原題:La Stanza del Figlio

生きている時は、開けてはいけないドアでした。 2000年『ダンサー・イン・ザ・ダーク』では“母の愛” そして2001年——新世紀のカンヌが選んだテーマは【家族】だった。

第2回東京フィルメックス TOKYO FILMeX 2001 特別招待作品::http://www.filmex.net/index.htm 2001年度カンヌ映画祭パルムドール賞(最優秀作品賞)受賞

2001年/イタリア=フランス/99min/カラー/ビスタビジョン/SRD/DTS/SDTS 配給:ワーナー・ブラザース映画

2002年07月26日よりDVD発売&レンタル開始 2002年1月19日より新春第2弾より丸の内ピカデリー2系にて公開

(C)2001 Warner Bros.All Rights Reserved.

公開初日 2002/01/19

配給会社名 0085

公開日メモ 息子を事故で亡くした家族のその後を描き、イタリアで大ヒットを記録するとともに、本年度カンヌ映画祭で最高賞パルム・ドールを獲得した話題作。

解説


あなたが家族に隠していたことは何ですか?

2001年のカンヌ。辛口の批評家やジャーナリストが集まるマスコミ向け上映会で、全員が総立ちになって拍手を送った作品があった。
眸年、あの『ダンサ—・イン・ザ・ダーク』を送り出したカンヌ映画祭が今年、パルムドールに選んだその作品は、イタリア映画『息子の部屋』。
監督・主演は、フェリーニ亡き後、イタリアを代表する映画監督であり、“異端の名匠”とて知られるナンニ・モレッティだ。
去年の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が激しく感情をかき立てる悲劇的な映画だったのと対照的に、今年は、傷つき疲れた現代人の心を深い慰めとやすらぎで満たす、豊饒な傑作の受賞となった。

成功した裕橿な精神分析医ジョバンニは、ある日、事故で息子を失う。残された彼は、妻、娘とともに、悲しみと後悔にさいなまれながら、空虚さの中で生きていかなければならない。
そんなある日、息子に、夏休みのキャンプで知り合ったガールフレンドがいたことがわかる。
子供だとばかり思っていた息子が、家族の知らないところで、恋をしていたのだ。
訪ねてきたガールフレンドと悲しみを分かち合ううちに、悲劇に耐えかねてばらばらになりかけていた家族に変化が起こる。
彼女が持っていた写真には、負分の部屋で、ひとりくつろぐ息子が写っていた。
自分たちの知らなかった彼の人生の一部を目にすることで、家族のそれぞれが決して受け入れられないと思っていた彼の死と、少しずつ折り合いをつけてゆく。

ここに描かれているのは、前だけを見て進むポジティブでアグレッシブな人々ではなく、立ち止まり、時に人生を受け入れることを拒否し、生きることの意味をもう一度考えてからやっと歩き出す人々の姿だ。
それは、絵空事ではないリアルな私たちの人生の姿でもある。
主人公のジョバンニに、事故当日の日曜日、息子とジョギングする約束を破って仕事に行った。
そのために彼が事故に遭ったと自分を責め、気持ちを立て直すことができずに精神分析医の仕事をやめてしまう。

悲しむこと、迷うこと、傷つけあうこと、何かを捨てること。
監督のモレッティは、登場人物にそれらを許し、その気持ちに黙って寄り添う。
そして、その先にこそ魂の再生の可能性があることをかすかに暗示して、映画は終わる。
ブライアン・イーノの名曲「バイ・ディス・リバー」が流れるラストシーンで、主人公とともに明け方の波に静かに洗われる砂浜を見ながら、乾いた心に静かにうるおいが満ちてゆくのを、私たちは感じることだろう。

ストーリー

イタリアの小さな港町。精神分析医のジョバンニ(ナンニ・モレッティ)は妻のパオラ(ラウラ・モランテ)、娘のイレーネ(ジャスミン・トリンカ)、息子のアンドレア(ジュゼッペ・サンフェリーチェ)と暮らしていた。思いやりとユーモアにあふれた、暖かな家庭。少しばかり退屈ではあるが、平穏な毎日。しかし、ある日、思いもかけない悲劇が起こる。アンドレアが事故で命を落としてしまったのだ。
その日は日曜日だった。朝食の席で、ジョバンニはアンドレアに、一緒にジョギングをしょうと誘う。しかし患者から「どうしても気分がふさぐので話を聞いてほしい」という電話が入り、ジョバンニは仕事を優先する。アンドレアは友人たちとダイビングに出かけ、潜水中の事故で死んでしまう。幸福な生活は、一瞬にして断ち切られてしまった。
悲嘆にくれる家族は、容易には心のつながりを取り戻せない。感情のささいな行き違いを修復できず、パオラはジョバンニと同じ部屋で眠ることを拒む。イレーネは何とか両親を支えなければという重荷を背負って悩み、両親公認だった恋人とも別れてしまう。そしてジョバンニは、「あの日、自分が往診にさえ出なければ」という自責の念から、精神分析医としての仕事に集中できず、ついには診療所をたたんでしまう。
家族の気持ちがばらばらになりかけていた頃、アンドレア宛てに一通の手紙が届く。差出人は別の町に住む、聞いたことのない名前の女の子。彼女は、夏休みのキャンプで知り合ったアンドレアのガールフレンドだった。子供だとばかり思っていたアンドレアが、家族の誰もが知らないところで恋をしていたのだ。
「その子に一度会ってみたい。アンドレアを失った悲しみを分かち合いたい」と言うパオラ。反対するジョバンニ。ある日、彼女が突然訪ねてくる。応対したジョバンニは、アンドレアが彼女に送ったという数枚の写真を見せられる。そこには、紛れもない息子の部屋で、しかし自分たち家族の知らない顔をした息子が笑って写っていた…。

スタッフ

監督:ナンニ・モレッティ
原案:ナンニ・モレッティ
脚本:リンダ・フェリ、ナンニ・モレッティ、ハイドラン・シュリーフ
撮影:ジュゼッペ・ランチ
美術:ジャンカルロ・バジリ
衣裳:マリア・リタ・バルベラ
サウンド:アレッサンドロ・ザノン
助監督:アンドレア・モライオリ
編集:エズメラルダ・カラブリア
音楽:ニコラ・ピオバー二
製作:アンジェロ・バルバガッロ、ナンニ・モレッティ for サケール・フィルム
共同製作:サケール・フィルム、Bacフィルムズ、ステューディオ・カナル
ライ・シネマ Tele+とのコラボレーションによる

キャスト

ジョバンニ:ナンニ・モレッティ
パオラ:ラウラ・モランテ
イレーネ:ジャスミン・トリンカ
アンドレア:ジュゼッペ・サノフェリーチェ
オスカー:シルビオ・オルランド
ラファエラ:クラウディア・デラ・セタ
トマゾ:ステファノ・アコルシ
アリアンナ:ソフィア・ビジリア

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