パン・タデウシュ物語
原題:Pan Tadeusz
アダム・ミツキエヴィチがこの映画を見たら、 どんなに喜んだことでしょう。 ----ローマ法王ヨハネ・パウロ二世
1999年10月22日ポーランド公開
1999年ポーランド=フランス合作/カラー/スコープ・サイズ/2時間34分 日本語版字幕:清水馨/字幕監修:工藤幸雄、久山宏一 サウンドトラック:カルチュア・パブリッシャーズ
2000年12月16日(土)より岩波ホールにて新春ロードショー
公開初日 2000/12/16
配給会社名 0007
公開日メモ 今年、アメリカ・アカデミーはポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督に名誉賞を授与した。「世界中の人々に、歴史、民主主義、自由について芸術家としての視点を示した」ことが授賞理由である。
解説
今年、アメリカ・アカデミーはポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督に名誉賞を授与した。「世界中の人々に、歴史、民主主義、自由について芸術家としての視点を示した」ことが授賞理由である。ワイダ監督は現在74歳、1954年の処女作「世代」から今日までの46年間にわたる映画人生で、34本もの作品を精力的に発表しつづけてきた。最新作「パン・タデウシュ物語」は、そのワイダ監督が満を持して、持てる力を全て注ぎ込んだともいえる大作であり、人々を物語の展開に陶酔させ、魂を高揚させる力強く美しい作品である。昨秋、ポーランドで公開されるや国民の熱狂的支持を受け、記録的大成功を収めた。年内にも国民(約4000万人)の3分の1は鑑賞することになるだろうといわれている。
「パン・タデウシュ物語」は、ポーランドの国民的詩人アダム・ミツキエヴィチ(1798−1855)が、1834年に亡命先のパリで発表した長編叙事詩『パン・タデウシュ』の映画化である。この作品はポーランド・ロマン主義文学の最高傑作といわれ、ポーランドの人々にとって国民的読み物となり、広く読み継がれてきた。舞台は、ナポレオンのモスクワ遠征を控えた1811年から12年、第三次分割でロシア支配下にあったリトアニアの農村である。美しい田園を背景に、小貴族(シュラフタ)であるホレシュコ家、ソプリツァ家の両家の対立を軸に、祖国への思い、愛と憎しみ、戦いと和解の物語が壮大なスケールで描かれてゆく。映画では、ミツキエヴィチがパリで、ポーランド人亡命者たちを前に原作を朗読するシーンを、プロローグとエピローグに置いている。
「パン・タデウシュ物語」は映画芸術の神髄ともいえる。キャスト、スタッフには、ポーランド映画を代表する人たちが顔をそろえ、俳優、台詞、撮影、美術、音楽などの全てが一体となって、圧倒的存在感のある力強い感動を生む。
とりわけ出演俳優の演技のすばらしさは、ポーランド映画、演劇界の実力をよく示している。忠臣ゲルヴァズィ役のダニエル・オルブリフスキ、ローバク司祭役のボグスワフ・リンダ、その弟であるソプリツァ判事役のアンジェイ・セヴェリン、いずれもアンジェイ・ワイダ監督の大切な俳優でヨーロッパやアメリカでの活躍もさることながら、ポーランド観客の圧倒的な支持を受ける人々である。タデウシュ役に選ばれたミハウ・ジェブロフスキは、「パン・タデウシュ物語」の前にヒットした歴史大作「火と刀で」(イエジ・ホフマン監督)でも主役を演じた若手人気スター、ゾーシャ役のアリツィア・バフレダ=ツルシは、ポーランド中からオーディションに集まった少女たちの中から、ワイダ監督が見出した高校生で、これが出演第一作となる。
音楽のヴォイチェフ・キラール、美術のアラン・スタルスキは、共にワイダ監督の重要スタッフ、パヴェウ・エデルマンはポーランド映画の新世代を担うカメラマンで、この作品における彼らの役割もまた見事である。
なお、本作の台詞はすべて原作の詩が直接用いられている。また、タイトル「パン・タデウシュ物語」の“パン”は、男性の名前や肩書につける敬称で日本語の“さん”にあたり、当時は身分の高い者に限られた。
ストーリー
ロシアに協力的なソプリツァ家と、独立を望むホレシュコ家は、「ロミオとジュリエット」の二家族のように対立しあっていた。ロシア軍がホレシュコ家を襲撃した戦闘で、ソプリツァ家のヤツェクがホレシュコ卿を射殺したのだ。卿の忠臣ゲルヴァズィは堅く復讐を誓う。ロシア側はヤツェクにホレシュコ卿の城や土地を与えたが、彼は国外に逃亡し、行方不明となる。
20年後、ヤツェクの息子タデウシュが、学業を終えて叔父のソプリツァ判事の館に帰ってきた。館の庭で彼は美しい少女ゾーシャを見かけ、一瞬にして恋に落ちる.だが彼は、親戚筋の女性テリメーナに夕食の席で会うと、あの少女だと思い込んでしまう。
ホレシュコ家の親戚にあたる伯爵が、城にやってきた。伯爵は,ゲルヴァズィから亡きホレシュコ卿の悲劇を聞いて、城や領地の正当な相続を決意する。
村をあげて熊狩りが行われた。伯爵は、テリメーナとゾーシャの二人に出会う。テリメ−ナはタデウシュを誘惑するが、彼はゾーシャこそあの時の少女だと気づく。テリメーナはタデウシュの変化に気づき、相手を伯爵に変える。
顔に傷のあるローバクという司祭が、ソプリツァ家に出入りしている。彼は行方不明のヤツェクとの連絡係だった。ヤツェクは、没落したホレシュコ家の孤児ゾーシャの行く末を案じ、弟のソプリツァ判事に密かに養育させていた。息子のタデウシュをゾーシャと結婚させ、城を正当な相続人に返すこと。ナポレオンのモスクワ行軍に先駆けて蜂起をおこし、ポーランド・リトアニア合同を復活させることが、ヤツェクの悲願だとローバクは説く。
一方、ゲルヴァズィは、伯爵と共に城と領地を奪い返すため,地元の小貴族たちを集めた。おりしもナポレオンが近くまで進軍しているという情報が入る。ホレシュコ家の名誉のため、裏切り者ソプリツァ一族と戦い、ポーランドを救うという大義のもと、高揚した小貴族の一団は、ソプリツァの館を襲撃し、判事たちを監禁してしまう。
通報を受けたロシア軍が鎮圧にやってくる。ローバクの計らいで、対立していたホレシュコ家とソプリツァ家は共通の敵の前に団結し、ロシア兵を相手に戦い、勝利を治めた。
戦闘に参加したタデウシュや伯爵、小貴族たちは、故郷の人々への災いを避けるため、西方に向かう。翌1812年春、彼らはモスクワへと行軍するナポレオンの軍隊に加わり、勲章と栄光を胸に帰還してきた・・・・。
スタッフ
原作:アダム・ミツキエヴィチ(『パン・タデウシュ』講談社文芸文庫刊)
撮影:パヴェウ・エデルマン
音楽:ヴォイチェフ・キラール
美術:アラン・スタルスキ
衣装:マグダレナ・テスワフスカ=ベルナフスカ、マウゴジャータ・ステファニャク
編集:ヴァンダ・ゼーマン
製作:レフ・ルィヴィン
キャスト
ボグスワフ・リンダ
ダニエル・オルブリフスキ
アンジェイ・セヴェリン
グラジーナ・シャポウォフスカ
マレク・コンドラト
ミハウ・ジェブロフスキ
アリツィア・バフレダ=ツルシ
クシシュトフ・コルベルゲル
LINK
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