美術館で観るために生まれてきた、静かで美しい映画です。 写真美術館で観る映画ソリーズVo.1

2002年カルロヴィヴァリ国際映画祭正式招待作品 2002年サン。パウロ国際映画祭 ニュー・フイルムメーカーズ・コンペティション部門正式出品作品 文部科学省選定 日本芸術文化振興会映画芸術振興事業

2002年/日本/112分/ヨーロピアンビスタ/モノラル 製作:日活・バップ・博報堂・ハマーズ・NHKソフトウェア 配給:ザナドゥー

2003年07月24日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年07月24日よりDVDリリース 2002年11月23日より東京都写真美術館ホールにてロードショー公開

公開初日 2002/11/23

配給会社名 0103

公開日メモ 美術館で観るために生まれてきた、静かで美しい映画です。 写真美術館で観る映画ソリーズVo.1

解説


誰もが華やかな人生を送るわけではない。
けれど、小さな出来事に、人は心を揺らし、
いっか忘れられぬ時を生きていく。
これは、そんな美しい時の物語。
死んだはずの父から届いた一通の手紙に揺れる母と娘の、すこし不器用な、二つの恋のかたち。
お母さんのような恋は、しないと決めたのです。
母は、娘の恋を見まもるほかないのです。

それは、静かな静かな、幸せのかたち。

亡くなった父に対する母の想いの深さ。そして、それを幼少のころから感じ続けて、恋愛に臆病になってしまった娘。
ふたりをとりまく人々のふれあいの物語。

 ある日、死んだはずだった父から、一通の手紙が舞い込む。そんな事件で物語は始まります。穏やかな暮らしが微かに揺れ動き、母と娘は、遠い記憶にある家族の思い出の地を訪ねます。そして、その地でともに過ごす時間の中、やがて、ふたりがそれぞれの心に大切にしまっていた不器用な恋の物語が浮かび上がってくるのです。
 純真な、母と娘、それぞれの「恋」と「幸せ」のかたちを、山形県の美しい風景の中で、繊細な映像で描き出していきます。
 「金髪の草原」「パルコフィクション」など、これからの活躍が期待される唯野未歩子が、恋愛に一歩踏み出せない稲子の心情を静かに醸し出している。また、稲子がほのかな恋心を抱く玉水を演じるのは「DOGSTAR」「命」など日本を代表する俳優、豊川悦司。そして、死んだ夫を忘れずにいる母、澄江には映画・テレビ・CMなどマルチに活躍する松坂慶子が演じている。さらに、きたろう、天光眞弓、岸部一徳といった個性的な役者が参加し、静かで、繊細な映画を作り上げ
ている。

美術館のために、生まれてきた映画です。

 前作「鉄塔武蔵野線」で文化庁優秀映画作品賞を受賞した長尾直樹監督のもとに、第一線のスタッフ達が集結しました。撮影に、写真家として活躍する藤井保。美術設計には、アートディレクターの葛西薫。
また、台詞には、芥川賞作家の保坂和志が協力、音楽には、女性達からの強い支持を得る岸谷香が参加しました。その完成された映像への共感から、東京都写真美術館での上映を皮切りに、映画館での上映に加え、全国の美術館へと広がり、上映されていく予定です。

ストーリー


 山形県米沢市は、もちろん米沢牛で有名な地ではあるが、また、温泉地としても知られている。十あまりの有名な温泉地がある。
 娘、夏井稲子は、その地で市の職員として水質検査に携わっている。
 ある日、奥津館の源泉が枯れたという知らせに、調査に来た稲子は、温泉について任されていたという便利屋の玉水に出会う。一通り事情を聞き、玉水の連絡先を聞くと「電話は止まったままで、今は電報に頼るありさま」という答えが返ってきた。
 和歌山県太地町は、黒潮と鯨の町である。
 母、夏井澄江は、三十年続いたカメラ店を今も営んでいる。ひとりで。
庭では紫蘇や主具米が繁っている。
 夫は海の向こうに渡っていった。鯨のように。そして事故で死んだのだと、娘の稲子は聞かされていた。

 ある日、山形で暮らす親類の元に死んだはずの夫から一通の手紙が届く。手紙がサンパウロの日本人会から届いたことを電話で伝えられ、澄江はただ黙って、遠くを見つめてしまう。

 奥津館で、幼少の出来事がきっかけで、たまに音が聞こえなくなったりする自分の不安をはじめて告白した稲子を、玉水は、何も言わずに、そっと抱きしめる。
 いつしか、玉水に惹かれていくことに気づいた稲子は、意を決して、彼のアパートを訪ねるが、ドアを開けたのは玉水ではなく、子供の暁だった。暁の存在に動揺しつつも、料理を作る稲子。止まりがちな会話。
後片付けを終え、そそくさとアパートを後にする。
 とつぜん、市役所を訪れた玉水が、墓参りの代行で仙台に行くので、ピクニックのようなものだから一緒に行かないかと稲子を誘う。だが、稲子は、なにも応えることが出来ない。

 やがて、お盆で実家の和歌山に帰省するため、新幹線に乗り込むと、奥津館の主人と偶然出会い、玉水が街を去ることを知らされる。
 帰省中、父と母の思い出の地・凌雲峡へ澄江と出かける稲子。旅館の女将から、父が愛用していた水枕を渡される。それを懐かしむ澄江。
 部屋で。稲子は、思いがけず、母が父の水枕に手を付き、泣いている姿を見てしまう。亡くなった父への母の想いの深さを、あらためて感じる稲子の心の中で、しかし、何かが動き始めていた…。

スタッフ

脚本・監督・編集:長尾直樹
原案:詩集「買えない運命」著:中山加奈子
台詞協力:保坂和志
撮影:藤井保、松島孝助
照明:横道将昭
録音:木村瑛二
音楽:岸谷香
美術:福澤裕二
美術設計:葛西薫
製作:日活・バップ・博報堂、NHKソフトウエア、ハマーズ
制作協力:NHKソフトウエア・ソニーPCL
協力:山形県米沢市、山形放送

キャスト

夏井稲子:唯野未歩子
玉水龍男:豊川悦司
三益修平:きたろう
三益貞子:天光眞弓
玉水暁:岩間謙二
奥津館主人:高橋幹夫
凌雲閣女将:玉置こまゑ
尾花先生:岸部一徳
夏井澄江:松坂慶子

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