原題:a one & a two....

第53回カンヌ映画祭監督賞受賞作品 第13回東京国際映画祭シネマプリズム公式参加作品 2000年カルロビバリ国際映画祭 2000年ニューヨーク国際映画祭 2000年トロント国際映画祭正式出品作品

2000年9月20日フランス公開

2000年/台湾・日本合作映画/2時間53分/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル/9巻4,745m/ 日本語字幕:石田泰子/提供:ポニーキャニオン/オメガ・プロジェクト/博報堂 共同配給:オメガ・エンタテインメント/KUZUIエンタープライズ 宣伝:ポップ・プロモーション

2014年8月23日(土)より9月15日(月・祝)まで新宿K’s cinemaにて公開 2001年7月18日DVD発売/2001年7月18日ビデオ発売&レンタル開始 2000年12月16日より渋谷シネパレスにて公開

(C)2000,1+2Seisaku Iinkai

公開初日 2000/12/16

公開終了日 2001/01/26

配給会社名 0010/0030

公開日メモ 小学生のヤンヤンを取り囲む、老いた祖母、両親、そして姉……これら3つの世代の人々の心を、深く静かにあぶり出し、観るものを穏やかな感動で包みこむ。

解説


現代の台北を舞台に、都市に住む人々の現実と彼らが直面する問題をみずみずしく、リアルに描いてきた監督エドワード・ヤン。「恐怖分子」(86)「●嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」(91)「カップルズ」(95)と、常に台湾の若い作家たちをリードし、アジアン・シネマ・ムーブメントの先駆者としと称される彼の、集大成ともいえる傑作が登場した。
小学生のヤンヤンを取り囲む、老いた祖母と両親、そして姉という三つの世代の人々の心を深く静かにあぶりだすこの作品は、観るものをおだやかな感情で包み込む。そして、観終わったときには、そっと目から涙が零れ落ちてくる。そのとき、私たちは気づくはずだ。殺伐としていた自分の心がこの映画によって癒され、砂漠に水が浸みわたるように潤いを取り戻していることを……。
2000年5月、新ミレニアムの幕を切って開かれた第53回カンヌ映画祭に出品されたこの作品は、みごと監督賞を受賞。世界中のジャーナリストは透き通るような美しさに魅了されるとともに、涙を浮かべ、そして絶賛の嵐をよせた。既に、アメリカ、フランス、イタリアをはじめ世界中での公開が決まっており、この映画で監督は”世界のエドワード・ヤン”へと大きく飛躍したのである。

ヤンヤンは、優しい祖母、友人と共にコンピューター会社を経営する父NJ(エヌジェイ)、母ミンミン、そして高校生の姉ティンティンの5人家族で台北の洒落たマンションに住んでいる。一家は典型的な中流家庭であり、何不自由なく暮らしている。ところが、母の弟アディの結婚式の日から一家に様々なトラブルが起こり始める。
祖母は脳卒中で昏睡状態に陥り、叔父の元恋人が式場に乗り込んできて三角関係が発覚し、父は偶然初恋の女性に出くわしてしまう。祖母の入院のために、母は精神不安定になって新興宗教に救いを求め、姉は隣家の少女のボーイフレンドと交際を始める。そして、ヤンヤンにも押さない恋心が芽生えようとしていた。

私たちの身の回りに存在する、ごく日常的な人生の出来事。若くても、年老いていても、人は問題を抱え、自分と向き合う過程は同じであり、それはとても難しい事なのだ。監督はヤンヤンが人の背中の写真を撮る行為を象徴的に描くことにより、人には見えない、もう一つの側面を切り取って見せている。
監督がこの映画のアイデアを思いつたのは12年も前のこと。しかし、本人も認めるように、この作品には歳を重ねて50代になったエドワード・ヤンだからこそ語れる人生の機微が感じられる。静かにゆったりと、対象に適度な距離を保ちつつ、人肌の温もりをもってみつめる人の心。毎朝目を覚ます度に、新しい経験をするヤンヤンには私たちの原点を注ぎ込み、不惑の歳を過ぎてなお人生をやり直そうと考えるNJ=中年世代の悲哀を色濃くにじませながら、どの世代にも向ける共感とやさしさ。リアルに”今”を捉えた映像世界の中に、登場人物だちの息づかいと胸の鼓動が聞こえてくる。そこには迷いながらも、恥ずかしくても¥たった一度の人生を愛おしむ監督のまなざしがある。それが、じわじわと私たちの心に染み入り、知らぬ間に涙が頬を伝うゆえんなのだ。
監督は「この映画を見終った観客に、”一人の映画監督”に出会ったというより、”ただの友だち”と一緒にいたかのような紀文を味わってほしい」と語っている。確かにこの映画にはそんな自然さと、親密な空気が流れている。これは世界のどこの都市でも抱えている現代社会の縮図であると同時に、「人生と向き合い、いかに新しい経験を生きていくかということが重要なのだ」という21世紀へ向けた監督のメッセージなのである。
映画の製作過程で最も大変だったのはキャスティングだったという。ただ一人、脚本段階から決定していたのがNL役のウー・ニエンジェン。監督は自作の「海辺の一日」(フェスティバル上映)やホウ・シャオシェンの「恋愛風塵」(87)「悲情城市」(89)「戯夢人生」(93)などの優れた脚本家であり、「多桑/父さん」(94)の監督、テレビ番組の司会者でもある彼を”台湾屈指の俳優”と評価し、前作「カップルズ」でのエキセントリックなヤクザ役に続いて起用した。そんな監督の期待に応えて、ニエンジェンは見事に抑制された演技えお見せてくれる。妻ミンミンを演じるのは「宗家の三姉妹」(97)「The Island Tale」(2000)のエレン・ジン。多作品の撮影中ということで一度は監督を落胆させたが、その後運良くスケジュールが合って出演できることになった。そして、最も苦労したのはティンティンとヤンヤンに扮する子役たち。まず、新人を発掘するためのワークショップを開設し、そこでみつけたズバ抜けた才能の持ち主ケリー・リーとジョナサン・チャンの年令に合わせて脚本が書きなおされた。また、NJの人生観に大きな影響を与える日本人ゲーム・プログラマー大田の役で、イッセイ尾形が誠実で滋味あふれるいい味をだしているのも見逃せない。
フィックスを主体とした落ち着いた悠々たる映像は「海辺の一日」でクリストファー・ドイルのアシスタントにつき、「タイペイ・ストーリー」(フェスティバル上映)で撮影監督を務めたヤン・ウェイハン。照明のリー・ロンユー、編集のチェン・ポーウェンも「クーリンチェ少年殺人事件」以降、監督と組んでいる気心の知れたスタッフだ。「私をスキーに連れてって」(87)「病院へ行こう」(90)「スワロウテイル」(96)「リング」(98)など多くの話題作、ヒット作を送り出してきた河井真也とポニーキャニオンの附田斉子がプロデュースにあたり、ロケは台湾と日本で行われた。スタッフ、キャストとも両国より参加した日・台合作映画である。

ストーリー

 小学生のヤンヤンは、優しい祖母、友人とコンピュータ会社を経営する父NJ(エヌジェイ)、共稼ぎの母ミンミン、そして高校生の姉ティンティンの5人家族で、台北の瀟洒なマンションに住んでいる。一家は何不自由なく暮らしている、典型的な台湾の中流家庭だった。ところが叔父の結婚式の日を境に、この一家に様々なトラブルが舞い込んでくる。

 まずは式場に叔父の元恋人が怒鳴り込んできて三角関係が発覚。そして祖母が脳卒中で倒れ入院、昏睡状態のまま帰宅するが、その看病疲れから母ミンミンは精神不安定になり、新興宗教に救いを求める。父NJは式場のホテルで初恋の女性シェリーに出くわしたかと思いきや、会社が倒産の危機に立たされ、共同経営者である友人達との間もぎくしゃくしてストレスが溜まる。かたや姉ティンティンは隣家に引っ越してきた少女のボーイフレンドから手紙を預かったのをきっかけに、彼と付き合うようになり、学校で問題児扱いされていた弟ヤンヤンもまた、ひとりの少女に恋心を抱く……。

 経営の立て直しをはかり、NJの会社は日本の敏腕プログラマー大田と契約を交わす計画をたてる。大田との商談で東京を訪れたNJは、その地で初恋の人シェリーと再会。しかし全てを捨ててやり直そうという彼女の提案に、彼は同意しなかった。またもやシェリーと訣別し、大田との契約も(友人の経営判断で)御破算になったNJは、帰国後寝込んでしまう。

 そしてティンティンもまた、ボーイフレンドとの交際にピリオドがうたれ、隣家の少女とよりを戻した彼が殺人事件を起こしたことで、警察に事情聴取される。やりきれない思いで帰宅したティンティンを迎えていたのは、意識を戻した祖母の元気な姿だった。「なぜ、世の中はこんなにも夢と違うの? 目が覚めて見た世界は、前と同じだった?」と問いかけながら、安らかな眠りにつく姉。そしてティンティンが再び目覚めた時、彼女が目にしたのは……。

スタッフ

監督・脚本:エドワード・ヤン
プロデューサー:河井真也、附田斉子
アソシエイトプロデューサ一:ユー・ウェイエン/久保田修
撮影:ヤン・ウェイハン
照明:リー・ロンユー
編集:チェン・ポーウェン
録音:ドゥー・ドゥーツ
美術・音楽:ベン・カイリー
制作:アトムフィルム
技術・音楽:ペン・カイリー
提供:ポニーキャニオン/オメガ・プロジェクト/博報堂
共同配給:オメガ・エンタテインメント/KUZUIエンタープライズ

キャスト

NJ:ウー・ニエンジェン
ミンミン:エレン・ジン
大田:イッセー尾形
ヤンヤン:ジョナサン・チャン
ティンティン:ケリー・リー

LINK

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