原題:The Luzhin Defence

『ロリータ』のウラジーミル・ナボコフ、幻の初期代表作「ディフェンス」、遂に映像化。

2000年9月8日イギリス公開

2000年/イギリス=フランス合作/ヴィスタ/SRD/109分/日本語字幕:戸田奈津子 提供:T0SIBA/アミューズピクチャーズ 配給:アミューズピクチャーズ

2002年4月26日よりビデオ&DVD発売 2001年9月1日より銀座テアトルシネマ、シネセゾン渋谷にて独占公開

公開初日 2001/09/01

公開終了日 2001/10/19

配給会社名 0008

公開日メモ チェスに生涯を捧げた男とロシア女性とのイタリア・コモ湖を舞台にした切ないラブストーリー。主演は、ジョン・タトゥーロ、エミリー・ワトソンら。

解説


「ロリータ」で世界中にセンセーショナルを巻き起こしたロシアからの亡命作家ウラジーミル・ナボコフ。その後「ロリータ」は2回映画化され、ロリータ・コンプレックスなる概念を生み社会現象となった。本作品『愛のエチュード』は、2000年に生誕100年を迎えてますます評価が高まっているナボコフの幻の初期傑作「ディフェンス」が原作である。監督は『アントニア』でアカデミー最優秀外国語映画賞を受賞した女流監督マルレーン・ゴリス。天才であるがゆえに世の中を上手く生きていくことができないチェスプレイヤーと、純真な彼を愛によって優しく支えるブルジョワ令嬢の切なくて哀しいラブストーリーである。

舞台となっているコモ湖畔は古代ローマ時代からの高級リゾート地。花いっぱいの明るいヴィレッジ、エデンの園を思わせる庭園や別荘、中世の城やオリーヴ畑に囲まれた美しい景観は、ラブストーリーを語るのには欠かせない。ヴィスコンティの別荘が実際に撮影で使用されていることも、話題のひとつである。また最も印象的なシーンである、ふたりが出逢う散歩道でのエミリー扮するナターリアの赤いツーピース。『アントニア』でマルレーン監督と仕事をしたことのある衣装担当のジェニーは今回、彼女をはじめとして登場人物に似合うエレガントで上品なファッションを選び、映像に高級感と上質感を持たせた。さらに音楽を担当するアレクサンドル・デスプラのワルツ調、シンフォニー調と映像と一体となった緩急自在なメロディが、二人の揺れ動く恋心を優しく時には激しく奏でてロマンティックさを醸し出している。大人のための忘れられないラブストーリーがまた一つふえた。

本作品では主人公のルージンがチェスプレイヤーであるため、チェス用語が多用される。古代インドで発祥したといわれているチェスは、ヨーロッパに渡り宮廷の優雅なゲームとして普及したため、ロイヤルゲームとも言われる。世界で最も普及している盤上競技で、全世界共通のルールを持っており、年齢や性別や国籍に関係なく楽しめるゲームであるとともに社交の道具でもある。また世界120カ国以上から各国のトップ男女10名の選手が1000人以上集まって、2年に一度開催されるチェスオリンピックは、約3週間に渡り熱戦が繰り広げられる。このようにチェスは考えるスポーツともいえる。駒の形の美しさも素晴らしいが、チェスは、ダイナミックな動き、意外性、美しいロジックに彩られた勝負の過程を楽しむ知的なゲームである。本作品では、チェスを詳しく知らなくても、チェスプレイヤーであるルージンの心の動きがゲームの流れと一緒に手に取るように伝わり、知っていれば一段と楽しめる映画となっている。

“エチュード”とは…
タイトルに使用されている”エチュード”。通常は、声楽や楽器演奏のため練習曲、絵や彫刻などの習作・試作の意として用いられるが、ここではチェスをプレイするときの指し手の一連の手筋を示す。チェスでは対戦すること以外に、名人のゲームは芸術としてチェスの”エチュード”を鑑賞して楽しむことができる。本作では結果としてこのエチュードを考えだしたためにルージンは精神的に追い込まれてしまうのだ。

ストーリー

1929年。天才チェスプレイヤーのアレクサンドル・ルージンは、生涯をかけた勝負となる世界チェス選手権に出場するために、北イタリアのコモ湖畔のリゾート地にやってきた。幼くして神童と呼ばれた彼は、両親の愛情を失った人生においてチェスだけが自分のすべてであった。
少年時代の”愛のない両親の結婚生活”、”母親の死”、”チェスを教えてくれた叔母アナの拒絶”、”自分の才能を認めてくれた人の裏切り”など様々な記憶が、大人になった今もなおトラウマとなって彼につきまとっている。
ある日ルージンは、散歩道で美しいロシア人のブルジョワ女性ナターリアと出会う。亡命ロシア貴族の両親は彼女に裕福な結婚をさせたがっていた。母親が見つけた完壁な候補者は、ジャン・ド・ササール伯爵。チャーミングでとても身なりの良いアマチュアのチェスプレイヤーの彼は、このリゾートにチェスの試合を鑑賞にやってきていた。ナターリアは伯爵が自分に好意を持っていることは分かっていた。しかし彼に対しては友達以上の感情は持てず、チェスのことしか知らないピュアなルージンに惹かれていった。両親の猛反対にあっても、彼女はルージンとのロマンスの嵐に身をゆだねるのだった。
ルージンがナターリアによって新しい世界を感じ始めていた頃、彼の過去を知る知人が現れ幸せに影を落とした。その人物、ヴァレンチノフは、少年時代にルージンのチェス才能に気づき、10年間ほどルージンのチェスの指導者兼マネージャーとなって世界中を旅してかなりの稼ぎを得た。しかしルージンがスランプに陥ると、彼はルージンをブタペストに置き去りにし、さらに稼げる新しい才能を探しに行ったのだった。
ヴァレンチノフはルージンが世界チェス選手権に出場していることを知ると、彼の弱さにつけこんで再び儲けようと考えた。しかし、ルージンはナターリアの優しさに支えられて様々なプレッシャーを跳ね除け、とうとう決勝まで勝ち進んだ。
決勝戦の対戦相手イタリアのトゥラチとの試合は、大変な接戦となり、ゲームは保留。翌日に持ち越された。「ルークがすべての鍵だ」。トゥラチヘの防御策の手を思いついたそのとき、ヴァレンチノフの罠にかかり、ルージンはひとり、山奥の草原に置き去りにされてしまう。そしてこれまでの勝負へのストレスによって神経を病んでしまったルージンは、医者からチェスをやめるようにと診断がくだされる。命ともいえるチェスを取り上げることはつらかったが、意を決してルージンに告げるナターリア。彼はこれまでチェスにだけ情熱と安らぎを覚えていた人生を、ナターリアとの二人の生活のために生きることを決心したのだった。
そして結婚式当日、悲劇は起こる。ナターリアの待つ式場に向かうルージンの前に、保留になっている試合を続行させようと、またもやヴァレンチノフがやってきたのだ。精神的に追い詰められて、ナターリアヘの想いとチェスヘの情熱と少年時代の記憶とが交錯してしまったルージンは、自由を求めて部屋の窓より宙をめがけてはばたいて逝ってしまう。嫌な予感がよぎったナターリアが部屋に駆けつけたときには一瞬遅く、彼の分身であるお腹に宿った新しい命と彼が大切にしていたガラスのチェス駒を握り締めて涙を流すのだった。
ルージンの葬式を終えたナターリアが彼の遺品を整理していると、一枚のメモがみつかった。そこにはチェスの防御策=ディフェンスが記してあった。それはトゥラチとの対局の最初にあきらめかけていた手であった。数人の立会人のもと、ルージンとトゥラチの試合は再開した。ルージンに代わってメモに記したディフェンスの通りに指すナターリア。「チェックメイト」。ナターリア、いやルージンは優勝したのだ。
「世界チャンピオンが考えた不滅に輝く一連の手筋でした」というトゥラチの言葉を後にして、静かに微笑みながら立ち去るナターリアがいた。

スタッフ

監督:マルレーン・ゴリス
製作:キャロライン・ウッド/スティーブン・エバンス/ルイス・ベッカー/フィリッペ・グエズ
脚本:ビーター・ベリー
共同製作:レオ・ペスカローロ/エリック・ロビソン
製作総指揮:ジョディ・パットン
撮影監督:バーナード・ルーティック
編集:ミハエル・レイヒワイン
プロダクションデザイナー:トニー・ブーロウ
衣装デザイナー:ジェニー・テミム
ヘアー&メイクアップデザイン:ロシアン・サミエル
音楽:アレクサンドル・デスブラ
キャスティング:セレスティア・フォックス

原作:ウラジーミル・ナポコフ著「ディフェンス」河出書房新社刊
オリジナル・サウンド・トラック:ランプリング・レコーズ

キャスト

ルージン:ジョン・タトゥーロ
ナターリア:エミリー・ワトソン
ヴェラ:ジェラルディン・ジェームス
ヴァレンチノフ:スチュアート・ウィルソン
ササール:クリストファー・トンプソン
トゥラチ:ファビオ・サルトル
イーリャ:ピーター・ブリス
アナ:オーラ・ブレイディ
ルージンの父:マーク・タンディ
ルージンの母:ケリー・ハンター
幼少のルージン:アレクサンダー・ハンティング

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