原題:KOUREI

「こんなに近くにいるなんて・・・」

2000年トロント国際映画祭 2000年ロカルノ国際映画祭 2000年ロッテルダム国際映画祭正式出品作品

1999年/日本/カラー/97分/35ミリ/ビスタサイズ/ 配給:スローラーナー

2001年5月19日より吉祥寺バウスシアターにて公開 2000年6月23日DVD発売/ 2000年5月26日ビデオ発売 2000年2月19日「カリスマ」公開記念オールナイト“全日本ホラー対談”テアトル新宿にて上映

(C)1999 関西テレビ/ツインズジャパン

公開初日 2001/05/19

公開終了日 2001/06/17

配給会社名 0048

公開日メモ 効果音技師の夫、克彦と“霊”を感じる妻、順子は、愛し合い、つつましく暮らしていた。そこに、ひとつの少女誘拐事件が起こる。犯人は、逃走中の事故で意識不明。 少女は行方不明のままだった。警察は、純子の“力”に興味を持つ大学院生、早坂を通して、彼女にコンタクトをとってきた。そして、純子がひとつの計画を思いつき、すべての歯車が狂い始めたとき、“恐怖”闇の中から覚醒する…。「<怖い>とは<面白い>ということだ」と語る『CURE』『回路』の黒沢清が描くのは、静謐の中から姿を現す“恐怖”という名の“快楽”。

解説



「こんなに近くにいるなんて…」
効果音技師の夫と“霊”を感じる妻。
つつましく幸福な暮らしが崩れるとき、
“恐怖”が闇の中から覚醒する。

子供のいない、いつまでも友人同土のように仲のいい夫婦、効果音技師の佐藤克彦(役所広司)と純子(風吹ジュン)は、愛し合い、つつましく暮らしていた。一見平凡な女性に見える。しかし、彼女はある特殊な“力”を持っていた。パート先のファミレスで、また別の人混みの中で、彼女は“霊”を感じ、そして見る。そして自分の力が世間から猜疑の目で見られていることも知っていた。克彦は、そんな彼女を愛し、ささやかで幸せな暮らしを望んでいたのだ。そんな時、ひとつの少女誘拐事件が起こる。犯人は、身代金の受け渡しに失敗し、逃走中の事故で意識不明。少女は行方不明のままだった。警察は、純子の“力”に興味を持つ大学院生、早坂(草なぎ剛)を通して、彼女にコンタクトをとってきた。純子の“力”で、少女の生死を、そして行方を知りたいというのだ。しかし、少女は、意外にも近くにいた。そして、純子がひとつの計画を思いついたとき、すべての歯車が狂い始める。人の心の奥底でもまた“闇”が目を覚ましたのだ…。

「<怖い>とは<面白い>ということなのです」
『CURE』『回路』の黒沢清監督が描くのは、
静諮の中からその頭をもたげはじめる
“恐怖<ホラー>”と言う名の“快楽”。

監督は、『CURE』『回路』の黒沢清。ゆっくりと瞬く“光”、ぼんやりと暖昧に立ち疎んでいる“霊”の姿、録音テープにまぎれこむ声、そして人の心の奥底で眠っている“闇”…。“恐怖”は見ることが出来ない。「<怖い>とは<面白い>ということなのだ」と語る黒沢清監督は、その“恐怖”をフィルムに定着させるのだ。静けさの中に生まれる音に、ふとした仕草に、人の背後にある壁に、誰もいない部屋に“恐怖”が漂う。平凡な牛活に幸せを感じている夫、佐藤克彦を演じるのは『CURE』『回路』『カリスマ』と黒沢作品には欠かせない存在となった役所広司、霊能者である妻、純子を風吹ジュン、心理学を学ぶ大学院生、早坂文雄をSMAPの草なぎ剛が演じるほか、石田ひかり、きたろう、大杉漣、岸部一徳、哀川翔がその脇を固めている。

ストーリー


子供のいない、いつまでも友人同志のような仲の良い夫婦…世問は白分達のことをそんな風にみているだろうなと佐藤克彦(役所広司)は思った。事実、克彦と純子(風吹ジュン)との問に子供はいなかった。そして、克彦は純子を愛していた。

妻の純子は一見平凡な女性に見える。しかし、純子はある特殊な「能力」を持ち、霊能者であった。純子は霊能に対して、世間に偏見や根強い猜疑があることを以前から感じていた。不思議な言い方かもしれないが、純子は確かに自身が持ち合わせている「力」の存在を世間の人々にもっと普通に理解してもらいたいと漠然と考えていた。

そんな純子の思いを克彦は、それとなく気づいていた。克彦は妻の「力」についてその存在を認めていたが、克彦は純子を普通の妻として愛したいと思っていたし、そのように振る舞った。効果音係という仕事をして、平凡ながらも幸せな生活を望んでいた。

純子の「力」に興味を持ったのは、心理学を学ぶ大学院生である早坂文雄(草なぎ剛)。早坂は純子が「力」の保持者である可能性が高いと感じた。純子も早坂という若い研究者に好感を持った。早坂と純子はお互い協力者になれればと思っていた。そして、早坂のもとで、純子の降霊術の実験が行われるようになった。

1つの少女誘拐事件が起きる。犯人は、身代金の受け取りに失敗し、逃げるときに意識不明の大けがをしてしまった。そして、少女は行方不明のままである。ある日純子は早坂に呼ばれて大学へ行くと、刑事の柏原(きたろう)が待っていた。純子の「力」で、誘拐された少女の行方を調べようというのだ。柏原は少女が映った1枚の写真と、ハンカチを持参していた。さっそく純子は、そのハンカチをいじってはみるが何も感じられない。純子はいたたまれない気持ちで大学を出た。

家の車庫には、克彦がナマ音を録るため郊外へ出かけていった時に使用したジェラ・ケースがぽつんと置いてある。純子は何かを感じた。「こんな近くにいるなんて…」

克彦のジュラ・ケースの中には、以前写真でみたことのある衰弱した少女が入っていた。克彦と純子は狼狽した。すると少女はかろうじて息をしている。生きていたのだ!しかも世間が騒いでいる少女が自分たちの家にいる。純子の霊能力で見つけていたのは事実だ。

純子はある計画を思いついた。翌口、純子は大学へ行き、早坂に少女の行方をほのめかした。早坂はいつもとは違う妙に自信ありげな純子に不信感を感じた。しかし、純子の助言は見事に当たっていた。

無事な少女の居場所を言い当てた能力で、世間の注目を浴びたい!純子の熱い思いに克彦も理解を示し、監禁した少女の世話を担当することになった。しかし、衰弱しきった少女の体は、持たずに死んでしまった。計画は頓挫するかに見えたが、死体でも見つかればいいと懸命に偽造工作を続けようとする純子と克彦。やがて彼らの目の前にも少女の幽霊が現れるようになり…。

スタッフ

企画:植村泰之+神野智
プロデューサー:田中猛彦+下田淳行
原作:マーク・マクシェーン『雨の午後の降霊術』(トパーズプレス刊)
監督:黒沢清
脚本:大石哲也+黒沢清
撮影:柴主高秀
照明:金沢正夫
録音:井家眞紀夫
美術:丸尾知行
音楽:ゲイリー芦屋
編集:大永昌弘
スクリプター:柳沼由加里
助監督:吉村達矢

キャスト

佐藤克彦:役所広司
佐藤純子:風吹ジュン
金沢智子:石田ひかり
柏原刑事:きたろう
北見教授:岸部一徳
神主:哀川翔
ファミレスの客:大杉漣
早坂文雄:草なぎ剛(特別出演)

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