原題:The Yards

午前1時 サニーサイド操車場 あのとき、何が起こったのか…

2000年第53回カンヌ国際映画祭正式出品 2001年ナショナル−ポード・オブ・レビュー助演男優賞−ホアキン・フェニックス 2001年放送映画批評家協会助演男優賞−ホアキン・フェニックス

2000年3月27日シンガポール公開

2000年/アメリカ/115分/DTS / Dolby Digital / SDDS/115min 提供:アスミック・エースエンタテインメント、角川書店 配給:アスミック・エースエンタテインメント

2002年3月1日DVD発売&レンタル開始 2002年3月1日ビデオ発売&レンタル開始 2001年11月23日より丸の内ピカデリー2他全国松竹系にてロードショー

(C)2000 miramax film corp.all rights reserved

公開初日 2001/11/23

公開終了日 2001/12/14

配給会社名 0007

公開日メモ 「リトル・オデッサ」で一躍注目監督となったジェームズ・グレイが、大都会の地下鉄操車場に暗部を舞台に、男達の暗闘を鋭く描いたハートボイルド・サスペンス。

解説


ニューヨーク、クイーンズ。
更生を誓って出所したレオは、叔父の地下鉄整備会社で働き始める。
だがそこは、政財界をも巻き込んだ汚職のるつぼだった。
陰謀、贈賄、果ては殺人。いつしか事件に巻き込まれるレオは、友を、家族を守るため必至にもがくが…。
オールスター・キャストで贈る、切なくも哀しい社会派サスペンス。

新世紀スターが贈る社会派サスペンス

『ゴッドファーザー』よりも切なく、『インサイダー』よりもスリリングに。『猿の惑星』のマーク・ウォルバ一グと『グラディエーター』のホアキン・フェニックス、そして『スウィート・ノベンバー』のシャーリーズ・セロンと新世紀スターの競演で贈る本作『裏切り者』は、実際の汚職事件に材をとった一級の社会派サスペンスである。2000年のカンヌ国際映画祭に出品された本作は、ジェームズ・グレイの長編2作目となる。弱冠31歳の新鋭監督によるものとは思えないほどの重厚なドラマは、久々の骨太な本格派と称賛を浴びた。
ジェームス・カーン、フェイ・ダナウェイ、エレン・バーステイン、トニー・ムサンテと、まるでグレイ監督が青春時代を過ごした70〜80年代にオマージュを捧げるかのような豪華競演陣も然ることなから、特筆すべきはホアキンフェニックスの熱演であろう。『グラディエーター』では美しくも残忍な若き野心家コモドゥス帝、『クイルズ』では清廉な心を持ちなからサド公爵に魅了されるクルミエ神父、そして本作では、大都会で成功を求めるマイノリティの複雑な心情を表現しており、近年の演技の幅の広かりには目覚ましいものかある。彼は本作と『グラディエーター』『クイルズ』の演技で、ナショナル・ボード・オヴ・レビュー助演男優賞と放送映画批評家協会助演男優賞を受賞した。

ただ、愛するひとを守りたかった

ニューヨーク、クイーンズ。仲間を庇い刑務所送りとなっていたレオが、刑期を終えて戻ってきた。彼は無二の親友ウィリーや彼の恋人エリカと再会を喜びあい、叔父フランクが経営する地下鉄整備会社で新しい職に就き、人生をやり直そうと決心する。だが、政財界の実力者フランクには裏の顔があった。知らず知らずに組織の陰謀、贈賄汚職、果ては殺人にまでに巻き込まれるレオ。そしてある秘密を知ってしまったことから、レオはファミリーの標的となってしまう。信頼する友、そして愛する母のために、レオは全力で事態を突破しようとする。だが、彼の前には巨大な力か立ちふさがっていた。

現代社会を写す、家族の肖像

監督は、デビュー作『リトル・オデッサ』で現代の家族像を描き、ヴェネチア映画祭銀獅子賞に輝いたジェームズ・グレイ。2作目となる本作も舞台はやはりニューヨークで、80年代、彼の多感な青年期に実際に起こった汚職事件をベースにしている。
登場人物は皆、善悪相まった複雑なキャラクターとして描かれている。新しい家族をこよなく愛しながら、一家の繁栄を守るために汚職の泥沼にはまっていくフランク。エリカの愛とフランクの信頼を勝ち取るため、伸し上がるためには友情さえ犠牲にしょうとする自分に苦悩するウィリー。実父を亡くして間もないエリカは母の再婚相手フランクに反発し、自分の家庭を築くことだけを夢見ている。そして母親を愛していながら、うまくその期待に応えられないでいるレオ。愛するものを守ろうとするあまり、いつの間にか誰かを裏切り、罪を犯してしまう哀しみ。ここではある一族にフォーカスを当てつつ、老いていく者と大人へなろうとする者、滅びゆく者と台頭する者、ふたつの世代の対比を、様々な人種やクラスが絡み合う巨大都市のドラマの中に描いていく。
物語のクライマックス、二組の母と息子が互いに手を取りあうシーンは、ひとつの世代が交代していく象徴ともいうべき粛然とした場面である。

ヤングパワーとヴェテラン陣の、絶妙なコラボレーション

本作の最も大きな魅力は、そのキャスティング。主役にはマーク・ウォルバーグ、ホアキン・フェニックス、シャーリーズ・セロンと今最も輝いている次世代スター。脇を固めているのも『ゴッドファーザー』『誘拐犯』のジェームズ・カーン、『俺たちに明日はない』『ジャンヌ・ダルク』のフェイ・ダナウェイ、『アリスの恋』『レイエム・フォー・ドリームス」のエレン・バーステイン、『ディープ・エンド・オブ・オーシャン』『傷だらけの挽歌』のトニー・ムサンテと、ビッグ・ネームの豪華競演。ふたつの世代による絶妙なコラボレーションである。
重層的で深みのある脚本には、人気TVシリーズ『フェリシティの青春』の製作でも有名なマット・リーヴズが加わった。美術のケヴィン・トンプスン、衣装のマイケル・クランシー、編集のジェフ・フォードは『リトル・オデッサ』からの気心の知れたスタッフである。撮影のハリス・サヴィデスは、元々ミュージック・クリップやCFで有名だが、グレイの前作『リトル・オデッサ』に感応して自ら売り込んできた。そして物語を盛り上げる音楽には、大御所ハワード・ショアを起用。ホルストの管弦楽組曲「惑星」のく土星>をメインテーマに引用しながら、エモーショナルな曲の数々か、重厚な物語を盛り上げている。

ストーリー


犯罪と繁栄の大都会ニューヨーク、クイーンズ区、。仲間をかばい車の窃盗で服役していたレオ(マーク・ウォルバーグ)が、刑期を終えて帰ってきた。厳しい保護監察下だが、女手ひとつで育ててくれた病弱な母ヴァル(エレン・バーステイン)にこれ以上心配を掛けまいと、人生をやり直す決心をしていた。レオは母の妹キティ(フェイ・ダナウェイ)の再婚相手フランク(ジェームズ・カーン)の下で新しい職に就き、長年の友人ウィリー(ホアキン・フェニックス)と彼の恋人でキティの娘でもある従妹のエリカ(シャーリーズ・セロン)とも再会を喜びあった。叔父フランクはニューヨークの地下鉄修理などを請け負う大手、エレクトリック・レール社を経営していた。フランクの下で働くウィリーは、かなり羽振りがいいようだ。ウィリーがエリカにそっと指輪を贈る様子を見守るレオ。エリカと結婚すれば、フランクの片腕として将来も約束されるだろう。レオはフランクに、ウィリーと同じ仕事がしたいと相談する。

早速ウィリーは、地下鉄工事の入札が行われる区庁舎にレオを連れて行く。だがそこは陰謀、賄賂、裏工作が横行する、文字通り大都市の地下に轟く暗部であった。NYの地下鉄事業で生き抜くためには、区長のマイダニックや交通局のグラナダやラザリデスらと汚れた関係を続けなければならない。フランクは彼らとともに政財界を牛耳り、甘い汁を吸っていた。エレクトリック・レール社のライバルは、ウエルテック社。ウィリーの仕事とは、グラナダたちに金を掴ませ入札を確保すること。打合せ通り、今回もエレクトリック・レール社が大きい仕事を獲得した。入札後、ウエルテック社のヘクトルが近づいてきて、ウィリーにフランクと手を切るように誘いをかける。相手にしないウィリーに、同じ黒い髪を持つヘクトルはスペイン語で言い放つ。「所詮おまえは、白人にはなれない」

ある晩、レオはウィリーに誘われサニーサイド操車場へと向かった。チンピラ仲間のレイモンドたちとウエルテック社が修理した車両をいじり、信用を落とすのだ。ウィリーはいつも通り操車場のゴルウィッツ主任に“贈り物”をちらっかせ、工作を見逃してくれるよう頼むが、彼はウエルテック社に寝返っていた。計算外の事態に動揺したウィリーは、持っていたナイフで誤って主任を刺してしまう。一方、見張り役のレオは、警報で駆けつけたりフキン巡査を殴打してしまう。気を失った巡査を残して逃げるレオ。ただ“有益な”人間になりたかったレオの歯車が、少しずつずれていく…。

翌日のマスコミは、地下鉄操車場殺人事件で持ち切りだった。主任は失血死、巡査は昏睡状態。フランクに相談することもできず窮地に追い込まれたウィリーはレイモンドとともに、生き証人である巡査を抹殺しなければならないとレオに拳銃を渡す。今度捕まれば終身刑だが、レオが殺れなければレイモンドがレオを殺る。病院に潜り込むが、始末をつけられず逃げ出すレオ。親友のウィリーさえ、もはや信じられない。

フランクが事件の真相を知ったとき、事態は深刻になっていた。意識を回復した巡査の証言で、レオに殺人容疑がかかる。捜査の手はフランクの身辺にも及んできた。下手に動けば汚職の事実が明るみになり、殺人事件も絡めば完全に身の破滅だ。選挙を控えた区長たちは、手のひらを返したようによそよそしい。近々事件についての聴聞会が開かれる。厄介なレオを早く何とかしなければ、自分たちの立場が危うくなる。

捜査網をかい潜り密かに病いの母の元に戻ったレオは、身の潔白を訴える。伯母の看病にきていて話を聞いたエリカは、ウィリーに疑念を抱く。一方ウィリーは、フランクから、レオとエリカがかつて関係があったと聞かされ動揺する。仲が良かった3人の関係は、突き崩されていく。エリカは、レオを助けてくれるよう継父フランクに頼み込む。反抗的だった義娘が涙ながらに跪く姿に、フランクは重い口を開いた。「レオの所に案内してくれ」

憔悴しきったウィリーは、ヘクトルに連絡をとろうと受話器を取った。

そして聴聞会の日、思いも寄らない人物が、“沈黙の掟”を破ろうとしていた…。

スタッフ

監督:ジェームズ・グレイ
脚本:ジェームズ・グレイ、マット・リーヴズ
製作:ニック・ウエクスラー、ポール・ウェブスター、ケリー・オレント
製作総指揮…ボブ・ワインスタイン、ハーヴィー・ワインスタイン、ジョナサン・ゴードン
共同製作:マット・リーヴス、クリストファー・グッド
撮影監督:ハリー・サヴィデス
編集:ジェフ・フオード
プロダクション・デザイナー:ケヴィン・トンプスン
衣装:マイケル・クランシー
音楽:ハワード・ショア
アート・ディレクター:ジュディ・リー
セット・デコレーター:フォード・ウィーラー

キャスト

レオ・ハンドラー:マーク・ウォルバーグ
ウィリー・グティエレス:ホアキン・7ェニックス
エリカ・ストルツ:シャーリーズ・セロン
フランク・オルチン:ジェームズ・カーン
キティ・オルチン:フェイ・ダナウェイ
ヴァル・ハンドラー:エレン・バースティン
バーナード・ストルツ:チャド・アーロン
レイモンド:アンドリュー・ダヴォリ
アーサー・マイダニック(クイーンズ区長):スティーヴ・ローレンス
シーモア・コーマン:トニー・ムサンテ
ポール・ラザリデス:ヴィクター・アーゴ
マニュエル・セキエラ:トーマス・ミリアン
ヘクトル・ガヤルド:ロベルト・モンタノ
アルベルト・グラナダ:ヴィクター・アーノルド
トッド:ドメニク・ランバルドッツィ
リフキン巡査:デヴィッド・ザヤス

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