原題:DerAusflug

病める天才たちの光と闇

2000年/日本/86分/カラー/35mm 配給:ボックス・オフィス

2001年4月7日より20日までBOX東中野にてアンコール公開 2000年12月16日よりBOX東中野にて公開

公開初日 2000/12/16

配給会社名 0114

公開日メモ オーストリア・ウイーン郊外にある「芸術家の家」で暮らす10人の絵描きたち。心に病をもちながらも、ヨーロッパの画壇で天才と呼ばれる彼らの奇妙で優しさにあふれる日常を、秋から冬にかけてのウイーンを背景に、美しく静謐な映像の中に描き出した作品。

解説

オーストリア・ウイーン郊外にある「芸術家の家」で暮らす10人の絵描きたち。心に病をもちながらも、ヨーロッパの画壇で天才と呼ばれる彼らの奇妙で優しさにあふれる日常を、秋から冬にかけてのウイーンを背景に、美しく静謐な映像の中に描き出した作品。

《アウトサイダー・アートの一大聖地〈芸術家の家〉》
美術教育を受けない子どもたちや精神を病んだ人たちによって生み出される作品は「アウトサイダー・アート」と呼ばれ、ヨーロッパでは1920年代からその芸術的価値が認、められてきた。この映画の舞台となる〈芸術家の家〉は、ウィーン郊外グギング村の神経科病院の敷地にある。病院の医師であったナブラディル博士が芸術的才能をもつ患者たちのために1981年に創設。以来グギングのアーティストたちの作品は欧米各地の展覧会で注目され、いまや〈芸術家の家〉はアウトサイダー・アートの一大聖地となっている。

《日本では発想できない〈幸福な場所〉》
私がこの映画の舞台になっているウィーン郊外グギング村の〈芸術家の家〉の実態を知ったのは3年ほど前である。映画の映像上の美しさもあるのだが、一番の驚きはこの施設の運営方針。この家に住む精神障害をもったアーティストたちを一人前に経済的に自立させているところである。この点は日本において最も難しいところで、福祉という言葉と相互理解という言葉の境目があいまいで「ハンディキャップをもっているのにがんばったね」という言葉が相互理解に成り得ていない。しかし〈芸術家の家〉では作品の売買を作家の経済的な収入源とし、彼らを社会の一員として送り出している。以前日本でこのようなアーティストの展覧会が行なわれた時、その施設の責任者は「彼らが一生懸命描いた絵をお金で売るなんてことはできません」と売買を拒否したことがあった。社会と関わるシステムをその人の能力に合わせてサポートすることこそが相互理解になっていくものなのだと思う。
美術というメディアにおいてハンディキャップとかは、へんな言いまわしだがハンディにはならない。なぜなら同じ考え方、同じ表現は必要ないからで、逆に精神的な健常者でも自分の中で他人と異なった(異常な)ところを見つけなくてはいけないほどなのだから。
この映画は、”福祉というちょっとこそばゆい言葉の本来の意味”とともに、”社会における美術の機能”も見た人に伝えてくれるものである。——————日比野克彦

ストーリー

《老いた肉体に少年の心をもつ、天才たちの不条理な遠足》
アーティストたちは〈芸術家の家〉を出て、どこにでも行く。〈家〉から出かけることを、彼らは子どもがいうように「遠足=Der Ausflug」と呼んでいる。年に2回だけ恋人とのデートにでかける男は、彼女との恋物語を描く。毎週1回亡き母の墓参りに行く男は、少女のような母の姿を描く。毎日3回当たったことのない宝くじを買いに行く男は…。
必要ない世間の情報や関係の一切を断って、自己の内奥に独自の世界を創作している男たち。老いた肉体に少年の心をもつ天才たちがかいま見せる光と闇は、私たちに「正常」とは、さらには「幸福」とは何かを問いかける。

スタッフ

監督・編集:五十嵐 久美子
撮影:山崎裕
録音:吉田一明
音楽:近藤等則
現像:イマジカ
プロデューサー:橋本佳子・長窪正寛
エグゼクティブ・プロデューサー:河野透
製作:Digital Media Entertaiment Corporation
   Vaio Net
   Documntary Japan Inc.
協力:オーストリア航空

キャスト

橋本佳子
長窪正義

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