上海アニメーションの奇跡
こんな動画(アニメ)見たことない! シャンハイ摩訶不思議ワールドが炸裂! 経典アニメと呼ばれる最高級作品集
中国(7作品を2プログラムで上映) 提供:徳間書店/配給:東光徳間
2002年4月13日(土)より渋谷ユーロスペースにてロードショー公開
公開初日 2002/04/13
配給会社名 0052
公開日メモ 中国アニメーション映画の傑作が、まとめてやって来る。中国のアニメーショソの歴史は、1926年、万兄弟らによって始まった。
解説
中国アニメーション映画の傑作が、まとめてやって来るという。私には懐かしい作品ばかりである。まるで大切な古い友人が何年かぶりに訪ねて来てくれろようで、嬉しくて仕方がない。中国のアニメーショソの歴史は、1926年、万兄弟らによって始まった。以後万兄弟は、アニメーションの魅力にとりつかれたように、数多くの短篇作品を制作する。その中には、中国初のトーキーアニメーションも含まれている。また1941年には、アジアで最初の長篇アニメーション『鉄扇公主』も彼等の手により完成した。
この作品は、翌年戦時下の日本でも公開され、少年時代の手塚治虫や、後に中国と日本両国のアニメーショソ界に大きな足跡を残した持永只仁に衝撃を与え、その後の彼等の人生航路に少なからず影響を及ぼすことになる。
戦争の激化にともない、万兄弟のアニメーション制作は中断を余儀なくされた。その結果兄弟は、各々の活路を求めて別れることになる。
第二次世界大戦後の中国は、国内の混乱を経て中華人民共和国となった。そして中国のアニメーション界も、長い空白の時をこえて再び始動する。中心となったのは、アニメーション制作に燃える漫画家特偉と、戦争末期中国に渡って残留した持永只仁等であった。それに呼応するように万兄弟も合流して、1957年国立のアニメーションスタジオ「上海美術電影製片廠(上海美術映画製作所)」が発足する。これにより中国のアニメーション制作の基盤が確立する。途中1966年に始まる文化大革命の嵐による空白を乗り越之て、最盛期には500人を有する中国最大のアニメーションスタジオに発展し、特偉や持永等の指導のもと70年代後半からは、世界に通用する多くの優れたアニメーション作品、そして作家を輩出するのであった。
今回公開される作品は、長篇、短篇7作品で、いすれも中国国内はいうに及ばす、世界中で高い評価を得た名作ばかりであろ。
『ナーザの大暴れ』は、中国を代表する長篇アニメーションである。1980年の日本初公開時、その大胆な展開と、京劇の躍動感そのままにシネマスコープの画面を駆け巡る主人公ナーザの勇姿を、アニメーションファンのみならず、宮崎駿等、多くのアニメーション関係者が絶賛した。中国建国30周年を記念して制作されたこの動画枚数5万枚の大作の監督は、ベテラン王樹枕、厳定憲、徐景達(阿達)の3人。当時の中国アニメーション界の最強トリオで、この作品にかけるスタジオの意気込みを感じさせる見事な出来映えであった。
『不射之射』は、川本喜八郎監督が、中国で制作したいと熱望した作品であり、川本の願いを中国側が友情で受け入れ、実現した作品である。川本は、単身上海スタジオに渡り、中国の人形アニメー夕ーを育成しながら制作にあたった。それまでの川本作品に見るストイックな世界が消え、上品なユーモアが漂う作品となった。この作品は1988年・中国で初めて開催された第1回上海国際アニメーション映画祭で、審査員特別賞を受賞した。プレゼソターは、病をおして訪中した審査員の手塚治虫。手塚にとっては最後の国際映画祭への参加であった。
『猿と満月』は、中国が誇る剪紙(切紙)アニメーションで、切り紙の猿達のかわいらしさが際立ち、その繊細な表現に思わず目を奪われてしまいそうになる味わい深い作品である。監督は、ベテランの周克勤。
『蝴蝶の泉』は、洗練されたモダンなキャラクター造型、そしておさえた色彩設計が、この悲恋物語を一層華麗にしている。何よりも光と影のコントラストに感心した。監督は『ナーザの大暴れ』の徐景達と常光希。常光希は、中国アニメーション界がその威信をかけて4年の歳月と1200万元の費用を使い1999年に完成した超大作アニメーション『宝蓮燈』の監督その人である。
今回のプログラムで注目したいのは、中国のお家芸である水墨画アニメーショソの傑作が、3本も含まれていることだ。
『牧笛』、『琴と少年』の監督は、中国アニメーショソのパイオニア、特偉(『琴と少年』は閻善春、馬克宜と共同監督)。『鹿鈴』は、唐澄とキョウ強の共同監督。いずれも世界アニメーション史上に輝く宝石のような作品である。空間を生かした省略の美しさ、水墨画の持つ独特の様式美に加えて、作品に込めた情感が見る者の心に染み入って来るのだ。その凄さと言ったらない。こればかりはじっくり見てもらわなければわからないだろう。これだけのバリエーショソがあって、しかも奥の深い中国アニメーションの世界!CGでは到底表現できまい!!
片山雅博(日本アニメーション協会理事 多摩美術大学講師)
ストーリー
『牧笛(ぼくてき)』
牧笛 The Cowboy’s Flute
★79年デンマークオデッサ国際童話映画祭金賞
★80年アンデルセン童話賞
1963年/20min/水墨画/カラー/スタンダード
世界初の水墨画アニメーション。笛を吹くのが上手な牧童が、仲良しの水牛と散歩に出かけた。樹の上でしばしまどろむ少年。ふと見ると牛がいない。得意の笛を吹きながら牛を探すうちに、少年はいつしか……。
『鹿鈴(ろくれい)』
鹿鈴 Bell on a Deer
★83年第3回中層金鶏奨最優秀美術映画賞
★183年モスクワ国際映画祭特別賞
1982年/19min/水墨画/カラー/スタンダード
上海美術映画製作所の3本目の水墨画アニメーション。『牧笛』と並ぶ代表傑作。大鷹に襲われた小鹿を、少女はやさしく手当をする。鈴の音が2人の友情のしるし。けれど、又もや大鷹が2人を襲ってきた…。
『琴と少年』
山水情 Feelings from Mountains and Rivers
★88年第1回上海国際アニメーション映画祭大賞
★89年中国金鶏奨最優秀美術作品賞
★89年第6回ブルガリアバルナ国際アニメーション映画祭優秀作品賞
1988年/19min/水墨画/カラー/スタンダード
シンプルにして繊細な筆の線によって描き出される水墨画特有の美しさが際立つ作品。年老いた琴奏者が旅の途中、病に倒れた。村の少年が助け看病すると、老人は元気になり、お礼に琴を弾いた。少年は琴の音に魑了される。
『猿と満月』
Fishing the Moon from the pool
★88年第4回カナダアニメーション映画祭児童映画部門1等賞
1981年/10min/切紙/カラー/スタンダード
中国で民間芸術として高度な技術の発達を遂げた切り紙のアニメーション。南方の山に猿が住んでいた。ある晩空を見上げると満月が光り輝いていた。魅了された猿たちは月を掴み取ろうと大騒ぎして山を走り回る。本邦初公開作品。
『蝴蝶の泉』
蝴蝶泉 The Butterfly Spring
1983年/24min/セル画/カラー/スタンダード
雲南省の少数民族ぺー族の悲恋の伝説を題材にした作品。雲南の画家、朱眠甫が美術を手掛けた。蒼山のふもと、木こりの娘ティエメイと狩人の青年シアランは恋人どうし。しかしある日、ティエメイを我が物にしょうとする強引で陰気な領主により2人は断崖に追い詰められる。
『ナーザの大暴れ』
Nazha Conquers the Dragon King
★80年カンヌ国際映画祭正式出品
★83年マニラ国際映画祭特別賞、
1979年/59min/セル画/カラー/シネスコ
明代の古典神話『封神演義』の一挿話を題材にしている。中華人民共和国建国30周年記念作品。中国では孫悟空と同様に親しみ深いキャラクー。美しい都、陳塘関(北京)の将軍、李清の夫人が3年身ごもり生んだのは蓮のツボミ。それは不思議な光を放ち、やがてそこから少年ナーザが飛び出した。
『不射之射』
不射之射 Archer without a Bow
★88年上海国際アニメーション映画祭容査員特別賞
★88年上海美術映画製作所小百花賞最優秀映画賞
★89年第1回全国映画・テレビアニメーション番組展示放映会名言賞
1988年/24min/人形/カラー/スタンダード
人形アニメーションの第一人者として国際的に活躍している川本喜八郎の作品。上海美術映画製作所のスタッフとの協力により作られた。春秋戦国時代、趙の国の紀昌は天下一の弓の名人になることが夢。邯鄲の都に住む飛衛に極意を学ぶが満足できない。ついには峨嵋山の甘蝿を訪ねた。
スタッフ
『牧笛(ぼくてき)』
脚本・演出:盛特偉
技術指導:賎家駿
作画:キョウ強・林文肖・我鉄郎・矯野松
背量:方済衆
撮影:段孝萱
作曲:呉應炬
笛奏:陸春齢
演奏:上海電影楽団
『鹿鈴(ろくれい)』
監督:唐澄・キョウ強
脚本:桑弧
美術:程十発
作画:常光希・常光治・陸青・他
撮影:段孝萱
音楽:呉應炬
『琴と少年』
監督:盛特偉・閻善春・馬克宜
脚本:王樹枕
美術:呉山明
作画:孫総青・陸成法・姚欣・他
撮影:段孝萱
背景:卓鶴君
作曲:候申康
『猿と満月』
監督:周克勤
脚本:凌ジョ
美術:徐景達
作画:孫能子・許小鳴・朱淑琴
背景:修揚
撮影:蒋友毅
作曲:呉應炬
『蝴蝶の泉』
監督:徐景達・常光希
脚本:姚忠札・他
美術:胡永凱・朱眠甫
作画:張景源・孫総青・他
撮影:蒋友毅
『ナーザの大暴れ』
監督:王樹枕・巌定憲・徐景達
脚本:王往
美術:張亭
作画:林文肖・常光希・他
撮影:段孝萱・蒋友毅・金志成
『不射之射』
原作:中島敦「名人伝」
監督・脚本:川本喜八郎
美術:趙鴻・劉焔星
アニメーション:車彗・川本喜八郎・峰岸裕和・他
撮影:喬元正・田村実
日本語ナレーション:橋爪功
キャスト
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