原題:Molokh

若き愛人エバ・ブラウンに翻弄されるナチス総統アドルフ・ヒトラー。 山荘の二人を取り巻く人々との静かな狂宴。

1999年カンヌ国際映画祭出品/最優秀脚本賞受賞 1999年ヨーロピアン・フィルム・アワード/オスカー受賞 1999年トロント国際映画祭出品 2000年香港国際映画祭出品

1999年10月13日フランス公開

1999年/ドイツ・ロシア・日本・イタリア・フランス合作/108分/ドイツ語/ 製作:レンフィルム(露)/ゼロフィルム(独)/ふゆ一じょんぷろだくと=ラピュタ阿佐ヶ谷(日) 配給:ラピュタ阿佐ヶ谷+スローラーナー

2010年11月27日よりDVDリリース 2001年3月31日よりラピュタ阿佐ヶ谷にてロードショー

公開初日 2001/03/31

配給会社名 0048/0100

公開日メモ 若き愛人エバ・ブラウンに翻弄されるナチス総統アドルフ・ヒトラー。 山荘の二人を取り巻く人々との静かな狂宴。

解説


ヒトラーが、愛人エバのいる山荘に滞在する。ここには、カリスマとしてのヒトラーはいない。誇大妄想狂のように自らの考えをこねくりまわし、興奮し、戯れ、甘え、疲れ果て、まるで病人のようなひとりの男の姿が、脱臼したスラップスティック・コメディのように描かれる…。
ロシア映画界が生んだ傑出した才能、アレクサンドル・ソクーロフ監督の新作が登場する。ヒトラーを徹底的に“ひとりの男”に引きずり降ろさなければ、歴史の悪循環は断ち切れないとソクーロフは言う。
現在、本作から始まるファシスト3部作(次作『天国に近づくこと(仮)』は1920年代のソ連、3作目は“ヒロヒト”についての映画となる)を準備中。“モレク神”とは、古代セム族の恐ろしい犠牲を要求する神の名前。旧約聖書では悲惨な災い、戦火のシンボルと記されている。

ストーリー



この物語は、ヒトラーの山荘の留守を預かる裸体姿の愛人エヴァの場面から始まる。
ほどなく、ヒトラーが、腹心のヨーゼフ・ゲッベルスやマルティン・ボーマン、ゲッペルス夫人のマグダたちとともに、とある旅から山荘へ戻ってくる。
ヒトラーは、エヴァと2人きりになると、「自分はガンで死ぬ。もう仕事はしたくない」と子供のように駄々をこね、ふとんをかぶってこもる。
ゲッペルスたちと一緒に食事をとるときは、「この中に反対者がいる」と、さい疑心をのぞかせたり、「自分は老いぼれていて魅力がない」などと自分をさげすみ、その一方で、すこぶる上機嫌で、子供のようにはしゃぎ、じょう舌になる。また、部下たちに接する態度はあくまでも紳士的であるが、突然に冷酷な独裁者に変わる。
ある日、ヒトラーはピクニックへ行くことを提案する。そこでも機嫌がいい彼はエヴァに、誘われるままに音楽に合わせ、おどけながら無邪気に踊る。部下たちは、その踊りに無理やりつき合わされる。
一方、残虐性も随所で見られる。生まれたばかりの子犬には「くだらん」と吐き捨て、露骨に嫌悪感を示す。「死体で出したお茶はいかが」「カニを獲るときは、老婆の死体を川に投げ込み、死体に食いつかせる」などと、笑えない冗談を言ってみたりもする。脱走兵に対する寛大な処置を願い出た神父に対しても、「脱走兵はハエのウジと同じだ」と、冷酷な言葉を浴びせかける。フィンランド人は「光が少ないから頭がおかしい」とか、チェコ人は「モンゴル人の血をひいている」などと、人種差別的な発言をし、ドイツ民族の優位性を説く。
ニュース映画でドイツ軍の戦況が有利と知ると、ヒトラーは戦争指導者らしく満足げにうなずくが、それに続くオーケストラの映画では、一転して指揮者の真似をしておどける。
人前では明るくふるまうエヴァも、ヒトラーと2人きりになると、「愛人でいることに疲れた」と、日陰の身を強いられる辛さを訴え、彼にピストルをちらつかせる。それでもヒトラーは「家族そろって食事をしたり、教会へ行ったり、木陰でビールを飲み、ソーセージをつまんだりの生活なんて、くそくらえだ」と、演説さながらこぶしを振り上げ、暖かい家庭というものを否定する。
休日を山荘で過ごし、また部下たちを引き連れて仕事に戻る日の朝、山荘に残るエヴァにヒトラーは、「権力ほど美しいものはない。我々は死すらも克服するだろう」と言い残し、去っていく。

この映画は、山荘で過ごす数日の間にヒトラーが、かいま見せる彼の残虐性や幼稚さ、そして心の弱さや不安定さを描いている。

スタッフ

監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラーボフ
ドイツ語翻訳:マリーナ・コーレニェバ
撮影:アレクセイ・フョードロフ/アナトリー・ローディオノフ
美術:セルゲイ・ココーフキン
衣装:リーディヤ・クリューコヴァ
メイク:エカテリーナ・ベスチャーストナヤ
    リュドミーラ・カズィネェーツ
    ジャンナ・ラジオーノヴァ
録音:ウラジーミル・ペルソフ/セルゲイ・モシコフ
編集:レーダ・セミョーノヴァ
共同製作:才谷遼
製作:レンフィルム(露)、
   ゼロフィルム(独)、
   ふゆ一じょんぷろだくと=ラピュタ阿佐ヶ谷(日)

キャスト

ヒトラー:レオニード・マズガヴォイ
エヴァ・ブラウン:エレーナ・ルファーノヴァ
ゲッペルス:レオニード・ソーコル
マグダ:エレーナ・スピリドーノヴァ
ボルマン:ウラジミール・バグダーノフ

LINK

□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す
http://www.ask.ne.jp/~laputa/
ご覧になるには Media Player が必要となります