原題:ASANSOR(THE ELEVATOR)

誰も見たことがない、トルコ・エンタテインメント初上陸!

2000年アンカラ国際映画祭最優秀作品賞受賞 2000年ストックホルム国際映画祭正式出品

1999年/11月

1999年/トルコ/カラー/93分/35mm/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/日本語字幕:細川直子 制作:アルズ・フィルム、オゼン・フィルム、プラト・フィルム、ネガティブ・フィルム 配給:株式会社クライドフィルムズ

2001年12月21日ビデオ発売&レンタル開始 2001年8月20日(月)、俳優座トーキーナイトにて全日ロードショー (全国順次ロードショー予定)

公開初日 2001/08/20

配給会社名 0419

公開日メモ トルコではアラベスク映画と呼ばれるメロドラマをはじめ、アクション映画など娯楽映画も数多く作られているのだが、日本で紹介される機会はなかった。そんな隠れた映画大国から誰もが思いもよらなかったエキセントリックなエンタテインメントがついに日本に初上陸した。

解説


《誰も見たことがない、トルコ・エンタテインメント初上陸!》
トルコ。ヨーロッパとアジアを結ぶ国。日本ではイスラム教のモスク、ベリーダンス、ハーレムなどエキゾチックなイメージという国である。そしてトルコ映画というと、かつてカンヌ映画祭でグランプリに輝いた『路』のユルマズ・ギュネイ監督作品に代表される社会的、政治的色合いの強い作品が数本公開されただけである。実はトルコではアラベスク映画と呼ばれるメロドラマをはじめ、アクション映画など娯楽映画も数多く作られているのだが、日本で紹介される機会はなかった。そんな隠れた映画大国から誰もが思いもよらなかったエキセントリックなエンタテインメントがついに日本に初上陸した。
トルコ映画界はテレビの普及に伴って一時低迷していたのだが、近年はテーマ性と娯楽性を兼ね備えた作品が新しい流れとして確立されつつあり、興行的な成功も収めている。その代表的な作品がこの『エレベーター』なのである。シュールな映像とアヴァンギャルドな物語が展開し、そこには我々が想像するトルコとは全く違う世界があった。

《密室で繰り広げられる、男と女の倒錯した関係!》
過激さで人気のニュース番組のキャスター、ジャンはインターネットで知り合った女に会いに行き、エレベーターに閉じ込められてしまう。事故なのか?陰謀なのか?脱出不可能なジャンの前に現れた謎の美女。しかし女はジャンを助け出そうとせず、食事を与え、監禁したままで、彼を飼育し始める。その美貌と肉体で時に妖しく挑発し、時になぶりつける女に対し、ジャンは次第に憎しみではない別な感情を持ち始める。しかしエレベーターには彼のすべてを盗撮するカメラが仕掛けてあったのだ…
男がエレベーターに閉じ込められるという単純な物語、エレベーターという日常的で限定されたシチュエーション、そして登場人物も男一人と女一人という設定ながら、時間と共に高まっていく濃密な緊張感で、先の読めないミステリアスな展開を見せてくれる。極限状態で露になる人間のエゴ、倒錯した男女の妖しい関係を描きながら、過剰なマスコミ報道や急激な進化をするIT社会など現代への痛烈な警告を込めた作品になっている。本作は1999年11月にトルコ国内で公開されるや記録的な大ヒットとなり、社会問題としてマスコミを賑わせ、翌年のアンカラ国際映画祭で最優秀作品賞に輝いている。

《「客席にのんびり腰掛けて観ていられる映画ではない!」(アルトゥノクラル監督)》
演出はトルコ映画界の新鋭ムスタファ・アルトゥノクラル。薬学部出身という異色の経歴の43歳で、『エレベーター』が長篇映画3作目。毎度物議を醸し出す彼だが、本作では彼自身がいつもその標的になっているメディアに対するシニカルで残酷な仕掛けが施されている。しかし今回はテーマよりも面白さに徹した演出が冴えた作品になっている。
そしてアルトゥノクラル監督が今回マスコミの標的になった原因が、主演女優アルズ・ヤナルダーである。モデル出身で24歳の彼女は『エレベーター』が映画初出演。洗練された顔立ちと見事なプロポーションが魅力の彼女だが、監督との交際が発覚し、スキャンダラスな話題も提供した。相手役はトルコ国立劇場専属のベテラン舞台俳優ムスタファ・ウーウルル。アルトゥノクラル監督の前作で遅い映画デビューとなった彼だが、主演した2作品がトルコの映画興行成績でトップに立ち、一躍マネーメイキングスターとなった。
もう一人(?)の真の主役であるエレベーターはイスタンブール市内に実際に4階建てのセットとして作られた。これはトルコ映画史上最も高額な舞台装置である。

ストーリー



第1日目
イスタンブールを猛スピードで駆け抜ける車。運転しているのはジャン・シャルマン。過激な報道で視聴率を稼ぐニュース番組「衝撃の真実」の人気キャスターである。自分の名声しか考えない男が、急いでいるのはインターネットで知り合った女に会うためだ。無気味なアパートの前に車を停めたジャンは、古めかしいエレベーターに乗り込み、時間通りに着く…はずだった。しかしエレベーターは停止し、扉も開かない。非常ボタンを押すと、階と階の間まで落下してしまった。慌てて大声で助けを呼ぶと、ネットで約束した女が現れるが、来いとは言っていないと言い張る。女は微笑みながら、まるで犬でも見るような眼差しでジャンを見下ろし、救出しようとはせず、立ち去ってしまう。恐怖と焦躁の中、ジャンは脱出のため、クレジットカードをねじ回し代りにして操作盤を分解したり、携帯電話をエレベーターの下にぶら下げて連絡を取ろうとしたりしたが、状況は悪くなる一方だった。さらに泥棒のような男が悪戯で時限爆弾まで仕掛けたりするのだった。

第2日目
翌朝戻ってきた女はうって変わって愛想が良く、ジャンにタバコを渡し、食事や便器、そしてテレビまで与えたが、決して助け出そうとはしなかった。女はジャンを監禁し、飼育しようとしていたのだ。ジャンは一人になると鏡に向かって自問自答する。「俺は降参しない。」「俺は勇敢な男だ。」「俺はTVスターだ。」と。実はその鏡にはカメラが仕掛けてあり、女は時限爆弾の男たちと組んで、ジャンを監禁してその様子を隠しカメラで記録していたのだ。そうとは知らないジャンは女を口説いて扉を開けさせようと、得意の話術で彼女を引き込もうとする。しかし彼女はそんな下世話なジャンを逆に罵倒するのだった。

第3日目
朝食を持って現れた女を、ジャンは再び口説き落とそうとする。そして女が置き忘れた携帯電話でジャンは警察に連絡するが、途中でバッテリーが切れてしまう。これも女の罠だったのだ。しかしジャンはそんな女に次第に本心から惹かれている自分に気がつく。そうして女の足まで舐めながら、妄想を膨らませていくが、彼女はジャンを監禁という現実に引き戻す。ジャンを挑発したり、罵ったり、相変わらず冷酷な女だったが、部屋に戻って彼の叫び声を聞くと胸が痛み出すのを隠せなかった。

第4日目
ジャンはテレビで自分の番組が告発されていた裁判の判決が出たことを知る。その原告側の弁護士レイラの顔を見て、彼はすべてを悟った。自分が陥った陰謀の理由を、あの女を愛してしまったことを、そして今はこのエレベーターから出たくないことを。しかし女は今度こそジャンを置き去りにして、アパートを立ち去った。そして茫然自失のジャンが次に見たのは、テレビに映し出されたエレベーターの中の情けない自分の姿だったのだ。隠し撮りされた映像はインターネットを通じてテレビ局に配信され、全国に放送されたのだった。目ざといマスコミたちが早速駆け付け、ジャンのエレベーターを取り囲む中、再び女が現れ、エレベーターに乗り込む。見つめ合い昇っていく二人は、本当に愛し合っていたことに気づくのだが・・・・・・。

スタッフ

監督:ムスタファ・アルトゥノクラル
脚本:ムスタファ・アルトゥノクラル
助監督:トゥンジャイ・カプジェ
撮影:オメル・ファルック・ソラック
音楽:エルキン・アルスラン
音楽製作:デミル・デミルカン
美術:ムスタファ・ズィヤ・ウルケンジレル
照明:ネズィル・ユイジェル
録音:ムスタファ・ビョリュキュバシュ
編集:ムスタファ・プレスヘワ、ギュロル・フィリズ
衣装デザイン:エスィン・マラシュルオウル
衣装提供:フィリズ・タルラバシュ
衣装監修:フィリズ・ギュルメズ
メイクアップ:スィマィ・ムラトゥオウル
ヘア・デザイナー:セルハット・オズトゥルク、ギョクハン・ボズ
ポスト・プロダクション:バゼル・バイジャン

キャスト

ムスタファ・ウーウルル
アルズ・ヤナルダー
エムレ・アウトゥー
フンダ・バルン
デメット・シェネル
ブラック・セルゲン
サヴァシュ・オズデミル
ナージ・タシュドーエン
ハーカン・アイギュン
エルギン・アルドゥチュ
ジェム・オゼル

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