原題:les convoyeurs attendent

ドア開閉世界最高記録、 切ないほど滑稽な記録に挑んだ人たちがいた。

1999年カンヌ国際映画祭監督週間出品 1999年トロント国際映画祭 1999年カルロヴィ・ヴァリ映画祭 1999年サンセバスチャン国際映画祭 1999年シカゴ国際映画祭 1999年ロンドン映画祭 1999年ストックホルム映画祭 2000年ニューヨーク映画祭 2000年フランス映画祭オーストラリア

1999年3月19日ベルギー公開

1999年/ベルギー・フランス・スイス合作/94分/ドルビーデジタル/ アメリカンビスタ/5巻 2,548m/ 提供:KUZUIエンタープライズ+ブエナビスタエンターテインメント 配給:KUZUIエンタープライズ 宣伝:ポップ・プロモーション

2002年07月25日よりDVD発売開始 2001年7月18日ビデオ発売&レンタル開始 2001年2月10日よりユーロスペースにて公開

公開初日 2001/02/10

公開終了日 2001/03/23

配給会社名 0030

公開日メモ ドア開閉世界最高記録、切ないほど滑稽な記録に挑んだ人たちがいた。

解説




郊外にあるちっぽけな工場地帯。
町を一望出来る小さな丘からは、静かにそして黙々と灰色の煙を吐き出す工場の煙突が見える。地元新聞のしがない三流記者ロジェは妻と二人の子供とともに暮らしている。明るい未来など見えない彼にとって、ここでの人生は決して楽なものじゃない。精神的そして物理的にも閉塞した日々の暮らしは彼の心にひたひたと暗い影を落とし、言いようのない焦燥感が募るばかりだった。そして何の変化もなく迎えてしまった新しい時代への夜明けを前に、彼は何かを変える大きなコトをしでかしたいと目論む。
そこで思いついたのが商店組合のコンテスト。種目制限も無い上、どんなにくだらなくとも世界記録を更新すれば1300ccのスポーツカーが手に入る。かくして彼は、気弱で何の取り柄もない息子ミシェルに”24時間で41,827回”というドア開閉世界最高記録に挑戦させることにする。
果たしてそんなことで、ロジェー家は未来への扉を開くことができるのだろうか?

ただドアを開閉するだけという、もしかしたら世界で一番くだらない記録への挑戦。そんなことに本気で向き合う男たちに、独特のユーモアと詩情をもって真っ向からカメラを向けた。スポーツカーを獲得する為に暴走するダメ親父と木偶の坊の息子、そんな二人を複雑な想いで見つめる母と愛らしい娘が繰り広げる心を締めつけるほど切ない物語。それは、様々なプレッシャーを抱えながらもエネルギッシュに生きる一家の家長を描いた現代の寓話であり、コミカルで感動的な日々の格闘の記録でもある。
本人たちは大真面目だけれど、ハタから見ればズレまくっているユニークな登場人物たち。彼らの思いがけない行動とリアクションが生み出す奇妙な哀しみとおかしみ。あまりに情けない世界記録への挑戦という、フツーの人間には考えつかないユーモラスでひねりの利いた発想。そんなオリジナルなプロットに加え、ここではドキュメンタリーを思わせるモノクロームのシャープな映像と、皮肉で人を食ったようなシチュエーションが絶妙なまでに融合し、抜群に力強い詩情感を醸し出している。
それはハリウッド映画には決して真似のできない一風変わった語り口。
それぞれのキャラクター描写の断片がコラージュされ、ストーリーの展開とともに次第にモザイクのようにはめ込まれていく。
ここまで斬新で個性溢れる芸術的レベルの高い作品を作り出したのは、ベルギー出身のブノワ・マリアージユ監督。これまで数多くのドキュメンタリーを手がけ、既に短編では1997年にカンヌ映画祭国際批評家週間最優秀賞を受賞している逸材である。その作風から、「浮き雲」など寡黙な映像からエモーションをほとば
しらせるフィンランドの俊英アキ・カウリスマキ監督と並べて語られることもあるほど。初めての長編映画となったこの作品は1999年のカンヌ映画祭監督週間で大好評を博し、ヨーロッパの新しい才能として世界中の映画人から注目を集めている。
家族を巻き込んでとんでもない記録に挑む愚かな父親ロジェは、監督いわく”不器用だが無限に善意のドンキホーデ”。演じるブノワ・ポールブールドは、監督の古くからの友人で「ありふれた事件」でも知られる俳優だ。また、息子ミシェルを演じるジャン=フランソワ・ドヴィーニュ、その恋人ジョスリーヌ役のリザ・ラクロワ、愛らしい8歳の娘ルイーズに起用されたモルガーヌ・シモンは、いずれもこれが初めての映画出演。エキストラも含め、素人俳優たちが自然体から醸し出す真実味が、プロの俳優たちの演技と絶妙に
絡み合って、この映画のリアル且つ詩情豊かなムードを作り出している。

ストーリー

ロジェ・クロッセ(ブノワ・ポールブールド)は小さな新聞社のスクープ記事専門記者兼カメラマン。妻(ドミニク・バイエン)と15歳のミシェル(ジャン=フランソワ・ドヴィーニュ)、8歳のルイーズ(モルガーヌ・シモン)とともに、工場地帯にある小さな家で暮らしていた。
ロジェは日々、警察の無線を傍受し、スクープというにはあまりにもちんけな事件を追いかけている。今日もルイーズをバイクの後ろに乗せて、交通事故の現場に駆けつける。どこにでもあるありふれた生活。未来に何の展望もないわびしい日常と日々募ってゆく言いようのない焦燥感。新しい時代の夜明けが近づく今、ロジェは何か大きなコトをしでかそうと考えていた。
その日の食卓で、ロジェは商店組合コンテストの世界記録の本を見ていた。2分半でバナナ52本を食べたヤツ、果物の種を14メートル飛ばしたヤツ…。そこで思いついたのがドアの開閉記録。世界記録を更新すれば1300ccのスポーツカーがもらえる。ロジェは失業中で甲斐性なしの息子ミシェルに、この記録に挑戦させることにする。
ロジェの家の隣には内気で無口な青年フェリックス(フィリップ・グランドンリー)が住んでいる。彼の唯一の友は伝書鳩だった。
中でもナポレオンと名付けた雄はチャンピオン鳩。雌鳩恋しさに、どんなに遠くからでも一目散に帰って来る。ロジェは根暗なフェリックスをバカにしているが、ルイーズは彼の鳩に対する情熱に興味を惹かれている。
ロジェは友人のリシャール(プーリ・ランネール)をコーチにつけ、ミシェルにアメリカ式のトレーニングをさせた。庭にしつらえたドアで特訓に励むミシェルにロジェの怒声が飛ぶ。ある日、ガールフレンドのジョスリーヌ(リザ・ラクロワ)がトレーニング中のミシェルを訪ねてくる。ドアの向こう側に消え、草の上に裸で横たわる二人。それはミシェルにとって初めての性体験だった。
やがてコンテストの日がやってきた。観衆の拍手と生演奏が鳴り響く中、特設リングの上でミシェルはドアの開閉を始めた。ロジェは賞品となるはずのスポーツカーに乗り込んで、早くもわがものにしたような喜びようだ。しかし、9,000回を越えたところでミシェルは脚の痛みを訴える。やがて観客も消え、励ましてくれるのはジヨスリーヌだけ。体力が続かないミシェル、その不甲斐なさを激しく罵るロジェ。ミシェルはスポーツカーで暴走し、事故で意識不明に陥ってしまう。人工呼吸器につながれて植物状態のミシェル。けれど、ジョスリーヌのお腹には彼の子供が宿っており、二人は病室で結婚式を挙げる。ロジェは友人でもあり、ミシェルのコーチでもあるリシャールのアメリカ式治療法を信じてミシェルの意識を回復させようと、彼が好きなプレスリーのそっくりさんや愛犬を病室に連れてくるが、効果はない。失ったものの大きさを思い知るロジェ。考えつくあらゆる手段を使い、やがて治療費も底をついてしまうが…。

スタッフ

監督・脚本:ブノワ・マリアージュ
プロデューサー:ドミニク・ジャンヌ
撮影:フィリップ・ギルベール
音楽:ステファン・ヒューゲニン、イース・サンナ
編集:フィリップ・ボーギール
衣装:アナ・フォニアー
美術:クリス・コーニル

キャスト

父親:ロジェ・クロッセ:ブノワ・ポールブールド
ミシェル:ジャン=フランソワ・ドヴィーニュ
ルイーズ:モルガーヌ・シモン
コーチ(リシャール):ブーリ・ランネール
母親:ドミニク・バイエン
フェリックス:フィリップ・グランドンリー
ジョスリーヌ:リザ・ラクロワ

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