原題:LES CONTES DE KISH

南の島で、繰り広げられる3つの序詞不思議な物語

1999年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品

1999年/イラン/カラー/ビスタサイズ/72分/35mm/日本語字幕:伊藤美穂/ 字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン/協力:イラン観光局 配給:ビターズ・エンド

2002年04月12日よりDVD発売開始 2002年4月12日よりビデオ発売 2001年8月4日より夏休みシネ・アミューズにてロードショー!

公開初日 2001/08/04

配給会社名 0071

公開日メモ ペルシャ湾に浮かぶ小島——キシュ島。抜けるような青い空と青い海、そして広大な砂漠を背景に繰り広げられる3つの幻想譚。 巨匠ナセール・タグヴァイの『ギリシャ船』は、海岸に流れ着いた外国製品の包みの山に恐怖を抱き、魂を奪われてしまう女性をエキゾチックに描く。

解説


《南の島で、繰り広げられる3つの序詞不思議な物語》
ペルシャ湾に浮かぶ小島——キシュ島。抜けるような青い空と青い海、そして広大な砂漠を背景に繰り広げられる3つの幻想譚。
巨匠ナセール・タグヴァイの『ギリシャ船』は、海岸に流れ着いた外国製品の包みの山に恐怖を抱き、魂を奪われてしまう女性をエキゾチックに描く。
結婚する妹の指輪を買うために、島でアルバイトをして暮らす若者の日常を詩情豊かに描く『指輪』は、アボルファズル・ジャリリの作品。
『ドア』では、全財産であるドアを背負い砂漠を旅する老人と娘、そして彼らを訪ねてくる様々な人々を、モフセン・マフマルバフがシュールに描く。

《3つの才能の結集》
キシュ島の観光局が、芸術的な方法を用いて島の魅力を高めようと、マフマルバフに島での映画製作を依頼したことから、このプロジェクトは始まった。彼は、自分を含むイランを代表する監督たちに、自由に題材を選び短篇を撮らせることを提案した。観光局側は、タイトルに”キシュ島”を入れることと、同じロケーションで撮影しないことを条件に、彼の提案をOKした。
その結果、イスラム革命前から活躍している巨匠タグヴァイが10年間の沈黙を破る機会ともなり、ベテランならではの重厚な作品を創り上げた。革命後に登場し、現在世界の国際映画祭をにぎわすマフマルバフとジャリリにとっても、大先輩との競作は刺激的な作業であった。二人とも約20分の作品の中に独自の世界を築き上げることに成功している。
この3人の才能の結集によって、小さな島であるキシュ島のPRを目的に生まれた短篇集が、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品される作品に昇華したのである。

《自由な小島キシュ島》
ペルシャ湾の中心にある約91キロ平方メートルの小さな島。革命前には、シャー王朝がリゾート地として冬を過ごしていたこの美しい島は、メソポタミアとインド、そしてヨーロッパと東南アジアの交易の中心として古くから栄えていた。
革命後しばらくは無視されていたものの、経済状況の現実から急速に開発され、1993年に、商業自由区となった。そして現在キシュ島は、ペルシヤ湾の商業中継地となっている。
また、文化庁、イスラムの指導が介入しないこの島には、外国製品が豊富な大型のショッピングセンター、男女が一緒に泳ぐことができる海水浴場、ポップスの生演奏など、イラン本土で規制されている娯楽が解放され始めている。また、イランにビザ無しで入国することができる唯一の島である。

ストーリー




第1話『ギリシャ船』 原題:Le Bateau Grec

海辺に横たわる難破船。そこへ流れ着く色鮮やかな外国製品の段ボールの山。シャンベは、綺麗な段ボールを集め、家や店に飾り付ける。しかし、彼の妻は段ボールを見ると落着かない。まるで、何かにとりつかれたかのように、様子がおかしくなってゆく。心配になったシャンベは島のまじない師の元へ妻を連れて行く。妻が何に怖がり、魂を奪われそうになっているのか探ろうと、まじない師は儀式を行う。そして、妻は段ボールを怖がっていたとわかる。シャンベは妻か段ボールか、どちらが大事か選択を迫られる。段ボールを再び海へと戻すシャンベ。妻が安堵したのも束の間、今度は大量の空缶が海岸に押し寄せてくる。

第2話『指輪』 原題:La Bague

キシュ島に職を求めてやってきたハフェズ。彼は海水を建設現場の車に給水する仕事を手に入れ、海辺の粗末な小屋に独りで住む。日々の仕事の傍ら、ハフェズは古いバッテリーを解体し、中の鉄を溶かして貝殻に入れ型をとり、重りを作る。そしてその重りを使い、魚を釣って売る。電気が必要とあらば、街灯からコードを渡し、灯りを得る。貝殻をたくさん拾い集めては、奇麗に洗って売る。彼はありとあらゆる手を尽くし、お金を稼ぐ。ある日、ハフェズは身なりを整え、ショッピングセンターへ行く。そこで彼は男性用の指輪を買う。夜、ハフェズは手紙を綴る。指輪は結婚する妹の婚約者のために買った物だった。そして彼の海辺での生活がまた始まる。

第3話『ドア』 La Porte

広い砂漠をドアだけが動いてゆく。そこへ手紙を届けに郵便配達がやってくる。突然ドアは止まり、老人が顔を出す。手紙は老人の娘に恋をした若者からのプロポーズ。しかし老人はその手紙を破り捨ててしまう。ドアをかついで歩き出す老人。その後ろを、嫌がる黒い子ヤギを連れた娘がついてゆく。次ぎに楽団が訪ねてくる。「結婚式か葬式をやっているところを知らないか」。老人は答える。「誰が死んで誰が生きているかなんて知らない」。海岸にやってきて、波打ち際にたたずむ老人と娘と黒い子ヤギ。そこへ息子からの手紙を届けに、別の郵便配達がやってくる。しかし老人は受取らない。しばらくすると男が船に乗ってやってくる。老人は全財産であるドアをその男に売ろうとするが、男はドアを気に入らず去って行ってしまう。

スタッフ

第1話『ギリシャ船』
監督・脚本:ナセール・タグヴァイ
撮影:アジム・ジャヴァンルー
録音:べへロウズ・モアヴェニアン
編集:アッバス・ガンジャヴィ

第2話『指輪』
監督・脚本・編集:アボルファズル・ジャリリ
撮影:マスード・カラニ
録音:アハマッド・サレヒ

第3話『ドア』
監督・脚本:モフセン・マフマルバフ
撮影:アハマド・アハマディ
録音:ネザム・キアイ
編集:メイサム・マフマルバフ

プロデューサー:モフセン・ガリブ
製作総指揮:モハマド・アハマディ
製作:キシュ・プロダクション

キャスト

第1話『ギリシャ船』
ホセイン・パナヒ
アテフェ・ラザヴィ

第2話『指輪』
ハフェズ・パクデル

第3話『ドア』
モハマド・A・バブハン
ノリェ・マヒギラン

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