原題:THE POET/顧城別恋

官能の愛、それは美しき破滅への誘い。

トロント国際映画祭出品 ブルガリア国際映画祭主演男優賞受賞

1998年度作品/香港映画/ビスタサイズ/ドルビーSRD/上映時間1時間54分/北京語版 製作:ゴールデン・カルチャー・タイムズ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ 提供:ゴールドハーバー・インターナショナル・フイルムズ

2001年8月24日ビデオ発売&レンタル開始 2001年3月3日よりキネカ大森にて全国順次ロードショー公開

(c)1998 Gold Harbour International Films Ltd.ALL RIGHT RESERVED

ビデオ時に変わった場合の題名 詩人の恋/妻と愛人

公開初日 2001/03/03

公開終了日 2001/03/30

配給会社名 0025

公開日メモ 実在したこの詩人の波瀾にとんだ人生に起った事実をもとに、破滅していく彼の姿を映画的に描いた作品が『詩人の恋』である。

解説


 1993年10月8日、ニュージーランドでひとりの中国人が妻を惨殺し、自らの命を絶った。彼の名はグー・チョン(顧城)。文化大革命終焉後の中国で、「朦朧詩」という新文学で若者たちに人気を博した詩人だった。二人の女性と生活し、そしてニュージーランドで人生の終幕を自らによって絶ってしまった彼にいったい何が起ったのか?今なお彼の死は謎とされているが、実在したこの詩人の波瀾にとんだ人生に起った事実をもとに、破滅していく彼の姿を映画的に描いた作品が『詩人の恋』である。
 製作・監督を手掛けた女流監督のケイシー・チャンは、現在まだ生きているグー・チョンの父グー・ゴンや周辺の人々からも協力を受け、グー・チョンの人間的な姿を追い求めた。また、彼が書き残した詩の数々を劇中に取り入れることで、彼自身を浮かび上がらせることに成功している。また実際に過ごしたニュージーランドでのロケも敢行、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』や『ロアン・リンユイ 阮玲玉』で香港電影金像奨最優秀撮影賞を受賞した香港映画界を代表する名カメラマン、プーン・ハンサンの映像美によって見事に描かれている。
 天才であるがゆえ、また自らエデンの園を作ることに生きがいを見い出し、愛欲に溺れていく若き詩人グー・チョンを演じるのは、『美少年の恋』『ジェネックス・コップ』と香港若手スターとして活躍しているスティーブン・フォン。本作でブルガリア国際映画祭主演男優賞を受賞、映画後半における目だけの狂気の表情がクライマックスの悲劇を強烈に印象づけている。その妻レイミー役には、『ボクらはいつも恋してる! 金枝玉葉2』『ダウンタウン・シャドー』のテレサ・リー。才能ある詩人である夫の不倫を知りながら、それを認めながらも次第に苦悩していく心情を見事に演じている。そして愛人チン・イ一役には、日本でアイドルスターとして声優、舞台と活躍している森野文子が、全裸となって激しいラブシーンを果敢に挑戦している。

傾城(グー・チョン)とは

 中国有名現代詩人で、雑誌「今天」の同人のひとり。1956年北京生まれ。十二歳の時、父で詩人でもある顧工について山東省北部の農村へ下放。十七歳の時に北京に戻り、大工となる。79年以降、詩を発表し始め、80年代には「朦朧詩」と言われ、その独特の詩情は若者たちに熱狂的に受け入れられた。88年中国を離れ、妻とともにニュージーランドの小島ワイヘケ島で原始的な生活を送るが、93年10月8日妻を殺害して自殺する。詩集には「闇の眼」(86)「墓床」(93)などがある。

ストーリー



 1966年の中国は、文化大革命によって知識人や芸術家たちは次々と逮捕、連行され、書物という書物は燃やされていった。幼き少年グー・チョンもまた、糾弾されている父グー・ゴン(ジョー・チャン)の姿をその目で見ていた。1967年、父親とともに山東へやって来たグー・チョンは、父親から唯一残った本を渡される。それを見て幼い心の中に、心の葛藤や苦悩、叫びを詩によって表現するという、詩人としての才能を目覚めさせるのだった。
 1979年、鉄道待合い室に、青年となったグー・チョン(スティーブン・フォン)がいた。ふと見渡すとひときわ目立った女性がたたずんでいる。彼女の姿を何枚ものスケッチに描こうとしている彼に気づいた彼女、レイミー(テレサ・リー)は、笑顔を送った。初対面なのに二人は惹かれあい、慌ただしく上海行き列車に乗ろうとする彼女に、グー・チョンは住所を書いた紙を渡した。後日、レイミーは彼を訪ね、やがて結婚する。詩人としての才能が華開いたグー・チョンは、ついには保守的な旧文芸界から批判を浴びるようになる。”朦朧詩”と呼ばれる新文学が若者たちに絶大な人気を得ていたからだった。そんな時、彼は北京大学の学生であるチン・イー(森野文子)と出会う。彼の詩に共鳴し、卒論のことで相談に来た彼女は、毎日のように彼の家へ通う。チン・イーは彼のことが好きであったが、それを知りつつも妻レイミーは黙認し、3人は不思議な関係で結ばれていく。
 1988年、グー・チョンとレイミーはドイツでの講演に呼ばれ、好評を博す。彼の本を出版したいという者まで現れ、彼の人生は輝かしい時を迎えていた。だが中国での生活に嫌気をさしていた二人は、翌89年、より良い創作活動ができるニュージーランドへ移住し、自由と平和な緑に囲まれた家で、赤ちゃんと3人の幸せな生活をスタートさせる。英語をまったく覚えようとしないグー・チョンに代わってレイミーは、近所とのコミュニケーションや子育て、そして養鶏で毎日忙しい生活を送っていた。その忙しさを手伝ってもらうためにレイミーは、中国にいるチン・イーを呼び寄せ、3人は再び以前のような関係を始める。
 レイミーはグー・チョンを詩人としての才能を多くの人々に認めてもらうために、ギリギリの生活費の中で不満も言わず、常に家族の生活を支えていた。そんな彼女の努力も知らず、グー・チョンは自由気ままにチン・イーと愛欲の時間を過ごしていた。自分だけのエデンの園を築こうとする彼は、詩に対しての創作意欲も薄れていた。レイミーはそんなグー・チョンの態度に苛立ちをぶつけるが、それがきっかけでひとり息子のシャンを親しくしていたピーターソン夫人に預けることとなり、ついには親権を放棄してしまう。
 もう一度もとの生活に戻そうと、レイミーはグー・チョンにドイツ行きを勧める。そしてチン・イーにはドイツには夫婦だけで行くことを告げ、居住権のない彼女にこの地を離れるように言う。悲しみにくれて自暴となったチン・イーのことなど知らないグー・チョンは、拒否する彼女の気持ちも知らずにむりやり彼女を抱いた。自分のことなど彼にとっては単なる愛欲の相手だと知ったチン・イーは、勝ち誇ったような表情をするレイミーに彼を返すと告げ、二人の前から姿を消した。
 1993年10月8日、レイミーはついにグー・チョンと離婚する決意をする。結婚して10年、グー・チョンにとってレイミーは妻ではなく母親であったのだということを彼女は悟ったのだった。そうとは知らず、町の中を歩き回り、レイミーの姿を探すグー・チョン。やがて二人は、グー・チョンの姉の家で会う。彼をなだめ外で待たせている間、義姉にグー・チョンと離婚し、明日ニュージーランドを発つことを話すレイミー。だが彼はその言葉を聞いていた。姉が息子を引き取りに出かけ二人っきりになると、グー・チョンは何かに取り愚かれたような表情を見せ、手に握られていた斧を逃げまどうレイミーに振りかざした……。

スタッフ

ゴールデン・カルチャー・タイムズ製作
ゴールドハ一バー・インターナショナル・フイルムズ提供
製作:監督:ケイシー・チャン
撮影:プーン・ハンサン
脚本:ラウ・ティンチー
美術:ジェームズ・レオン
編集:マク・シーチン
音楽:ケネス・フォン
主題歌:キット・チャン

キャスト

グー・チョン(顧城):スティーブン・フォン
レイミー(蕾謎):テレサ・リー
チン・イー(清兒):森野文子
グー・ゴン(顧工):ジョー・チャン

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