原題:RAPTOR

アメリカ本土が踏み潰される!! 人類が守るか?恐竜が奪い返すか? 地球上の覇権を賭けた闘いが今始まる!

2001年/アメリカ/96min 発売・販売:ファインアーツエンタテインメント(DVD税抜4,800/ビデオ税抜:16,000)

2002年4月26日DVD発売/2002年4月26日ビデオレンタル開始&5月3日発売

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解説



SFホラー映画の大御所、ロジャー・コーマンが贈る最新恐竜パニック巨編。本作では現代のアメリ力が舞台。コンクリートの大地を踏みしめ、アメリカ軍と激闘を繰り広げる恐竜が見もの。また、『タイタニック』でアカデミー賞を受賞、『スターリングラード』、『パーフェクト・ストーム』『ディーブ・インパクト』など超大作専門の作曲家、ジェームズ・ホーナーが音楽を担当!!

【チェック・ポイント!】

 自伝のタイトルに則れば“ハリウッドで百本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかった男”ロジャー・コーマンは、ホラー・SF・アクションなどのジャンル系作品を中心に、50本以上の作品を監督し、300本をはるかに越える作品でプロデューサーとしてクレジットされている、まさにハリウッドB級娯楽映画の帝王だ。昨年刊行された『新映画宝庫VOL.4 スプラッター・カーニバル』(大洋図書)で、彼について書いた際に、“個人的には、『ジュラシック・パーク3』公開にぶつける形で、『恐竜カルノザウルス4』と『ジュラシック・アマゾネス2』が連続リリース!…なんてことでファンを呆れさせてくれることを、密かに願ってやまない”と結んだのだが、まさか本当にこんな形でお目にかかれることになるとは…(苦笑)。
 というわけで、本作は93年の『恐竜カルノサウルス(DVD題『ダイナソークライシス』)』から数えて5本目のコーマン御大による恐竜映画最新作だ。そもそも『恐竜カルノサウルス』は、スティーブン・スピルバーグによるマイケル・クライトン原作の『ジュラシック・パーク』映画化に便乗せんと、ハリー・アダムナイト原作による同じく遺伝子操作で復活した恐竜の恐怖を描く『恐竜クライシス』を即製で映画化したもので、『ジュラシック・パーク』より先に公開し製作費を考えれば充分と言えるヒットを記録した。勿論、低予算即製を常とするコーマン製作作品故に、恐竜を描くにしてもスピルバーグのように最新CGIを使うことなど叶わず…というかそんな気はさらさらなく、その恐竜は専らハンド・パペットとラージ・スケール・メカニカル(と言うかほとんど実物大のハリボテ)で描かれた。そして、御大にしてみればそれなりの予算を投じたこの巨大恐竜モデル、一度の使用で満足するわけはなく、使えるうちは何度でも使えとばかりに、南海の孤島にアマゾネス軍団と恐竜が棲息していた『ジュラシック・アマゾネス』を94年に、“カルノザウルス・サーガ”第2弾で、新調された着ぐるみ恐竜の活躍が増えた『ダイナソーズ(同『ダイナソークライシス2』)』(95年)と、このモデルを流用した作品を続けざまに製作、そして本家『ロストワールド/ジュラシック・パーク2』の製作にぶつけ、サーガ第3作『ジュラシック・ウォーズ(同『ダイナソークライシス3)』をやはり本家公開前の96年12月にお披露目したのだ。そんな商魂逞しいコーマン御大のこと、スピルバーグ印第3弾製作を黙って指をくわえてみているわけはないではないか!ただし、今回ばかりはアメリカでも本家に約4ヶ月ほど遅れての、ビデオ・リリースとなったようだ。
 とは言え、『恐竜カルノザウルス』から早くも8年の歳月が流れている。御大ご自慢の実物大恐竜君の原料は、年月が経つにしたがって劣化し腐る性質を持っている。今、輸入版DVDで“死者の書”をデザインした『死霊のはらわた』スペシャル版のパッケージがホラー・マニアの間で大人気だが、あれだって数年経てばフッフッフッフッフ…というのは単にお金がなくて買えない筆者の僻みだが(苦笑)、出演を重ねるに従いお疲れの様子がうかがえた恐竜君、果たして現存し撮影に使えるのだろうか?御大のことだから、絶対に新調するとは思えないし…。そして作品を観て、この手があったか!と思わず手を叩いてしまったのだ…と言うか、本当は事前リリースに掲載された場面写真を見てうすうす予想はしてたんだけどさぁ。
 物語は、アメリカの荒野でジープを走らせていた3人の若者が、鶏大の小型恐竜に無残に食い殺される場面からスタートする…って、これ『恐竜カルノザウルス』のフッテージそのまま流用してるんじゃん。そうだよ、実物大モデルは保管が大変だけど、1度撮影しちゃったフィルムは、不滅とはいわないけれどいくらでも保存できるし、自分の絡んだ作品は、セットや小道具に限ることなく使える局面では何度でも使えってのが彼の鉄則だったのだ。例えば、『インナースペース』(87)などのジョー・ダンテは、御大から最低を割った予算とあり余るほどのフッテージの使用許可を得て、B級映画製作の舞台裏を描いたコメディ『ハリウッド・ブルバード』(76)で監督デビューを果たしたわけだし、またダンテが『グレムリン』(84)へとステップ・アップするきっかけとなった『ピラニア』(78)の特撮や水中撮影の場面は、その後リメイク版『ザ・ピラニア 殺戮生命体』(95)にまんま流用されたのだった。そういう意味では、本作は後者に近い作りになっている。以下、研究所から実験用鶏卵を運び出したトラックの運転手が孵った恐竜に襲われる場面や、計画に反対した科学者が首謀者にはめられ食い殺される場面等、前半は専ら『恐竜カルノザウルス』のフッテージが使われ、後半研究施設内でのアーミーと恐竜のバトルは『ダイナソーズ』からの流用だ。物語的には一応似たり寄ったりだけど、新たなものをでっちあげ、主役に据えたエリック・ロバーツの部分他全体としては然程多くはない新撮部分と、過去作品からのフッテージでいかに新作を再構成するかという、パッチワーク的な編集の粋(?)こそが『ジュラシック・シティ』の肝と言ったところか。襲われる前と襲われてるところでは、役者の服が違う…そりゃ、役者が違うしね…とか、クライマックスのブルトーザー対恐竜のバトルでは、1・2作それぞれから派手そうな場面を繋いだために、バトル中にブルトーザーの機種が変わったりと突込みどころも満載だが、初作で恐竜と真っ向から闘った黒人保安官の場面を活かすためには、同じ役者を連れてきて新撮パートで演じさせるあたりは整合性にちょっとは気を使おうという気配が伺えるね。いや、ホント、呆れ果てながらも、この強引なまでにリサイクルに徹した御大の映画作りの姿勢は、マジで感動ものだよ。劇中、恐竜に襲われたトラックが橋から転落する場面に至っては、サーガとは全然関係の無い『モンスター・パニック』(80)でお目にかかったものだしな。とりあえず、サーガ1・2作の目玉(?)を1本で見れちゃうので、お忙しい方、恐竜場面をまとめて見たい方にはうってつけではある。
 “超大作専門作曲家”ジェームズ・ホナーによる音楽というのも、嘘では無いがまさにコーマン・イズムの賜である。彼は映画音楽家として駆け出しの頃、コーマン御大のニューワールド・ピクチャーによる、巨大深海魚が人を襲う(らしい)海洋モンスター・パニック『UP FROM THE DEPTH』(79)、『モンスター・パニック』、『宇宙の七人』(80)などのB級作品の音楽を担当し次第にステップ・アップして行った“コーマン・スクール”の優等生の一人なのだ。そこで、御大は既得権を無駄にすることなく、サスペンスフルな場面では『モンスター〜』、勇壮な場面では『宇宙〜』からのスコアを中心に、ホナーがニューワールド作品のために書いた曲を流用した次第である。契約関連には抜かりのない御大のことだから、安い使用料で曲だけじゃなくホナーのネーム・バリューまでしっかりゲットしてしまったという感じだろう。恐るべし!
 なお昨年くらいから名前を目にする機会が増えてきた、ジェイ・アンドリュースなる本作の監督は、何を隠そう(別に隠しちゃないか)演出の腕は兎も角、早撮り・多作さで御大の信頼厚く、先に書いた『ジュラシック・アマゾネス』も監督したジム・ウィノースキーその人なのであった。新撮部分で一番目立つのが、見るからにシリコン入ってますみたいなオネーチャンが森の中で8分間(但し同じ場面の繰り返しあり、そんなところも効率的?)にわたって延々と繰り広げるSEX場面だったりするあたり、いくら名前を変えたところで、フレッド・オーレン・レイともどもお色気B級街道まっしぐらの作風は変わることなく一目瞭然なのでした。
(殿井君人)

ストーリー


化石から採取したDNAを基に恐竜を再生し軍事的に利用しようとする驚愕のプロジェクト、ジュラシック計画。国防省と科学者たちが推し進めてきたその計画は十数年前に中止されていたが、現在でも一部の科学者たちが閉鎖された施設で秘密裏に研究を続けていた。しかし、恐竜が施設を脱走し街中はパニック状態に陥る。警察は施設への電力供給を止めるが、恐竜たちを囲っていたレーザーシールドが解除され、逆に恐竜たちが大都市で猛威を振るう危険性が…。事態を憂慮した国防省は海兵隊の出動を決断する。

スタッフ

監督:ジェイ・アンドリュース
製作:ロジャー・コーマン
脚本:ジェイ・アンドリュース、マイケル・B・ドラックスマン、フランセス・ドール
撮影:アンドレア・ロゾット
音楽:ジェームズ・ホーナー

キャスト

ジム:エリック・ロバーツ
ハイド:コーピン・バーンセン
バーバラ:メリッサ・ブラッセル
コナリー:ティム・アベル
ローラ:ロリッサ・マッカム

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