原題:Les Hautes solitudes

1974年/フランス/スタンダード/白黒/35mm/80分/ 配給:スローラーナー

2002年6月22日よりシネ・アミューズにてレイトショー公開

公開初日 2002/06/22

配給会社名 0048

公開日メモ 16歳で映画監督としてデビューした恐るべき子供フィリップ・ガレル。ヴェルヴェットアンダーグラウンドの歌姫ニコ。そして、ゴダールの『勝手にしやがれ』のヒロインとして観客を魅了し、本年から5年後のパリの路上で変死体として発見されたジーン・セバーグ。愛のドラマ。

解説



愛することは、見つめること。
男は、心臓の代わりにカメラをその胸の中に持っていた。男が1974年に発表した作品には、音も、声も、ストーリーもなかった。そこには、愛する女たちを見つめる、一人の男の視線だけがあった。彼女たちは、視線の中で、笑い、泣き、怒り、抱擁し、見つめかえす・・・・・・。愛することは、見つめること。このさくひんは、二度と触れることの出来ない逝ってしまった愛する人たちへの断念の痕だ。男は、16歳で映画監督としてデビューした恐るべき子供フィリップ・ガレル。女は、ヴェルヴェットアンダーグラウンドの歌姫ニコ。そして、ゴダールの『勝手にしやがれ』のヒロインとして観客を魅了し、本年から5年後のパリの路上で変死体として発見されたジーン・セバーグ。

私はジーンと映画を撮った。
彼女の表情をフィックスに納めた。彼女はアクターズ・スタジオの女優で心理ドラマを即興で演じた。彼女の表情だけを撮り、撮影現場は人目にさらされないようにした。そのポートレートは仕上がり、一度目の編集を見せた。彼女は映画の出来に満足した。ジーンは以前多くの映画に出演した。だが、彼女に全てが捧げられたこの一本に喜びを感じた。それに、このフィルムには、とても美しい彼女の魂がある。ジーンはシナリオを書いた。
「いま、オーレリアのことを話そう…」
彼女は詩を書き、出版した。彼女はネルヴァルの『オーレリア』と自身を同一視し、現代的なやり方で演じたがっていた。あるいはまた、ジャンヌ・ダルクに。アメリカ版ジャンヌ・ダルクをかつて演じたからだ。彼女は欝病になり、入院した。電気ショック療法を受け、そのことが悲劇的な展開をもたらしてしまった。
私は郊外にある現像所から歩いて戻ってくるところだった。川岸を歩いた。それは夏の終わりのある日のこと。釣り人たちの姿が、日没の光をあびくっきりと浮かび上がった。私は解放されたことの幸福感を満喫していた。だが、突然、路上のいたずらによって、夕刊の第一面に載るジーンの写真に出くわした。
“ジーン・セバーグ、自殺…”
フィリップ・ガレル【監督】

ストーリー


無音の画面の中で、ジーン・セバーグが、ニコが、話し、笑い、泣き、抑えがたい衝動に突き動かされ、人を愛し、抱擁する。
こんなにまで人の表情を見つめ続けることがあっただろうか。
おそらくジーン・セバーグとニコで作られるはずだった一本の映画。何かの理由で製作が中断され、残されたフィルムでフィリップ・ガレル監督は、一本の作品を作り上げた。これは映画ではない。断念の痕(あと)だ。『孤高』は、そんなことを想像させてしまう、80分の作品である。この映画には、タイトルもスタッフやキャストのクレジットもない。それだけではない。全編に音はなく、ストーリーもない。無音の画面の中で、ジーン・セバーグが、ニコが、話し、笑い、泣き、ある時は自殺への抑えがたい衝動に突き動かされ、人を愛し、抱擁する。こんなにまで人の表情を見つめ続けることがあっただろうか。映画は、”音”を得たことで可能性を広げただけでなく、何かを失いもしたことに改めて気づかされる。
愛し、そして、愛し続けることができなかった者が描き出した断念の痕(あと)。
または、痛みに引き裂かれた極北の恋愛映画。
フィリップ・ガレルは、ゴダールの再来と呼ばれた衝撃的なデビューを果たし、ウォーホルらのニューヨーク・アンダーグラウンド・シーンと接触、自伝的な色彩の濃い、内側に激しさをこめた静かで美しい作品を撮り続け、オリヴィエ・アサイヤス、レオス・カラックス、アルノー・デプレシャンなどフランスを代表する監督達がリスペクトする監督である。ジャン=リュック・ゴダールはガレルを評して「ガレルは呼吸するように映画を撮る」と語り、ニコは彼のことを「心臓の代わりにカメラを持っている」と語った。彼は、愛する者を静かに、しかし激しく見つめる。『孤高』は、彼の作り上げた作品の中でも、その”見つめる”ことにおいて、最も純粋な作品である。ガレルの愛したニコ、そしてジーン・セバーグ…。ガレルは彼女たちの表情を、姿を、感情を見つめる。言葉はひとつもない。触れることなく、カメラのこちら側からただ見つめ続ける恋愛映画。そして、今はその愛した二人が今やもうこの世から失われてしまっている…。痛みに引き裂かれた極北の恋愛映画。いや、これは映画ではなく、愛し、そして、愛し続けることができなかった者が描き出した断念の痕(あと)とでも言うべきなのかも知れない。
フィリップ・ガレルの映画には、彼が愛した者たちの記憶が結晶する。
ジーン・セバーグは、その短い銀色の髪を”セシル・カット”と呼ばれ、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手にしゃがれ』に主演。世界中から愛されたスター。ニコは”ヴェルヴェット・アンダーグラウンド”の歌姫。『孤高』は、ガレルの愛した、愛された二人のために撮られた作品である。ガレルは、ニコとともに7本の映画を作り、ジーン・セバーグの出会いと別れをオムニバス映画『新パリところどころ』の一編「フォンテーヌ街」に描き出した。フィリップ・ガレルの作品には、彼が愛した者たちの記憶が結晶する。また、『孤高』のスチールは、ニコのソロアルバム第4作目である『THEEND』のジャケットに使用されている。

スタッフ

監督:フィリップ・ガレル

キャスト

ジーン・セバーグ
ニコ
ティナ・オーモン
ローラン・テルジェフ

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