ダンサー・イン・ザ・ダーク
原題:DANCER in the DARK
魂の歌声を、誰も止めることはできない。
2000年カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞) 主演女優賞(ビョーク)受賞
2000年9月8日デンマーク公開
2000年/デンマーク/2時間20分/ドルビーデジタル/カラー/スコープサイズ/字幕翻訳:石田素子/ シナリオ本:アーティストハウス刊/ 提供:松竹、フジテレビ、アスミック・エースエンタテイメント、角川書店、アルゼ/ 配給:松竹、アスミック・エース
2007年11月28日よりDVDリリース 2001年6月21日DVD発売&レンタル開始 2001年6月21日ビデオ発売&レンタル開始 2000年12月23日(祝)全国松竹系にて感動のロードショー!
公開初日 2000/12/23
公開終了日 2001/03/23
配給会社名 0003/0007
公開日メモ 2000年5月、カンヌ国際映画祭は、ひとつの映画の話題で持ちきりだった。96年「奇跡の海」で審査員大賞を受賞した鬼才ラース・フォン・トリアー監督が、アイスランド出身のカリスマシンガー、ビョークを主演に迎えて作り上げた感動作「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。
解説
2000年5月、カンヌ国際映画祭は、ひとつの映画の話題で持ちきりだった。96年「奇跡の海」で審査員大賞を受賞した鬼才ラース・フォン・トリアー監督が、アイスランド出身のカリスマシンガー、ビョークを主演に迎えて作り上げた感動作「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。ふたつの斬新な才能のコラボレーションが生み出したこの新作への騒然とした期待の中、フォント・トリアー監督、主演のビョーク、共演のカトリーヌ・ドヌーブらを迎えて行われた公式上映は、満場の観客を驚きと熱狂と感動のるつぼへと巻き込んだ。
過酷な運命に翻弄されながらも、自らの信念を貫き、愛する息子のために全てを投げ打つ主人公・セルマ。子を思う母の無償の愛、絶望を乗り越える生命の強さを、ミュージカルの手法を導入し、斬新な映像で描いた本作は涙と賞賛で迎えられ、パルムドール(最高賞)とビョークの主演女優賞の栄えある2冠に輝いた。新しい世紀にむけて、今までにない全く新しいエモーショナルな傑作が全世界へと送り出されたのである。
チェコからアメリカへやってきたセルマ(ビョーク)は女手ひとつで息子を育てながら、工場で働いている。年上の友人キャシー(カトリーヌ・ドヌーブ)は、彼女に保護者の様な愛情を注ぐ存在だ。セルマには悲しい秘密があった。病のため視力を失いつつあり、手術を受けない限り息子も同じ運命を辿るのだ。愛する息子に手術を受けさせたい。その願いを叶える為、懸命に働くセルマ。しかしある日、大事な手術代が盗まれ、運命は思いもかけないフィナーレへ彼女を導いていく…。
映画の冒頭、暗闇の中で流れるフル・オーケストラ演奏の「オーヴァーチャー」。さながら重厚なオペラのようなこの「序曲」は、光を失いつつあり暗黒の中で音楽だけを心のよりどころとするセルマの世界へ観客を誘う。また、「映画に真の感情を注ぎ込みたかった」というフォン・トリアー監督は手持ちカメラによるドキュメンタリー・スタイルと、100台のデジタルカメラを駆使した斬新なミュージカルという二重構造で、主人公・セルマの心の動きを描写した。セルマが苛酷な現実から内なる幻想世界へ入っていくとき、不安定な映像は、一転して調和的で躍動感に満ちたものへと移行する。主人公の心に寄り添って映像が変化するこの手法は「撮影されたというよりはむしろライブ・パフォーマンスのような映像を望んだ」という監督の言葉通り、観るものの心を激しく揺さぶる、せつない感情の波動と臨場感をスクリーンに生み出すことに成功した。無慈悲な現実を、音楽を愛する心と豊かな想像力で、美しい理想の世界へ変えようとするセルマ。彼女が夢想するミュージカルは、あるがままを受け入れて生きぬくための力であり、生命そのものの輝き。それゆえに彼女の歌声はファンタジックな映像とは相反してあまりにも痛切で、涙を誘う。しかし、息子への愛ゆえに彼女が自ら選択する道は決して不幸ではない。強靭な母の愛、受け継がれていく希望と生命の素晴らしさを痛いほど切々と訴えかけてくる衝撃的なラスト。かつてこれほどまでに、生々しい感情を吐露したエモーショナルなラスト・シーンがあっただろうか。今まで誰も描き得なかった魂の叫びにふれた時、自己存在そのものを揺り動かされるほどの激しい感動に打ち震えるに違いない。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は、映画を観るという行為を越えて、私たちの心の奥底に、生きることを強く問いかけてくるのである。
主人公・セルマを演じるビョークは、その革新的な音楽スタイルと、一度聴いたら忘れられなくなるカリスマ・ヴォイスで世界的な人気を誇る国際派アーティスト。「自分は女優ではなく、あくまでミュージシャン」と言い切る彼女だが、本作の音楽作りおよび撮影の為、丸3年を費やしている。「監督より私のほうがセルマのことを理解している」という彼女の言葉どおり、自らの意思で愛のために殉じるヒロインを圧倒的な存在感と心をわしづかみにする歌声で演じきり、見事カンヌ国際映画祭主演女優賞に輝いた。音楽の化身のような彼女の存在なくして、この映画は成立しなかった。
母親のような愛情をセルマに注ぐ年上の友人キャシーに扮するのは、フランスが誇る大女優カトリーヌ・ドヌーブ。「奇跡の海」を観て自ら出演を希望、今回の役を獲得した。従来の妖艶なイメージを打ち破る、素朴で包容力あふれる女性像を情感豊かに演じている。また、セルマに家を貸す警察官のビル役に「グリーンマイル」のデビッド・モース、セルマに思いを寄せる心優しいジェフ役に「ファーゴ」「アルマゲドン」のピーター・ストーメアが扮する他、フォン・トリアー作品では常連のジャン・マルク・バール、ウド・キアー、ステラン・スカルスゲールドといった国際的に活躍する顔ぶれが脇を固めている。
ストーリー
60年代、アメリカの片田舎。チェコからやってきたセルマ(ビョーク)は女手ひとつで息子ジーン(ブラディカ・コスティク)を育てながら、工場で働いている。
母子ふたりのつつましい暮らしだが、工場の同僚で、彼女に保護者のような愛情を注ぐ年上の友人キャシー(カトリーヌ・ドヌーブ)や、トレーラーハウスを貸してくれている親切な警察官のビル(デビッド・モース)とリンダ(カーラ・セイモア)夫妻、セルマに好意を寄せているジェフ(ピーター・ストーメア)ら隣人たちの温かい友情に包まれていた。
セルマには悲しい秘密があった。遺伝性の病のため、彼女は視力を失ないつつあり、息子ジーンも手術を受けない限り同じ運命を辿ることになるのだ。
セルマはジーンの手術の為、ステンレスのスチール流し台を作る工場で働くほかにヘアピンを紙留めする内職もして、毎日の僅かな稼ぎを密かに貯えていた。
そんな日々の中で、セルマの唯一の生きがいはミュージカル。アマチュア劇団で「サウンド・オブ・ミュージック」の稽古をしたり、仕事帰りにキャシーといく映画館でハリウッドのミュージカル映画を観るのが何よりの楽しみだった。
ある夜、セルマはビルから破産しそうだという相談を受ける。浪費家の妻には話せないと悲嘆にくれるビルに同情し、自分の秘密を教えるセルマ。ふたりはお互いの秘密を守る約束をする。
しかし、セルマの眼は日に日に光を失いつつあり、楽しみにしていた舞台「サウンド・オブ・ミュージック」のマリア役を降りなければならないほど、症状は悪化していた。早くジーンの手術代を貯めなければ。危機感を抱いたセルマは追加で夜勤を申し出、内職の量も増やした。しかし、無理な労働による疲労と視力の悪化による仕事場での度重なるミスは、キャシーにもかばいきれず、遂に工場長のノーマン(ジャン・マルク・バール)に呼び出され、工場を解雇されてしまう。
家に帰ると、ジーンの手術代として貯めていたお金がなくなっていた。
秘密を知っているのはビルしかいない。セルマはビルの元を訪れ、お金を返して欲しいと頼む。
しかし、切羽つまったビルが拳銃を持ち出し、もみ合う内に銃が暴発する…。
遠くでパトカーのサイレンが響く中、放心状態のまま、町外れの森にある病院へと向かったセルマは、チェコ移民のポーコルニー医師(ウド・キアー)に貯金の全額2056ドル10セントを手渡し、ジーンの手術を依頼した。
やがてセルマは殺人犯として逮捕され、裁判にかけられた。セルマはジーンを守る為、そしてビルと約束した秘密を守る為、法廷で決して真実を語ろうとしなかった。遂にセルマは死刑を宣告され、刑務所へ連行されてしまう。しかし、キャシーとジェフは森の病院の存在をつきとめ、セルマの秘密を知る。真実を明らかにすれば減刑されるとキャシーに説得され、新たな弁護士に接見するセルマ。しかし、弁護士から彼の報酬が、2056ドル10セントであると聞き、憤慨する。すぐにセルマとキャシーの口論がはじまった。
ジーンにまず必要なのは母親の存在だと主張するキャシー。しかし、セルマはジーンが目の手術を受けられず、自分と同じ運命を歩む事だけはさせてはならないと言って、決して譲らなかった……。
スタッフ
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
音楽:ビョーク
(サントラ盤「セルマソングス」ユニバーサルミュージック)
製作:ヴィベケ・ウィンデロフ
製作総指揮:ぺ一ター・オールベック・ヤンセン
エグゼクティブ・プロデューサー:マリアンネ・スロット&ラース・ヨンソン
撮影監督:ロビー・ミュラー
振付:ビンセント・パターソン
音響:ペア・ストライト
美術:カール・ユリウスン
衣装:マノン・ラスムッセン
助監督:アナス・レフン
キャスティング:アビー・カウフマン
編集:モリー・マレーネ・ステンスガード&フランソワ・ゲディギエール
キャスト
セルマ:ビョーク
キャシー:カトリーヌ・ドヌーブ
ビル:デビッド・モース
ジエフ:ピーター・ストーメア
オールドリッチ・ノヴィ:ジョエル・グレイ
サミュエル:ビンセント・パターソン
リンダ:カーラ・セイモア
ノーマン:ジャン・マルク・バール
ジーン:ブラディカ・コステイク
ブレンダ:ショブハン・ファロン
地方検事:ゼルイコ・イヴァネク
ポーコルニー医師:ウド・キアー
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