99歳の元零戦パイロットが語る太平洋戦争の闇!

2015年/日本/ドキュメンタリー/デジタルSD/カラー/117分 配給:オリオフィルムズ

2015年8月15日(土)ユーロスペースほか全国順次公開

©2015 「ひとりひとりの戦場」製作委員会

公開初日 2015/08/15

配給会社名 1344

解説


20世紀最大の戦争その歴史のうねりの中で、それぞれの戦場があった…

原田要さん。今年の8月に99歳になる最後の零戦パイロット。長野中学(現長野高校)を中退して、海軍航空隊のパイロットとなる。彼の空の闘いは中国本土の南京爆撃からハワイ、セイロン島、ミッドウェイ、そしてガタルカナルへと広がっていった。戦闘機乗りがみた“南京虐殺事件”の真相。成功の影で隠蔽されてきた真珠湾攻撃の悲劇「ニイハウ島事件」の解明。運命の海戦から空の消耗戦へと次第に傾いていく日本の戦運。戦時下の日本軍人の生き様と零戦神話を支えてきたパイロットの技量。そして戦後70年を経ても続いている生き残った者の悲しみが原田さんを始めとした日米双方の元軍人、日系ハワイ移民二世、学芸員たちのことばで私たちに語られていく。制作・監督は前作『陸軍登戸研究所』で証言とアーカイブ映像で裏打ちされた新しいドキュメ ンタリー映画を生みだし、昨年度藤本賞・奨励賞を受賞した楠山忠之。

<楠山忠之プロフィール>
1939年東京生まれ。上智大学文学部卒業後、報知新聞社写真部を経て、69年にフリーとして独立。沖縄復帰およびベトナム戦争最後の「サイゴン解放」を「現場」から報道。国内およびアジアに視点を据えて「写真と文」あるいは映画製作で現地の声を伝えてきた。
主な著書に「おばあちゃん 泣いて笑ってシャッターをきる」(ポプラ社)、「日本のいちばん南にあるぜいたく」(情報センター出版局)、「結局、アメリカの患部ばっかり撮っていた」(三五館)など多数。
記録映画としては『メコンに銃声が消える日』『三里塚−この大地に生きる』『アフガニスタン戦争被害調査』などがある。2014年公開した『陸軍登戸研究所』でキネマ旬報文化映画第三位、藤本賞奨励賞を受賞した。

ストーリー




■ひとりひとりの戦場を発掘する意義

ドキュメンタリー映画は、現在進行形の日常や流れ去ったかに見える過去の歴史の襞にカメラを入れ、気づかなかった—時には隠されていた“事実”を映し出し、精査してその集積を粉飾なく綴り、“観客”に伝えることだと考える。
題材のカテゴリーは無限だが、究極的には「生命」の問題に尽きる。たったひとつのこの地球に生命体はどうあるべきか、これまでどう歩み、未来に向けて何を目指すかは、ドキュメンタリー映画の背負うべき重要な課題のひとつであろう。
今回、私たちが製作する課題は「戦争の正体」である。人類の歩みは良かれ悪しかれ「戦争」とともにあった。日本も明治新政府以降、日清、日露につづく戦争の歴史が、途切れることなく1945年まで多くの生命と環境・文化を破壊してきた。戦後70年を迎える今、戦争経験者の人数は減り、戦争体験を語り継ぐには最後の時となりつつある。ひとりひとりの戦場体験を聞き、その証言から真実を拾い上げる作業は、まさしく今後の人間の歩むべき道の灯火となってくれるだろう。それはまた、今記録しておかなければ、永遠に貴重な歴史の欠片を失い、戦争をどう生きたかという問いかけを空洞化してしまうという畏れに突き動かされる。それがこの映画製作へのエネルギーとなっている。
とはいえ「戦争の正体」には様々な側面がある。第一次大戦以後、無差別殺戮兵器の登場により、戦場は限定された“場”ではなくなった。銃後の非武装の市民を巻き込み、日常生活が一瞬にして地獄と化した、原爆投下による“戦場”もあれば、日中戦争や南方作戦で兵士たちが食糧も弾丸も尽き、飢えと恐怖の中で逃避行した“戦場”もある。また、いくつもの海戦で連合艦隊が全滅、炎の海に放り出されながら九死に一生を得た人々の“戦場”もある。
見方を変えれば、前作『陸軍登戸研究所』で明らかになったように秘密戦・謀略戦によって、何も知らされずに風船爆弾作りに動員され、ただひたすら紙を張って加害者側に立たされていたという“戦場”もある。戦争は幾重にも秘密の壁を生み張り巡らされるから、「隣の戦場」は見えない。異なるモザイク状の「ひとりひとりの戦場」をパズルを解くように紡ぎ取る作業こそ、「戦争とは何か」に近づくことになる。
「戦争は怖い」だけのイメージでは表層的に過ぎない。「慣れれば人殺しも平気になる」という刺突訓練を受忍し、やがて「何人の首を斬ったか」を競争するようにもなる。
ドキュメンタリー映画は、戦争における人間の不気味さを引き出し、そこから戦争を孕む社会の在りようまで深めていかなくてはならない。そのことが“戦場の現場”と“遥か遠くテレビの断片だけで知る戦場”との隔たりを縮める。
(監督:楠山忠之)

スタッフ

監督:楠山忠之
製作:楠山忠之、菊池笛人、鈴木一
企画:楠山忠之
撮影:長倉徳生、鈴木摩耶、楠山忠之
編集技術:長倉徳生
編集:楠山忠之
聞き手:楠山忠之
ナレーション:楠山忠之

キャスト

原田要(元・零戦パイロット)
重田常治(元・重巡洋艦乗組員)
重田軍治(長男) 
重田康治(二男)
金城秀夫(ハワイ日系二世)
金城房子(妻)
タカラ・スエキチ(ハワイ日系二世)
小池良児(太平洋航空博物館・通訳)
リチャード・ジロッコ(元・米海軍航空機関士)
藤本文昭(「赤土の島」著者 )
西開地良忠(西開地重徳の弟)
田村正彦(東京初空襲被害者)
田部井武(東京初空襲被害者)
堀川喜四郎(東京初空襲被害者)
武部次郎(東京都葛飾区教育資料館)
平野拓也(葛飾区・法林寺)

ワイキキの浜で−
横浜在住の若い夫婦 ブラジル出身の青年たち
浅川学園ひかり幼稚園の先生と児童たち 
勢理客ジェーン藤枝(ハワイ-沖縄センター会長)
宮城 BONNIE (同センター・通訳) 
真栄平房佳(沖縄県平和祈念資料館)

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