原題:MALENA

あの頃、あなたが世界のすべてだった。

ゴールデン・ゲローブ賞最優秀外国語映画賞・作曲賞ノミネート エンニオ・モリコーネ ナショナル・ボード・オブ・レヴュー特別功労賞受賞

2000年10月27日イタリア公開

2000年/イタリア・アメリカ/92分(ディレクターズカット版103分)/ Dolby Digital/SRD/シネマスコープ 提供:ギャガ・コミュニケーションズ/TBS/ヒューマックスピクチャーズ 協力:日活 ギャガ・ヒューマックス共同配給

2013年08月07日よりDVDリリース 2002年08月23日よりDVD発売開始 2001年06月09日よりビデオ発売&レンタル開始(ディレクターズカット版) 2001年6月23日より丸の内プラゼールほか全国松竹系にてロードショー 2001年6月9日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹系にてロードショー

公開初日 2001/06/09

配給会社名 0025/0145

公開日メモ イタリアの美しい景色を舞台に、「ニュー・シネマ・パラダイス」のトルナトーレ監督が、ほろ苦い涙と笑いで綴る、少年の一生を決めた永遠の恋の物語。

解説


「マレーナ」は、ルチアーノ・ヴィンセンツォ一二の短編小説を、ジュゼッペ・トルナトーレが脚色し監督した作品である。製作は、カルロ・ベルナスコ一二、ハーヴェイ・ウェインスタイン、製作総指揮には、ボブ・ウェインスタイン、テレサ・モネオ、ファブリッツィオ、マリオ・スペダレッティが名を連ねている。

この映画を観たすべての女性に、映画を観た後こんなことを考えて欲しい…”私もこんなに愛されたことがあったのだろうか。しかも、そのことを気付かないままに…”」と。
この映画の監督、ジュゼッペ・トルナトーレはこの映画を完成した後、万感の想いをこめて思わずこう洩らしたそうだ。トルナトーレ監督がここで語ろうとしているのは、女性はただ存在するだけで、すべての男の恋人になる可能性があるということ、また、一言も言葉を交わさずとも、男にとっての”絶対の女””唯一の女”はあきらかに存在するということである。
つまり、男がもっとも男らしい人生を生きる時、その男の心の中にはたいていの場合、”ただひとりの女”が棲んでいるものだ。男が人を愛し、自分の家族を大切に思い、友を助けて、衿持を保ち、男らしく生きることができるとしたら、それは心の中に棲む”ただひとりの女”のためであることが多い。
多感な少年時代、おのが心を矢のように射て、一瞬にして恋に落ちた女の映像…それは、女の転変の人生にかかわりなく、男の人生にとって決定的な出会いであることを語り尽くしたのがこの映画である。12歳の主人公レナートと成熟した年上の女性マレーナの出会いがまさにそれである。
第二次大戦下のイタリア。日本と三国同盟を結んだイタリアは独裁者ムッソリーニの下に、ナチの進攻を許し、後にアメリカ軍が閣歩して、数年のうちに敗戦を余儀なくされた。辺境の小さな村といえども、その洗礼を受けずにはいられなかった。そうした中、ムッソリーニ政権に抵抗する硬骨の父親の下で育った多感の少年レナートは、年上のひとりの女を愛することで、人生を、彼女が映す時代を、世界を知っていくのである。また、マレーナを影のように追い、誰も知らぬマレーナの真実に触れていくうちに、レナートはマレーナの愛、孤独、絶望を知り、感受性豊かに、真の男になる成熟を手にしたと言える。
『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』のジュゼッペ・トルナトーレ監督は、溢れる想いに抑制を与え、深く想いを沈着させながら、からめとるようにその想いの海に観客を沈めてみせるのである。そのトルナトーレ節を際立つ美しい旋律で弾いてみせたのが、『ニューシネマ・パラダイス』以来、12年もコンビを組む、エンニオ・モリコーネである。
ヒロインのマレーナを演ずるモニカ・ベルッチは、原作となったルチアーノ・ヴィンセンツォ一二の短編小説を手にして以来、映画化を熱望していたトルナトーレ監督にゴーサインを与えたまさに運命の女神ともいえる女優。そのマレーナにひたすら愛を注ぐ少年レナートを演ずるジュゼッペ・スルファーロは、2000人の中から選ばれた現在16歳のシチリアの高校生。マレーナを見つめる視線に惚れこんだ監督によりピックアップされたという。
撮影スタッフは、撮影監督ラホス・コルタイ、美術フランチェスコ・フリジェリ、衣装デザイナー、マウリツィオ・ミレノッティと、『海の上のピアニスト』チーム。
撮影はシチリアの中の60の場所から選ばれたシラクーサで8週間行われた後、ノト島、モコッロ等で行われた。

ストーリー




私がマレーナに初めて会ったのは、戦争が始まってまもない1940年の晩春、12歳半の時だった。シチリア島の眠ったような漁村カステルクトの、長く続く海岸通り。その日、私は初めて自分の自転車を手にし、年長の悪ガキたちと並んで、彼らの密やかな楽しみ、村で一番美しい女マレーナを見る儀式に参加したのだった。
マレーナは海岸沿いの家に一人で住んでいた。結婚してたった2週間、夫は徴兵されて戦線に送られていたからだ。マレーナは毎日午後、その家を出て海岸通りを歩き、カステルクトの中心街に消えていった。
「あいつか来るぞ」。仲間の一人が叫び、私たちは突堤に一列に並んで待った。やがて、ゆっくりと彼女が姿を現した。彼女は白いドレスを着ていた。開いた胸元から白い喉の窪みが見えた。透き通るように白い肌に黒い髪。動きにつれて彼女の美しい曲線があらわになった。その曲線の太腿あたりにコーヒー豆ほどの小さな膨らみ。ガーターのとめ金だった。私の目はそこにくぎづけになった。
その日、私は恋に落ちた、私はまだ半ズホンをはき、マレーナは20歳を過ぎた成熟した女だった。が、マレーナはその日から私の唯一の女として私の心に居座ったのだ。しかし、その頃のマレーナは子供の私など眼中になかったろう。町中の男たちから注がれる熱い視線さえ無視して、戦線にいる夫を想い、目の見えぬ父親の世話をしていたのだから。私はそんなマレーナを影のように追い、彼女の家の窓の隙間越しに深夜ひとりでいる彼女を盗み見し、自慰にふけった。黒いスリップからこぼれる豊な乳房、細い足首、明かりに透ける太腿それは時に、私を誘うマレーナの妄想を生んで、ついには彼女の庭の洗濯場から盗んだ小さな肌着を被って寝る事件に発展し、家族中の顰蹙をかった。
戦局は慌ただしく、この小さな村にもナチがやって来て、やがてそれがアメリカ軍にとって代わった。敗戦とともに平和が訪れようとしていた。が、そんな中で、マレーナの夫の戦死が伝えられ、マレーナの悲劇の人生が幕を開けた。未亡人となった彼女を巡って起きた刃傷沙汰をきっかけに、弁護士の愛人になった彼女は、次にナチ将校に弄ばれ、米軍の玩具となって、転落の果てに、村の女たちの暴行を受け、髪を切られ、殴打の末、ほとんど裸同然で村を追われた。
長ズボンをはくようになった私は、そのすべてを胸張り裂ける想いで見つめていた。悲しくもマレーナを想い続ける私の心を打ちのめすように、村には堕落の女マレーナヘの悪評だけが残った。
そこへ帰還したのが、戦死したはずのマレーナの夫だった。重い病の彼を襲ったのはあまりにも酷すぎる妻の恥辱。誰かが彼を救わなければならなかった。マレーナは本当はただ一筋に夫を愛していたのだと。それができるのはマレーナを見つめつづけた私だけだった。
私はマレーナの夫に手紙を書いた。「マレーナはあなただけを愛していた」のだと。私はそうして、結局、汚濁の中にいる”私のマレーナ”をも救ったのだった。

スタッフ

監督:ジュゼッぺ・トルナトーレ
脚本:ジュゼッぺ・トルナトーレ
原作:ルチアーノ・ヴィンセンツォーニ
撮影:ラヨシュ・コルタイ
音楽:エンニオ・モリコーネ
美術:フランチェスコ・フリジェリ
セット・デザイン:ブルーノ・チェーザリ
衣装:マウリツィオ・ミレノッティ
編集:マッシモ・カグリア
製作:ハーベイ・ウェインスタイン カルロ・ベルナスコーニ

キャスト

マレーナ・スコルディーア:モニカ・ベルッチ
レナート・アモローソ:ジュゼッぺ・スルファーロ
レナートの父:ルチアーノ・フェデリコ
レナートの母:マティルデ・ピアナ
学校の先生(マレーナの父):ピエトロ・ノタリアーニ
ニノ・スコルディーア(マレーナの夫):ガエタノ・アロニカ

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