原題:The Prompter

あなたと奏でる愛の五線譜

2000年上海国際映画祭銀杯受賞、1999年アカデミー賞外国語映画賞ノミネートノルウェー代表、 モスクワ「フェイス・オブ・ラプ」映画祭最優秀女優賞(ヘーゲ・シュイェン)、 ルーアン北欧映画祭最優秀女優賞(ヘーゲ・シュイエン)、その他

1999年3月26日ノルウェイ公開

1999年/ノルウェー/97分/35㎜/カラー/ヴィスタサイズ/ドルピーデジタルSRD/字幕翻訳:石田泰子/ 後援:駐日ノルウェー王国大使館、スカンジナビア政府観光局 配給:アルシネテラン

2003年12月05日よりDVD発売開始 2003年12月05日よりビデオレンタル開始 2001年10月13日より渋谷シネマ・ソサエティにて独占ロードショー公開

公開初日 2001/10/13

公開終了日 2001/11/23

配給会社名 0013

公開日メモ 世紀を超えて生き続けるオペラ作品の数々を残した、イタリアの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディ没後100年にあたる2001年に、ノルウェーからヴェルディの「アイーダ」を劇中に用いた映画が本作。ヒロインのシヴはオペラの舞台を支えるプロンプターとして歌劇場で働いており、ステージでは「アイーダ」の公演に向けて稽古が行われている。本作はドラマティックな音楽の調べに乗せて、オペラ舞台の裏側、そしてシヴの日常を追っていく。

解説


世紀を超えて生き続けるオペラ作品の数々を残した、イタリアの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディ没後100年にあたる2001年に、ノルウェーからヴェルディの「アイーダ」を劇中に用いた映画が届けられた。「椿姫」や「リゴレット」と並ぶヴェルディ三大傑作の1つ、そしてスケールの大きさでは随一を誇るオペラ「アイーダ」。ヒロインのシヴはオペラの舞台を支えるプロンプター(本番中に舞台の陰で歌手に台詞を教える人)として歌劇場で働いており、ステージでは「アイーダ」の公演に向けて稽古が行われている。本作はドラマティックな音楽の調べに乗せて、オペラ舞台の裏側、そしてシヴの日常を追っていく。
オペラを愛するシヴは、結婚を控えて幸せに溢れている。しかし結婚生活が始まると、次第に様々な困難が彼女を襲う。シヴという名前が”揺れ動く”という意味を持つように、家庭でも仕事でも壁に突き当たり、悩みや葛藤を抱えていくことになる。イプセンの国ノルウェーは女性解放運動の先進国。日本などと比べると女性の地位や権利も保障されており、働く女性を助ける制度も整っている。しかしそんなノルウェーでさえも、仕事と家庭の両立は並大抵のことではない。そして決して若いとはいえないシヴは、初めての結婚を機に新しい世界と向き合わざるを得なくなる。プロンプターの小さな箱部屋や自分の部屋にあるお気に入りの鳥かご風の椅子に象徴されるように、狭い場所に安住の場所を見出していたシヴ。思い切って変化を求めていくような年齢ではなくなった彼女が、運命の男性と惹かれ合い、やがて自らの意志で殻を破ろうとするまでに至る心の動きが、女性の視点で丁寧に描かれている。
女性ならではの感性で、リアルなシヴという女性像と彼女を取り巻く環境を作り上げたのは、昨今その生活スタイルやカルチャーが注目を集める北欧ノルウェーの新進女性監督ヒルデ・ハイエル。女優から監督へと転身を果たしたハイエルは、自らが経験してきた葛藤をシヴに投影させ、女性ならば一度は感じたことのある焦りや不安、怒り、嫉妬…といった感情を鮮やかにすくい取りながら、すべての女性たちヘエールを送っている。本国ノルウェーでは多くの女性たちの共感を呼びヒットを記録し、また1999年アカデミー賞外国語映画賞のノミネート候補ノルウェー代表となった。そしてハイエルの期待に応えシヴという女性に息を吹き込んだのはヘーゲ・シュイエン。そのリアルな熱演は高く評価され、モスクワ「フェイス・オブ・ラブ」映画祭やルーアン北欧映画祭で最優秀女優賞を受賞している。その他、シヴが出会うチューバ奏者マルカスを演じるのは、『ジャンク・メール』(96)のポール・シュレットアウネの新作『ユー・リアリー・ガット・ミー』(原題、公開予定)にも出演しているフィリップ・サンデーン。なお劇中の「アイーダ」の舞台には、ロンドンの声楽アンサンブル、コンソート・オブ・ミュージックでも活躍しているテノール歌手リチャード・エドガー=ウィルスンがラダメス役で出演している他、現役のオペラ歌手たちが美声を披露している。
また、観葉植物や藤・木製家具の多いナチュラルなシヴの部屋や、シヴの夫フレッド宅のモダン家具や小物など、人気の北欧インテリアも見逃せない。

ストーリー




シヴは華やかな歌劇場で働くオペラのプロンプター。現在はヴェルディの「アイーダ」公演に向けて練習が行われており、いつもシヴは舞台下の小さなプロンプターボックスの中から、出演者たちに歌詞を教えている。家に帰ると、屋根裏の自分の部屋でお気に入りの籠椅子に揺られ、「アイーダ」の繰り返し流れるフレーズを、ヘッドホンで聞きながら口ずさむ。シヴは仕事場のプロンプターボックスといい籠椅子といい、狭い場所が好きなのだ。
医者のフレッドとの結婚を控えたシヴは、結婚準備に追われながらもとても幸せそう。ウエディングドレスショップでは、純白のドレスに身を包み、結婚行進曲を口ずさみながら未来の夫の方へ歩み寄る。思わず踊り出すシヴとフレッド。そんなシヴにも、密かな不安があった。フレッドは再婚で、前妻のヘレンとの間にはミーアとヘンドリクという2人の子供がいる。彼の家でディナーの用意をしながら、ふとテーブルの上の写真立てを見やると、そこにはヘレンとミーアが微笑む姿。壁にも”家族”の写真が並んでいる。子供たちは2人の親の間を行ったり来たりしており、甘えん坊のミーアのために、この家には今もヘレンの持ち物がそのままにしてあった。見渡してみれば、ここはヘレンの影が常に付きまとっていて、シヴには自分の居弓所がないように感じられる。また、フレッドはシヴが今のまま仕事を続けることに不満を持っているらしく、稽古や舞台が昼も夜もあることから、仕事と家庭の両立は難しいのではと言う。しかしシヴには、プロンプターの仕事をやめることなど考えられない。
プロンプターは縁の下の力持ち的な仕事ではあるけれど、シヴはこの仕事を気に入っていた。しかし、アイーダ役のソプラノの女性はいつまでたっても歌詞を覚えず、シヴの助け舟にも迷惑顔。仕事も何故かうまくいかず、すべてが空回りしている気分。
そんなある日、仕事を終えて駐車場へ向かったシヴは、つい最近オーケストラに入ったチューバ奏者のマルカスと出会う。少し言葉を交わした後、急いで帰ったマルカスはチューバを忘れて行ってしまい、シヴはそれをオケの控え室に届けた。翌日マルカスが舞台稽古を見学にやって来る。陰からそっと見つめるその視線の先には、身振り手振りとともにプロンプターを務めるシヴの姿があった。その後、マルカスがチューバのお礼に小さなチューバケース入りのキャンディーをシヴにプレゼントしたことから、2人はどちらともなくお互いの稽古場を訪ねて話をするようになる。
フレッドとの結婚式も無事終わり、夫の家へ引っ越して来たシヴだったが、依然としてヘレンの持ち物が家を占拠している。フレッドはミーアが泣いたからだと説明するが、シヴは自分より子供たちに気遣う夫に傷つく。今は別の男性と一緒に暮らしているヘレンは、用事がある時に子供たちを預けにやって来るが、その度に自分の領域がますます侵されていくように感じるシヴ。フレッドとの予定が急に変更になることもしばしば。肝心のフレッドとも些細なことで口喧嘩になったりと、なんとなくしっくりこないように感じる。
ある夜、ヘレンが事故で意識不明になったと連絡が入る。言い知れない不安に襲われるシヴ。仕事場でも思い悩んだ顔が消えない。そんな折にダンスパーティーが行われ、シヴはまるで憂さを晴らすように踊りに没頭する。そこヘマルカスもやって来て、2人はフラメンコのリズムに体を躍らせた。しかし、「君は火山のようだ」と言われ、シヴは逃げるようにその場を立ち去る。日に日にマルカスが気になり始めたシヴは、オケが入った練習でも、プロンプターボックスから、チューバを演奏するマルカスの姿を見つめてしまう。一方のフレッドは、仕事中だというのに、買い物の用件で緊急の電話をかけてくる。ミーアはヘレンが恋しくて駄々をこね、おまけに料理はまずいと言われ落ち込むシヴ。
ヘレンの様態は依然よくならないようだった。入院が長引くため、気分転換に週末だけ子供たちの所へやって来るという。シヴの気持ちを優先するとフレッドは言うが、シヴは承諾せざるを得ない。しかし、頭では納得したものの感情がついていかず、ついイライラしてしまう。本当に自分はこの場所に必要なのだろうか?
そんな思いを抱きながら、シヴは抑えてきたマルカスヘの思いをどうすることもできなくなっていた。とうとう、2人は唇を重ね合わせてしまう。しかし我に返ってみれば、結婚している身のシヴは新しく芽生えたマルカスヘの感情をどうすることもできない。マルカスは新しい2人の関係に向かって一歩を踏み出そうと言うが、自分の気持ちに正直に行動できる程、今のシヴには勇気がないのだった。果たしてシヴはこの閉じ込められた現実を打ち破り、外の世界へ飛び出すことができるのだろうか…。

スタッフ

監督・脚本:ヒルデ・ハイエル
音楽:ヴェルディ「アイーダ」より
撮影:ハラール・グンナル・ポールゴール
衣装:アイーダ・カルニンス
編集:ソフィエ・ヘッセルベルグ
音楽:ヴェルディ「アイーダ」より
指揮:テリエ・ミッケルセン
オーケストラ:リトビア国立交響楽団
製作:クリスティアン・ヴィルハーゲン

キャスト

シヴ:へーゲ・シュイエン
フレッド:スヴェーン・ノルディン
マルカス:フィリップ・サンデーン
アムネリス:アンネ=リーセ・ベルントセン
アイーダ:リーヴ・グンヒル・タンベルグ
ラダメス:リチャード・エドガー=ウィルスン
舞台監督:カルロ・パルソッティ
ヘレン:シーグリ・フーン
ティーア:ベンテ・ブルスム

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