エトワール
原題:tout pres des etoiles
バレエを生きる。それは愛より強い想い。 −−パリ・オペラ座バレエ、美しくも過酷な物語。
2001年3月14日フランス初公開
2001年/フランス/35mm/アメリカン・ヴィスタ/100分/Dolby SR 配給:キネティック
2010年12月22日よりDVDリリース 2002年12月21日よりDVD発売開始 2002年11月9日より新宿武蔵野館にてロードショー公開 2002年3月30日よりBunkamura ル・シネマ他全国順次公開決定!
公開初日 2002/03/30
配給会社名 0026
解説
パリ、オペラ座。300年以上の歴史をもつバレエの殿堂の舞台裏に初めてムービーカメラが入った。この話題は製作当時からフランス市民を騒がせ、完成を心待ちにする空気は日に日に高まっていた。そしてついに『エトワール』が公開される日がやってきた。2001年3月14日、8館で始まった興行は週を追うごとに勢いを増し、3週目には23館規模にまで拡大し、大ヒットを記録した。バレエをモチーフにした映画の大ヒットも記憶に新しく、今やバレエは大衆的な広がりを見せ、いつにないブームを迎えている。『エトワール』は、そんな熱気を助長するに違いない世界一のレベルを誇るパリ・オペラ座バレエを瑞々しく描き出した美しく過酷な人間ドラマである。ドガのタブローを彷彿とさせる繊細な瑞々しさと躍動感に満ちた映像。特殊な世界で交錯する歓喜と、絶望。それはファンのみならず、バレエには特別に興味がなかった人々をも感動させる強烈なドラマに満ちている。パリ・オペラ座バレエはエトワール(星)と称される最高位のダンサーを頂点にし、プルミエ・ダンスール、スジェ、コリフェ、カドリーユで成り立つ完壁な階級社会である。団員になるだけでも大変な一握りの選ばれた者たちの世界で日々、超人的努力をこなすダンサーたちは残酷な生存競争に耐えながら明日を夢見る。エトワールの座についた者は、歳月を負うごとに芸術への理解力を深めることと、衰え行く肉体という相容れないパラドックスに悩む。一方でトウ・シューズのなかで血豆をつぶし抗生物質を飲みながらステージに上がるカドリーユたち。あるいはバレエを続けることと、結婚し家庭を持つことのジレンマに悩むダンサーたち。それはバレエの神に愛された者と、そうでない者たちを峻別する残酷なドラマである。ステージでは見せないエトワールの素顔の美しさに加え、意外なほど正直に、胸のうちに抱える様々な悩みを打ち明けてくれるダンサーたちの人間臭さもこの映画の大きな魅力である。監督はベルトラン・タヴェルニエの息子ニルス・タヴェルニエ。この企画は彼の祖父母の家の隣に堂々とそびえていたオペラ・ガルニエ宮に魅せられた幼少時代に端を発している。出演は、現在最高峰のダンサー、マニュエル・ルグリ他、ニコラ・ルリッシュ、オーレリ・デュポン、引退の挨拶が涙を誘うエリザベット・プラテルといったオペラ座を代表するエトワールや、明日のエトワールを夢見るダンサーたち。振付師のイリ・キリアンやモーリス・ベジャールも登場。また、かつての世界的エトワールのノエラ・ポワントを母にもつミテキクドーや東洋人として初めて団員に選ばれた藤井美帆も顔を見せている。イリ・キリアンの「優しい嘘」、モーリス・ベジャールの「第九交響曲」、ピエール・ダルドの「祈り」他、「白鳥の湖」「ラ・シルフィード」など、コンテンポラリーとクラシック・バレエをふんだんに堪能できる。実際のステージとその練習風景やゲネプロを巧みに織り交ぜた構成はバレエが創作されてゆく舞台裏をエキサイティングに映し出している。
ストーリー
●日本公演
1999年4月、パリ・オペラ座バレエの芸術監督ブリジット・ルフェーヴル以下71人の一行が日本に到着。モーリス・ベジャール振付『第九交響曲』の公演のためである。舞台裏で出演者たちは心の内を語るーー。”舞台は麻薬だ。毎回、死ぬほどの恐怖を味わう。自分の演技に対する満足度はせいぜい75%足らず。でも止められない”。日本公演は喝采のうちに幕を閉じ、彼らは本拠地パリ、オペラ座ガルニエ宮へと戻っていく。
●エトワール
ガルニエ宮。この日の演目はピエール・ダルドの『祈り』、ジョージ・バランシン『アポロ』、イリ・キリアン『優しい嘘』の3作品。瞬間、舞台袖で息を整え、また緊張を隠してライトの下に出て行くダンサーたち。”口下手だったからダンサーになった。一種の自己表現だ'(ローラン・イレール/エトワール)。そして”僕の夢はただ踊ることだけ。エトワールなんて言葉は特別な意味を持っていない。観客と舞台を共有すること、それこそが僕の人生だ”と語るのは、現代バレエ界最高のダンサーと称されるエトワール、
マニュエル・ルグリ。その日『優しい嘘』を演じ終え、次に踊るのは『ラ・シルフィード』。“モダンからクラシックヘの切り替えが大変だ。きついけどこれがオペラ座なんだ”と語る。ユーグ・ガルが総裁になって以来、バレエ公演は年間150回。そのすべての公演は満席。2つのオペラ座での公演以外に、フランス国内外へのツアー公演もある。クラシックの名作のみならず、才能あるモダンの振付家を招いて新作にも挑戦する。そうしたレパートリーの幅を広げていくことがルフェーヴル芸術監督の意図である。
●サバイバル
“偉大な歴史と栄光に輝き、優秀な才能の集団によって構成されたクラシック・バレエの最高峰”(イリ・キリアン/振付師)。その一員になるための努力は過酷なものである。9歳の時からたった2時
間の遊び時間のほかはずっと練習に明け暮れる毎日。夜遊びなど問題外、規律正しい生活を子供の頃から身に付ける。正式団員を目指す者の多くは現在ナンテールにある付属のバレエ学校で厳し
い指導を受ける。常にライバル関係が存在し競争に勝った一握りの者だけが先に進むシステム。その厳しさは今も昔も変わらない。教師の辛らつな指摘が子供たちの心を傷つける。自分はダンサー失格なのかと悩むダンサーたち。試験前日の練習で不安に怯える14歳の3年生。練習不足を指摘され、うなだれていたマリーは後に学校を去っていった。
●バレエと人生の狭間で
かつて教師たちは、”家庭とバレエは両立しない”と諭した。しかし、”オペラ座の女性ダンサーが子供を持つのは30代が普通。バレエを諦める決心に時間がかかるのね。でも私は違う。一週間前に妊娠がわかったの。子供と一緒に舞台に立ってるなんて感動だわ”(アメリー・ラムルー/コリフェ)”。“独りでいる方が自由だし、自分を見つめる時間が持てる。でもそれでは人間的成長は望めない。父親になって舞台に重みが増した”(ローラ
ン・イレール)。“ミテキを産んだのはエトワール任命から2年半後だった。キャリアが台無しだと騒がれた。でも女性としての成長はプラスになると思ったの。”と語るのはミテキ・クドー〔スジェ)の母親であり教師のノエラ・ポントワ。
●引退
“学校に入ってから24年。最初は全てがバラ色で発見の連続でもずっと同じではダメだと気づく。疑問を抱き始める一方で肉体は衰えてくる。観客や自分を満足させられない恐怖。成功を手に入れたら継続しなければならない。それがエトワール”(エリザベット・プラテル/エトワール)。新旧の世代交代を象徴する出来事と騒がれたブラテルの引退のセレモニーが最後の舞台『ラ・シルフィード』の後、団員たちの間で親密に開かれている。”ここで踊る喜びを愛する人たちと分かち合えた。舞台で夢のように時が過ぎ、すべての瞬間を味わい尽くしました。どうぞオペラ座を愛し続けてください”。
●光と影
カドリーユの男性ダンサーが嬉しそうに語る。”代役だったけれど、キャストをもらえた”。誰かの突然の怪我やアクシデントによるチャンスを待ち望み、周到なレッスンを積む代役ダンサーたち。映画の最後の演目は『白鳥の湖』。トウ・シューズの中で血マメが化膿して抗生物質を飲むカドリーユ。踊れるの?の問いに”もちろん!舞台の上では痛みも何もかも忘れるの”と晴れ晴れと答える彼女。やがて幕が上がり、眩いステージの上で優雅に羽を伸ばす白鳥たち。しかし、カメラはむしろステージから戻り、その激しい運動量のため肩で息をしながら喘ぐ白鳥たちに優しい眼差しを向ける。
スタッフ
監督・撮影:ニルス・タヴェルニエ
撮影:ドミニク・リゴレー
モノクロスチール:ヴァンサン・テシエ
音響:ドゥニ・マルタン
編集:フローレンス・リカール
キャスト
ローラン・イレール
クレールマリ・オスタ
ミテキ・クドー
ノエラ・ポントワ
マニュエル・ルグリ
ギレーヌ・テスマー
エリザベット・プラテル
イリ・キリアン
モーリス・ベジャール
藤井美帆
LINK
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