1970年代から宙吊りになっていた歴史が、いままた大きく動き出している。 目覚めよ!歴史の激動を直視する視線を鍛えよ!

仏公開:77年10月12日

1969/伊+仏合作/1時間35分/イーストマンカラー 16ミリ/スタンダード

2001年2月17日〜3月9日までシネセゾン渋谷にてレイトロードショー公開!! (順次全国公開)

サブ題名 激辛フィルムズ3「東風」

公開初日 2001/02/17

公開終了日 2001/03/09

配給会社名 0089

公開日メモ 1970年代から宙吊りになっていた歴史が、いままた大きく動き出している。 目覚めよ!歴史の激動を直視する視線を鍛えよ!

解説


『ベトナムから遠く離れて』、そして『北緯17度』、あるいは『東風』

なぜ、この3本が組合せられるのか。6人の監督が参加して、クリス・マルケルによって、一本にまとめられた『ベトナムから遠く離れて』。西洋が東洋を見つめることで、自らを乗り越えていこうとするフィルム。そのなかで、最もヴェトナムから遠い監督が、ジャン=リュック・ゴダールだとすれば、最もヴェトナムに近づいた監督がハノイでキャメラを廻したヨリス・イヴェンスなのは間違いないでしょう。
ヨリス・イヴェンスはドキュメンタリー史上、最も名高い監督のひとりであり、世界史の節目節目にその世界各地の熱い地域に出向いては作品を残しているという、20世紀の証人といえる人物です。一方、ジャン=リュック・ゴダールは、ヌーヴェル・ヴァーグの申し子として、常に現代映画をリードする存在であることは言うまでもないでしょう。そのふたりが『ベトナムから遠く離れて』のなかで遭遇するのです。おそらく唯一の接点かと思われます。ゴダールの挿話「カメラ・アイ」のなかで、ヨリス・イヴェンスが撮ったカットが幾つか挿入されることになります。つまり北爆を試みるアメリカの戦闘爆撃機のロング・ショットと『中国女』のおもちゃの戦争がモンタージュされることになります。これは何かしら刺激的な事件と言えないでしょうか。
ゴダールは『中国女』や『気狂いピエロ』のなかで、ジュリエット・ベルトやアンナ・カリーナにヴェトナム女の仮装をさせ、操り返し寸劇を演じさせています。ヨリス・イヴェンスは『ベトナムから遠く離れて』のなかで、ヴェトナム娘による本物の仮装劇を撮影しています。
ともあれ、『ベトナムから遠く離れて』の後、ふたりはますます対照的な道を歩みます。ヨリス・イヴェンスはますますベトナムのなかに入り込み、ヴェトナム人民の視点から、北爆中のアメリカ軍を捉えた驚異的なショットを残します。同時録音が可能にしたイマージュの驚きに満ちた『北緯17度』は、戦時下の北ヴェトナムの日常を捉えた傑作となりました。なにしろ農作業の音と飛来する戦闘援の爆音という、近い音と遠い音の共存が、この世界の奥行きを知らしめます。
一方、ゴダールはジガ・ヴェルトフ時代へと突入し、滅法美しい作品である『東風』のなかで、アメリカ映画のイデオロギー的象徴というべき西部劇の解体作業へと至ります。ここでは映像と音響を同時に関連づけて捉えることは、ほとんど不可能です。
この西部劇ごっこは、ふと映画の始原をも想起させるのですが、ここでヨリス・イヴェンスの処女作が、やはり西部劇ごっこだったことは偶然でしょうか。イヴェンス13歳の時に撮られた『ウィグワム—燃える矢』という1912年のサイレント映画がそれです。
まったく同時に顧みられることのないヨリス・イヴェンスとジャン=リュック・ゴダールのヴェトナムを介した一瞬の遭遇を通じて、映画へのふたつの歩みを同時に視界に収めようとすることが、この3本立てを21世紀の初めに企画したささやかな理由と言いえるかもしれません。

ストーリー

スタッフ

<スタッフ>
監督:ジガ・ヴェルトフ集団
脚本:ジャン=リュック・ゴダール
:ダニエル・コーン=ベンディット
:セルジョ・バッツィーニ
撮影:マリオ・ヴルピアーニ
編集:ジャン=リュック・ゴタール
ジャン=ピエール・ゴラン

キャスト

ジャン・マリア・ヴォロンテ(騎兵隊士官)
アンヌ・ヴィアゼムスキー(革命家)
パオロ・ボッツエジ(指揮官)
クリスティーナ・トゥリオ・アルタン(ブルジョワ娘)
アラン・ミジェット(インディアン)
ダニエル・コーン=ベンディット
グラウベル・ローシャ
ジャン=ピエール・レオー(「中国女」抜粋)
ッツ・ゲオルゲ
リック・ボイド

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