが、付き人のメイドや従者はそうはいかない。ドレス、宝石、銃といった荷物を、指示に従って運び込まなければならない。主人たちの優雅な「階上」とは違い、そこには人が入り乱れ、活気にあふれた「階下」の世界があった。マッコードル家では執事のジェニングス(アラン1ベイッ)が表方を、メイド頭のミセス・ウィルソン(ヘレン・ミレン)が裏方を仕切り、その他、料理人長のミセス・クロフト(アイリーン・アトキンス)、ハウスメイドのエルシー(エミリー・ワトソン)、従者頭で金庫係のジョージ(リチャード・E・グラント)といった個性的な面々が働いていた。そして、客の付き人は主人の名前で呼ばれることになっているという、貴族社会の古くからの習慣。トレンサム伯爵夫人のメイドで、パーティーは初めてのメアリー(ケリー・マクドナルド)は“ミス・トレンサム”と呼ばれることも含め、すべてに戸惑っていた。
「階上」のパーティーは単なるお楽しみの場ではなくなっていた。トレンサム伯爵夫人は、マッコードル卿からの仕送りの金額に不満があり、メレディス中佐は、新しく興す事業への融資をマッコードル卿に依頼していた。また、キジ猟の人数合わせのために呼ばれたフレディー・ネスビット(ジェームズ・ウィルビー)は、身分違いの妻メイベルを同伴しているにもかかわらず、マッコードル家の娘イゾベル(カミーラ・ラザフォード)との恋愛関係をエサに彼女を通してマッコードル卿に仕事の斡旋を頼んでいる。
さらに、遅れてやって来た若いルバート卿は財産目当てでイゾベルとの結婚を考え、反対しているマッコードル卿を何とか懐柔しようと企んでいる。そして、そんな「鼻持ちならない連中」を観察し、最新映画『チャーリー・チャンのロンドンの冒険』の構想を練っているワイズマン。一方、「階下」でも様々なゴシップが飛び交っていた。「シルヴィア夫人は嫌味なスノッブ女」、「メレディス中佐は破産寸前」、「メイベル夫人はメイドもなく、ドレスは安物」…。そんな中でメアリーはミセス・ウィルソンとミセスクロフトはなぜか仲が悪く、従者のミスターストックブリッジことロバート(クライヴ・オーウェン)は孤児院育ちであることを知るのだった。
 やがてその晩は静かにふけていく。変わったことといえば、どこか挙動不審の従者ミスター・ワイズマンことヘンリー(ライアン・フィリップ)が「眠れない」というシルヴィア夫人に誘われるまま彼女の部屋の扉を開けたこと。そして、銀食器室からナイフが1本なくなったことだった。
 翌日のキジ撃ちで小さな事件が起こる。マッコードル卿が暴発した銃で耳を撃たれたのだ。単なる事故か、それとも誰かが故意に狙ったのか…。その頃屋敷ではミセス・ウィルソンがロバートの部屋を訪ね、まるで母親のような優しさで語りかけていた。その日の晩餐の席で、ワイズマンが最新作の構想を語り始める。「このようなカントリーハウスが舞台でキジ猟が物語の背景。夜中に殺人事件が起こり、全員が容疑者。犯人?それは見てのお楽しみ」。上流階級の人々にとっては下品で退屈極まりないストーリーだったが会話が進むにつれ、彼らの様々な感情が露になってくる。仕送りを止めると言われたトレンサム伯爵夫人、融資を断られたメレディス中佐、無視されるフレディー。そんなマッコードル卿をなじったシルヴィアに給仕をしていたエルシーが思わず食ってかかる。「ウィリアムはそんな人ではない!!」。マッコードル卿は以前から彼女と通じていたのだった。唖然とする一同を前に、シルヴィアは冷たく「ずっと知ってたわ」と言い放つ。
 やがて落ち着きを取り戻した屋敷に悲鳴が響き渡る。食事の後、書斎にこもっていたマッコードル卿が何者かによって殺されたのだ。ワイズマンが語った通りの殺人事件が起こってしまった。凶器は
銀食器室から消えたナイフのように見えるが、実はその前に毒殺されている。つまり、彼は2度殺されたのだ。「誰が?」、「なぜ?」…。映画の構想と同じく、ゴスフォード・パークにいる全員が容疑者。なぜなら、マッコードル卿は数多くの人間ど繋がりを持っているのだから…

スタッフ

監督:ロバート・アルトマン
脚本:ジュリアン・フェローズ
原案:ロバート・アルトマン、ボブ・バラバン
製作:ロバート・アルトマン、ボブ・バラバン、デヴィッド・レヴィ
撮影:アンドリュー・ダン
編集:ティム・スクワイアーズ
プロダクション・デザイン:スティーブン・アルトマン
音楽:パトリック・ドイル
衣裳:ジェニー・ビーヴァン

キャスト

ウィリアム・マッコードル:マイケル・ガンボン
シルヴィア・マッコードル:クリスティン・スコット・トーマス
イゾベル・マッコードル:カミーラ・ラザフォード
コンスタンス・トレンサム:マギー・スミス
ヘンリー・デントン:ライアン・フィリップ
エルシー:エミリー・ワトソン
メアリー・マキーシュラン:ケリー・マクドナルド
ミセス・ウィルソン:ヘレン・ミレン
レイモンド・ストックブリッジ:チャールズ・ダンス
レイーザ・ストックブリッジ:ジェラルディン・ソマーヴィル
アンソニー・メレディス:トム・ホランダー
ラヴィニア・メレディス:ナターシャ・ワイトマン
フレディー・ネスビット:ジェームズ・ウィルビー

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