私を見て、 私を愛して、 私の名を呼んで——。

第9回フランス映画祭横浜2001出品作品::http://www.nifty.ne.jp/fanta/france2001/ 2001年カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞 2001年カンヌ国際映画祭監督週間オープニング作品 第14回(2001年)東京国際女性映画祭正式出品作品

2001年/フランス/カラー/1.166/ドルビーSR/97min 配給:オンリーハーツ

2003年03月28日よりビデオ発売&レンタル開始 2002年11月2日より新宿武蔵野館にてロードショー

フランス映画際2001レポート(ヴァレリー・ドンゼッリ インタビュー他)::http://www.unifrance.jp/yokohama/2001/report/index.htm

公開初日 2002/11/02

配給会社名 0016

公開日メモ 『クリスマスに雪はふるの?』のヴェッセ監督の新作。貧しさに崩れそうになりながらも寄り添って暮らす家族を豊かな映像で描く。

解説


『クリスマスに雪はふるの?』のヴェッセ監督の新作。貧しさに崩れそうになりながらも寄り添って暮らす家族を豊かな映像で描く。

【監督のメッセージ】

親愛なる日本の観客のみなさま、

これほど異なる言語と文化を持つ方々に作品を観ていただけるのは、大変光栄に思います。

私の3本目の映画『マルタ…、マルタ』は、子供時代とその思い出が、我々ひとりひとりの心に残しうる痕跡について描いてきた3部作の締めくくりとなります。再度、家族を題材に取り上げているのは、そこが、人としての感情的な関係を織り上げていく場であると思うからです。たとえそれが良い関係であれ、不幸なものであったとしても。そこ(家族)は、個人の人間形成が始まる場所なのです。

私の作品はメッセージ映画ではありませんので、何も教訓を引き出す必要はありません。『マルタ…、マルタ』の中で私が描こうとしたのは、自分のことを少しは愛していないと、他人を愛することは難しくて、そしてもしかすると、自分を愛するためには子供の頃に少しは愛情を受けていなければならないということです。これは「愛」と「癒しの必要」と「愛することの難しさ」と、そして「生きることの難しさ」についての映画です。

私にとって重要なのは、作品を観た人が、映画から“何か大切なもの”を汲み取るのではなく、何らかのイメージや感情といったものを、印象として持ち帰って下さることです。友達がそうするように、この映画が、ちょっとそこまでの道中、あなたとご一緒できますように…

どうぞごゆっくり上映をお楽しみ下さい。そして私の次回作で、またお会いしたいと思っています。

友情をこめて。

サンドリーヌ・ヴェッセ

ストーリー

マルタは両親の愛を知らずに育った。幼い弟の死をめぐって、一家は暗い影に覆われていた。優しく献身的な夫レイモンと結婚し、娘リーズと3人で暮らす今も、マルタは過去のトラウマから逃れられないまま毎日を過ごしている。数年ぶりに両親のもとを訪ねても、母親はマルタを姉マリーの名で呼び、父親もマルタの名前を口にしようとしない。そんな両親に向かってマルタは叫んだ。「私はマルタよ!マルタ、マルタ…!」

夫のレイモンは古着を売って生計を立てている。家事やリーズの世話もほとんどレイモンに任せっきりで、マルタは昼間から酒を飲み、時には一人で夜の街へ遊びに行ってしまう。だが、幼い頃からマルタを知っているレイモンは、辛抱強く彼女を愛し、リーズと3人の生活をなんとか保とうと努めていた。

ある日、3人は結婚してスペインで暮らしているマルタの姉マリーを訪ねた。夫にさえマルタの存在を隠していたマリーは、突然の妹の訪問を快く思わない。数日の滞在の後、マルタたちはマリーの家族と最後の食事をした。その席で死んだ弟の話を始めるマルタ。弟はマルタと一緒に水遊びをしている時に、誤って溺死してしまったのだ。姉ばかりを可愛がり自分のことは全く相手にしない両親や、彼らに愛されていることを鼻にかけている姉へのやりきれない思いがこみ上げ、マルタは感情を爆発させる。

スペインから戻った後、マルタはますます精神のバランスを失っていった。そして、橋の上で遊んでいたリーズが水に落ちてしまった時、マルタの中で何かが壊れた。「マルタ!」と叫ぶレイモンの声が遠くで響いている。だが、マルタはなす術もなく呆然と立ち尽くすのだった…。

その夜、一人で酒場へ出かけたマルタは店に居合わせた男たちの車に乗り、途中でレイプされてしまう。深い絶望感に襲われながら家に戻ったマルタは、シャワーを浴びている最中にバスルームに入って来たリーズに激しい感情をぶつけた。帰宅したレイモンは、泣き叫ぶリーズを見てマルタを問い詰める。だが、レイモンが隣家ヘリーズを預けに行っている間に、マルタは家を飛び出してしまった。

レイモンとリーズの2人きりの生活が続いた後、マルタが駅で発見されたという知らせが入った。病院へ迎えに行ったレイモンとリーズが見たのは、変わり果てたマルタの弱々しい姿だった。家族3人でやり直そうと決意したレイモンは、川のそばの静かな家を手に入れる。マルタがぼんやりと心許なく時を過ごしている間、レイモンは懸命に家の仕事をこなした。

マルタとリーズは森へ出かけた。無邪気にどんぐりを拾うリーズに、「もう絶対にいじめないからよ」と言うマルタ。するとリーズは「ママにいじめられたことなんかないよ」と答えた。その言葉はマルタの心の奥を震わせ、涙が頬を伝っていった。

その夜、ベッドを抜け出し窓の外を見つめるマルタ。静かに川に向かって歩みだし、ゆっくりと水の中へ進んでいくマルタ…。

やがて夜明けがやってきた。朝日が森や川を照らし、水面には美しい光が幾重にも輝いている。まるですべてを浄化するかのように美しく静誰な朝が訪れた…。

スタッフ

製作:アンペール・バルザン
監督:サンドリーヌ・ヴェッセ
脚本:セバスチャン・レニエ、サンドリーヌ・ヴェッセ
撮影:エレーヌ・ルヴァール
美術:トマ・ペタル
編集:ネリー・ケティエ
衣装:ナタリー・ラウル
録音:フランソワ・モレル、ストラトス・ガフリエリディス、ロラン・ドレイエ
監督助手:ケタル・ゲナン
配役:アントワネット・ブラ

キャスト

マルタ:ヴァレリー・ドンゼッリ
レイモン:ヤン・コヴァン
リーズ:リュシー・レニエ
マリー:リティア・アンドレイ
ミシェル:セヴリーヌ・ヴァンサン
ジュアン:ジャヴィエウルス
ランベール氏:ピエール・ペゾン
マルタの母:カトリーヌ・フェラン
マルタの父:ロベール・ベァル

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