原題:state of dogs

犬の眼から見た人の暮らし、静かな音楽、 そして、生きることの切なさと励ましに溢れた詩…。 犬も人も、今、生きているということ。

ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ マレーマ国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ セイア国際環境映画&ビデオ祭グランプリ&審査員特別賞 サオパウロ国際映画祭批評家賞、ガバ国際環境映画&ビデオ祭最優秀作品賞 New European Talent-NET98ベスト・ドキュメンタリー作品賞 Message to Man Intemational Film Festiva1審査員特別賞 ヨーロッパドキュメンタリー映画祭審査員特別賞 メディア・ウェーブ国際映像芸術祭脚本賞、ボドラム国際環境映画祭批評家賞 he World Festival of Human and Nature Films〜人と自然に関する映画祭〜銀賞 ハナン国際環境展銀賞 受賞作品 山形国際ドキュメンタリー映画祭、ヴェネチア国際映画祭、他参加作品

1998年/モンゴル=ベルギー合作/35mm/カラー/88min/Dolby Stereo 配給:スローラーナー

2002年11月16日(土)〜11月29日(金)まで吉祥寺バウスシアターにて公開 2002年3月9日よりユーロスペースにてモーニング&レイトショー!

公開初日 2002/03/09

配給会社名 0048

公開日メモ 犬の眼から見た人の暮らし、静かな音楽、そして、生きることの切なさと励ましに溢れた詩…。犬も人も、今、生きているということ。

解説



モンゴルの路地裏に
一匹の野良犬が住んでいた。
名前は、バッサル。
この映画は、
人を信じることができなくなった一匹の犬が、
もう一度、
人を愛することができるようになるまでの
切なさと喜びを
美しい映像と音楽で綴った
路地裏からの贈り物です。

ぼくの名前はバッサル。モンゴルの首都ウラン・バートルの路地に住んでいた野良犬です。春がきて暖かくなった日に、ぼくはハンターに撃たれて、死んでしまいました。モンゴルでは、昔から「犬は死ぬと人聞に生まれ変わる」と言い伝えられています。でも、ぼくはもう人を信じることができませんでした。ぼくは、人に生まれ変わりたくないと思って、自分の記憶をたどる旅に出ました。大地で羊を追って暮らした幸せな毎日。主人に捨てられてしまった悲しい想い出。砂塵の中を歩いて、やっとたどり着いた街で一生懸命に生きてきたこと。やがて、ぼくは気がつきました。はじめての出産を迎える若い母親と出会って、もう一度人を愛しはじめたことに…。

モンゴルの首都ウラン・バートルに住む12万匹の野良犬たち。
バッサルの気持ちは、そんな彼らみんなの“気持ち”なのでしょう。

何かが少しずつ狂い始めた人々の暮らしを犬の視点から見つめ、人を愛する喜びと怯れを、美しい映像で描き出す“小さな傑作”の誕生です。1996年の調査によると、人口80万のウラン・バートルの街には、12万匹もの野良犬が生きていました。どこにだって犬は住んでいます。平和な街でも、戦っている街でも。人の生活の変化は、犬にだって無関係ではありません。この映画は、たくさんの野良犬たち(生きている犬も、もう死んでしまった犬も)を撮影しながら、“人間を愛することのできなくなった一匹の犬が、もう一度、人との愛情を見つけだす”までの姿を浮かび上がらせていきます。バッサルの“思い出”は、モンゴルの路地裏に棲むたくさんの野良犬たちの記憶でもあるのです。

犬の眼から見た人の暮らし、静かな音楽、
そして、生きることの切なさと励ましに溢れた詩…。
犬も人も、今、生きているということ。

監督は、ベルギーのドキュメンタリー監督ピーター・プロッセンとモンゴルのジャーナリスト、ドルヵディン・たーマン。彼らは、ほぼ4年を費やして『ステイト・オプ・ドッグス』を完成させました。低く印象的な声で語られるバッサルの気持ち、呟くような若い母親が口ずさむ歌、馬頭琴の響き、風がわたる草原を、原子炉が見える団地を、人でごったがえす市場を、まるで魂となったバッサルの視点から見るような低い位置からのカメラ…そして、忘れてはならないのは、エピソードの間でリーディングされるモンゴルの詩人バタール・ガルサンスの詩です。生きるために、また死ぬためにはどちらにも7つの理由が必要だ、と語る詩は、犬や人の区別を超えて生きることの切なさと励ましに溢れ、この作品の深い場所でいつまでも鳴り響きます。犬も人も、今、生きているのです。

(C)Inti Films/Balthazar Film/Juniper Films Oy/Magic Hour Films/Point of View/Tobch Toli/ZDF/ARTE/RTBF/ORF/Humanistische Omroep/DRTV/The Danish Film Institute/Centre deI’Audiovisual a Bruxelles(CBA)/Canvas 1998

ストーリー



モンゴルには、こんな神話が生き続けている。
永遠の生命を約束する水を人間は与えられた。しかし龍王ラーが現れその水を奪い、代わりに飲み干してしまった。それを知った太陽と月はラーを非難し、神は、この邪悪な龍を殺すため使者を送った。しかし永遠の生命を得たラーに、誰も歯が立たなかった。力を増したラーは、太陽と月を飲み込み、世界は暗闇に包まれてしまった。人間たちは激しく抗議した。そしてラーはやむなく太陽と月を吐き出した。しかし太陽と月を好まなかったラーは、時折、世界に暗闇をもたらした…。

モンゴルの首都ウラン・バートルにバッサルという野良犬がいた。

パッサルは、春がその訪れを告げた日、路地裏で撃たれて、その命を落とした。バッサルは常に人を愛し、信じてきた。人間と一緒に暮らしたかった。でも、今、その愛と信頼は失われてしまったのだ。彼はゴミ溜めに残った自分の亡骸を見つめた。火薬と血の匂いがする自分の体を…。モンゴルでは、犬は死ぬと人間に生まれ変わる、と言われている。パッサルは人間になることを躊躇していた。それでも、自らの運命を受け入れるため、パッサルは自分の記憶を辿る旅に出たのだ。

彼はモンゴルの大地で羊を追っていたときのことを覚えている。
パオで遊牧をしている家族と暮らしていた日々。
馬頭琴の響き。主人の息子の歌声。
草原でのナダム祭り。
家族に連れられたバッサルは、はしゃいだ。
若いパッサルは皆に逞しい犬だと誉められ、自分も誇り高かった。
そして、主人の顔も思い出していた。
すべての家畜を売った金を数えるあの顔を。
夢に目を輝かせた子供たちの表情も…。
何かが変わり始めたと、パッサルは感じていた。

そして間もなく、彼は凍える冬の平原に捨てられたのだった。

彼は、主人に捨てられたときの痛みと悲しみを覚えている。
そして、ようやく辿り着いた街の中で、野良犬として懸命に生き抜いてきたことを覚えている。街は凍てつくような寒さだった。マンホールの下では家出した少年や少女が、お湯の流れる送水管で暖をとっている。発電所は怪物のような捻りをあげていた。自分を遠ざけるため人が石を投げ始めた時を覚えている。やがて、人への恐怖が愛情を超えたのだ。「食べ物がある所には危険がある」「人がいる所には食べ物がある」バッサルは、犬とその飼い主を見る度に、犬にはかつての自分を、そして飼い主には昔、自分が愛した人間を見た。

モンゴルでは、その頃一日にして生活が一変してしまっていた。ある日、ロシア人が祖国へ引き上げ、民主主義が宣言された。売り買いし、お金を稼ぐ術を人々は学んだ。世間は何でも売りに出した。街では古い骨も売り買いされていた。草原では犬に与えられていた骨も、朝早く盗まないと決して手に入らなかった。

その頃、ひとりの若い母親が、初めての出産を間近に控えていた。
バッサルは、自分の魂の旅する時間が残り少ないことに気づいていた。
彼は、どこかで彼女の息子として自分が生まれ変わる運命にあることに気付いていたのだ。しかし、バッサルはもう一つの事にも気付いていた。それは、何かが狂いはじめ、この世界が滅亡すると言うことも…。

龍王ラーが、やってくる。パッサルは彼女を引き止めたかった。ラーがもうじきやって来る事や、彼女への愛を伝えたかった。バッサルは彼女にいっそう近づいた。彼女を守りたかった。バッサルは生まれ変わりたかったが、怖かったのだ。ラーを阻止できない。太陽を吐き出させることができない。バッサルはラーの捻り声を聞き、奴が太陽を食べたことを知った。いずれ、水もなくなる。太陽も、月も、生命も…。

日蝕が、北モンゴル地域で見られる日が近付いた。この間、ラマ僧は祈り、人々はラーが嫌がる金物を叩く。龍王ラーを退治するためだ。モンゴルでは、ラーは太陽を飲み込み、世界を滅ぼすと言われていて、それを防ぐのは人間の役目とされているのだ。

バッサルは人間への愛を失っていた。しかし、彼にはどうすることもできない。もう一度、人間を信頼することしか出来なかった…。

日蝕の日。人間は、金物を叩いた。
そして、若い母親が、ついに出産の時を迎えていた…。

スタッフ

ステイト・オブ・ドツグスST㎜EOFDOGS
製作:Inti Films
脚本・監督:ピーター・プロッセン、ドルカディン・ターマン
ナレーター:サイモン・マクバニー
ナレーション・ライター:マリア・ボン・ヘラン
撮影:ケイキ・ファーム、サクヤ・ビャンバ
録音:リスト・イサーロ、ダン・バン・ビーバー
編集:オクタビオ・イターブ
音響デザイン:キャロ・カルボ
撮影助手:バトムンフ・プレド
サウンド・ミキサー:フランコ・ピスコポ
リサーチ:ラバスレンジン・ノーミン、ダムディンスレン・ウリアガイ教授
プロデューサー:ピーター・ピロッセン(Inti Films)
共同プロデューサー:ヤン・ウォート・ロイター(Balthazar Film)
          クリスティーナ・ペルピラ(Juniper Films Oy)
          リーゼ・レンス・モーラー(Magic Hour Films)
          アロック・b・ナンディ(Point of View)
          ドルカディン・ターマン(Tobch Toli)
          ダスクライン・フェルンセスピエル(ZDF/ARTE)
          カール・ノアー(RTBF)
          カント・スタック(ORF)
          Humanistische Omroep
          DRTV-Factual Dept.
          The Danish Film Institute,Short Films & Documentaries
          Centre deI'Audiovisual a Bruxelles(CBA)
          CANVAS

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