原題:Roberto Succo

第9回フランス映画祭横浜2001出品作品::http://www.nifty.ne.jp/fanta/france2001/ 2001年カンヌ国際映画祭コンペ部門出品

2001年5月16日フランス初公開

2000年/フランス/124分/ 提供:バップ 配給:セテラ、バップ

2003年08月21日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年1月25日よりシアター・イメージ・フォーラムにてロードショー公開

©2001 AGAT FILMS & CIE

公開初日 2003/01/25

配給会社名 0117

公開日メモ 『倦怠』のカーン監督が連続殺人犯ロベルト・スッコの半生を描いた衝撃作。将来が期待される女優イジルド・ベスコも出演。

解説



カンヌ震撼。フランス驚愕。ヨーロッパ中を瞠目させた実在の[理由なき殺人犯]、その凄絶な青春

強力な衝撃度でカンヌ映画祭を揺るがし、続く一般公開で『アメリ』に継ぐ初登場2位のヒット(01年5月16日初日、オープニング週末の動員数)を飛ばすも、 警官隊が上映禁止を求めるデモを起こすなど、欧州全土で賛否の渦を巻き起こした本作『ロベルト・スッコ』が遂に日本解禁される。
ロベルト・スッコ、イタリア人。19才、実の両親を殺害しフランスに逃走。判っているだけで7件の無差別殺人、傷害、誘拐と、数々の犯罪に関与。 26才、逮捕されるが法の裁きから逃げ切るように独房で自殺−彼にはただひとり、手をかけずに親密な関係を続けた恋人レア(仮名)がいたという。
昨今の[理由なき殺人犯]第一号といえる彼の短い半生を、ジャーナリストのパスカル・フロマンが3年間の長期取材を経てルポルタージュとして出版(中条 省平・中条 志穂訳=太田出版より絶賛発売中)。 「カポーティのノンフィクション・ノヴェルの古典「冷血」を驚愕する」と評されるなど、内外で大きな反響を呼んだ本書の映画化に、前作『倦怠』でルイ・デリュック賞に輝き、最も次回作が待望される監督となった気鋭セドリック・カーンが挑んだ。

ありのままの殺人者スッコを凝視せよ−そして残された究極の「問い」とは?

その生きざまが新聞・TVで論争の的になったのはもちろん、日本では佐藤 信演出・堤 真一主演で、アメリカではカーク・アセヴェド(『ディナー・ラッシュ』)主演でそれぞれ上演された戯曲(ベルナール-マリ・コルテス作「ロベルト・ズッコ」=れんが書房新社刊)になるなど、社会現象となったスッコ。 メディアにより“血に飢えたモンスター”或いは“アナーキスト”というレッテルを貼られた彼だが、カーン監督は彼の心理にチープな説明を加えず、劇的にするための脚色も一切拒否。 精神分裂症の疑いがあった彼が実際にとった行動だけを徹底して追い、本人の中では正常な状態である〈混沌〉を捉えることに成功した。 このような製作意図より、本作は「ロベルト・スッコはなぜ殺人を犯すのか?」に対する安易な答えを用意していない。 その「問い」はそのまま大きな、そして永遠の謎として見る者一人ひとりに向けられるのだ。
実在の殺人犯、しかも被害者の遺族が多数存命中という困難な題材にも関わらず、カーン監督は『倦怠』以上にテンション全力の演出で突っ走り、見る者を圧倒。 スッコの言動の支離滅裂さにブラックコメディの赴きさえ感じさせる本作には、昨今の単館系映画では見られなくなった極上のヤバさが充満だ。 ヤワな映画に慣れきった観客たちよ、目を覚ましこの衝撃と究極の「問い」に挑戦せよ!!!

速攻セザール賞にノミネート!の圧倒存在感がヤバすぎる、強力新人×二乗

これまでも『ロマンスX』のキャロリーヌ・デュセイや『ハリー、見知らぬ友人』のソフィー・ギルマンを、それぞれ自作で発掘してきたカーン監督。 本作ではスッコ役に全くのド素人ステファノ・カセッティを抜擢。一度見たら忘れられない視線の鋭さと一触即発のヤバさをはらんだ存在感で、いきなりセザール(仏アカデミー)賞新人賞にノミネート。 改めてカーン監督の眼力を証明した。スッコの本性を知らぬまま恋し、結果数少ない“生存者”のひとりとなった娘レア役には若干19歳のイジルド・ル・べスコ。こちらも本作で、前年度の『発禁本−SADE』(コムストック配給/03年初夏公開予定)に続き2年連続セザール賞候補となり、今後も公開作が続々スタンバイの注目女優だ。 この新進二人に対し、『ありふれた愛のおはなし』(仮題/シネマパリジャン配給)のパトリック・デリゾラがスッコを執拗に追う准尉役で実力はならではの抑えた演技を見せる他、 『夢だと云って』で自然児ジュリアンを好演したヴァンサン・デネリアーズや、ハル・ハートリー作品の常連で『バスキア』『クロコダイルの涙』等の話題作に出演している個性派女優エレナ・リーヴェンゾーンがそれぞれ意外な形で登場している。

ストーリー



1981年3月9日。ヴェニス、メストレ(イタリア北部)
住宅街に警察の車が急行する。ガラス戸を破り警官たちが住居に突入する。台所で血のついたナイフが見つかった。浴槽に、たがいちがいに折り重ねられた男女ふたつの遺体が見つかった。年輩の女性は夥しい刺し傷を体中に浴び、男性は黒いビニール袋に顔を覆われ、きつく締めつけられていた。発見者の警官とその同僚はふたりとも思わず口元をおさえた。こんな凄惨な場面は見たことがなかったからである。

その5年後。南フランス、トゥーロン
浜辺のクラブで、恋人たちに時計を売りつけようと、外国訛りのあるフランス語をまくし立てる若い男がいた。少女がそんな彼を遠くから愛おし気に見つめていた。ふたりの視線が合い、男が彼女に近付く。彼の名はカートといった。彼女の名はレアといった。ふたりはダンスを踊り、ごく自然に恋仲となった。

カートは謎めいていた。作り話ばかりなのに本人には嘘の自覚がないようだった。アクセントがイタリア人みたいだった。レアに見抜かれ、彼は少しだけ生い立ちを語る。父親は警官、そして自分の国を嫌っているらしい。
夏のヴァカンスが終わりに近付き、レアは実家のアヌシーに戻らなくてはならなかった。
トゥーロンでの最後の日、レアはカートの自宅に行った。そしてふたりは、結ばれた。

スイス国境の近く、アヌシー
ある朝、警官が殺された。のどを撃たれ、銃を奪われていた。
それをきっかけに、事件が起きるようになった。主婦の誘拐、タクシーの襲撃、強盗、乗用車の盗難。何の脈略もないこれらの事件が、同一犯による仕業という可能性が出てきたのは、犯人が外国のアクセントで話していたという証言があったからだった。捜査を担当する憲兵隊のトマ准尉も、ときにはマルセイユ方面まで足取りを延ばす犯人の不可解な行動と動機が理解できなかった。

カートがレアのもとを急に訪ねてきた。久しぶりに逢う彼は左眉に傷を負い、車種が夏のものとは違っていた。ふたりは再びデートを重ねた。しかし、カートは肉体で愛をかわす事ができなくなっていた。
そして何も言わずレアの前から姿を消すと、思い出したように彼女の前に現れる、そんなことをくり返した。
レアは次第に不安になってゆく。
ある日またしても愛し合えず、やるせなさからもみあった末にレアを、カートは乱暴に後ろ手で縛った。とても慣れた手付きだった。彼はレアにしてしまったことを詫びながら<告白>する。車泥棒をとがめられ、母親を殴ったこと。手を止められず、そのまま殴り続けたこと。母親を殺害した事実を知られたくなかったので、父親も帰宅次第殺したこと。捕まり医療刑務所に入れられ、5年後にフランスへ脱走し、いまここにいること。レアには、いつもの作り話なのか事実なのか、判断できなかった。

若い医学研修生セリ−ヌは、帰宅の途中、男に銃を突き付けられる。最初は彼女を脅し運転させていた男は次第に打ち解け、彼女が試験が控える身と知ると、意外にもはげまし、彼女を解放した。
彼女の証言で、モンタージュ写真が作成された。左眉に傷、明るく大きな瞳、男には外国語訛りがあった。
トマは、一連の事件の犯人がイタリア人であると確信し、国際手配を申請するが、腰の重い判事は応じようとしない。誘拐された主婦フランソワ−ズの行方は依然掴めなかった。

レアは、カートのことが理解できなくなっていた。ある日家の引き出しから拳銃を見つける。秘密を共有してくれないのだろうか?“他人など、何の足しにもならない”と言い放つ彼から、完全に気持ちが離れたことに気付く。レアはカートに別れを告げた。
カートの気持ちは変わらない。学校にまでレアを追い復縁を迫る彼に、レアは大声で叫ぶ“帰って、ほっといてよ!”
彼は、そのまま引き下がるしかなかった。

再びトゥーロン。
カートはクラブで若い姉妹キャシーとパトリシアと出会うが、そこで地元のやくざ者たちともめる。怒り心頭に達した彼は“まってろよ、ぶっ殺してやるからな”と吐き捨て、本当にショットガンを用心棒に発砲。そして車を急発進させると、出てきた彼女たちを乗せカートの家に逃げた。半ば強引に部屋まで連れてこられた姉キャシーは衝撃的な出来事の連続に疲れまどろむが、カートはいましがた人を撃ったというのに、何ごともなかった様にテレビのアニメ番組に夢中になって見入っている。

翌朝。彼らは前夜カートと仲違いし、車から降りていた妹パトリシアを迎えに行くが、先に宿泊先に入ったカートを待つあいだにキャシーは警察に拘束。調べはついていた。カートを逮捕すべく刑事が二人部屋に入る、しかし彼は背後にいた。遅かった。一人は腹を撃たれ、もうひとりは後頭部に銃弾を打ち込まれて床に脳髄をぶちまけた。その場を切り抜けカートは消える。捜索隊は彼の部屋で、店が開けそうなほどの大量の銃を発見する。

彼はスイス国境付近にいた。ナンバープレートを替えているところに警官と鉢合わせしたため、たまたま車に乗ろうとしていた女性教師を楯にチューリヒへの逃走を開始。運転中にまたも人質と打ち解け、ひとなつこい面を見せるカートだが、十数台のパトカーが追跡するなか市内に入ると狂暴化し機関銃を乱射する。その隙を見て教師は車から飛び下りた。武装警官が包囲する中、網をかいくぐり彼はイタリアに<帰郷>する。

レアがカートの指名手配を知ったのは、その頃だった。最初は躊躇したものの、従兄弟の勧めで警察に出頭。トマの執拗な尋問が、徐々にレアから見たカート像を明らかにしてゆく。捜査官たちは彼女がカートの犯罪にうすうす勘づきながらも恋愛関係を続けていたことが解せない。

そしてカートの身元が判明する。イタリア警察からのファクスが彼の正体を告げていた。
…両親の刺殺後、精神病院へ。86年5月に逃亡。62年3月3日生まれ、本名:ロベルト・スッコ。

フランスでの犯罪の数々を立件すべく、トマはイタリア入りした。そこでスッコの両親殺しの詳細を聞く。彼の父の仲間が回想する —現場は血の海、あんなのは見たことない。奴は怪物だ。これ以上、話したくない。

イタリア警察はスッコの足取りを掌握していた。そして彼が故郷のメストレに戻ったところで逮捕に成功する。狂ったように抵抗する彼は繰り替えしこう叫んだ“おれはスッコじゃねえ!!”

イタリアの刑事の取り調べは、トマが掴んでいなかった驚愕の事実を次々に明るみにしていった。スッコはやはり、彼の父の仲間が証言するように“怪物”なのだろうか。それとも、何かの拍子で己を狂わせてしまった普通の人間なのだろうか。真相が渾沌としてゆくなか、さらなる“事件”が発生する—

さあ、いったいどうなる?! —衝撃のラストは、劇場で体感せよ!!!

スタッフ

監督・脚本:セドリック・カーン 
製作:ジル・サンドーズ、パトリック・ソベルマン
撮影:パスカル・マルティ
音楽:ジュリアン・シィヴァンジェ
挿入歌:「スリープ」マリアンヌ・フェイスフル

キャスト

クルト:ステファノ・カセッティ
レア:イジルド・ル・ベスコ
トマ:パトリック・デリゾラ
ドゥニ:ヴァンサン・デュネリアーズ

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す