恋ごころ
原題:VA SAVOIR
2001年カンヌ映画祭正式出品作品 2001年ニューヨーク映画祭オープニング特別招待作品
2001年10月10日フランス初公開
2000年/フランス・イタリア・ドイツ/154分/カラー/DTS / Dolby 日本語字幕=齋藤敦子、柴田駿/宣伝デザイン=六高寺菜穂/資料協力=田之倉稔/資料編集:杉原賢彦、高水美佐/提供・配給#フランス映画社 共同提供=シネフィル・イマジカ
2002年12月21日よりDVD発売開始 2002年2月9日より日比谷シャンテシネにてロードショー公開
(C)2001 PIERRE GRISE PRODUCTIONS-FURANCE 2 CINEMA-VM PRODUCTION-MIKADO-KINOWELT
公開初日 2002/02/09
公開終了日 2002/03/29
配給会社名 0094
公開日メモ 舞台女優のカミーユを中心に6人の男女が繰り広げる子供ごころの大人の恋を描いたロマンチック・コメディ
解説
こんなに楽しい映画が本当にあのリヴェットの作品かと疑われ(?)、でもまぎれもなくリヴェットならではの映画だと人々が驚き、2001年カンヌ映画祭の最高の人気作品となったのが「恋ごころ」だ。5月16日、朝8時半スタートの第1回上映で厳しい批評家たちを笑いと幸福感の渦にまきこみ、夜の華やかな正式上映では、ペギー・リーの〈センツァ・フィーネ(終りなく)>の甘い歌声とともにエンディング・クレジットが終わった後も、うれしい傑作に対する感謝の叫びと賞賛の拍手が10分以上も鳴りやまなかった。
仏語原題は<ヴァ・サヴォワール>。日常会話で時にしか使われないが、ニュアンスの豊かな言葉で、くこの夏、あなた、どういう予定?>というような問いに、<ヴァ・サヴォワール(その時にならないとわからない)>と答える。
その夏、カミーユは、二度と戻らないと決心して3年前に去ったパリに戻った。イタリアから、劇団の主演女優として。恋人で劇団の主宰者のウーゴとともに。明日が初日。しかし、わけのわからない気分が彼女を襲い、初日の舞台で大失敗する。パリのせいなのか。かっての愛人ピエールと別れの決着をつけなかったからか。カミーユは意を決してピエールを訪ねるが、迎えるのは美しい女性ソニアだ。一方、ウーゴは、17世紀の喜劇作家ゴルド一二が晩年にパリで書いたと伝えられている幻の戯曲を捜索し、女子大生ドミニクに、異父兄のアルチュールに、そして二人の母デプレ夫人に出会う…。
「恋ごころ」はジャック・リヴェットの長編第17作。リヴェットは1928年3月1日、ジャンヌ・ダルクやフロベールで知られるルーアンの生まれ。カルチエ・ラタンのシネクラブやアンリ・ラングロワの初期のシネマテークで浴びるほどに映画を見て、やがてロメールやトリュフォー、ゴダール、シャブロルらがアンドレ・バザンのもとに結集する<カイエ・デュ・シネマ>誌で、誰よりも鋭い峻厳な批評を書いた。50年代末にトリュフォー、シャブロル、ゴダールが監督として華々しいデビューを飾って<ヌーヴェル・ヴァーグ>が世界の脚光をあびるが、リヴェットはかれらよりも先に長編第1作『パリはわれらのもの』の撮影に入りながら、完成までに3年かかった。資金不足が理由とされているが、純粋で透徹した批評眼が自らに容易な作品を作らせないのだ。63〜65年に〈カイエ・デュ・シネマ>誌の編集長として、従来の枠を大胆に破って、ロッセリー二、ラング、ルノワール、ホークス、ヒッチコックらの長大なインタヴューや作家論を組んで作家主義を決定的に打ち出した。監督作品では「修道女」、上映時間が4時間超の『狂気の愛』や、12時間半の『アウト・ワン』、「セリーヌとジュリーは舟でゆく」、「美しき謡い女」、2部作の「ジャンヌ」など代表
作は多いが、フランスでもほとんど見られていない作品も多い。「恋ごころ」は、「セリーヌとジュリーは舟でゆく」につながるコメディー・トーンで、構想の出発は敬愛するルノワールの「黄金の馬車」から、演劇を堂々と登場させての、リヴェットのひとつの集大成的な作品だ。
ストーリー
真夏のパリの夜。初日を明日に迎えて総げいこをしているのはイタリアのトリノから来たバッサーノー座で、演じるのはピランデッロの《あなたのお望みのまま》。主演女優のカミーユ(ジャンヌ・バ〃バーノレ)は、芝居に身が入らない自分にいらついている。どうしてこうなのか。パリに3年ぶりに帰って来たせいか…。
一座の座長で演出家で俳優、そして愛人のウーゴ(セルジオ・カステラット)が心配する。眠れないカミーユは、深夜の舞台でひとり、「ピエール!」とつぶやいてみる。初日。カミーユは舞台で一瞬セリフを忘れ、ウーゴが即興で救う。この3年、イタリアでこんなことは1度もなかった。最後の幕まで調子は戻らない。カミーユはカーテン・コールにあらわれず、一座の仲間を心配させる。ウーゴは、ただでさえ、切符の売れゆきが悪いのであたまが痛いのだが。ウーゴにはパリに来た密かな目的が別にあって、早朝から図書館に行くが、誰にも相手にしてもらえず混乱しているところを女子大生のドミニク(エレーヌ・ド・フージュロル)に助けてもらう。カミーユは決心してピエールの家を訪ねる。ピエールは外出中で、エレガントな女性ソニア(マリアンヌ・バスレール)が出迎えた。ウーゴが探しているのは、17世紀のヴェネチアの劇作家ゴルドーニが晩年にパリで書いたと噂が伝え,られている〈デスティーノ・ディ・ヴェネチア(ヴェネチアの運命)〉の草稿だ。出版も上演もされたことのないこの戯曲を初演できれば、ウーゴの一座は一気に全世界で有名になれる。ドミニクは、そうしたことに詳しい筆跡鑑定家がいると教えてくれた。
カミーユは公園に行く。日当たりのよいベンチで、3年前と変わらず、ドイツの新聞を読んでいるピエール(ジャック・ポナフェ)がいた。あいかわらず大学でハイデガーの哲学を教え、ハイデガーに関する論文はあいかわらず未完。今はソニアと暮らしている、それだけが変わった。ソニアは散歩から戻ったピエールに、〈彼女〉が訪ねてきたわよという。カミーユはピエールに劇場への招待の手紙を書く。ウーゴは筆跡鑑定家(クロード・ベリ)を訪ね、ゴルドーニのパリ時代の手紙から、当時ゴルドーニに資金援助をしていたヴェルネ家の子孫のデプレという夫人の名を知る。
カミーユの招待に応じてピエールがひとりで舞台を見に来た日、カミーユは舞台でようやく生き生きと演じられた。しかし、舞台がはねたあと、ピエーールの訪問を待つカミーユの楽屋には誰も訪ねてこない。ピエールは劇場の外で待っていた。ひさしぶりのふたりきりの散歩で、ピエールはカミーユに、月曜の夜、自宅に夕食にくるように招待する。眠れずに待っていたウーゴはしぶしぶ一緒に行くことに同意するが、イタリア男らしい嫉妬にかられ始める。ウーゴはデプレ夫人(カトグーヌ・ルーグェル)の家を訪問する。ヴェルネの蔵書は膨大で挨だらけの一室に放ったらかしだった。デプレ夫人はケーキづくりが楽しみで、子供がふたり。前夫の息子アルチュール(ブグユノ・トデスキーニ)と、再婚で生まれた娘ドミニク(愛称は、ド)だ。
バレエ教室。ソニアが少女たちにバレエを教えている。アルチュールはソニアに夢中だ。ウーゴは今日も蔵書室でゴルド一二探し。ドミニクが手伝ってくれるが、手がかりすらつかめない。アルチュールは、ドミニクがウーゴに親切すぎるのが気がかりだ。
ピエールの家での月曜の夕食。カミーユがひとりで先にくる。ソニアはびっくりするほど豪華な指輪をしているが、何かいわれがあるようだ。ウーゴはわざと遅れてきて、食事でも会話でも傍若無人にふるまってカミーユの気分を害する。
それぞれが味わった地獄の話。嫉妬のこと。マラパル「テ」。ピエールも、こだわると異常になる性格が見え隠れする。ホテルに帰りシャワーを浴びても気分がおさまらないカミーユはウーゴに怒りをぶつける。
ウーゴとドミニク、ふたりの仲が急接近し、ふたりは図書館からセーヌ河岸へ。カミーユはバレエ教室にソニアをたずねて昨日の失礼を詫びる。いつものようにアルチュールが来てふたりの様子をうかがっている。
デプレ夫人とドミニクが、舞台のカミーユとウーゴにみとれている。ふたりはウーゴの楽屋を訪れる。ドミニクはウーゴに完全に恋してしまったようだ。
カミーユはピエールにどうしても会いたい。電話すると、今はソニアは外出中だという。恋ごころにかられたカミーユを迎えて、ピエールは抑えていた情熱が弾け、なんということか、彼女を一室に監禁してしまう…。
スタッフ
監督・脚本:ジャック・リヴェット
脚本・台詞:パスカル・ボニゼール、クリスティーヌ・ローラン
劇中劇(未知の女)原作:ルイジ・ピランデッロ
撮影:ウィリアム・リュプチャンスキー
録音:フロリアン・エイデンベス
編集:ニコール・リュプチャンスキー
音楽:フォーレ、ジャン・シュウベール
歌:ペギー・リー
美術:マニュ・ド・シュヴィニ
衣裳:ローランス・ストゥリュズ
劇中舞台衣裳:クリスティーヌ・ローラン
製作:マルティーヌ・マリニャク
キャスト
カミーユ:ジャンヌ・バリバール
ウーゴ:セルジオ・カステリット
ピエール:ジャック・ボナフェ
ソニア:マリアンヌ・バスレール
ドミニク:エレーヌ・ド・フージュロル
LINK
□IMDb□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す
http://www.sonyclassics.com/vasavoir/
ご覧になるには Media Player が必要となります